物理 > 第1編 力と運動 > 第1章 平面内の運動

② 落体の運動

📐 1. 自由落下と鉛直投射

「物体を落とす・投げ下ろす・投げ上げる——3つの落体の運動はどう違うのか?」——すべて等加速度直線運動の公式で統一的に扱える。

ビルの屋上からボールを真上に投げ上げた。最高点に達した瞬間、ボールにはたらく力はどうなっている?
力はゼロ(一瞬止まるから)
上向きの力と下向きの力がつりあっている
下向きの重力だけがはたらいている
最高点で速度が 0 になっても、重力は常にはたらき続けています。「止まった=力がゼロ」ではありません。速度が 0 でも加速度は \(g\) のままです。

自由落下

物体が重力だけを受け,初速度 0 で鉛直下方に落下する運動を自由落下という。 鉛直下向きを正にとると,加速度は重力加速度 \(g\)〔m/s²〕で一定である。

等加速度直線運動の公式(\(v = v_0 + at\)\(x = v_0 t + \tfrac{1}{2} a t^2\)\(v^2 - v_0^2 = 2ax\))に \(v_0 = 0\),\(a = g\) を代入すると、自由落下の3 式が得られる。

\(v = \) \(gt\), \(\quad y = \) \(\frac{1}{2}gt^2\), \(\quad v^2 = \) \(2gy\)

\(v\)〔m/s〕:速度(下向き正)/\(y\)〔m〕:落下距離/\(g \fallingdotseq 9.8\) m/s²:重力加速度

🧮 計算例:ビルの屋上からボールを落とす

条件:高さ 44.1 m のビルの屋上からボールを静かに落とす。\(g = 9.8\) m/s² とする。

地面に達するまでの時間を \(t\) とおくと、\(y = \frac{1}{2}gt^2\) より

$$ 44.1 = \frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 \quad \therefore\ t = 3.0 \text{ s} $$

地面に達する直前の速さは

$$ v = gt = 9.8 \times 3.0 = 29.4 \text{ m/s} \fallingdotseq 106 \text{ km/h} $$

答え:落下時間 \(3.0\) s、着地直前の速さ \(29.4\) m/s(約 106 km/h)。

🧮 豆知識:自由落下の速さは意外に速い

自由落下で 5 秒後の速さは \(v = 9.8 \times 5 = 49\) m/s ≒ 176 km/h。10 秒後には約 350 km/h に達する。実際には空気抵抗があるため、終端速度で頭打ちになる(Card 4 で詳しく扱う)。

🔍 豆知識:ガリレオの落下実験

ガリレオはピサの斜塔から重さの異なる球を同時に落とし、同時に着地することを示したと伝えられている(実話かどうかは議論あり)。確実なのは、斜面を使った実験で「落下距離は時間の 2 乗に比例する」ことを実証したことだ。

鉛直投げ下ろし

ある高さから鉛直下方に初速度 \(v_0\)〔m/s〕で物体を投げる運動を鉛直投げ下ろしという。 鉛直下向きを正にとると,加速度は \(g\) で,自由落下に初速度が加わった形になる。

\(v = v_0 + gt\),\(\quad y = v_0 t + \tfrac{1}{2}gt^2\),\(\quad v^2 - v_0^2 = 2gy\)

\(v_0\)〔m/s〕:初速度(下向き)/\(y\)〔m〕:落下距離

鉛直投げ上げ

鉛直上方に初速度 \(v_0\)〔m/s〕で物体を投げる運動を鉛直投げ上げという。 鉛直上向きを正にとると,加速度は \(-g\) となる。

等加速度直線運動の公式に \(a = -g\) を代入して、鉛直投げ上げの3 式が得られる。

\(v = \) \(v_0 - gt\), \(\quad y = \) \(v_0 t - \frac{1}{2}gt^2\), \(\quad v^2 - v_0^2 = \) \(-2gy\)

\(v_0\)〔m/s〕:初速度(上向き)/\(y\)〔m〕:高さ(上向き正)

⚠️ 注意

最高点では速度 \(v = 0\) になるが,加速度は \(g\) のまま一定。 物体は最高点を通過した後,同じ道筋を逆にたどって落下する(上昇と下降は対称)。

🧮 計算例:鉛直投げ上げの最高点

条件:ボールを初速度 19.6 m/s で真上に投げ上げる。\(g = 9.8\) m/s² とする。

最高点に達する時刻を \(t\) とおくと、最高点では \(v = 0\) なので \(v = v_0 - gt\) より

$$ 0 = 19.6 - 9.8 \times t \quad \therefore\ t = 2.0 \text{ s} $$

最高点の高さ \(y\) は

$$ y = v_0 t - \tfrac{1}{2}gt^2 = 19.6 \times 2.0 - \tfrac{1}{2} \times 9.8 \times 2.0^2 = 19.6 \text{ m} $$

答え:最高点到達時間 2.0 s、最高点の高さ 19.6 m

鉛直投げ上げで、上昇中と下降中で加速度の大きさはどう変わる?
上昇中の方が大きい(減速しているから)
上昇中も下降中も同じ \(g\)
下降中の方が大きい(加速しているから)
重力加速度 \(g\) は常に一定で、上昇中も下降中も大きさは変わりません。「減速=加速度が小さい」は誤解です。加速度の向きが速度と逆なだけで、大きさは同じです。

🏃 2. 水平投射

「崖の上からボールを水平に投げると,どんな軌道を描く?」——水平方向と鉛直方向の2つの運動を分けて考えよう。

崖の上から石を水平に思い切り投げた。同時に手から石をそっと落とした。どちらが先に地面に着く?
落とした石が先(まっすぐ落ちるから早い)
投げた石が先(勢いがあるから早い)
同時に着く
水平に投げても、鉛直方向の運動は自由落下とまったく同じです。水平初速がどんなに大きくても落下時間は変わりません。水平と鉛直の運動は独立しています。

水平投射とは

物体をある高さから水平方向に投げ出してみよう(水平投射)。 物体は放物線を描いて飛んでいき,やがて地面に達する。

水平投射の軌道

水平投射された物体の運動について,次のことがわかる。

📌 ポイント

水平方向と鉛直方向の運動は独立で別々に分けて考えることができる。 鉛直方向には自由落下と同じ運動,水平方向には等速直線運動をする。

水平投射の式

小球を水平方向に \(v_{\mathrm{0}}\)〔m/s〕の速さで投げたとき, 投げ出した点を原点として水平方向に \(x\) 軸, 鉛直下向きに \(y\) 軸をとる。 時間 \(t\)〔s〕後の,小球の速度 \(\vec{v}\) の \(x\) 成分を \(v_x\)〔m/s〕,\(y\) 成分を \(v_y\)〔m/s〕とし, 位置を \((x,\; y)\) とする。

\(x\) 軸方向には等速直線運動と同様の運動をするから

$$ v_x = v_{\mathrm{0}}, \quad x = v_{\mathrm{0}} t $$

\(y\) 軸方向には自由落下と同様の運動をするから

$$ v_y = gt, \quad y = \frac{1}{2}\,g\,t^2 $$

以上をまとめると、水平投射の基本 4 式が得られる(等速直線運動と自由落下の式を組み合わせただけなので、丸暗記する必要はない)。

\(v_x = \) \(v_{\mathrm{0}}\), \(\quad x = \) \(v_{\mathrm{0}} t\), \(\quad v_y = \) \(gt\), \(\quad y = \) \(\frac{1}{2}\,g\,t^2\)

\(v_{\mathrm{0}}\):水平方向の初速度〔m/s〕/\(g\):重力加速度〔m/s²〕/ \(v_x,\; v_y\):速度の \(x,\; y\) 成分〔m/s〕/\((x,\; y)\):時刻 \(t\) での位置

同じ高さから自由落下させた球と比べると、\(y\) 方向の運動は完全に一致する。水平初速度 \(v_0\) がいくらであっても、鉛直方向の落下時間は同じだ。下のシミュレーションで「自由落下と比較」をチェックして確かめてみよう。

軌道の式

\(x = v_{\mathrm{0}} t\) より \(t = \dfrac{x}{v_{\mathrm{0}}}\)。これを \(y = \dfrac{1}{2}\,g\,t^2\) に代入すると

\(\displaystyle y = \frac{1}{2}\,g\cdot\!\left(\frac{x}{v_{\mathrm{0}}}\right)^{\!2} = \frac{g}{2\,v_{\mathrm{0}}^{\,2}} \cdot x^2\)

となる。\(g\)、\(v_{\mathrm{0}}\) は定数なので \(y\) は \(x^2\) に比例し、原点を頂点とする放物線の式であることがわかる。

🧮 計算例:崖からの水平投射

条件:高さ 19.6 m の崖から、水平方向に 15 m/s でボールを投げ出す。\(g = 9.8\) m/s² とする。

鉛直方向は自由落下なので \(y = \frac{1}{2}gt^2\) より

$$ 19.6 = \frac{1}{2} \times 9.8 \times t^2 \quad \therefore\ t = 2.0 \text{ s} $$

水平到達距離は

$$ x = v_0 t = 15 \times 2.0 = 30 \text{ m} $$

着地時の速度成分は \(v_x = 15\) m/s、\(v_y = gt = 9.8 \times 2.0 = 19.6\) m/s。合成速度は

$$ v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2} = \sqrt{15^2 + 19.6^2} \fallingdotseq 24.7 \text{ m/s} $$

答え:落下時間 \(2.0\) s、水平到達距離 30 m、着地速さ約 24.7 m/s

🤔 豆知識:「水平と鉛直を分けて考える」理由

放物運動を解くカギは「水平方向と鉛直方向は独立」ということ。重力は鉛直方向にしかはたらかないので、水平方向は等速運動、鉛直方向は自由落下として別々に解ける。時間 \(t\) が両方向を結ぶ共通パラメータとなる。

水平投射で初速 \(v_0\) を2倍にすると、水平到達距離はどうなる?
4倍になる
2倍になる
\(\sqrt{2}\) 倍になる
落下時間 \(t\) は初速に依存せず一定なので、水平距離 \(x = v_0 t\) は初速に比例します。初速2倍で距離もちょうど2倍です。4倍と答えた人は斜方投射の公式と混同しています。

🎯 3. 斜方投射

「ボールを斜め上方に投げたとき,どこまで飛ぶ?」——打ち上げ角と初速度で軌道がどう変わるか見てみよう。

斜方投射された物体が最高点に達した瞬間、速さはどうなっている?
速さはゼロ(一瞬静止する)
ゼロではない(水平方向に動いている)
初速度と同じ大きさ
最高点では鉛直方向の速度 \(v_y = 0\) ですが、水平成分 \(v_x = v_0\cos\theta\) は一定なので速さはゼロになりません。「最高点=静止」は鉛直投げ上げだけの話です。

斜方投射とは

物体を斜め上方に投げると(斜方投射), 物体は放物線を描いて飛んでいき, 最高点に達した後,やがて地面に達する。

斜方投射の軌道

斜方投射された物体の運動について,次のことがわかる。

📌 ポイント

最高点では速さが 0 ではないことに注意。 速度の鉛直成分 \(v_y\) が 0 になるだけで, 水平成分 \(v_x = v_{\mathrm{0}} \cos\theta\) は残っている

斜方投射の式

小球を水平方向と角 \(\theta\) をなす向きに \(v_{\mathrm{0}}\)〔m/s〕の速さで投げたとき, 投げ出した点を原点として水平方向に \(x\) 軸, 鉛直上向きに \(y\) 軸をとる。 時間 \(t\)〔s〕後の,小球の速度 \(\vec{v}\) の \(x\) 成分を \(v_x\)〔m/s〕,\(y\) 成分を \(v_y\)〔m/s〕とし, 位置を \((x,\; y)\) とする。

\(x\) 軸方向には速度 \(v_{\mathrm{0}} \cos\theta\) の等速直線運動と同様の運動をするから

$$ v_x = v_{\mathrm{0}} \cos\theta, \quad x = v_{\mathrm{0}} \cos\theta \cdot t $$

\(y\) 軸方向には初速度 \(v_{\mathrm{0}} \sin\theta\) の鉛直投げ上げと同様の運動をするから

$$ v_y = v_{\mathrm{0}} \sin\theta - gt $$

速度が時間とともに減少するため、位置 \(y\) は次のように表される。

$$ y = v_{\mathrm{0}} \sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}\,g\,t^2 $$

以上をまとめると、斜方投射の基本 4 式が得られる。水平成分・鉛直成分を別々に追う形で、特別な新しい公式ではなく「等速直線運動+鉛直投げ上げ」の組合せだ。

\(v_x = \) \(v_{\mathrm{0}} \cos\theta\), \(\quad x = \) \(v_{\mathrm{0}} \cos\theta \cdot t\)

\(v_y = \) \(v_{\mathrm{0}} \sin\theta - gt\), \(\quad y = \) \(v_{\mathrm{0}} \sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}\,g\,t^2\)

\(v_{\mathrm{0}}\):初速度の大きさ〔m/s〕/\(\theta\):打ち出し角(水平方向となす角)/\(g\):重力加速度〔m/s²〕

軌道の式

\(x = v_{\mathrm{0}} \cos\theta \cdot t\) より \(t = \dfrac{x}{v_{\mathrm{0}} \cos\theta}\)。これを \(y\) の式に代入すると

\(\displaystyle y = v_{\mathrm{0}} \sin\theta \cdot \frac{x}{v_{\mathrm{0}} \cos\theta} - \frac{1}{2}\,g \cdot\!\left(\frac{x}{v_{\mathrm{0}} \cos\theta}\right)^{\!2} = \tan\theta \cdot x - \frac{g}{2\,v_{\mathrm{0}}^{\,2} \cos^2\!\theta} \cdot x^2\)

となり、上に凸の放物線であることがわかる。これも新公式ではなく、上の 4 式から \(t\) を消去しただけの計算結果だ。

放物運動の性質

水平投射や斜方投射のように放物線を描く運動を放物運動(parabolic / projectile motion)という。 放物運動では水平方向は速度一定(加速度 0)鉛直方向は加速度 \(g\) の等加速度直線運動となる。 水平と鉛直で加速度が異なるため、放物運動そのものは等加速度直線運動ではない。2 方向に分解してそれぞれを独立に扱えるのが放物運動の解法の肝だ。

最高点と到達距離

最高点の高さ \(H\)を求める。最高点に達する時刻を \(t_{\mathrm{top}}\) とおくと、最高点では鉛直成分 \(v_y = 0\) なので \(v_{\mathrm{0}} \sin\theta - g\,t_{\mathrm{top}} = 0\)。これより

\(\displaystyle t_{\mathrm{top}} = \frac{v_{\mathrm{0}} \sin\theta}{g}\)

これを \(y\) の式に代入すると

\(\displaystyle H = v_{\mathrm{0}} \sin\theta \cdot t_{\mathrm{top}} - \tfrac{1}{2}\,g\,t_{\mathrm{top}}^{\,2} = \frac{v_{\mathrm{0}}^{\,2} \sin^2\!\theta}{2g}\)

水平到達距離 \(R\)は、投射から着地までの時間を \(t_{\mathrm{R}}\) とおいて求める。\(y = 0\)(地面)となる条件から、対称性より \(t_{\mathrm{R}} = 2\,t_{\mathrm{top}} = \dfrac{2\,v_{\mathrm{0}} \sin\theta}{g}\)。よって

\(\displaystyle R = v_{\mathrm{0}} \cos\theta \cdot t_{\mathrm{R}} = \frac{v_{\mathrm{0}}^{\,2} \sin 2\theta}{g}\)

\(\theta = 45°\) で \(\sin 2\theta = 1\) となり、\(R\) は最大になる。また \(\theta\) と \(90° - \theta\) の 2 通りの角度で飛距離は等しい(補角関係)。

🧮 計算例:斜方投射の最高点と飛距離

条件:初速 20 m/s、仰角 30° で斜方投射する。\(g = 9.8\) m/s² とする。

初速度の水平成分を \(v_{0x}\)、鉛直成分を \(v_{0y}\) とおくと

\(v_{0x} = 20\cos 30° \fallingdotseq 17.3\) m/s、\(v_{0y} = 20\sin 30° = 10\) m/s

最高点に達する時刻を \(t_H\)、最高点の高さを \(H\) とおくと、\(v_y = 0\) の条件から

$$ t_H = \frac{v_{0y}}{g} = \frac{10}{9.8} \fallingdotseq 1.02 \text{ s}, \qquad H = \frac{v_{0y}^2}{2g} \fallingdotseq 5.10 \text{ m} $$

滞空時間を \(T\) とすると \(T = 2t_H \fallingdotseq 2.04\) s。水平到達距離 \(R\) は

$$ R = v_{0x} \times T \fallingdotseq 17.3 \times 2.04 \fallingdotseq 35.3 \text{ m} $$

答え:最高点の高さ約 5.1 m、滞空時間約 2.0 s、水平到達距離約 35 m

⚽ 豆知識:サッカーのフリーキックと放物運動

サッカーボールの軌道は理想的には放物線だが、実際にはマグヌス効果(回転による空気力)で曲がる。「落ちるシュート」はトップスピンで下向きの力が加わり、放物線より早く落下する。回転のない理想的なキックだけが教科書通りの放物線を描く。ちなみに水平投射は斜方投射の \(\theta = 0°\) の特別な場合で、分解するひと手間が減るだけで解き方は同じだ。

同じ初速で投射角 30° と 60° で斜方投射した。水平到達距離はどうなる?
60° の方が遠くまで飛ぶ
30° の方が遠くまで飛ぶ
どちらも同じ飛距離
水平到達距離は \(\frac{v_0^2 \sin 2\theta}{g}\) に比例します。\(\sin 60° = \sin 120°\) なので、30° と 60° は同じ飛距離になります。一般に補角の関係(\(\theta\) と \(90°-\theta\))で飛距離は等しくなります。

🌧️ 4. 落体の運動方程式と空気の抵抗

ここまで「空気の抵抗は無視」として放物運動を考えてきた。では,なぜ落体の加速度は \(g\) で一定なのか? そして空気の抵抗がある現実の運動はどうなるのか?——運動方程式で確認しよう。

スカイダイバーが飛び降りてしばらくすると、落下速度が一定になる。このとき加速度はいくら?
0(もう加速していない)
\(g\)(重力は変わらないから)
\(g\) の半分くらい
速度が一定(終端速度)になったとき、空気抵抗と重力がつりあい合力がゼロなので加速度は 0 です。重力がはたらいていても、抵抗力で打ち消されています。

落体の運動方程式

空気の抵抗を無視できるとき,自由落下・鉛直投射・水平投射・斜方投射される 質量 \(m\)〔kg〕の物体が受けている力は,鉛直下向きの重力 \(m\vec{g}\)〔N〕のみである。

物体の加速度を \(\vec{a}\)〔m/s²〕とすると、運動方程式より \(m\vec{a} = m\vec{g}\) すなわち \(\vec{a} = \vec{g}\)(質量 \(m\) で両辺を割っただけの計算結果)。

📌 ポイント

重力のみを受ける物体の加速度は、質量・初速度・運動の向きによらず、常に鉛直下向きで大きさ \(g\)〔m/s²〕となる。だから羽毛も鉄球も、真空中では同時に落ちる

空気の抵抗と終端速度

雨粒が 1000 m 自由落下したときの速さを計算すると約 140 m/s(約 500 km/h)にもなるが、実際の雨粒はせいぜい 10 m/s 程度で地面に届く。これは雨粒が空気の抵抗を受けるためだ。抵抗力は運動を妨げる向き(=速度と逆向き)にはたらくので、雨粒はそれほど加速されない。

小さな球が空気中を落下する場合、速さが大きくない範囲では抵抗力の大きさは速さに比例し、\(R = kv\)(\(k\) は比例定数)と書ける。このとき球の運動方程式は

\(ma = mg - kv\)

この運動方程式から、空気中での落下は次の3 段階で進むことがわかる:

  1. 落下直後——速さ \(v\) が小さく抵抗力はほぼ 0。加速度 ≒ \(g\)(自由落下と同じ)
  2. 速度が増すにつれ——\(kv\) が大きくなり、合力 \(mg - kv\) が小さくなる。加速度が徐々に減少
  3. やがて——\(kv = mg\) で合力 0、加速度 = 0。速さは一定値 \(v_{\mathrm{f}}\)に落ち着く

この \(v_{\mathrm{f}}\) を終端速度(terminal velocity)という。\(a = 0\) のとき \(kv_{\mathrm{f}} = mg\) なので

\(v_{\mathrm{f}} = \) \(\dfrac{mg}{k}\)

質量 \(m\) が大きいほど、抵抗係数 \(k\) が小さいほど終端速度は大きい。 また真空中では空気の抵抗がゼロなので、形状や質量にかかわらず羽毛も鉄球も同時に着地する。

⚠️
加速度の大きさは減少するが、速さは減少しない。 速さは増え続けるが、その増え方がだんだん緩やかになり、最終的に一定値(終端速度)に落ち着く。

下のシミュレーションで \(m\) と \(k\) のスライダーを動かしてみよう。v-t グラフの「自由落下(破線の傾き \(g\))」「3 段階の加速減衰」「終端速度への収束」が同時に見える。

🧮 計算例:終端速度の計算

条件:質量 \(m = 0.0050\) kg の雨粒が空気中を落下する。抵抗力の比例定数 \(k = 0.010\) N·s/m。\(g = 9.8\) m/s² とする。

終端速度では \(mg = kv_f\) なので

$$ v_f = \frac{mg}{k} = \frac{0.0050 \times 9.8}{0.010} = \frac{0.049}{0.010} = 4.9 \text{ m/s} $$

もし空気抵抗がなく 1000 m を自由落下したなら \(v = \sqrt{2 \times 9.8 \times 1000} \fallingdotseq 140\) m/s になるが、実際は終端速度 4.9 m/s で済む。

答え:終端速度 \(4.9\) m/s(約 18 km/h)。空気抵抗なしの場合の約 \(1/29\) に抑えられる。

🔬 v-t グラフの形を数式で理解する(発展)

運動方程式 \(ma = mg - kv\) において,\(a = \dfrac{dv}{dt}\) とおくと \(\;m\dfrac{dv}{dt} = mg - kv\)

これを変形して変数分離を行うと:

\(\displaystyle \frac{m}{mg - kv}\,dv = dt\)

両辺を積分して(初速度 \(v(0)=0\) とする):

\(\displaystyle \int \frac{m}{mg - kv}\,dv = \int dt\)

\(\displaystyle -\frac{m}{k} \log|mg - kv| = t + C \quad (\text{\(C\) は積分定数})\)

\(t=0\) のとき \(v=0\) より,\(C = -\dfrac{m}{k} \log(mg)\)

\(\displaystyle -\frac{m}{k} \log\frac{mg - kv}{mg} = t \;\Rightarrow\; \log\left(1 - \frac{k}{mg}v\right) = -\frac{k}{m}t\)

対数の定義より:

\(\displaystyle 1 - \frac{k}{mg}v = e^{-\frac{k}{m}t} \;\Rightarrow\; v = \frac{mg}{k}\!\left(1 - e^{-\frac{k}{m}t}\right)\)

ここで,\(v_{\mathrm{f}} = \dfrac{mg}{k}\),\(\tau = \dfrac{m}{k}\) とおくと:

\(\displaystyle v(t) = v_{\mathrm{f}}\!\left(1 - e^{-\frac{t}{\tau}}\right)\)

この式から,\(t \to \infty\) のとき \(v \to v_{\mathrm{f}}\) となり,速度が終端速度に収束することが数学的にも確認できる。

空気抵抗 \(R = kv\) を受けて落下する物体の終端速度 \(v_f\) を求める式として正しいものは?
\(v_f = \frac{mg}{k}\)
\(v_f = \frac{k}{mg}\)
\(v_f = \sqrt{\frac{mg}{k}}\)
終端速度では \(mg = kv_f\) がつりあうので \(v_f = \frac{mg}{k}\) です。\(\sqrt{}\) が付くのは \(R = kv^2\) の場合(速度の2乗に比例する抵抗)です。問題文の抵抗力の形に注目するのが入試のポイントです。

🎯 5. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:モンキーハンティング 🐒

A さんが木の上の猿をめがけてみかんを投げ,同時に猿が木から自由落下したとする。 投げる速さとは関係なく,初速度 \(\vec{v}_{\mathrm{0}}\) が猿の方向を向いていれば必ずキャッチできる(先に地面に落ちない限り)。

直感的な説明:

数式で確認:猿の初期位置を \((x_{\mathrm{m}},\; y_{\mathrm{m}})\) とし,A さんは猿のいる点をまっすぐねらう向き(\(\tan\theta = y_{\mathrm{m}}/x_{\mathrm{m}}\))でみかんを投げる。みかんが猿の真下 \(x = x_{\mathrm{m}}\) に達する時刻は \(t^* = \dfrac{x_{\mathrm{m}}}{v_{\mathrm{0}} \cos\theta}\)。このとき両者の高さは

\(y_{\text{みかん}} = \underbrace{x_{\mathrm{m}} \tan\theta}_{=\, y_{\mathrm{m}}} - \tfrac{1}{2}g\,t^{*2} = y_{\mathrm{m}} - \tfrac{1}{2}g\,t^{*2}\), \(\quad y_{\text{猿}} = y_{\mathrm{m}} - \tfrac{1}{2}g\,t^{*2}\)

したがって \(y_{\text{みかん}} = y_{\text{猿}}\)重力による落下量 \(\tfrac{1}{2}gt^2\) が共通なのが核心だ。

🎯 ② 頻出テーマ:斜方投射の最大到達距離

水平到達距離 \(R = \dfrac{v_0^2\sin 2\theta}{g}\) が最大になるのは \(\theta = 45°\) のとき。仰角 \(\theta\) と \(90° - \theta\) は \(\sin 2\theta\) が等しいため飛距離も等しい(補角関係)。入試では「斜面上への斜方投射」「同じ位置に着地する 2 つの角度」を求める問題も頻出する。

🧮 ③ 典型問題:崖からの水平投射

高さ \(h\) の崖から速さ \(v_0\) で水平に投射する。

【立式】投げ出した点を原点とし,水平方向に \(x\) 軸,鉛直下向きに \(y\) 軸をとる。

落下時間:鉛直方向は自由落下なので \(y = \tfrac{1}{2}gt^2\)。\(y = h\) を代入して

$$ h = \tfrac{1}{2}gt^2 \quad \therefore\ t = \sqrt{\tfrac{2h}{g}} $$

水平到達距離:水平方向は等速直線運動なので \(x = v_0 t\)。上の \(t\) を代入して

$$ x = v_0\sqrt{\tfrac{2h}{g}} $$

着地時の速さ:\(v_x = v_0\),\(v_y = gt = \sqrt{2gh}\) より

$$ v = \sqrt{v_x^2 + v_y^2} = \sqrt{v_0^2 + 2gh} $$

着地角度:\(\tan\alpha = v_y/v_x = \sqrt{2gh}/v_0\)

🧮 ④ 典型問題:斜方投射の最高点・滞空時間

初速 \(v_0\),仰角 \(\theta\) で投射。求めたい量は以下の 3 つ:

【最高点 \(t_H,\, H\)】最高点では鉛直方向の速度が 0 になる。\(v_y = v_0\sin\theta - gt = 0\) より

$$ t_H = \frac{v_0\sin\theta}{g} $$

これを \(y\) の式に代入して最高点の高さは

$$ H = v_0\sin\theta \cdot t_H - \tfrac{1}{2}g\,t_H^{\,2} = \frac{v_0^2\sin^2\theta}{2g} $$

【滞空時間 \(T\)】対称性より、投射から着地までの時間は最高点到達時間の 2 倍:

$$ T = 2\,t_H = \frac{2v_0\sin\theta}{g} $$

【水平到達距離 \(R\)】\(x = v_0\cos\theta \cdot T\) に上の \(T\) を代入して

$$ R = v_0\cos\theta \cdot \tfrac{2v_0\sin\theta}{g} = \frac{v_0^2\sin 2\theta}{g} $$

🔑 まとめ