物理 > 第1編 力と運動 > 第2章 剛体

② 剛体にはたらく力の合力と重心

🔀 1. 平行でない2力の合力

「剛体にはたらく2力を,1つの力にまとめられる?」——作用線の交点を利用した合力の求め方を学ぼう。

棒の異なる位置に2つの力が斜めにはたらいている。合力の作用点はどうやって見つける?
2力の作用線の交点まで力を移動して合成する
2力の作用点の中点が合力の作用点
大きい方の力の作用点が合力の作用点
剛体にはたらく力は作用線上を自由に移動できるので、2力の作用線が交わる点まで移動させ、そこで平行四辺形の法則で合成します。中点になるとは限りません。

剛体にはたらく力の合力

質点にはたらく複数の力の合力を考えたように,1つの剛体に複数の力がはたらく場合も, 並進運動や回転運動に対する効果が同じとなるような1つの力として, 合力を考えることができる。

作用線の交点を使った合成

\(\vec{F}_{\mathrm{1}}\),\(\vec{F}_{\mathrm{2}}\) が平行でない場合, これら2力をそれぞれの作用線の交点まで移動して, 平行四辺形の法則によって合成すると,合力 \(\vec{F}\) が得られる。

剛体にはたらく力は作用線上で自由に移動できるため, 2力の作用線が交わる点まで各力を滑らせることで, 通常のベクトルの合成と同じ方法で合力を求められる。

$$ \vec{F} = \vec{F}_1 + \vec{F}_2 \quad (\text{作用線の交点で平行四辺形の法則}) $$
\(\vec{F}\):合力
\(\vec{F}_1\), \(\vec{F}_2\):剛体にはたらく2力
作用線上で力を移動させてから合成する
📌 ポイント

平行でない2力の合力は,作用線の交点に2力を移動させて, 平行四辺形の法則で合成する。 合力の作用線は,この交点を通る。

🏗️ 豆知識:クレーンと力の合成

建設現場のクレーンでは、ワイヤーの張力と重力という「平行でない力」の合力を考える必要があります。2本のワイヤーで吊る場合、ワイヤーの角度が広がるほど各ワイヤーにかかる張力は大きくなります。角度が120度を超えると各ワイヤーの張力が荷重より大きくなり危険です。

平行でない2力を合成するとき、合力の大きさは2力の大きさの和に等しい?
常に等しい
常に和より大きい
角度によって変わる(一般に和とは等しくない)
平行四辺形の法則により、合力の大きさは2力のなす角に依存します。単純な足し算になるのは2力が同じ向き(平行・同方向)のときだけです。

⬆️ 2. 平行な2力の合力

「2力が平行だと作用線が交わらない?」——Card 1では作用線が交わる場合を扱った。ここでは,作用線が平行な場合を考えよう。日常のシーソーや天秤もこのケースである。

天秤棒の両端に異なる重さの荷物を吊るす。支点は重い方に近い位置?遠い位置?
重い方から遠い位置
重い方に近い位置
常に棒の真ん中
つりあうには「重さ \(\times\) 距離」が等しい必要があります。重い荷物のモーメントを小さくするには距離を短くする、つまり支点を重い方に近づけます。これが「逆比で内分」の日常例です。

平行で同じ向きの2力の合力

\(\vec{F}_{\mathrm{1}}\),\(\vec{F}_{\mathrm{2}}\) が平行で同じ向きの場合の合力 \(\vec{F}\) を考える。

合力 \(\vec{F}\) の大きさは \(F_{\mathrm{1}} + F_{\mathrm{2}}\), 向きは \(\vec{F}_{\mathrm{1}}\),\(\vec{F}_{\mathrm{2}}\) と同じ向きで,同一作用線上にある。 また,合力 \(\vec{F}\) の作用線は,線分 AB を力の大きさの逆比 \(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\) に内分する点 O を通る

\(F = F_{\mathrm{1}} + F_{\mathrm{2}} \qquad l_{\mathrm{1}} : l_{\mathrm{2}} = \)\(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\)
\(F\):合力の大きさ(同じ向き)
\(l_{\mathrm{1}}\),\(l_{\mathrm{2}}\):点 O から各力の作用線までの距離
点 O は線分 AB を \(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\) に内分する位置
🧮 計算例:平行な2力の合力の位置

条件:棒の点 A に下向き 60 N、点 B(A から 0.80 m)に下向き 40 N の平行な力がはたらいている。合力の大きさと位置を求める。

同じ向きの平行な力なので、合力の大きさは

$$ F = F_1 + F_2 = 60 + 40 = 100 \text{ N} $$

合力の作用線は AB を \(F_2 : F_1 = 40 : 60 = 2 : 3\) に内分する点 O を通る。A から O までの距離 \(l_1\) は

$$ l_1 = \frac{2}{2+3} \times 0.80 = \frac{2}{5} \times 0.80 = 0.32 \text{ m} $$

検算:A まわりのモーメント \(100 \times 0.32 = 32\) N·m、B の力のモーメント \(40 \times 0.80 = 32\) N·m で一致。

答え:合力は下向き \(100\) N、A から \(0.32\) m(大きい力の方に寄る)。

❓ なぜ逆比になるのか(モーメントのつりあい)

点 O のまわりの力のモーメントの和について

$$ F_{\mathrm{1}} \cdot l_{\mathrm{1}} - F_{\mathrm{2}} \cdot l_{\mathrm{2}} = 0 $$

であるから,点 O は \(l_{\mathrm{1}} : l_{\mathrm{2}} = F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\) となる位置にある。

平行で逆向きの2力の合力

\(\vec{F}_{\mathrm{1}}\),\(\vec{F}_{\mathrm{2}}\) が平行で逆向きの場合の合力 \(\vec{F}\) を考える。 ただし,\(F_{\mathrm{1}} \gt F_{\mathrm{2}}\) とする。

合力 \(\vec{F}\) の大きさは \(F_{\mathrm{1}} - F_{\mathrm{2}}\), 向きは大きい方(\(\vec{F}_{\mathrm{1}}\))と同じ向きで,同一作用線上にある。 また,合力 \(\vec{F}\) の作用線は,線分 AB を力の大きさの逆比 \(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\) に外分する点 O を通る。

\(F = F_{\mathrm{1}} - F_{\mathrm{2}} \qquad l_{\mathrm{1}} : l_{\mathrm{2}} = \)\(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}} \text{(外分)}\)
\(F\):合力の大きさ(逆向きの場合)
点 O は線分 AB を \(F_{\mathrm{2}} : F_{\mathrm{1}}\) に外分する位置
📌 ポイント

平行な2力の合力の作用点は,力の大きさの逆比で決まる。 同じ向きなら内分,逆向きなら外分する位置を通る。

点Aに 3N、点Bに 1N の平行・同方向の力がはたらく。合力の作用点はどこ?
ABを 1:3 に内分する点(Aに近い)
ABを 3:1 に内分する点(Bに近い)
ABの中点
合力の作用点は力の大きさの「逆比」で内分します。\(F_A : F_B = 3 : 1\) なので逆比 \(1 : 3\) で内分、つまり大きい力(A)に近い位置です。「大きい力の方に寄る」と覚えましょう。

🔄 3. 偶力

「大きさが等しく,平行で逆向きの2力は合成できない?」——偶力という特別な力の組み合わせを学ぼう。

蛇口のハンドルを回すとき、合力はゼロなのに蛇口は回る。なぜ?
合力ゼロでも回転させる効果(偶力)が残るから
実は合力はゼロではないから
摩擦力のおかげで回転するから
大きさが等しく逆向きの平行な2力(偶力)は合力がゼロですが、回転させるモーメントは打ち消しあわずに残ります。偶力は1つの力に合成できない特別な力の組です。

偶力とは

大きさは等しいが,平行で逆向きの2力 \(\vec{F}\),\(-\vec{F}\) が剛体に加わっている場合には, 線分 AB を \(F : F = 1 : 1\) に外分する点は存在しない。 したがって,この2力を1つの力に合成することはできない。

このような場合,この2力を1対のものと考えて偶力(couple)という。 偶力は1つの力に合成できない

偶力のモーメント

偶力の作用線間の距離を \(l\) とすると, どの点のまわりの力のモーメントを考えても,その和は

\(M = \)\(Fl\)
\(M\)〔N·m〕:偶力のモーメント
\(F\)〔N〕:偶力を構成する力の大きさ
\(l\)〔m〕:2力の作用線間の距離

偶力は,剛体を回転させるはたらきをもつが, 剛体を移動(並進運動)させるはたらきはもたない。

🧮 計算例:蛇口のハンドルの偶力モーメント

条件:蛇口のハンドル(直径 0.060 m)の両端に、互いに逆向きで大きさ 25 N の力を加える。

2力の作用線間の距離は \(l = 0.060\) m。偶力のモーメントは

$$ M = Fl = 25 \times 0.060 = 1.5 \text{ N·m} $$

基準点をどこにとっても同じ値。例えば左端から \(x = 0.020\) m の点まわりで確認すると

$$ M = 25 \times 0.020 + 25 \times (0.060 - 0.020) = 0.50 + 1.0 = 1.5 \text{ N·m} $$

答え:偶力のモーメントは \(1.5\) N·m(基準点によらず一定)。

📐 偶力のモーメントが点の位置によらないことの証明

偶力の作用線間の距離を \(l\),任意の点 C から一方の作用線までの距離を \(x\) とする。 点 C のまわりの力のモーメントの和は

$$ Fx + F(l - x) = Fl $$

\(x\)(C の位置)によらず,モーメントの和は常に \(Fl\) となる。

📌 ポイント

偶力のモーメント \(M = Fl\) は,基準点をどこにとっても同じ値になる。 偶力は回転の効果のみをもち,並進運動の効果はない。

偶力のモーメントの大きさ \(M\) を表す式はどれ?(\(F\) は力の大きさ、\(l\) は2力の間隔)
\(M = 2Fl\)
\(M = Fl\)(基準点によらず一定)
\(M = \frac{Fl}{2}\)
偶力のモーメントは \(M = Fl\) で、基準点をどこにとっても値が同じです。基準点を位置 \(x\) にとると \(Fx + F(l-x) = Fl\) となり、\(x\) が消えることから示せます。

🎯 4. 重心の定義と計算

「物体をどこで支えればつりあう?」——これまで学んだ平行な力の合力の考え方を使えば,物体の各部分にはたらく重力を1つの力にまとめることができる。その合力の作用点が重心である。

質量 1 kg と 3 kg のおもりを軽い棒の両端につけた。棒を指1本で水平に支えるには、どこを持つ?
棒の真ん中
1 kg 側に寄った位置
3 kg 側に寄った位置
重心は質量の重みづけ平均の位置にあるので、質量が大きい方に偏ります。この場合、棒の長さを \(L\) とすると 3 kg 側の端から \(\frac{L}{4}\) の位置(3 kg に近い)が重心です。

🎯 重心とは

物体を多数の小さな部分に分けて考えるとき,各部分には鉛直下向きの重力が作用する。 これらの力の総和が物体にはたらく重力となり, この合力の作用点を重心(center of gravity)という。

物体の各部分に作用する重力は,物体全体を代表する一点, すなわち重心に作用するものとして扱うことができる。 物体の姿勢を変えても,重心は常に物体の同じ点を通る

🧮 重心の座標(2物体の場合)

軽い棒で結ばれた小物体 A,B の重心を考える。 物体 A,B にそれぞれ大きさが \(m_{\mathrm{1}} g\),\(m_{\mathrm{2}} g\) の 平行な重力がはたらく(\(g\) は重力加速度の大きさ)。

この2力の合力の作用点は,線分 AB を力の大きさの逆比 \(m_{\mathrm{2}} : m_{\mathrm{1}}\) に内分する点 G であり, これが重心である。座標を用いると,

\(x_{\mathrm{G}} = \frac{m_{\mathrm{1}} x_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} x_{\mathrm{2}}}{m_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}}} \qquad y_{\mathrm{G}} = \)\(\frac{m_{\mathrm{1}} y_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} y_{\mathrm{2}}}{m_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}}}\)
\(x_{\mathrm{G}}\),\(y_{\mathrm{G}}\)〔m〕:重心の座標
\(m_{\mathrm{1}}\),\(m_{\mathrm{2}}\)〔kg〕:各物体の質量
\(x_{\mathrm{1}}\),\(y_{\mathrm{1}}\),\(x_{\mathrm{2}}\),\(y_{\mathrm{2}}\)〔m〕:各物体の位置

1次元(直線上)の場合は \(l_{\mathrm{1}} : l_{\mathrm{2}} = m_{\mathrm{2}} : m_{\mathrm{1}}\) に内分。 xy 平面上では,x 座標・y 座標それぞれに同じ式を適用すればよい。

🧮 計算例:2物体の重心の座標

条件:質量 3.0 kg の物体 A が座標 (1.0, 2.0) m に、質量 1.0 kg の物体 B が座標 (5.0, 6.0) m にある。

x 方向の重心座標は

$$ x_G = \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2} = \frac{3.0 \times 1.0 + 1.0 \times 5.0}{3.0 + 1.0} = \frac{3.0 + 5.0}{4.0} = 2.0 \text{ m} $$

y 方向の重心座標は

$$ y_G = \frac{3.0 \times 2.0 + 1.0 \times 6.0}{4.0} = \frac{6.0 + 6.0}{4.0} = 3.0 \text{ m} $$

答え:重心は \((2.0,\; 3.0)\) m。質量の大きい A に寄っている。

📐 3つ以上の物体・一般の剛体

3つ以上の小物体や,一般の剛体の重心の座標を求めるときは, 2物体の重心を求める操作をくり返せばよい。

$$ x_{\mathrm{G}} = \frac{m_{\mathrm{1}} x_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} x_{\mathrm{2}} + \cdots}{m_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} + \cdots} \qquad y_{\mathrm{G}} = \frac{m_{\mathrm{1}} y_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} y_{\mathrm{2}} + \cdots}{m_{\mathrm{1}} + m_{\mathrm{2}} + \cdots} $$
原点に質量 \(m_1\)、位置 \(x\) に質量 \(m_2\) があるとき、重心の位置 \(x_G\) はどれ?
\(x_G = \frac{x}{2}\)
\(x_G = \frac{m_2 x}{m_1 + m_2}\)
\(x_G = \frac{m_1 x}{m_1 + m_2}\)
重心は \(x_G = \frac{m_1 \cdot 0 + m_2 \cdot x}{m_1 + m_2} = \frac{m_2 x}{m_1 + m_2}\) です。\(\frac{x}{2}\) と答えた人は質量を無視しています。\(m_1\) と \(m_2\) を入れ替えた選択肢も要注意です。

🔬 5. 重心の求め方と性質

「実際に重心はどうやって求める?」——実験による求め方と,一様な物体の重心・重心の運動について学ぼう。

L字型の板の重心はどこにある?
板がない空間(物体の外)にあることもある
必ずL字の角の部分にある
必ず板の上(物体の内部)にある
L字型のような形状では、重心が物体の外側の空間に位置することがあります。ドーナツの重心が穴の中心にあるのと同じで、重心は必ずしも物体内部にあるとは限りません。

🔬 重心の位置の求め方(実験)

糸で物体を吊るすと,糸が引く力と重力がつりあうため, 重心は糸の延長線上にある。 2つの異なる点から物体を吊るし, それぞれの糸の延長線が交わる点が重心である。

📏 一様な物体の重心

一様な物体(密度が一定)の重心は,その物体の幾何学的な中心(図心)と一致する。

🔄 重心の運動

大きさのある物体の運動は回転を伴い,一見複雑に見えることがある。 しかし,物体の重心の動きに注目すると, 三角定規や木槌が回転しながら飛ぶ場合でも, 重心は放物線を描いて運動していることがわかる。

$$ \text{一様な物体の重心} = \text{幾何学的中心(図心)} $$
棒 → 中点、円板・球 → 中心
ドーナツ形 → 空洞の中心(物体の外にある場合もある)
📌 ポイント

重心は「質量の重みづけ平均」の位置にある。 質量が大きい物体の方が重心に近い。 xy 座標は x,y それぞれについて同じ式で計算する。

🤔 豆知識:「重心」と「重力の作用点」の関係

重心は「各部分にはたらく重力の合力の作用点」です。一様な物体では幾何学的な中心と一致しますが、密度が不均一な物体では重い部分に偏ります。やじろべえが倒れないのは、重心が支点の真下に来るように設計されているからです。

一様な三角形の板の重心はどこにある?
外接円の中心
内接円の中心
3本の中線の交点(重心は各中線を 2:1 に内分する)
一様な三角形の板の重心は3本の中線の交点にあり、各頂点から対辺の中点を結んだ線分を頂点側から 2:1 に内分します。外心や内心とは異なる点です。入試では三角形の重心の位置がよく問われます。

⚠️ 6. 傾きと転倒

「物体はいつ転倒する?」——重力の作用線と支点の位置関係が,安定性を決める。

細長い本と正方形に近い厚い辞書、横から軽く押したとき倒れやすいのはどっち?
辞書(重いから倒れやすい)
細長い本(重心が高く底面が狭いから)
同じ(質量は関係ない)
細長い物体は重心が高く底面が狭いため、少し傾けただけで重力の作用線が底面の端を越えてしまい、転倒しやすくなります。安定性は「高さと底面幅の比」で決まります。

📐 剛体の傾き

粗い水平面上に置かれた直方体の上端を指で水平に押すとき, 押す力が大きくなると物体は傾き始める。 垂直抗力と摩擦力の合力(抗力)の作用点が, 物体の下面の角(支点)に達したときが傾き始める境界である。 それ以上押すと,物体は支点のまわりに回転して傾く。

なお,傾く前に押す力が最大摩擦力を超えた場合は, 物体は傾かずに水平面上をすべり始める。

⚠️ 剛体の転倒

少し傾けた直方体が,もとの状態に戻るか,転倒するかは, 重力の作用線回転の支点をこえるかどうかで決まる。

📌 ポイント

重力の作用線が,回転軸(支点)をこえると転倒する。 やじろべえは重心が支点より下にあるため安定し, 重心が支点より上にあると不安定になる。

$$ \text{転倒条件:} \tan\theta > \frac{a}{b} \quad (\text{幅 } a, \text{ 高さ } b) $$
重力の作用線が支点を越えると転倒する
\(\theta\):傾斜角、\(a/b\):直方体の幅と高さの比
🗼 豆知識:ピサの斜塔はなぜ倒れない?

ピサの斜塔は約5.5度傾いていますが、重力の作用線が底面(支持面)の端を越えていないため転倒しません。1990年から2001年にかけて行われた修復工事では、北側の地盤から土を除去して傾斜を約0.5度戻しました。現在の傾斜角では、重力の作用線は底面の中心から約2.3 m外側にありますが、まだ底面内に収まっています。

📐 発展:微積分で見る重心の計算

連続的な質量分布をもつ物体の重心は積分で求めます。

$$ x_G = \frac{\int x\,dm}{\int dm} = \frac{\int x\,\rho(x)\,dV}{\int \rho(x)\,dV} $$

一様な密度の三角形板なら重心は「各頂点から対辺の中点を結ぶ線(中線)の交点」に位置し、これは各頂点座標の平均 \(\left(\frac{x_1+x_2+x_3}{3},\, \frac{y_1+y_2+y_3}{3}\right)\) で求められます。

幅 \(a\)、高さ \(b\) の一様な直方体が傾き角 \(\theta\) で転倒する条件はどれ?
\(\tan\theta > \frac{b}{a}\)
\(\tan\theta > \frac{a+b}{2}\)
\(\tan\theta > \frac{a}{b}\)
転倒は重力の作用線が支点を越えるときに起こります。幾何学的に、傾き角が \(\tan\theta > \frac{a}{b}\) を満たすと転倒します。幅 \(a\) が小さく高さ \(b\) が大きい(細長い)ほど小さな角度で倒れます。

🎯 7. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:偶力と転倒条件

偶力(大きさが等しく向きが反対の2力)は物体を回転させますが、並進させません。入試では「直方体が斜面上で滑るか倒れるか」を判別する問題が出ます。重心からの垂線が底面(支持面)の外に出ると転倒します。

🧮 ② 典型問題:斜面上の直方体の滑り vs 転倒

幅 \(a\)、高さ \(b\) の直方体が角度 \(\theta\) の粗い斜面(静止摩擦係数 \(\mu\))に置かれている。

滑り出す条件:\(\tan\theta \gt \mu\)

転倒する条件:重力の作用線が底面の角を越える → \(\tan\theta \gt a/b\)

\(\mu \lt a/b\) なら滑りが先に起きる(転倒前に滑る)。\(\mu \gt a/b\) なら転倒が先(滑る前に倒れる)。

📐 ③ 導出:重心の公式

質量 \(m_1\)(位置 \(x_1\))と \(m_2\)(位置 \(x_2\))の物体の重心を求める。

【立式】重心 \(x_G\) は重力の合力の作用点であり、重心まわりのモーメントのつりあいから:

$ m_1 g(x_G - x_1) = m_2 g(x_2 - x_G) $

両辺の \(g\) を約分して展開すると:

$ m_1 x_G - m_1 x_1 = m_2 x_2 - m_2 x_G $

\(x_G\) の項を左辺にまとめると:

$ (m_1 + m_2)x_G = m_1 x_1 + m_2 x_2 $

したがって:

$ x_G = \frac{m_1 x_1 + m_2 x_2}{m_1 + m_2} $

これは「質量による重みつき平均」であり、3個以上の物体にも自然に拡張できる。

🔑 まとめ