物理 > 第1編 力と運動 > 第4章 円運動と万有引力

① 等速円運動

🔄 1. 等速円運動の基本量

「一定の速さで円周上を回る運動」——速さは一定でも速度(向き)は常に変化している

時計の秒針は一定の速さで回っている。秒針の先端の「速度」は一定といえる?
速さも向きも一定だから、速度は一定
速さは一定だが向きが常に変わるので、速度は一定ではない
速さも向きも刻々と変わっている
速度はベクトル量なので「大きさ(速さ)」と「向き」の両方が決まって初めて一定といえます。秒針の先端は速さこそ一定ですが、進む向き(接線方向)が絶えず変わっているため、速度は一定ではありません。向きが変わる=加速度がある、というのが等速円運動の核心です。

角速度と周期・回転数

等速円運動で物体が単位時間あたりに回転する角度を角速度 \(\omega\)〔rad/s〕といいます。1周(\(2\pi\) rad)にかかる時間を周期 \(T\)〔s〕といいます。

また、円周上の速さ \(v\) と角速度の間には \(v = r\omega\) の関係があります。

\(\omega = \frac{2\pi}{T} = \)\(\frac{v}{r}\)
\(\omega\)〔rad/s〕:角速度
\(T\)〔s〕:周期
\(v\)〔m/s〕:速さ(\(v = r\omega\))
\(r\)〔m〕:半径

1秒当たりの回転数を回転数(回転の周波数)\(n\)〔Hz〕といい、周期の逆数です。

$$ n = \frac{1}{T}, \quad \omega = 2\pi n $$
\(n\)〔Hz〕:回転数(1秒あたりの回転回数)

基本量の関係

🧮 計算例:秒針の先端の速さと角速度

条件:時計の秒針の長さ(半径)が 0.15 m。周期 \(T = 60\) s。

角速度は

$$ \omega = \frac{2\pi}{T} = \frac{2\pi}{60} \fallingdotseq 0.105 \text{ rad/s} $$

先端の速さは

$$ v = r\omega = 0.15 \times 0.105 \fallingdotseq 0.016 \text{ m/s} \fallingdotseq 1.6 \text{ cm/s} $$

回転数は \(n = 1/T = 1/60 \fallingdotseq 0.017\) Hz(1分に1回転)。

答え:角速度 \(\omega \fallingdotseq 0.10\) rad/s、先端の速さ約 \(1.6\) cm/s。

半径 \(r\) の等速円運動で速さ \(v\) を2倍にし、半径はそのままにした。周期 \(T\) はどう変わる?
2倍になる
変わらない
\(\frac{1}{2}\) 倍になる
4倍になる
周期は \(T = \frac{2\pi r}{v}\) です。半径 \(r\) が一定のまま速さ \(v\) を2倍にすると、\(T\) は \(\frac{1}{2}\) 倍になります。速く回れば1周にかかる時間は短くなる、と直感的にも合います。

🎯 2. 向心加速度と向心力

Card 1で周期や角速度を学んだが、速さが一定でも速度ベクトルの向きが絶えず変わっている。その向きの変化が加速度を生み出す。これが向心加速度である。

カーブを曲がる車の中で、体が外側に押されるように感じる。この「外向きの力」の正体は?
体が直進しようとするのにシートが曲がるだけで、外向きの実在の力はない
タイヤの摩擦力が外向きにはたらいている
空気が体を外側に押している
地上(慣性系)で見ると、体には慣性で直進しようとする性質があり、シートとの摩擦力が向心力として内側に引っ張っています。外向きの力が実在するのではなく、向心力が足りない分だけ体が外にズレようとして「押される」と感じるのです。
\(a = \frac{v^2}{r} = \)\(r\omega^2\)
\(a\)〔m/s²〕:向心加速度(中心向き)

この加速度を生じさせる力を向心力といいます。

\(F = m\frac{v^2}{r} = \)\(mr\omega^2\)
\(F\)〔N〕:向心力(中心向き)
📐 公式の導出:向心加速度 \(a = v^2/r\)

半径 \(r\) の円周上を速さ \(v\) で等速円運動する物体を考える。 微小時間 \(\Delta t\) の間に物体は角度 \(\Delta\theta = \omega\Delta t\) だけ進む。

ステップ 1:速度ベクトルの変化

速度ベクトル \(\vec{v}_1\) と \(\vec{v}_2\) の大きさはともに \(v\) で等しい。 2つのベクトルのなす角も \(\Delta\theta\) である。 始点をそろえて描くと,\(\Delta\vec{v} = \vec{v}_2 - \vec{v}_1\) は 半径 \(v\) の扇形の弦にあたる。

ステップ 2:\(|\Delta\vec{v}|\) の近似

\(\Delta\theta\) が十分小さいとき,弦の長さ ≒ 弧の長さ なので

$$ |\Delta\vec{v}| \ fallingdotseq v \cdot \Delta\theta = v \cdot \omega \Delta t $$

ステップ 3:加速度の大きさ

$$ a = \frac{|\Delta\vec{v}|}{\Delta t} = v\omega = v \cdot \frac{v}{r} = \frac{v^2}{r} $$

\(\omega = v/r\) を代入すれば \(a = r\omega^2\) とも表せる。 向きは \(\Delta\theta \to 0\) の極限で円の中心を向く。

向心加速度の導出(速度ベクトルの変化)

⚠️ 要注意!

向心力は「新しい種類の力」ではなく、糸の張力・重力・垂直抗力・摩擦力などが向心力の役割を果たしている

🤔 豆知識:「遠心力は存在しない」は正確ではない

「遠心力は見かけの力だから存在しない」と言われるが、より正確には「慣性系(地上の観察者)では遠心力はなく、向心力だけが存在する。回転系(物体と一緒に回る観察者)では遠心力が現れる」。どちらの立場で見るかで力の描き方が変わるだけで、物理的な現象は同じ。

日常における向心力の正体

運動の例向心力の正体力の向き
糸につけたおもりを回す糸の張力糸に沿って中心へ
カーブを曲がる車タイヤと路面の摩擦力カーブの内側へ
ジェットコースターのループ頂点重力 + 垂直抗力下向き(中心方向)
人工衛星の軌道運動万有引力地球の中心へ
バケツの水を縦に回す重力 + 垂直抗力位置により変化
🧮 計算例:カーブを曲がる車の向心力

条件:質量 1200 kg の車が、半径 50 m のカーブを時速 54 km/h(= 15 m/s)で走行する。

向心加速度は

$$ a = \frac{v^2}{r} = \frac{15^2}{50} = \frac{225}{50} = 4.5 \text{ m/s}^2 $$

向心力は

$$ F = ma = 1200 \times 4.5 = 5400 \text{ N} = 5.4 \text{ kN} $$

この向心力はタイヤと路面の摩擦力が提供する。摩擦係数を \(\mu\) とすると \(\mu mg \geq F\) が必要なので

$$ \mu \geq \frac{F}{mg} = \frac{5400}{1200 \times 9.8} \fallingdotseq 0.46 $$

答え:向心加速度 \(4.5\) m/s²、向心力 \(5.4\) kN。滑らないためには摩擦係数が約 0.46 以上必要。

🎡 豆知識:円運動を解くコツとジェットコースター

中心向きを正に統一:円運動の運動方程式を立てるコツは、常に「円の中心向きを正」とすること。向心力の式 \(m\tfrac{v^2}{r} = F_{\text{合力}}\) の右辺には、中心向きの力を正、外向きの力を負として代入する。最上部では重力と垂直抗力が同じ向き(中心向き)か逆向きかを正しく判断しよう。

ジェットコースターのループ形状:実際のループは真円ではなくクロソイド曲線(らせん形)。真円だと最下部で遠心力が強すぎ、最上部で弱すぎて G の変化が激しくなるが、クロソイド曲線は曲率が滑らかに変化するため乗客が感じる力が急変せず快適。

📐 発展:微積分による向心加速度の導出

半径 \(r\) の等速円運動を、位置ベクトルで記述します。

$$ x = r\cos\omega t, \quad y = r\sin\omega t $$

時間で微分して速度を求めます。

$$ v_x = -r\omega\sin\omega t, \quad v_y = r\omega\cos\omega t $$

さらに微分して加速度を求めます。

$$ a_x = -r\omega^2\cos\omega t, \quad a_y = -r\omega^2\sin\omega t $$

加速度ベクトル \(\vec{a} = -\omega^2\vec{r}\) は常に中心を向き(求心方向)、大きさは \(r\omega^2 = v^2/r\) です。これが向心加速度の正体です。速度ベクトルと加速度ベクトルは常に直交するため、速さは変わらず向きだけが変化します。

等速円運動する物体の速さを2倍にし、半径を変えなかった。向心加速度はどう変わる?
変わらない
2倍
3倍
4倍
向心加速度は \(a = \frac{v^2}{r}\) です。\(r\) が一定のまま \(v\) を2倍にすると \(a\) は \(2^2 = 4\) 倍になります。速さの「2乗」に比例する点が入試でも頻出のポイントです。

🎯 3. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

円運動の典型問題

🧮 ① 典型問題:鉛直面内の円運動(最高点の条件)

質量 \(m\) の物体が半径 \(r\) の鉛直面内を回る。最高点で糸の張力 \(T \geq 0\) が必要。

【立式】最高点では重力 \(mg\) と張力 \(T\) がともに中心(下向き)を向く。円運動の運動方程式(中心向きを正)より:

$ \frac{mv^2_{\text{top}}}{r} = mg + T $

糸がたるまない条件 \(T \geq 0\) を代入すると:

$ \frac{mv^2_{\text{top}}}{r} \geq mg $

両辺を \(m\) で割り \(r\) を掛けると \(v^2_{\text{top}} \geq gr\)。したがって最高点での最小速度は \(v_{\text{top}} \geq \sqrt{gr}\)。

【最低点の速度】最低点から最高点までの高さの差は \(2r\)。エネルギー保存より:

$ \frac{1}{2}mv^2_{\text{bottom}} = \frac{1}{2}mv^2_{\text{top}} + mg(2r) $

臨界条件 \(v_{\text{top}} = \sqrt{gr}\) を代入して整理すると:

$ v^2_{\text{bottom}} = gr + 4gr = 5gr \quad \therefore\ v_{\text{bottom}} = \sqrt{5gr} $

🧮 ② 典型問題:水平面のカーブ(バンク角)

速さ \(v\) で半径 \(r\) のカーブを曲がる車。路面の傾斜角(バンク角)\(\theta\) で摩擦なしで曲がれる条件を求める。

鉛直方向:\(N\cos\theta = mg\)

水平方向(向心力):\(N\sin\theta = \frac{mv^2}{r}\)

2式を割り算して \(N\) を消去すると:

$ \tan\theta = \frac{v^2}{rg} $

🧮 ③ 典型問題:円錐振り子の周期

糸の長さ \(l\)、糸と鉛直方向のなす角 \(\theta\) の円錐振り子。

鉛直方向:\(T\cos\theta = mg\)

水平方向(向心力):\(T\sin\theta = m\omega^2 r = m\omega^2 l\sin\theta\)

よって \(T = m\omega^2 l\)。鉛直方向の式に代入して \(T\) を消去すると:

$ m\omega^2 l \cos\theta = mg \quad \therefore\ \omega^2 = \frac{g}{l\cos\theta} $

周期は \(\omega = 2\pi/T_{\text{周期}}\) より:

$ T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}} $

円運動の4タイプを練習しよう

水平面・鉛直ループ・円すい振り子・バンク角の4タイプを切り替えて、力の図と向心力条件を確認しよう。パラメータを変えて臨界条件を探れます。

🔑 まとめ