物理 > 第1編 力と運動 > 第4章 円運動と万有引力
「一定の速さで円周上を回る運動」——速さは一定でも速度(向き)は常に変化している。
等速円運動で物体が単位時間あたりに回転する角度を角速度 \(\omega\)〔rad/s〕といいます。1周(\(2\pi\) rad)にかかる時間を周期 \(T\)〔s〕といいます。
また、円周上の速さ \(v\) と角速度の間には \(v = r\omega\) の関係があります。
1秒当たりの回転数を回転数(回転の周波数)\(n\)〔Hz〕といい、周期の逆数です。
条件:時計の秒針の長さ(半径)が 0.15 m。周期 \(T = 60\) s。
角速度は
$$ \omega = \frac{2\pi}{T} = \frac{2\pi}{60} \fallingdotseq 0.105 \text{ rad/s} $$先端の速さは
$$ v = r\omega = 0.15 \times 0.105 \fallingdotseq 0.016 \text{ m/s} \fallingdotseq 1.6 \text{ cm/s} $$回転数は \(n = 1/T = 1/60 \fallingdotseq 0.017\) Hz(1分に1回転)。
答え:角速度 \(\omega \fallingdotseq 0.10\) rad/s、先端の速さ約 \(1.6\) cm/s。
Card 1で周期や角速度を学んだが、速さが一定でも速度ベクトルの向きが絶えず変わっている。その向きの変化が加速度を生み出す。これが向心加速度である。
この加速度を生じさせる力を向心力といいます。
半径 \(r\) の円周上を速さ \(v\) で等速円運動する物体を考える。 微小時間 \(\Delta t\) の間に物体は角度 \(\Delta\theta = \omega\Delta t\) だけ進む。
ステップ 1:速度ベクトルの変化
速度ベクトル \(\vec{v}_1\) と \(\vec{v}_2\) の大きさはともに \(v\) で等しい。 2つのベクトルのなす角も \(\Delta\theta\) である。 始点をそろえて描くと,\(\Delta\vec{v} = \vec{v}_2 - \vec{v}_1\) は 半径 \(v\) の扇形の弦にあたる。
ステップ 2:\(|\Delta\vec{v}|\) の近似
\(\Delta\theta\) が十分小さいとき,弦の長さ ≒ 弧の長さ なので
$$ |\Delta\vec{v}| \fallingdotseq v \cdot \Delta\theta = v \cdot \omega \Delta t $$
ステップ 3:加速度の大きさ
$$ a = \frac{|\Delta\vec{v}|}{\Delta t} = v\omega = v \cdot \frac{v}{r} = \frac{v^2}{r} $$
\(\omega = v/r\) を代入すれば \(a = r\omega^2\) とも表せる。 向きは \(\Delta\theta \to 0\) の極限で円の中心を向く。
向心力は「新しい種類の力」ではなく、糸の張力・重力・垂直抗力・摩擦力などが向心力の役割を果たしている。
「遠心力は見かけの力だから存在しない」と言われるが、より正確には「慣性系(地上の観察者)では遠心力はなく、向心力だけが存在する。回転系(物体と一緒に回る観察者)では遠心力が現れる」。どちらの立場で見るかで力の描き方が変わるだけで、物理的な現象は同じ。
| 運動の例 | 向心力の正体 | 力の向き |
|---|---|---|
| 糸につけたおもりを回す | 糸の張力 | 糸に沿って中心へ |
| カーブを曲がる車 | タイヤと路面の摩擦力 | カーブの内側へ |
| ジェットコースターのループ頂点 | 重力 + 垂直抗力 | 下向き(中心方向) |
| 人工衛星の軌道運動 | 万有引力 | 地球の中心へ |
| バケツの水を縦に回す | 重力 + 垂直抗力 | 位置により変化 |
条件:質量 1200 kg の車が、半径 50 m のカーブを時速 54 km/h(= 15 m/s)で走行する。
向心加速度は
$$ a = \frac{v^2}{r} = \frac{15^2}{50} = \frac{225}{50} = 4.5 \text{ m/s}^2 $$向心力は
$$ F = ma = 1200 \times 4.5 = 5400 \text{ N} = 5.4 \text{ kN} $$この向心力はタイヤと路面の摩擦力が提供する。摩擦係数を \(\mu\) とすると \(\mu mg \geq F\) が必要なので
$$ \mu \geq \frac{F}{mg} = \frac{5400}{1200 \times 9.8} \fallingdotseq 0.46 $$答え:向心加速度 \(4.5\) m/s²、向心力 \(5.4\) kN。滑らないためには摩擦係数が約 0.46 以上必要。
中心向きを正に統一:円運動の運動方程式を立てるコツは、常に「円の中心向きを正」とすること。向心力の式 \(m\tfrac{v^2}{r} = F_{\text{合力}}\) の右辺には、中心向きの力を正、外向きの力を負として代入する。最上部では重力と垂直抗力が同じ向き(中心向き)か逆向きかを正しく判断しよう。
ジェットコースターのループ形状:実際のループは真円ではなくクロソイド曲線(らせん形)。真円だと最下部で遠心力が強すぎ、最上部で弱すぎて G の変化が激しくなるが、クロソイド曲線は曲率が滑らかに変化するため乗客が感じる力が急変せず快適。
半径 \(r\) の等速円運動を、位置ベクトルで記述します。
$$ x = r\cos\omega t, \quad y = r\sin\omega t $$
時間で微分して速度を求めます。
$$ v_x = -r\omega\sin\omega t, \quad v_y = r\omega\cos\omega t $$
さらに微分して加速度を求めます。
$$ a_x = -r\omega^2\cos\omega t, \quad a_y = -r\omega^2\sin\omega t $$
加速度ベクトル \(\vec{a} = -\omega^2\vec{r}\) は常に中心を向き(求心方向)、大きさは \(r\omega^2 = v^2/r\) です。これが向心加速度の正体です。速度ベクトルと加速度ベクトルは常に直交するため、速さは変わらず向きだけが変化します。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
質量 \(m\) の物体が半径 \(r\) の鉛直面内を回る。最高点で糸の張力 \(T \geq 0\) が必要。
【立式】最高点では重力 \(mg\) と張力 \(T\) がともに中心(下向き)を向く。円運動の運動方程式(中心向きを正)より:
$ \frac{mv^2_{\text{top}}}{r} = mg + T $
糸がたるまない条件 \(T \geq 0\) を代入すると:
$ \frac{mv^2_{\text{top}}}{r} \geq mg $
両辺を \(m\) で割り \(r\) を掛けると \(v^2_{\text{top}} \geq gr\)。したがって最高点での最小速度は \(v_{\text{top}} \geq \sqrt{gr}\)。
【最低点の速度】最低点から最高点までの高さの差は \(2r\)。エネルギー保存より:
$ \frac{1}{2}mv^2_{\text{bottom}} = \frac{1}{2}mv^2_{\text{top}} + mg(2r) $
臨界条件 \(v_{\text{top}} = \sqrt{gr}\) を代入して整理すると:
$ v^2_{\text{bottom}} = gr + 4gr = 5gr \quad \therefore\ v_{\text{bottom}} = \sqrt{5gr} $
速さ \(v\) で半径 \(r\) のカーブを曲がる車。路面の傾斜角(バンク角)\(\theta\) で摩擦なしで曲がれる条件を求める。
鉛直方向:\(N\cos\theta = mg\)
水平方向(向心力):\(N\sin\theta = \frac{mv^2}{r}\)
2式を割り算して \(N\) を消去すると:
$ \tan\theta = \frac{v^2}{rg} $
糸の長さ \(l\)、糸と鉛直方向のなす角 \(\theta\) の円錐振り子。
鉛直方向:\(T\cos\theta = mg\)
水平方向(向心力):\(T\sin\theta = m\omega^2 r = m\omega^2 l\sin\theta\)
よって \(T = m\omega^2 l\)。鉛直方向の式に代入して \(T\) を消去すると:
$ m\omega^2 l \cos\theta = mg \quad \therefore\ \omega^2 = \frac{g}{l\cos\theta} $
周期は \(\omega = 2\pi/T_{\text{周期}}\) より:
$ T_{\text{周期}} = 2\pi\sqrt{\frac{l\cos\theta}{g}} $
水平面・鉛直ループ・円すい振り子・バンク角の4タイプを切り替えて、力の図と向心力条件を確認しよう。パラメータを変えて臨界条件を探れます。