物理 > 第2編 熱と気体 > 第1章 気体のエネルギーと状態変化

① 気体の法則

🫧 1. ボイルの法則

「温度が一定なら圧力と体積は反比例する」——気体の振る舞いを支配する基本法則を学ぶ。

お菓子の袋を山の上に持っていくとパンパンに膨らむのはなぜ?
山の上は暑いから
袋の中の空気が増えるから
山の上は気圧が低く、袋の中の空気が膨張するから
標高が上がると外の気圧が下がります。袋の中の空気は同じ量ですが、外の圧力が減った分だけ体積が増えて膨らみます。これがボイルの法則の身近な例です。

気体の圧力

気体の分子は容器の壁に衝突し,壁を押す力を及ぼす。 単位面積あたりの力の大きさを圧力(pressure)という。

\(p = \)\(\frac{F}{S}\)
\(p\)〔Pa〕:圧力
\(F\)〔N〕:面を垂直に押す力
\(S\)〔m²〕:面の面積

圧力の単位はパスカル(記号 Pa)で,1 Pa = 1 N/m² である。 大気圧は 1 気圧(atm)= 1.013 × 10⁵ Pa で,天気予報では hPa(ヘクトパスカル)が使われる。

🧮 計算例:面積 0.02 m² の面に 100 N の力がはたらくときの圧力

条件:力 \(F = 100\) N、面積 \(S = 0.02\) m²

$$ p = \frac{F}{S} = \frac{100}{0.02} = 5000 \text{ Pa} = 5.0 \times 10^3 \text{ Pa} $$

答え:\(p = 5.0 \times 10^3\) Pa(= 5.0 kPa)

ボイルの法則(温度一定)

温度を一定に保ったまま気体の体積を半分にすると、圧力は2倍になる。逆に体積を2倍にすれば圧力は半分になる。このように、温度一定のとき圧力と体積は反比例の関係にある。

\(pV = \)\(\text{一定}\ (\text{温度一定})\)
温度が一定のとき、気体の圧力 \(p\) と体積 \(V\) は反比例する
🧮 計算例:温度一定で体積 2.0 L → 0.5 L に圧縮したときの圧力

条件:初期圧力 \(p_1 = 1.0 \times 10^5\) Pa、初期体積 \(V_1 = 2.0\) L、最終体積 \(V_2 = 0.5\) L

ボイルの法則 \(p_1 V_1 = p_2 V_2\) より

$$ p_2 = \frac{p_1 V_1}{V_2} = \frac{1.0 \times 10^5 \times 2.0}{0.5} = 4.0 \times 10^5 \text{ Pa} $$

答え:\(p_2 = 4.0 \times 10^5\) Pa(体積が \(\frac{1}{4}\) になったので圧力は 4 倍)

p-V 図で体感するボイルの法則

温度スライダーで等温線を変化させ、グラフ上の点をドラッグして圧力と体積の反比例関係を確かめよう。右のピストンが体積に連動して動きます。

グラフ上の点をドラッグ/温度スライダーで等温線を変更

🧑‍🔬 豆知識:ロバート・ボイルと気体の研究

ボイルの法則は1662年にロバート・ボイルが発見しました。J字管に水銀を注ぎ、閉じ込めた空気の体積と圧力の関係を定量的に測定したのが最初の実験です。

🎈 豆知識:風船はなぜ高く上がると割れるのか

上空は気圧が低いため、ボイルの法則 \(pV = \text{一定}\) により風船内の気体の体積が膨張します。風船のゴムが伸びきる限界を超えると破裂します。気象観測用のゾンデ気球は直径1〜2mですが、高度30kmでは直径10m以上に膨張してから破裂し、パラシュートで降下します。

温度一定で気体の体積を3倍にすると、圧力はどうなる?
\(\frac{1}{3}\) 倍になる
3倍になる
変わらない
ボイルの法則 \(pV = \text{一定}\) より、体積が3倍になると圧力は \(\frac{1}{3}\) 倍になります。反比例の関係です。

🌡️ 2. シャルルの法則とグラフ

ボイルの法則は「温度一定」での話だった。では温度を変えたら?——シャルルの法則で体積と温度の比例関係を学び、3つの法則を比較しよう。

温度が上がるとタイヤの空気圧が上がるのはなぜ?
空気の量が増えるから
温度が上がると気体の分子運動が激しくなるから
タイヤのゴムが膨張するから
温度が上がると気体分子の運動エネルギーが増し、壁への衝突が激しくなるため圧力が上がります。タイヤは体積がほぼ一定なので、温度上昇が直接圧力上昇につながります。

シャルルの法則(圧力一定)

圧力を一定に保ったまま気体を加熱すると体積が膨張する。絶対温度を2倍にすれば体積も2倍になる。このように、圧力一定のとき体積は絶対温度に比例する。なお、絶対温度 \(T\)〔K〕はセルシウス温度 \(t\)〔℃〕を用いて \(T = t + 273\) で換算される。

\(\frac{V}{T} = \)\(\text{一定}\ (\text{圧力一定})\)
圧力が一定のとき、気体の体積 \(V\) は絶対温度 \(T\) に比例する
🧮 計算例:27℃ で 3.0 L の気体を 127℃ に加熱したときの体積(圧力一定)

条件:\(T_1 = 27 + 273 = 300\) K、\(V_1 = 3.0\) L、\(T_2 = 127 + 273 = 400\) K

シャルルの法則 \(\dfrac{V_1}{T_1} = \dfrac{V_2}{T_2}\) より

$$ V_2 = V_1 \times \frac{T_2}{T_1} = 3.0 \times \frac{400}{300} = 4.0 \text{ L} $$

答え:\(V_2 = 4.0\) L

3つの法則の比較

法則 一定の条件 関係 p-Vグラフ
ボイルの法則 温度 \(T\) 一定 \(pV = \text{一定}\)(反比例) 双曲線
シャルルの法則 圧力 \(p\) 一定 \(V/T = \text{一定}\)(比例) 水平線
ボイル=シャルル なし(統合) \(pV/T = \text{一定}\)

p-V, V-T, p-T グラフの概形

🧑‍🔬 豆知識:シャルルと絶対零度

シャルルの法則は1787年にジャック・シャルルが発見しました。V-Tグラフを外挿すると体積がゼロになる温度(-273℃)が存在し、これが絶対零度の概念につながりました。

圧力一定のとき、気体の体積 \(V\) と絶対温度 \(T\) の関係として正しいものを選べ。
\(V\) は \(T\) に反比例する
\(V\) は \(T\) に比例する
\(V\) は \(T^2\) に比例する
シャルルの法則より、圧力一定のとき \(V/T = \text{一定}\) なので、体積は絶対温度に比例します。温度が2倍になれば体積も2倍です。

📐 3. 理想気体の状態方程式

ボイルの法則は「温度一定」、シャルルの法則は「圧力一定」が前提だった。しかし現実の気体では温度も圧力も同時に変わることが多い。両方の法則を1つにまとめ、さらに気体の量(物質量)も含めた「万能の式」を導こう。

注射器の先をふさいでピストンを押すと、中の空気はどうなる?
体積が減り圧力が上がる
体積も圧力も変わらない
密閉した空気を押し込むと体積が減りますが、空気の量は同じなので圧力が上がります。pV = nRT で温度と物質量が一定なら、Vが減ればpが増えます。

ボイル・シャルルの法則

\(\frac{pV}{T} = \)\(\text{一定}\)
気体の量が一定のとき、\(pV/T\) は常に一定

理想気体の状態方程式

ここで「一定」の値が気体の量(物質量 \(n\))に比例することが実験的にわかっている。そこで比例定数を \(R\)(気体定数)とおくと、圧力・体積・温度・物質量をすべて結ぶ1本の式が得られる。

\(pV = \)\(nRT\)
\(p\)〔Pa〕:圧力
\(V\)〔m³〕:体積
\(n\)〔mol〕:物質量
\(R = 8.31\) J/(mol·K):気体定数
\(T\)〔K〕:絶対温度
🧮 計算例:0.50 mol の理想気体が 27℃ で占める体積(1.0 × 10⁵ Pa)

条件:\(n = 0.50\) mol、\(T = 27 + 273 = 300\) K、\(p = 1.0 \times 10^5\) Pa

状態方程式 \(pV = nRT\) より

$$ V = \frac{nRT}{p} = \frac{0.50 \times 8.31 \times 300}{1.0 \times 10^5} = \frac{1246.5}{1.0 \times 10^5} \fallingdotseq 1.25 \times 10^{-2} \text{ m}^3 $$

答え:\(V \fallingdotseq 1.25 \times 10^{-2}\) m³(= 12.5 L)

📌 ポイント

理想気体:分子の大きさ=0、分子間力=0 と仮定した気体モデル。高温・低圧ほど実在気体は理想気体に近づく。この理想化のおかげで、気体の状態を \(pV = nRT\) というシンプルな式だけで完全に記述できる。

📐 公式の導出:理想気体の状態方程式

ボイル・シャルルの法則 \(\dfrac{pV}{T} = \text{一定}\) において、この「一定」の値を求める。

標準状態(0℃ = 273 K, 1 atm = 1.013×10⁵ Pa)で 1 mol の理想気体の体積は 22.4 L = 0.0224 m³ なので

$$ \frac{pV}{T} = \frac{1.013 \times 10^5 \times 0.0224}{273} \ fallingdotseq 8.31 \text{ J/(mol·K)} = R $$

\(n\) mol では \(\dfrac{pV}{T} = nR\) となるから、\(pV = nRT\) が得られる。

理想気体の状態方程式シミュレーション

この式の威力は、\(p, V, n, T\) の4つの状態量のうち3つが決まれば残り1つが自動的に決まることにある。ピストンを動かして体積を変えると、圧力がリアルタイムで変化します。温度 \(T\) や物質量 \(n\) のスライダーも動かして試してみよう。

🎈 豆知識:風船が膨らむ理由

温度が上がると \(V = nRT/p\) より体積が増えるため、風船は膨らみます。逆に冷やすとしぼみます。車のタイヤの空気圧が夏と冬で変わるのも同じ原理です。

🤔 豆知識:「理想気体」と実在気体の違い

理想気体は分子の大きさが0、分子間力がないと仮定したモデルです。実在気体は高圧・低温で理想気体からずれます。ファンデルワールスの状態方程式 \(\left(p + \frac{a}{V^2}\right)(V-b) = nRT\) は分子間力(\(a\)項)と分子の体積(\(b\)項)を補正します。通常の入試では理想気体の近似で十分です。

理想気体の状態方程式 \(pV = nRT\) で、温度と物質量を一定にして体積を半分にすると圧力はどうなる?
半分になる
変わらない
2倍になる
4倍になる
\(pV = nRT\) で \(n, R, T\) が一定なら \(pV = \text{一定}\)(ボイルの法則)。体積が半分になれば圧力は2倍になります。

🎯 4. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:混合気体

異なる気体A、Bを混合した場合、混合気体の全圧は各成分の分圧の和です(ドルトンの法則)。各成分について \(p_iV = n_iRT\) が成り立ちます。コックつきの容器2つを連結する問題では、混合前後で各成分の物質量が保存され、温度を合わせてから全圧を求めるのが典型的な解法です。

🧮 ② 典型問題:混合気体の圧力(ドルトンの法則、コック付き容器の連結)

問題設定:容器 A(体積 \(V_A\)、気体 a が圧力 \(p_A\)、温度 \(T\))と容器 B(体積 \(V_B\)、気体 b が圧力 \(p_B\)、温度 \(T\))をコックで連結する。

解法の流れ

  1. 各成分の物質量を求める:\(n_a = \dfrac{p_A V_A}{RT}\),\(n_b = \dfrac{p_B V_B}{RT}\)
  2. 連結後の全体積は \(V_A + V_B\),温度 \(T\) のまま
  3. 各成分の分圧を求める:\(p_a' = \dfrac{n_a RT}{V_A + V_B} = \dfrac{p_A V_A}{V_A + V_B}\)
  4. ドルトンの法則で全圧を求める:\(p = p_a' + p_b' = \dfrac{p_A V_A + p_B V_B}{V_A + V_B}\)

温度が異なる場合は、まず各成分の \(n\) を求めてから、共通の最終温度で立式する。

🔑 まとめ