物理 > 第3編 波 > 第1章 波の伝わり方
「振幅・波長・周期・振動数」——波を記述する基本量をあらためて整理する。
波は媒質の振動が次々と伝わる現象である。 波を定量的に扱うために,以下の基本量を用いる。
波の速さ \(v\)〔m/s〕は,1周期 \(T\) の間に波が波長 \(\lambda\) だけ進むことから
波の速さは媒質の性質(弾性率・密度など)で決まり,振動数や振幅では変わらない。 振動数は波源が決める量である。
条件:振動数 \(f = 500\) Hz,波の速さ \(v = 340\) m/s の音波の波長を求める。
$$ \lambda = \frac{v}{f} = \frac{340}{500} = 0.68 \text{ m} $$周期は \(T = 1/f = 1/500 = 0.0020\) s = 2.0 ms。確認:\(v = \lambda / T = 0.68 / 0.0020 = 340\) m/s ✓
答え:\(\lambda = 0.68\) m,\(T = 2.0 \times 10^{-3}\) s
条件:FM放送の振動数 \(f = 80\) MHz = \(80 \times 10^6\) Hz。電波の速さは光速 \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s。
$$ \lambda = \frac{c}{f} = \frac{3.0 \times 10^8}{80 \times 10^6} = \frac{3.0 \times 10^8}{8.0 \times 10^7} = 3.75 \text{ m} $$答え:\(\lambda \fallingdotseq 3.8\) m。FM放送のアンテナが数十cm〜数mなのはこの波長に対応している。
津波は水深 \(h\) の海での速さが \(v = \sqrt{gh}\) で表される。 太平洋の平均水深(約 4000 m)では \(v \fallingdotseq 200\) m/s(時速約 720 km)に達し, ジェット旅客機並みの速さとなる。波長は数十〜数百 km にもなる。
「波が進んでも媒質は移動しない」——波の伝搬と媒質の振動を区別する。波の基本量を整理した今、媒質がどう動くかを正しく理解することが、波の現象全体を読み解く鍵となる。
波が伝わるとき,媒質の各点はそれぞれの場所で振動するだけで,波とともに移動するわけではない。 波が運ぶのはエネルギーと情報(振動の状態)であり,媒質そのものではない。
たとえば海の波を見ると,浮かんでいるボールは上下に揺れるだけで,波の進行方向には移動しない。 このことは,波の本質を理解する上できわめて重要である。
「波が右に進む=媒質が右に移動する」は誤り。 媒質はその場で振動し,振動の状態が次々と隣に伝わることで波が進む。
媒質の振動方向と波の進行方向の関係によって,波は2種類に分類される。
地震波にはP波(Primary wave,縦波)とS波(Secondary wave,横波)がある。 P波は固体・液体・気体すべてを伝わるが,S波は固体中のみを伝わる。 地球の外核が液体であることは,S波が外核を通過できないことから判明した。
海の波を見ると水が移動しているように見えますが、実際には各水粒子はほぼ同じ場所で円運動をしているだけです。波はエネルギーと情報を伝えますが、媒質自体は移動しません。サーフィンでボードが進むのは波のエネルギーを受けてのことで、水そのものが岸に向かって流れているわけではありません。
2つの波が同じ場所を通過するとき、変位はどうなるか?——重ね合わせの原理は、波の干渉や定常波を理解するための土台となる。
2つの波が逆向きに進んで重なり合うとどうなるだろうか? 振幅と位相を変えて,強め合いや弱め合いの干渉, そして振幅が等しいときに生じる定常波を観察しよう。
津波は浅水波で、速さは \(v = \sqrt{gh}\)(\(h\):水深)です。深海(水深4000m)では約200 m/s(≒720 km/h)で進みますが、沿岸に近づいて水深が浅くなると速度が落ち、後ろの波が追いつきます。波のエネルギーが狭い空間に集中するため、波高が急激に増大します。
「波の写真」と「1点の記録」——2つのグラフの違いを正しく読み取る。
ある瞬間における媒質各点の変位 \(y\) を,位置 \(x\) に対してプロットしたグラフ。 いわば波の「スナップショット」である。
ある1点における変位 \(y\) の時間変化を,時刻 \(t\) に対してプロットしたグラフ。 いわば1つの媒質点の「振動記録」である。
| y-x グラフ | y-t グラフ | |
|---|---|---|
| 別名 | 波形グラフ(スナップショット) | 振動グラフ(記録) |
| 横軸 | 位置 \(x\)〔m〕 | 時刻 \(t\)〔s〕 |
| 縦軸 | 変位 \(y\)〔m〕 | 変位 \(y\)〔m〕 |
| 読み取れる量 | 波長 \(\lambda\)、振幅 \(A\) | 周期 \(T\)、振幅 \(A\) |
| 固定するもの | 時刻(ある瞬間) | 位置(ある1点) |
y-x グラフと y-t グラフは形がよく似ているが,読み取れる量が異なる。 y-x グラフから波長 \(\lambda\) が,y-t グラフから周期 \(T\) が読み取れる。 混同しないように注意する。
y-x グラフ上で,ある点の変位がこれから増えるか減るかを考えることで, 波の進行方向を判定できる。
波が正の x 方向(右向き)に進むとき,波形は右に移動する。 したがって,ある点の少し左側の波形がこの点の「未来の姿」になる。 少し左を見て変位が大きければ,その点の変位はこれから増加する(上向きに動く)。
媒質の速度の向きの判定法
y-x グラフ上の注目する点で,波の進行方向と逆側(波が来る側)の隣を見る。
これは「波形が進行方向にずれる」ことから理解できる。
条件:y-x グラフから波長 \(\lambda = 0.80\) m を読み取った。別途 y-t グラフから周期 \(T = 0.020\) s と読み取った。
振動数を求める。
$$ f = \frac{1}{T} = \frac{1}{0.020} = 50 \text{ Hz} $$波の速さを求める。
$$ v = f\lambda = 50 \times 0.80 = 40 \text{ m/s} $$答え:\(v = 40\) m/s
オシロスコープは音や電気信号の y-t グラフをリアルタイムで画面に表示する装置である。 音をマイクで電気信号に変換し,その波形を観察することで, 音の高さ(周期・振動数)や大きさ(振幅)を視覚的に確認できる。
弦の微小部分に作用する張力の合力から、波動方程式が導かれます。
$$ \frac{\partial^2 y}{\partial t^2} = v^2 \frac{\partial^2 y}{\partial x^2} $$
ここで \(v = \sqrt{T/\mu}\)(\(T\):張力、\(\mu\):線密度)は波の伝播速度です。この偏微分方程式の一般解は \(y = f(x - vt) + g(x + vt)\) で、正方向と負方向に進む任意の波形の重ね合わせを表します。正弦波 \(y = A\sin(kx - \omega t)\) は特殊解の一つです。
入試で頻出のポイントを確認しましょう。
y-x グラフから波長 \(\lambda\) を読み取り、振動数 \(f\) が与えられていれば \(v = f\lambda\) で速さが求まる。周期 \(T\) が与えられた場合は \(v = \lambda / T\)。
波が右向きに進むとき、注目点の左側(波が来る側)の変位を確認する。
これは波形が進行方向にずれることから理解できる。入試の定番問題。
y-t グラフから周期 \(T\) を読み取り、\(f = 1/T\) で振動数を求める。波長 \(\lambda\) が別途与えられていれば \(v = f\lambda\) で速さが求まる。