「光とは何か?」——光は電磁波の一種であり,人間の目に見える波長の範囲がある。ここでは光の種類と速さの測定について学ぶ。
人間の目に感じる光を可視光線という。可視光線は電磁波の一種であり, 波長が約 380 nm〜780 nm の範囲にある。
いろいろな波長の光をまんべんなく含む光を白色光という(太陽光など)。 一方,1つの波長からなる光を単色光という。
可視光線の外側にも電磁波は存在する。波長が短い側には紫外線・X線・γ線, 長い側には赤外線・電波がある。これらは目に見えないが,光と同じ速さ \(c\) で進む。
光の速さは非常に大きく,真空中では
1849年,フランスの物理学者フィゾーは歯車を用いた巧みな実験で 初めて地上で光の速さを測定した。
歯車の歯の数を \(N\),歯車の回転数を \(n\)〔回/s〕, 歯車から平面鏡までの距離を \(l\)〔m〕とすると, 光が歯車と鏡の間を往復する間に歯車は歯1つ分だけ回転する条件から
歯車の歯の数が \(N\) のとき,歯 \(N\) 個とすき間 \(N\) 個で1周(\(2N\) 分割)。
歯車が1回転する周期は \(T = 1/n\)〔s〕なので,歯1つ分回転する時間は
$$ \Delta t = \frac{T}{2N} = \frac{1}{2Nn} $$光がすき間を通過→鏡で反射→次のすき間を通過するには距離 \(2l\) を往復するので
$$ c = \frac{2l}{\Delta t} = \frac{2l}{1/(2Nn)} = 4Nnl $$光を波長によって分けたものをスペクトルという。スペクトルには3種類がある。
条件:歯の数 \(N = 720\),歯車の回転数 \(n = 12.6\) 回/s,歯車から鏡までの距離 \(l = 8.63\) km = \(8630\) m。
$$ c = 4Nnl = 4 \times 720 \times 12.6 \times 8630 $$これを計算すると、
$$ c = 4 \times 720 \times 12.6 \times 8630 \fallingdotseq 3.13 \times 10^8 \text{ m/s} $$実際の光速 \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s に近い値が得られる(フィゾーの実験値は約5%の誤差)。
答え:\(c \fallingdotseq 3.1 \times 10^8\) m/s
条件:赤色光の波長 \(\lambda = 700\) nm = \(7.0 \times 10^{-7}\) m,光速 \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s。
$$ f = \frac{c}{\lambda} = \frac{3.0 \times 10^8}{7.0 \times 10^{-7}} = 4.3 \times 10^{14} \text{ Hz} $$紫色光(\(\lambda = 400\) nm)では \(f = 3.0 \times 10^8 / 4.0 \times 10^{-7} = 7.5 \times 10^{14}\) Hz。
可視光の振動数は約 \(4 \times 10^{14}\) 〜 \(8 \times 10^{14}\) Hz の範囲にある。
答え:赤色光 \(f \fallingdotseq 4.3 \times 10^{14}\) Hz
太陽のスペクトルには多数の暗線(フラウンホーファー線)が見られます。これは太陽大気中の元素が特定波長の光を吸収するためです。逆に言えば、暗線のパターンから太陽大気の組成がわかります。ヘリウムは太陽のスペクトルから発見され、ギリシャ語の「太陽(ヘリオス)」にちなんで命名されました。
「水中のストローが曲がって見えるのはなぜ?」——光が媒質の境界で曲がる法則を定量的に理解する。
光が真空中から媒質中に入るとき,速さが変わる。 真空中の光の速さ \(c\) と媒質中の光の速さ \(v\) の比を その媒質の絶対屈折率(屈折率)\(n\) という。
屈折率が大きい媒質ほど光の速さが遅く,光学的に密であるという。
屈折率 \(n_1\) の媒質から屈折率 \(n_2\) の媒質へ光が進むとき, 入射角 \(\theta_1\) と屈折角 \(\theta_2\) の間に次の関係が成り立つ。
媒質1(光の速さ \(v_1\))から媒質2(光の速さ \(v_2\))へ平面波が入射角 \(\theta_1\) で入射する場合を考える。
ステップ 1:ホイヘンスの原理
波面上の各点が新しい素元波の波源となり,これらの素元波の共通接線(包絡面)が次の波面となる。
ステップ 2:波面の進行を追う
波面 AB が境界面に斜めに入射するとする。波面の端 A が境界面に到達した瞬間,もう一方の端 B はまだ媒質1の中にある。 B が境界面の点 D に到達するまでの時間を \(\Delta t\) とすると,その間に A から出た素元波は媒質2の中で半径 \(v_2 \Delta t\) の球面に広がる。
ステップ 3:幾何学的関係
媒質1側では,BD は入射角 \(\theta_1\) の方向に進むので
$$ BD = v_1 \Delta t = AD \sin\theta_1 $$媒質2側では,A から出た素元波の半径 AC が屈折角 \(\theta_2\) に対応するので
$$ AC = v_2 \Delta t = AD \sin\theta_2 $$ステップ 4:比をとる
上の2式を辺々割ると(\(AD\) が消去される)
$$ \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{v_1}{v_2} $$ステップ 5:屈折率で書き換える
屈折率の定義 \(n = c/v\) より \(v_1 = c/n_1\),\(v_2 = c/n_2\) を代入すると
$$ \frac{\sin\theta_1}{\sin\theta_2} = \frac{c/n_1}{c/n_2} = \frac{n_2}{n_1} $$両辺に \(n_1\) をかけて整理すると
$$ n_1 \sin\theta_1 = n_2 \sin\theta_2 $$これがスネルの法則である。ホイヘンスの原理から,波の速さの違いが屈折を引き起こすことが示された。
光が光学的に密な媒質(\(n_2 \gt n_1\))に入ると,屈折角は入射角より小さくなり(法線に近づく), 疎な媒質(\(n_2 < n_1\))に入ると,屈折角は入射角より大きくなる(法線から遠ざかる)。
| 媒質 | 屈折率 \(n\) |
|---|---|
| 真空 | 1(定義) |
| 空気 | ≒ 1.000 |
| 水 | 1.33 |
| ガラス | 1.5〜1.9 |
| ダイヤモンド | 2.42 |
入射角 \(\theta_1\) と各媒質の屈折率 \(n_1\),\(n_2\) を変えて, 屈折角の変化を確認しよう。\(n_1 \gt n_2\) のとき,臨界角を超えると全反射が起こる。
条件:空気(\(n_1 = 1.00\))から水(\(n_2 = 1.33\))へ入射角 \(\theta_1 = 60°\) で光が入射する。
$$ n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2 $$両辺を整理して \(\sin\theta_2\) を求めると、
$$ \sin\theta_2 = \frac{n_1}{n_2}\sin\theta_1 = \frac{1.00}{1.33} \times \sin 60° = 0.752 \times 0.866 = 0.651 $$逆正弦をとると、
$$ \theta_2 = \sin^{-1}(0.651) \fallingdotseq 40.6° $$光は法線に近づく方向に曲がる(\(60° \to 41°\))。水中の光の速さは \(v = c/n = 3.0 \times 10^8 / 1.33 \fallingdotseq 2.26 \times 10^8\) m/s。
答え:\(\theta_2 \fallingdotseq 41°\)
ダイヤモンドの屈折率は約 2.42 と非常に大きく,臨界角は約 24° と小さい。 このためダイヤモンド内に入った光は内部で何度も全反射を繰り返し, 特定の方向から強い光として出てくる。 カットの仕方(ブリリアントカットなど)は,この全反射を最大限に活かすよう設計されている。
「光が境界面を通り抜けずにすべて反射される?」——全反射の条件を理解する。
光が光学的に密な媒質から疎な媒質(\(n_1 \gt n_2\))へ進むとき, 入射角を大きくしていくと屈折角がどんどん大きくなる。 屈折角が 90° に達する入射角を臨界角 \(\theta_c\) という。
入射角が臨界角を超えると,光は境界面を透過せず, すべて反射される。これを全反射(total internal reflection)という。
全反射は密→疎のときのみ起こる。疎→密では起こらない。 また,入射角が臨界角より小さいときは屈折光と反射光の両方が存在する。
入射角 \(\theta_1\) と媒質の屈折率 \(n_2\) を変えて, 屈折・全反射の様子を確認しよう。臨界角を超えると光は境界面を透過せず,すべて反射される。
条件:水(\(n_1 = 1.33\))から空気(\(n_2 = 1.00\))への全反射の臨界角を求める。
$$ \sin\theta_c = \frac{n_2}{n_1} = \frac{1.00}{1.33} = 0.752 $$逆正弦をとると、
$$ \theta_c = \sin^{-1}(0.752) \fallingdotseq 48.8° $$水中から入射角が約 49° を超える光は全反射し,水面を透過しない。
ダイヤモンドの場合:\(\sin\theta_c = 1/2.42 = 0.413\) → \(\theta_c \fallingdotseq 24.4°\)。臨界角が小さいため内部で何度も全反射し強く輝く。
答え:水 \(\theta_c \fallingdotseq 49°\),ダイヤモンド \(\theta_c \fallingdotseq 24°\)
光ファイバーは,屈折率の高いコア(芯)を屈折率の低いクラッドで覆った構造をもつ。 コアとクラッドの境界で光が全反射を繰り返しながら進むことで, 光信号をほとんど損失なく長距離伝送できる。 海底ケーブルや医療用の内視鏡など,幅広く利用されている。
「虹はなぜ色が分かれるのか? 空はなぜ青い?」——分散・散乱・偏光という光の重要な性質を学ぶ。
白色光をプリズムに通すと,赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の光に分かれる。 これは波長によって屈折率がわずかに異なるためであり, この現象を分散(dispersion)という。
一般に,波長が短い光(紫)ほど屈折率が大きく,波長が長い光(赤)ほど屈折率が小さい。 したがってプリズムでは紫の光が最も大きく曲がり,赤の光が最も少なく曲がる。
屈折率が波長によって異なるため,白色光は各色の光に分離される。 これが虹やプリズムの色の分離の原因である。
頂角や屈折率を変えて,白色光がスペクトルに分かれる様子を確認しよう。 紫の光ほど大きく曲がることに注目。
光が空気中の小さな粒子(波長の数十分の1以下のサイズ)に当たると,四方に散る。 この現象を散乱という。
波長が短い光ほど散乱されやすい。 これをレイリー散乱といい,散乱の強さは波長の4乗に反比例する。
昼間の空が青いのは,太陽光のうち波長の短い青い光が大気中で強く散乱され, 四方から目に入るため。 夕焼けが赤いのは,太陽光が大気中を長い距離を進むうちに青い光が散乱されてしまい, 波長の長い赤い光が直進して目に届くため。
月には大気がないため,太陽光を散乱する粒子がありません。そのため,月面の空は昼間でも真っ暗で,星が見えます。「青空」は大気があるからこそ見られる現象です。
光は電場と磁場の振動が波の進行方向に垂直な横波である。 自然光(太陽光など)はさまざまな方向の振動が混ざっているが, 特定の方向にのみ振動する光を偏光(polarized light)という。
2枚の偏光板を重ね,一方を回転させると透過光の強度が変化する。 偏光板の透過軸が平行なとき最も明るく,直交するとき光は完全に遮断される。
虹と光の分散 と
虹と光の分散
虹は空気中の水滴がプリズムの役割を果たして起こる。 太陽光が水滴に入り,内部で反射・屈折して出てくる際に分散が起こり,色が分かれる。 主虹(いちばん明るい虹)は水滴内で1回反射,副虹(外側のうすい虹)は2回反射で生じ, 副虹は色の順序が逆になる。
水面や道路からの反射光は,反射面に平行な方向の振動が強い偏光になっている。 偏光サングラスはこの方向の振動を遮断する偏光板を用いることで, まぶしい反射光(ギラつき)を効果的にカットしながら, それ以外の光はある程度透過させる。釣りやドライブで重宝される。
虹は太陽光が水滴の中で屈折→反射→屈折する過程で生じます。波長によって屈折率がわずかに異なる(分散)ため、白色光が7色に分かれます。主虹(明るい虹)の角度が約42°なのは、スネルの法則から計算できる「最小偏角」に対応しています。
ダイヤモンドの屈折率は約2.42で非常に高く、臨界角は約24.4°と小さくなります。内部に入った光は全反射を繰り返し、カット面から集中的に出るため強い輝きを放ちます。また、分散(波長による屈折率の差)も大きいため、光が虹色に分かれてファイア(fire)と呼ばれる色彩が生まれます。
光が媒質1(速さ \(v_1\))から媒質2(速さ \(v_2\))へ進むとき、経路の所要時間を最小化します。
$$ t = \frac{\sqrt{a^2 + x^2}}{v_1} + \frac{\sqrt{b^2 + (d-x)^2}}{v_2} $$
\(\frac{dt}{dx} = 0\) を計算すると \(\frac{\sin\theta_1}{v_1} = \frac{\sin\theta_2}{v_2}\)、すなわちスネルの法則 \(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\) が得られます。光は「最短時間の経路」を選ぶのです(フェルマーの原理)。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
入試では全反射の臨界角(\(\sin\theta_c = n_2/n_1\))を用いた問題が頻出です。特に光ファイバーの原理(\(\sin\theta_c = n_{\text{clad}}/n_{\text{core}}\))や、水中からの全反射(\(\sin\theta_c = 1/n_{\text{water}}\))で「見える範囲の円」の半径を求める問題がよく出ます。
問題設定:水中(屈折率 \(n\))の深さ \(h\) にある光源から、水面を通して空気側に出る光を考える。水面を透過して外に出る光が照らす円の半径 \(r\) を求めよ。
解法:
具体例:水の屈折率 \(n = 1.33\) の場合、\(r = h / \sqrt{1.33^2 - 1} = h / \sqrt{0.77} \fallingdotseq 1.13h\)。深さ 2 m なら半径約 2.3 m の円の範囲から外が見える。
光が媒質1(速さ \(v_1\))の点 A から媒質2(速さ \(v_2\))の点 B へ進む最短時間の経路を求める。
境界面上の入射点の位置を \(x\) とすると、所要時間は
$ t(x) = \frac{\sqrt{a^2 + x^2}}{v_1} + \frac{\sqrt{b^2 + (d-x)^2}}{v_2} $ここで \(a\) は A から境界面までの距離、\(b\) は境界面から B までの距離、\(d\) は A と B の水平距離。
\(\dfrac{dt}{dx} = 0\) とすると
$ \frac{x}{v_1\sqrt{a^2 + x^2}} = \frac{d - x}{v_2\sqrt{b^2 + (d-x)^2}} $これは \(\dfrac{\sin\theta_1}{v_1} = \dfrac{\sin\theta_2}{v_2}\) に等しい。\(n = c/v\) を代入すると
$ n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2 $光は「最短時間の経路」を選ぶ(フェルマーの原理)。