「レンズは光をどう曲げるのか?」——凸レンズと凹レンズの性質と作図法を学ぶ。
中央が厚く,端が薄いレンズを凸レンズ(converging lens)という。 光軸に平行な光線を入射すると,レンズを通過後に1点(焦点 F)に集まる。 レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離 \(f\) という。
中央が薄く,端が厚いレンズを凹レンズ(diverging lens)という。 光軸に平行な光線を入射すると,レンズを通過後に広がり, その延長線が光軸上の1点(虚焦点)から発散するように見える。
物体距離を変えて,凸レンズと凹レンズでの像の変化を確認しよう。 3本の主光線が像をどう決めるかをリアルタイムで観察できる。
凸レンズで物体の像を作図するには,次の3本の光線のうち2本を描けばよい。
これら2本の光線の交点に実像ができる。 物体が焦点より内側にある場合は,交点がレンズの物体側にでき,虚像となる。
物体(赤い矢印)を左右にドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 焦点距離はスライダーで変更できる。
条件:焦点距離 \(f = 15\) cm の凸レンズの前方 \(a = 30\) cm に物体を置く。
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \quad \Rightarrow \quad \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{15} - \frac{1}{30} = \frac{2 - 1}{30} = \frac{1}{30} $$逆数をとって像の位置を求めると、
$$ b = 30 \text{ cm} $$\(b > 0\) なのでレンズの反対側に実像ができる。
倍率:\(|m| = b/a = 30/30 = 1.0\)(等倍の倒立像)。
ちなみに \(a = 2f\) のとき等倍になることがわかる。
答え:\(b = 30\) cm,等倍の倒立実像
条件:焦点距離 \(f = 10\) cm の凸レンズから \(a = 6.0\) cm(焦点の内側)に物体を置く。
$$ \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{10} - \frac{1}{6.0} = \frac{3 - 5}{30} = -\frac{2}{30} = -\frac{1}{15} $$逆数をとると像の位置が得られる。
$$ b = -15 \text{ cm} $$\(b < 0\) なのでレンズの物体側に虚像ができる。
倍率:\(|m| = |b|/a = 15/6.0 = 2.5\)(2.5 倍に拡大された正立虚像)。
答え:\(b = -15\) cm,2.5 倍の正立虚像
カメラのレンズは凸レンズ(または複数のレンズの組み合わせ)で, フィルムやセンサー上に実像を作る仕組みである。 焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)は広い範囲が映り, 焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)は遠くのものが大きく映る。
「像はどこにできて,どれくらいの大きさになるか?」——様々な物体位置での像の位置をまとめると、物体距離と像距離の間に一つの法則が見えてくる。レンズの式で定量的に求めよう。
薄いレンズにおいて,物体からレンズまでの距離を \(a\), レンズから像までの距離を \(b\),焦点距離を \(f\) とすると
凸レンズの光軸上で,物体からレンズまでの距離を \(a\),レンズから像までの距離を \(b\),焦点距離を \(f\) とする。 物体の高さを \(h\),像の高さを \(h'\) とする。
ステップ 1:レンズ中心を通る光線から倍率を求める
レンズの中心を通る光線は直進するので,物体の先端・レンズ中心・像の先端を結ぶ三角形について
$$ \frac{h'}{h} = \frac{b}{a} \quad \cdots\text{(i)} $$ステップ 2:光軸に平行な光線から別の関係を得る
物体の先端から光軸に平行に出た光線は,レンズ通過後に焦点 F を通る。 この光線と像の位置での垂直線がつくる三角形と,焦点 F を頂点とし光軸上で高さ \(h\) をもつ三角形は相似であるから
$$ \frac{h'}{h} = \frac{b - f}{f} \quad \cdots\text{(ii)} $$ステップ 3:(i) と (ii) から \(f\) を求める
(i) と (ii) の左辺が等しいので
$$ \frac{b}{a} = \frac{b - f}{f} $$両辺に \(af\) をかけると
$$ bf = a(b - f) = ab - af $$両辺を \(abf\) で割ると
$$ \frac{1}{a} = \frac{1}{f} - \frac{1}{b} $$整理して
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} $$これがレンズの式(写像公式)である。
凸レンズでは \(f \gt 0\),凹レンズでは \(f < 0\) とする。 実像のとき \(b \gt 0\),虚像のとき \(b < 0\) となる。 物体距離 \(a\) は常に正(\(a \gt 0\))とする。
像の大きさと物体の大きさの比を倍率(magnification)\(m\) という。
符号を含めて考えると,実像は \(b \gt 0\) なので \(m \gt 0\) だが, 実際には像は倒立(上下逆)である。 教科書によっては \(m = -b/a\) と定義して \(m < 0\) を倒立とする流儀もある。 ここでは倍率の大きさ \(|m| = b/a\) を像の拡大・縮小の指標として使う。
物体(青い矢印)をドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 \(1/a + 1/b = 1/f\) の関係がリアルタイムで表示される。
レンズによる結像を3D空間で観察しよう。マウスドラッグで視点を回転させ, 3本の主光線がどのように像を決めるかを立体的に確認できる。
| 物体の位置 | 像の種類 | 像の大きさ |
|---|---|---|
| \(a \gt 2f\) | 実像(倒立) | 縮小 |
| \(a = 2f\) | 実像(倒立) | 等倍 |
| \(f < a < 2f\) | 実像(倒立) | 拡大 |
| \(a = f\) | 像は無限遠(平行光線が出る) | |
| \(a < f\) | 虚像(正立) | 拡大 |
虫眼鏡(ルーペ)は凸レンズで,物体を焦点距離の内側に置いて観察する。 このとき正立・拡大の虚像が見える。 焦点距離が短いレンズほど倍率が大きくなるが, レンズと物体の距離が非常に近くなるため扱いにくくなる。
「虚像はスクリーンに映らない」と習いますが、目で見ることはできます。鏡に映る自分の姿は虚像です。凸レンズの虫眼鏡で物体を拡大して見ているとき(焦点より近い場合)も虚像を見ています。虚像は光が実際に集まる点ではなく、光線を逆方向に延長した交点に見えます。
カメラのレンズは凸レンズの原理で実像をセンサー上に結びます。ピント合わせは「レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)」で像の位置 \(b\) を被写体距離 \(a\) に合わせる操作です。被写体が近いときは像の位置が遠くなるため、レンズを前に出す(\(b\) を増やす)必要があります。
「鏡の曲面で光を集めたり広げたりできる」——球面鏡の性質とレンズとの類似性を学ぶ。
内側が反射面の球面鏡を凹面鏡(concave mirror)という。 光軸に平行な光線は反射後,焦点 F に集まる。 焦点距離 \(f\) は球面の曲率半径 \(R\) の半分である。
外側が反射面の球面鏡を凸面鏡(convex mirror)という。 光軸に平行な光線は反射後に広がり,その延長線が鏡の裏側の虚焦点から発散するように見える。 凸面鏡の焦点距離は負(\(f < 0\))として扱う。
球面鏡もレンズと同じ形の式が成り立つ。
倍率もレンズと同様に \(m = \dfrac{b}{a}\) で表される。
凹面鏡は凸レンズと似た性質(実像を作れる),凸面鏡は凹レンズと似た性質(虚像のみ)をもつ。 式の形は同じ \(\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f}\) であり, 符号の約束に注意すれば同じ方法で計算できる。
条件:曲率半径 \(R = 40\) cm の凹面鏡の前方 \(a = 60\) cm に物体を置く。
焦点距離:\(f = R/2 = 40/2 = 20\) cm
$$ \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{20} - \frac{1}{60} = \frac{3 - 1}{60} = \frac{2}{60} = \frac{1}{30} $$逆数をとって像の位置を求めると、
$$ b = 30 \text{ cm} $$\(b > 0\) なので鏡の前方に実像ができる。
倍率:\(|m| = b/a = 30/60 = 0.50\)(半分の大きさの倒立実像)。
答え:\(b = 30\) cm,0.50 倍の倒立実像
ニュートン式反射望遠鏡は凹面鏡(放物面鏡)を使って遠方の天体からの光を集める。 レンズ(屈折)式に比べて色収差がなく,大型化が容易である。 ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡は直径 2.4 m の凹面鏡で, ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡は直径 6.5 m にもなる。
物体(青い矢印)を左右にドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 凹面鏡/凸面鏡をボタンで切り替え,焦点距離もスライダーで変更できる。
道路のカーブに設置されているカーブミラー(道路反射鏡)は凸面鏡である。 凸面鏡は常に正立・縮小の虚像を作り,広い範囲を映すことができるため, 見通しの悪い交差点やカーブの安全確認に利用される。 ただし像は実際より小さく(遠く)見えるので,距離感に注意が必要である。
薄レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) はスネルの法則 \(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\) と近軸近似(\(\sin\theta \fallingdotseq \theta\))から導かれます。レンズメーカーの式:
$$ \frac{1}{f} = (n-1)\left(\frac{1}{R_1} - \frac{1}{R_2}\right) $$
ここで \(R_1, R_2\) はレンズ面の曲率半径、\(n\) は屈折率です。凸レンズの焦点距離が正、凹レンズが負になる符号規則を使えば、すべての場合を統一的に扱えます。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
凸レンズの像は3本の光線で作図します。①軸に平行な光→焦点を通る、②焦点を通る光→軸に平行、③レンズの中心を通る光→直進。物体が焦点より遠ければ実像、焦点より近ければ虚像です。入試では「物体を動かしたとき像がどう変化するか」「倍率の計算」が問われます。
符号規約のまとめ:
| 量 | 正 | 負 |
|---|---|---|
| \(a\)(物体距離) | 常に正 | — |
| \(b\)(像距離) | 実像(レンズの反対側) | 虚像(レンズの同じ側) |
| \(f\)(焦点距離) | 凸レンズ / 凹面鏡 | 凹レンズ / 凸面鏡 |
典型的な計算手順:
具体例:凸レンズ \(f = 10\) cm,物体距離 \(a = 15\) cm のとき
$ \frac{1}{b} = \frac{1}{10} - \frac{1}{15} = \frac{3 - 2}{30} = \frac{1}{30} $よって \(b = 30\) cm(正なので実像)。倍率は \(|m| = 30/15 = 2\) で、2倍に拡大された倒立実像ができる。
凸レンズの光軸上に、レンズから距離 \(a\) の位置に高さ \(h\) の物体を置く。
光線1:光軸に平行にレンズに入り、焦点 F' を通って進む。
光線2:レンズの中心を通り、直進する。
2本の光線の交点が像の位置(距離 \(b\)、高さ \(h'\))。相似な三角形から
$ \frac{h'}{h} = \frac{b}{a} \quad \text{(中心を通る光線から)} $一方、焦点を通る光線から得られる相似比は
$ \frac{h'}{h} = \frac{b - f}{f} \quad \text{(焦点を通る光線から)} $両辺を等しくおくと
$ \frac{b}{a} = \frac{b - f}{f} $交差乗法で展開すると
$ bf = a(b - f) = ab - af $右辺の \(-af\) を左辺に移項して整理すると
$ af + bf = ab $両辺を \(abf\) で割ると
$ \frac{1}{b} + \frac{1}{a} = \frac{1}{f} $