物理 > 第3編 波 > 第3章 光

② レンズと鏡

🔍 1. 凸レンズと凹レンズ

「レンズは光をどう曲げるのか?」——凸レンズと凹レンズの性質と作図法を学ぶ。

虫眼鏡で文字を拡大して見るとき、文字は正立に見える。これは実像?虚像?
実像
虚像
虫眼鏡は物体を焦点距離の内側に置いて観察します。このとき正立・拡大の虚像が見えます。

凸レンズ

中央が厚く,端が薄いレンズを凸レンズ(converging lens)という。 光軸に平行な光線を入射すると,レンズを通過後に1点(焦点 F)に集まる。 レンズの中心から焦点までの距離を焦点距離 \(f\) という。

凹レンズ

中央が薄く,端が厚いレンズを凹レンズ(diverging lens)という。 光軸に平行な光線を入射すると,レンズを通過後に広がり, その延長線が光軸上の1点(虚焦点)から発散するように見える。

凸レンズ・凹レンズの光線追跡

物体距離を変えて,凸レンズと凹レンズでの像の変化を確認しよう。 3本の主光線が像をどう決めるかをリアルタイムで観察できる。

レンズの作図法(3本の光線)

凸レンズで物体の像を作図するには,次の3本の光線のうち2本を描けばよい。

  1. 光軸に平行な光線:レンズ通過後,焦点 F を通る
  2. レンズの中心を通る光線:そのまま直進する
  3. 焦点 F を通る光線:レンズ通過後,光軸に平行に進む

これら2本の光線の交点に実像ができる。 物体が焦点より内側にある場合は,交点がレンズの物体側にでき,虚像となる

💡
実像光が実際に集まってできる像。スクリーンに映せる。上下左右が逆。
虚像光の延長線が交わってできる見かけの像。スクリーンに映せない。正立。

凸レンズの光線作図シミュレーション

物体(赤い矢印)を左右にドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 焦点距離はスライダーで変更できる。

🧮 計算例:凸レンズで像の位置と倍率を求める

条件:焦点距離 \(f = 15\) cm の凸レンズの前方 \(a = 30\) cm に物体を置く。

$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} \quad \Rightarrow \quad \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{15} - \frac{1}{30} = \frac{2 - 1}{30} = \frac{1}{30} $$

逆数をとって像の位置を求めると、

$$ b = 30 \text{ cm} $$

\(b > 0\) なのでレンズの反対側に実像ができる。

倍率:\(|m| = b/a = 30/30 = 1.0\)(等倍の倒立像)。

ちなみに \(a = 2f\) のとき等倍になることがわかる。

答え:\(b = 30\) cm,等倍の倒立実像

🧮 計算例:凸レンズの虚像(虫眼鏡の場合)

条件:焦点距離 \(f = 10\) cm の凸レンズから \(a = 6.0\) cm(焦点の内側)に物体を置く。

$$ \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{10} - \frac{1}{6.0} = \frac{3 - 5}{30} = -\frac{2}{30} = -\frac{1}{15} $$

逆数をとると像の位置が得られる。

$$ b = -15 \text{ cm} $$

\(b < 0\) なのでレンズの物体側に虚像ができる。

倍率:\(|m| = |b|/a = 15/6.0 = 2.5\)(2.5 倍に拡大された正立虚像)。

答え:\(b = -15\) cm,2.5 倍の正立虚像

📷 豆知識:カメラのレンズと焦点距離

カメラのレンズは凸レンズ(または複数のレンズの組み合わせ)で, フィルムやセンサー上に実像を作る仕組みである。 焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)は広い範囲が映り, 焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)は遠くのものが大きく映る。

凸レンズで物体が焦点より内側にあるとき、できる像は?
倒立の実像
正立の虚像
像はできない
物体が焦点より内側では光線が発散するため実像は作れず、正立・拡大の虚像ができます。

📐 2. レンズの式と倍率

「像はどこにできて,どれくらいの大きさになるか?」——様々な物体位置での像の位置をまとめると、物体距離と像距離の間に一つの法則が見えてくる。レンズの式で定量的に求めよう。

カメラでピントを合わせるとき、被写体が近づいたらレンズはどうする?
レンズを前に出す(センサーから離す)
レンズを引っ込める(センサーに近づける)
レンズの式で物体距離 a が小さくなると像距離 b が大きくなるため、レンズを前に出す必要があります。

レンズの式(写像公式)

薄いレンズにおいて,物体からレンズまでの距離を \(a\), レンズから像までの距離を \(b\),焦点距離を \(f\) とすると

\(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \)\(\frac{1}{f}\)
\(a\)〔m〕:物体からレンズまでの距離(物体距離)
\(b\)〔m〕:レンズから像までの距離(像距離)
\(f\)〔m〕:焦点距離
📐 公式の導出:レンズの式 \(1/a + 1/b = 1/f\)(相似三角形を使用)

凸レンズの光軸上で,物体からレンズまでの距離を \(a\),レンズから像までの距離を \(b\),焦点距離を \(f\) とする。 物体の高さを \(h\),像の高さを \(h'\) とする。

ステップ 1:レンズ中心を通る光線から倍率を求める

レンズの中心を通る光線は直進するので,物体の先端・レンズ中心・像の先端を結ぶ三角形について

$$ \frac{h'}{h} = \frac{b}{a} \quad \cdots\text{(i)} $$

ステップ 2:光軸に平行な光線から別の関係を得る

物体の先端から光軸に平行に出た光線は,レンズ通過後に焦点 F を通る。 この光線と像の位置での垂直線がつくる三角形と,焦点 F を頂点とし光軸上で高さ \(h\) をもつ三角形は相似であるから

$$ \frac{h'}{h} = \frac{b - f}{f} \quad \cdots\text{(ii)} $$

ステップ 3:(i) と (ii) から \(f\) を求める

(i) と (ii) の左辺が等しいので

$$ \frac{b}{a} = \frac{b - f}{f} $$

両辺に \(af\) をかけると

$$ bf = a(b - f) = ab - af $$

両辺を \(abf\) で割ると

$$ \frac{1}{a} = \frac{1}{f} - \frac{1}{b} $$

整理して

$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f} $$

これがレンズの式(写像公式)である。

📌 ポイント

凸レンズでは \(f \gt 0\),凹レンズでは \(f < 0\) とする。 実像のとき \(b \gt 0\),虚像のとき \(b < 0\) となる。 物体距離 \(a\) は常に正(\(a \gt 0\))とする。

倍率

像の大きさと物体の大きさの比を倍率(magnification)\(m\) という。

\(m = \)\(\frac{b}{a}\)
\(m\):倍率(\(|m| \gt 1\) なら拡大,\(|m| < 1\) なら縮小)
\(m \gt 0\):正立像,\(m < 0\):倒立像

符号を含めて考えると,実像は \(b \gt 0\) なので \(m \gt 0\) だが, 実際には像は倒立(上下逆)である。 教科書によっては \(m = -b/a\) と定義して \(m < 0\) を倒立とする流儀もある。 ここでは倍率の大きさ \(|m| = b/a\) を像の拡大・縮小の指標として使う。

レンズの式シミュレーション

物体(青い矢印)をドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 \(1/a + 1/b = 1/f\) の関係がリアルタイムで表示される。

レンズの3D光線追跡

レンズによる結像を3D空間で観察しよう。マウスドラッグで視点を回転させ, 3本の主光線がどのように像を決めるかを立体的に確認できる。

物体の位置と像の関係

物体の位置 像の種類 像の大きさ
\(a \gt 2f\) 実像(倒立) 縮小
\(a = 2f\) 実像(倒立) 等倍
\(f < a < 2f\) 実像(倒立) 拡大
\(a = f\) 像は無限遠(平行光線が出る)
\(a < f\) 虚像(正立) 拡大
🔬 豆知識:虫眼鏡の原理

虫眼鏡(ルーペ)は凸レンズで,物体を焦点距離の内側に置いて観察する。 このとき正立・拡大の虚像が見える。 焦点距離が短いレンズほど倍率が大きくなるが, レンズと物体の距離が非常に近くなるため扱いにくくなる。

🤔 豆知識:「虚像」は見えるのか?

「虚像はスクリーンに映らない」と習いますが、目で見ることはできます。鏡に映る自分の姿は虚像です。凸レンズの虫眼鏡で物体を拡大して見ているとき(焦点より近い場合)も虚像を見ています。虚像は光が実際に集まる点ではなく、光線を逆方向に延長した交点に見えます。

📷 豆知識:カメラのレンズと結像

カメラのレンズは凸レンズの原理で実像をセンサー上に結びます。ピント合わせは「レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\)」で像の位置 \(b\) を被写体距離 \(a\) に合わせる操作です。被写体が近いときは像の位置が遠くなるため、レンズを前に出す(\(b\) を増やす)必要があります。

レンズの式で \(b < 0\) のとき像はどうなる?
虚像(レンズの物体側にできる)
実像(レンズの反対側にできる)
b < 0 は像がレンズの物体側にあることを意味し、虚像です。

🪞 3. 凹面鏡と凸面鏡

「鏡の曲面で光を集めたり広げたりできる」——球面鏡の性質とレンズとの類似性を学ぶ。

道路のカーブミラーには凸面鏡が使われている。その理由は?
広い範囲を映せるから
像が大きく見えるから
凸面鏡は常に正立・縮小の虚像を作り広い範囲が映ります。見通しの悪い場所の安全確認に使われます。

凹面鏡

内側が反射面の球面鏡を凹面鏡(concave mirror)という。 光軸に平行な光線は反射後,焦点 F に集まる。 焦点距離 \(f\) は球面の曲率半径 \(R\) の半分である

\(f = \)\(\frac{R}{2}\)
\(f\)〔m〕:焦点距離
\(R\)〔m〕:曲率半径

凸面鏡

外側が反射面の球面鏡を凸面鏡(convex mirror)という。 光軸に平行な光線は反射後に広がり,その延長線が鏡の裏側の虚焦点から発散するように見える。 凸面鏡の焦点距離は負(\(f < 0\))として扱う

球面鏡の式

球面鏡もレンズと同じ形の式が成り立つ

\(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \)\(\frac{1}{f}\)
\(a\)〔m〕:物体から鏡までの距離
\(b\)〔m〕:鏡から像までの距離(実像: \(b \gt 0\),虚像: \(b < 0\))
\(f\)〔m〕:焦点距離(凹面鏡: \(f \gt 0\),凸面鏡: \(f < 0\))

倍率もレンズと同様に \(m = \dfrac{b}{a}\) で表される。

📌 ポイント

凹面鏡は凸レンズと似た性質(実像を作れる),凸面鏡は凹レンズと似た性質(虚像のみ)をもつ。 式の形は同じ \(\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f}\) であり, 符号の約束に注意すれば同じ方法で計算できる。

🧮 計算例:凹面鏡で像の位置を求める

条件:曲率半径 \(R = 40\) cm の凹面鏡の前方 \(a = 60\) cm に物体を置く。

焦点距離:\(f = R/2 = 40/2 = 20\) cm

$$ \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} = \frac{1}{20} - \frac{1}{60} = \frac{3 - 1}{60} = \frac{2}{60} = \frac{1}{30} $$

逆数をとって像の位置を求めると、

$$ b = 30 \text{ cm} $$

\(b > 0\) なので鏡の前方に実像ができる。

倍率:\(|m| = b/a = 30/60 = 0.50\)(半分の大きさの倒立実像)。

答え:\(b = 30\) cm,0.50 倍の倒立実像

🛰️ 豆知識:天体望遠鏡と凹面鏡

ニュートン式反射望遠鏡は凹面鏡(放物面鏡)を使って遠方の天体からの光を集める。 レンズ(屈折)式に比べて色収差がなく,大型化が容易である。 ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡は直径 2.4 m の凹面鏡で, ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡は直径 6.5 m にもなる。

球面鏡の光線作図シミュレーション

物体(青い矢印)を左右にドラッグして,像の位置・大きさ・種類がどう変わるかを確認しよう。 凹面鏡/凸面鏡をボタンで切り替え,焦点距離もスライダーで変更できる。

🚗 豆知識:カーブミラーは凸面鏡

道路のカーブに設置されているカーブミラー(道路反射鏡)は凸面鏡である。 凸面鏡は常に正立・縮小の虚像を作り,広い範囲を映すことができるため, 見通しの悪い交差点やカーブの安全確認に利用される。 ただし像は実際より小さく(遠く)見えるので,距離感に注意が必要である。

📐 発展:微積分で見るレンズの写像公式

薄レンズの公式 \(\frac{1}{a} + \frac{1}{b} = \frac{1}{f}\) はスネルの法則 \(n_1\sin\theta_1 = n_2\sin\theta_2\) と近軸近似(\(\sin\theta \ fallingdotseq \theta\))から導かれます。レンズメーカーの式:

$$ \frac{1}{f} = (n-1)\left(\frac{1}{R_1} - \frac{1}{R_2}\right) $$

ここで \(R_1, R_2\) はレンズ面の曲率半径、\(n\) は屈折率です。凸レンズの焦点距離が正、凹レンズが負になる符号規則を使えば、すべての場合を統一的に扱えます。

球面鏡の焦点距離 \(f\) と曲率半径 \(R\) の関係は?
\(f = R\)
\(f = 2R\)
\(f = R/2\)
球面鏡の焦点距離は曲率半径の半分、f = R/2 です。

🎯 4. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:レンズの作図法

凸レンズの像は3本の光線で作図します。①軸に平行な光→焦点を通る、②焦点を通る光→軸に平行、③レンズの中心を通る光→直進。物体が焦点より遠ければ実像、焦点より近ければ虚像です。入試では「物体を動かしたとき像がどう変化するか」「倍率の計算」が問われます。

🧮 ② 典型問題:レンズの公式の使い方(符号規約、倍率 \(m = b/a\))

符号規約のまとめ

\(a\)(物体距離)常に正
\(b\)(像距離)実像(レンズの反対側)虚像(レンズの同じ側)
\(f\)(焦点距離)凸レンズ / 凹面鏡凹レンズ / 凸面鏡

典型的な計算手順

  1. レンズの式に代入して \(b\) を求める: $ \frac{1}{b} = \frac{1}{f} - \frac{1}{a} $
  2. \(b\) の符号から像の種類を判定:\(b \gt 0\) なら実像(レンズの反対側),\(b \lt 0\) なら虚像(レンズの同じ側)
  3. 倍率を求める:\(|m| = \dfrac{|b|}{a}\)。\(|m| \gt 1\) なら拡大,\(|m| \lt 1\) なら縮小。\(b \gt 0\) なら倒立,\(b \lt 0\) なら正立

具体例:凸レンズ \(f = 10\) cm,物体距離 \(a = 15\) cm のとき

$ \frac{1}{b} = \frac{1}{10} - \frac{1}{15} = \frac{3 - 2}{30} = \frac{1}{30} $

よって \(b = 30\) cm(正なので実像)。倍率は \(|m| = 30/15 = 2\) で、2倍に拡大された倒立実像ができる。

📐 ③ 導出:レンズの式 \(\dfrac{1}{a} + \dfrac{1}{b} = \dfrac{1}{f}\)

凸レンズの光軸上に、レンズから距離 \(a\) の位置に高さ \(h\) の物体を置く。

光線1:光軸に平行にレンズに入り、焦点 F' を通って進む。

光線2:レンズの中心を通り、直進する。

2本の光線の交点が像の位置(距離 \(b\)、高さ \(h'\))。相似な三角形から

$ \frac{h'}{h} = \frac{b}{a} \quad \text{(中心を通る光線から)} $

一方、焦点を通る光線から得られる相似比は

$ \frac{h'}{h} = \frac{b - f}{f} \quad \text{(焦点を通る光線から)} $

両辺を等しくおくと

$ \frac{b}{a} = \frac{b - f}{f} $

交差乗法で展開すると

$ bf = a(b - f) = ab - af $

右辺の \(-af\) を左辺に移項して整理すると

$ af + bf = ab $

両辺を \(abf\) で割ると

$ \frac{1}{b} + \frac{1}{a} = \frac{1}{f} $

🔑 まとめ