「電子レンジの扉のガラス窓には,なぜ金属の網がかぶせてあるのだろう?」——導体の内部では電場がゼロになるという性質を理解しよう。
自由電子をもつ導体(金属など)を一様な電場の中に置くと,自由電子は電場と逆向きの力を受けて移動する。 その結果,導体の一方の面に負電荷が,反対側の面に正電荷が現れる。 これが静電誘導である。
電子の移動は,誘導された電荷がつくる電場が外部の電場をちょうど打ち消すまで続く。 最終的に,導体内部の電場はゼロになり,電子の移動が止まる。
静電誘導が完了した状態では,次の重要な性質が成り立つ。
下のシミュレーションで,一様電場中に導体球を置いたときの電気力線のようすを確認しよう。 「誘電体」に切り替えると,不導体の場合との違いが比較できる。
導体内部に電荷があると仮定すると,そこから電気力線が出ることになり,「導体内部に電場がない」ことと矛盾する。 よって電荷は導体の内部には現れず,表面だけに分布する。
条件:半径 \(r = 0.10\) m の導体球に電気量 \(Q = 2.0 \times 10^{-8}\) C を帯電させた。球の表面のすぐ外側での電場の強さを求めよ。
導体の外側はガウスの法則より点電荷と同じ電場をつくるので
$$ E = k\frac{Q}{r^2} = 9.0 \times 10^{9} \times \frac{2.0 \times 10^{-8}}{(0.10)^2} = 9.0 \times 10^{9} \times 2.0 \times 10^{-6} = 1.8 \times 10^{4} \text{ N/C} $$答え:\(E = 1.8 \times 10^{4}\) N/C(表面のすぐ外側)。導体内部では \(E = 0\) であり、表面で急変する。
「導体内の電場は0」の直感的理解
導体内に電場があると自由電子が力を受けて移動します。移動した電子が新たな電場を作り、元の電場を打ち消します。電子は電場が0になるまで移動し続けるため、最終的に導体内部の電場は必ず0になります。これは「静電平衡」の状態です。
もし電気力線が表面に対して斜めに入射すると,表面に沿った電場成分が生じる。 すると自由電子がその方向に動いてしまい,静電誘導が完了していないことになる。 したがって,平衡状態では電気力線は表面に対して必ず垂直である。
金属のボディに囲まれた自動車の内部は,導体の内部と同様に外部の電場が遮蔽される。 そのため,雷が車体に落ちても車内の人は感電しにくい。 これは静電遮蔽の原理による。
「金属の殻で囲めば,外の電場をシャットアウトできる」——静電遮蔽と接地の仕組みを学ぶ。
導体に中空部分がある場合でも,外部の電場の影響は中空内部には及ばない。 中空部分に電荷がないときには,そこに電場は生じない。 また,中空部分に電荷があるときでも,その電荷による電場は外部の電場の影響を受けない。
地球は非常に大きな導体と考えることができる。 全体が等電位であるから,実用上は地球の電位を電位の基準として \(0\) V とすることが多い。
導体を地球につなぐことを接地(またはアース,earth)という。 接地した導体の電位は地球の電位と等しくなるから \(0\) V である。
帯電した箔検電器の金属板に指で触れると電荷が逃げるのは,人体を通じて接地されたためである。 接地すると導体の電荷は地球へ流れ,導体の電位が \(0\) V になる。
洗濯機や電子レンジなどの電気製品にはアース線が取り付けられている。 故障によって絶縁不良になった場合,外装が帯電して人体に電流が流れる危険がある。 アース線で外装を接地しておけば,電気は地面に逃げるため感電事故を防げる。
「不導体は自由電子をもたないのに,電場の影響を受ける?」——誘電分極の仕組みを学ぶ。
電場の中に不導体(誘電体)を置くと,誘電分極が起こる。 不導体の内部では自由電子が移動することはできないが, 各分子内で正電荷と負電荷の重心がわずかにずれる。 これにより,不導体の表面に分極電荷(正と負)が現れる。
分極電荷がつくる電場は,外部の電場の向きと逆である。 そのため,不導体内部の電場は外部の電場よりも弱くなる。 ただし,導体の場合と異なり電荷が移動できないので,電場を完全には打ち消せない。
| 導体 | 不導体(誘電体) | |
|---|---|---|
| 自由電子 | あり(移動できる) | なし(移動できない) |
| 電場中の現象 | 静電誘導 | 誘電分極 |
| 内部の電場 | \(0\)(完全に打ち消す) | \(0\) にならない(弱まるだけ) |
| 表面の電荷 | 誘導電荷 | 分極電荷 |
条件:一様電場 \(E_0 = 1.0 \times 10^{4}\) N/C の中に比誘電率 \(\varepsilon_r = 4.0\) の誘電体を置いた。誘電体内部の電場の強さを求めよ。
誘電体内部では、分極電荷がつくる電場により電場が \(1/\varepsilon_r\) に弱まる。
$$ E' = \frac{E_0}{\varepsilon_r} = \frac{1.0 \times 10^{4}}{4.0} = 2.5 \times 10^{3} \text{ N/C} $$答え:\(E' = 2.5 \times 10^{3}\) N/C。外部の電場の \(\frac{1}{4}\) に弱まったが、ゼロにはならない(導体ならゼロになる)。
帯電した下敷きの近くに紙片を置くと,紙片内部で誘電分極が起こり, 下敷きに近い側に異符号の分極電荷が現れる。 近い側の引力が遠い側の斥力より大きいため,全体として引き寄せられる。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
導体内部の電場は 0、表面は等電位面になります。誘電体は電場中で分極し、内部の電場が弱まります(誘電率 \(\varepsilon = \varepsilon_r\varepsilon_0\) で電場が \(1/\varepsilon_r\) 倍)。入試ではコンデンサーに誘電体を挿入したとき、容量が \(\varepsilon_r\) 倍になること、電圧一定か電荷一定かで蓄えられるエネルギーの変化が異なることが問われます。
設定:電気容量 \(C_0\)、電圧 \(V_0\) で充電した平行板コンデンサーに比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体を挿入する。
場合1:電池を外した状態(\(Q\) 一定)
場合2:電池に接続した状態(\(V\) 一定)
ポイント:「何が一定か」を見極めることが最重要。電池を外していれば \(Q\) 一定、電池接続中なら \(V\) 一定で計算する。