「電気を蓄えて,必要なときに一気に放出する」——コンデンサーの基本的な仕組みと充電の過程を学ぼう。
面積の等しい大きな 2 枚の金属板を向かい合わせ,それぞれを正と負に帯電させると, 電荷を蓄えることができる。このような装置をコンデンサー(capacitor)という。 この金属板を極板といい,極板どうしが平行なコンデンサーを特に平行板コンデンサーという。
コンデンサーを電池につなぐと,電池は自由電子を極板 A から極板 B に向かって移動させる。 A は正に,B は負に帯電し,電気量は時間とともに増加していく。
極板の電気量が大きくなるにつれて,極板間の電位差も大きくなる。 やがて極板間の電位差が電池の電圧と等しくなると, 自由電子の移動が止まり,電流が \(0\) になる。 その後スイッチを開いても,極板の電荷は失われない。
コンデンサーの「極板の電荷」の本当の意味
「コンデンサーに電荷 \(Q\) が蓄えられる」とは、一方の極板に \(+Q\)、もう一方に \(-Q\) の電荷があるということです。全体の電荷の合計は 0 です。電池がしたのは電荷を作ることではなく、一方から他方へ電荷を移動させる仕事をしたのです。
スマートフォンの静電容量式タッチパネルは、画面全体に微小なコンデンサーの格子を配置しています。指が触れると人体の導電性により静電容量が変化し、触れた位置を検出します。手袋をすると反応しないのは、絶縁体が間に入って静電容量が変化しにくくなるからです。
条件:電気容量 \(C = 47\) \(\mu\)F のコンデンサーに電圧 \(V = 12\) V を加えて充電した。蓄えられる電気量を求めよ。
$$ Q = CV = 47 \times 10^{-6} \times 12 = 5.64 \times 10^{-4} \text{ C} \fallingdotseq 0.56 \text{ mC} $$答え:\(Q \fallingdotseq 5.6 \times 10^{-4}\) C = 0.56 mC。47 \(\mu\)F は電子部品としてはよく使われるサイズである。
カメラのストロボは,コンデンサーに蓄えた電気を瞬間的に放電させることで強い光を発する。 充電には数秒かかるが,放電は一瞬で行われる。 電気二重層コンデンサーは非常に大きな電気容量をもち,電力の貯蔵や一時的な電源としても実用化が進んでいる。
「同じ電圧でも,蓄えられる電気量はコンデンサーによって違う」——その違いを表す量が電気容量 \(C\) である。
コンデンサーの極板間に電圧 \(V\)〔V〕を加えたとき, 2 つの極板には大きさが等しく符号が逆の電気量が蓄えられる。 2 つの極板の電気量をそれぞれ \(+Q\),\(-Q\)〔C〕とすると, \(Q\) は極板間の電位差 \(V\) に比例する。
比例定数 \(C\) はコンデンサーの電気容量という。 この値が大きいほど,同じ電圧でより多くの電荷を蓄えることができる。
電気容量の単位には,1 V の電圧を加えたときに 1 C の電荷を蓄える電気容量をとり, これを 1 ファラド(記号 F)と定める。 実用上は \(10^{-6}\) F を 1 マイクロファラド(記号 \(\mu\)F), \(10^{-12}\) F を 1 ピコファラド(記号 pF)として単位に用いることが多い。
平行板コンデンサーの電気容量 \(C\)〔F〕は,極板の面積と間隔にどのように関係しているだろうか。
極板の片面の面積を \(S\)〔m2〕,極板の間隔を \(d\)〔m〕とすると, 極板間の一様な電場の強さは \(E = \dfrac{Q}{\varepsilon S}\) で与えられる。 電位差 \(V = Ed\) と \(Q = CV\) を組み合わせると,次の式が得られる。
平行板コンデンサーの電気容量は,極板の面積に比例し,極板の間隔に反比例する。 比例定数 \(\varepsilon\) はその誘電体の誘電率(permittivity)という。 真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) は
極板の電荷を \(\pm Q\) とする。ガウスの法則より、極板間の電場の強さは
$$ E = \frac{Q}{\varepsilon S} $$一様電場と電位差の関係 \(V = Ed\) より
$$ V = \frac{Qd}{\varepsilon S} $$\(Q = CV\) に代入して \(C\) について解くと
$$ C = \frac{Q}{V} = \frac{\varepsilon S}{d} $$下のシミュレーションで,極板の面積 \(S\)・間隔 \(d\)・電圧 \(V\) を変えたとき, 電気容量 \(C\),電気量 \(Q\),静電エネルギー \(U\) がどう変化するか確認しよう。
電気容量 \(C = \varepsilon S/d\) はコンデンサーの形状と誘電体の種類だけで決まる量であり, 電圧や電気量には依存しない。
条件:極板面積 \(S = 0.020\) m\(^2\)、極板間隔 \(d = 1.0 \times 10^{-3}\) m の平行板コンデンサー(真空中)の電気容量を求めよ。
$$ C = \varepsilon_0 \frac{S}{d} = 8.85 \times 10^{-12} \times \frac{0.020}{1.0 \times 10^{-3}} $$分子の割り算を整理すると、
$$ = 8.85 \times 10^{-12} \times 20 = 1.77 \times 10^{-10} \text{ F} \fallingdotseq 180 \text{ pF} $$答え:\(C \fallingdotseq 1.8 \times 10^{-10}\) F = 180 pF。実用的なコンデンサー(\(\mu\)F 級)をつくるには、誘電体を挟んで容量を増やす必要がある。
極板間が真空の場合と誘電体を入れた場合の電気容量をそれぞれ \(C_0\),\(C\) とすると, \(\dfrac{C}{C_0} = \dfrac{\varepsilon}{\varepsilon_0}\) となる。 \(\varepsilon_0\) に対する \(\varepsilon\) の比 \(\varepsilon_r = \dfrac{\varepsilon}{\varepsilon_0}\) をその誘電体の比誘電率(relative permittivity)という。 水の比誘電率は約 80,チタン酸バリウムでは約 5000 にもなる。
「並列なら容量が足し算,直列なら逆数が足し算」——抵抗の接続とは逆の関係を理解しよう。
電気容量が \(C_1\),\(C_2\)〔F〕のコンデンサーを並列に接続し,両端に電圧 \(V\)〔V〕を加える。 2 つのコンデンサーの正の極板どうし,負の極板どうしはそれぞれ等電位であるから, 極板間の電位差は等しい。
それぞれの電気量は \(Q_1 = C_1 V\),\(Q_2 = C_2 V\) であるから, 全体の電気量は \(Q = Q_1 + Q_2 = (C_1 + C_2)V\) となる。
電気容量が \(C_1\),\(C_2\)〔F〕のコンデンサーを直列に接続し,両端に電圧 \(V\)〔V〕を加える。 上端,下端の極板にはそれぞれ \(+Q\),\(-Q\)〔C〕の電荷が蓄えられ, 接続部側の極板には静電誘導によって \(-Q\),\(+Q\) の電荷が現れる。
各コンデンサーの電位差をそれぞれ \(V_1 = Q/C_1\),\(V_2 = Q/C_2\) とすると, \(V = V_1 + V_2 = \left(\dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}\right)Q\) となる。
| 並列接続 | 直列接続 | |
|---|---|---|
| 共通の量 | 電圧 \(V\) | 電気量 \(Q\) |
| 和になる量 | 電気量 \(Q = Q_1 + Q_2\) | 電圧 \(V = V_1 + V_2\) |
| 合成容量 | \(C = C_1 + C_2\) | \(\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}\) |
| 抵抗との比較 | 抵抗の直列と同じ形 | 抵抗の並列と同じ形 |
コンデンサーの合成容量の公式は,抵抗の合成の公式と逆の形になる。 並列ではそのまま足し算,直列では逆数の足し算である。混同しないように注意しよう。
条件:\(C_1 = 4.0\) \(\mu\)F と \(C_2 = 6.0\) \(\mu\)F のコンデンサーの、並列と直列の合成容量をそれぞれ求めよ。
並列接続:
$$ C_\text{並} = C_1 + C_2 = 4.0 + 6.0 = 10 \text{ \(\mu\)F} $$直列接続:
$$ \frac{1}{C_\text{直}} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} = \frac{1}{4.0} + \frac{1}{6.0} = \frac{3 + 2}{12} = \frac{5}{12} $$逆数をとって合成容量を求めると、
$$ C_\text{直} = \frac{12}{5} = 2.4 \text{ \(\mu\)F} $$答え:並列 10 \(\mu\)F、直列 2.4 \(\mu\)F。直列の合成容量は各コンデンサーよりも小さくなる。
直列接続では,同じ電気量 \(Q\) を蓄えるのに,各コンデンサーの電圧が合計されるため, 全体として大きな電圧が必要になる。 \(C = Q/V\) より,同じ \(Q\) でも \(V\) が大きいと \(C\) は小さくなる。 耐電圧の低いコンデンサーに高い電圧を加えたいときなどに直列接続が使われる。
コンデンサーに電荷を蓄えるとき、実はエネルギーも蓄えている。「充電されたコンデンサーに電球をつなぐと,一瞬だけ光る」——この現象がその証拠である。
充電したコンデンサーの両極板間を抵抗でつなぐと,負の極板の自由電子が導線を通って正の極板に向かって移動し, 正・負の電気が打ち消される。これをコンデンサーの放電(electric discharge)という。
充電したコンデンサーに電球を接続すると,電球が短時間だけ光る。 このことから,充電されたコンデンサーはエネルギーを蓄えていたと考えることができる。 コンデンサーに蓄えられたエネルギーを静電エネルギーという。
電気容量 \(C\)〔F〕のコンデンサーを電圧 \(V\)〔V〕の電池につないで充電する。 充電の途中で電位差が \(V'\) のとき,小さな電気量 \(\Delta Q\) を移動させるのに必要な仕事は \(\Delta Q \cdot V'\) である。 充電を完了するまでの全仕事 \(W\) は,\(V\text{-}Q\) グラフの三角形の面積に等しく, \(W = \dfrac{1}{2}QV\) となる。 この仕事がそのまま静電エネルギー \(U\) として蓄えられる。
充電の途中で、コンデンサーの電位差が \(V'\) のとき、微小電荷 \(dQ'\) を移すのに必要な仕事は \(dW = V' dQ'\) である。 \(V' = Q'/C\) を代入して全充電にわたって積分すると
$$ U = \int_0^Q \frac{Q'}{C}dQ' = \frac{Q^2}{2C} $$\(Q = CV\) を代入すると3つの表現が得られる。
$$ U = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}CV^2 $$静電エネルギーの 3 つの表現 \(U = \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C}\) は, \(Q = CV\) を使って互いに変換できる。 問題で一定に保たれる量(\(Q\) か \(V\) か)に応じて使いやすい式を選ぶのがポイント。
充電の過程では,電池の両端の電位差は常に \(V\) であるが, コンデンサーの極板間の電位差 \(V'\) はまだ \(V\) に達していない(\(V' < V\))。 このため抵抗に電圧 \(V - V'\) が加わり,電流が流れてジュール熱が発生する。 電池がする仕事 \(QV\) のうち,半分の \(\frac{1}{2}QV\) が静電エネルギーとして蓄えられ, 残りの半分は抵抗でのジュール熱として失われる。
条件:電気容量 \(C = 100\) \(\mu\)F のコンデンサーを電圧 \(V = 200\) V で充電した。蓄えられる静電エネルギーを求めよ。
$$ U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{1}{2} \times 100 \times 10^{-6} \times (200)^2 $$\((200)^2 = 4.0 \times 10^4\) を計算して代入すると、
$$ = \frac{1}{2} \times 100 \times 10^{-6} \times 4.0 \times 10^{4} = 2.0 \text{ J} $$電気量は \(Q = CV = 100 \times 10^{-6} \times 200 = 0.020\) C = 20 mC。\(\frac{1}{2}QV = \frac{1}{2} \times 0.020 \times 200 = 2.0\) J と一致する。
答え:\(U = 2.0\) J。カメラのストロボ発光1回分のエネルギーに相当する。
電気二重層コンデンサー(スーパーキャパシタ)は,通常のコンデンサーの数千倍もの電気容量をもつ。 電池に比べて充放電が速く,寿命も長いため, 回生ブレーキのエネルギー回収や,瞬間的な大電力が必要な機器に利用されている。
「誘電体を挟むと電気容量が増える」——その仕組みと応用を理解しよう。
コンデンサーの極板間に誘電体を入れると,電気容量 \(C\) の値が大きくなる。 これは \(C = \varepsilon S/d\) の式で,誘電率 \(\varepsilon\) が真空の誘電率 \(\varepsilon_0\) よりも大きくなるためである。
充電後にスイッチを切った状態で誘電体を挿入すると, 誘電分極により極板と接する誘電体の表面に極板と反対符号の電荷が現れる。 この分極電荷がつくる電場によって極板間の電場は弱まり,電位差も小さくなる。 しかし,コンデンサーに蓄えられている電荷は減少しない(分極電荷は誘電体の中にとどまり,極板に移れないため)。
| 操作 | 電気量 \(Q\) | 電位差 \(V\) | 電気容量 \(C\) |
|---|---|---|---|
| 電池を外した状態で 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体を挿入 |
変化なし | \(\dfrac{1}{\varepsilon_r}\) 倍 | \(\varepsilon_r\) 倍 |
| 電池に接続した状態で 比誘電率 \(\varepsilon_r\) の誘電体を挿入 |
\(\varepsilon_r\) 倍 | 変化なし | \(\varepsilon_r\) 倍 |
コンデンサーの一部に導体や誘電体を入れると,電気容量が変化する。 このような場合は,コンデンサーをいくつかの部分に分けて,それらの合成容量を求めればよい。
コンデンサー回路で,電源に接続されていない孤立した部分(破線で囲まれた部分)では, 電荷の出入りがないので,電気量の和は接続前後で変化しない。 この「電気量保存」の条件は,コンデンサー回路の問題を解く際のカギとなる。
抵抗 \(R\) とコンデンサー \(C\) の直列回路に電圧 \(V_0\) を加えると、キルヒホッフの法則より:
$$ V_0 = RI + \frac{Q}{C} = R\frac{dQ}{dt} + \frac{Q}{C} $$
この微分方程式を解くと:
$$ Q(t) = CV_0\left(1 - e^{-t/(RC)}\right) $$
電流は電荷の時間微分 \(I = dQ/dt\) から求められる。
$$ I(t) = \frac{V_0}{R}e^{-t/(RC)} $$
\(\tau = RC\) は時定数と呼ばれ、充電が約63%完了する時間です。\(t = 5\tau\) で実用上完全に充電されます。放電の場合は \(Q(t) = Q_0 e^{-t/(RC)}\) と指数減衰します。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
入試では「充電したコンデンサーのスイッチを切り替える」問題が定番です。解法のポイントは①電荷保存(孤立した導体板の合計電荷は変わらない)、②エネルギー保存(ジュール熱を含む)、③キルヒホッフの法則の3つ。特に、同じ容量のコンデンサー2つで電荷を分け合うとエネルギーが半分に減る(残りはジュール熱)ことは頻出テーマです。
並列接続:電圧 \(V\) が共通で、全体の電気量は各コンデンサーの和。
$ Q = Q_1 + Q_2 = C_1 V + C_2 V = (C_1 + C_2)V $よって合成容量は \(C = C_1 + C_2\)。
直列接続:電気量 \(Q\) が共通で、全体の電圧は各コンデンサーの和。
$ V = V_1 + V_2 = \frac{Q}{C_1} + \frac{Q}{C_2} = \left(\frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}\right)Q $よって \(\dfrac{1}{C} = \dfrac{1}{C_1} + \dfrac{1}{C_2}\)。
ポイント:抵抗の合成公式と逆の形になる。
設定:電気容量 \(C\) のコンデンサーを電圧 \(V_0\) で充電し、電池を外してから同じ容量 \(C\) の空のコンデンサーに並列接続する。
電荷保存:初期電荷 \(Q_0 = CV_0\) が2つのコンデンサーに分配される。
$ Q_0 = Q_1 + Q_2, \quad V_1 = V_2 \quad \Rightarrow \quad Q_1 = Q_2 = \frac{Q_0}{2} $共通電圧は \(V = \dfrac{Q_0}{2C} = \dfrac{V_0}{2}\)。
エネルギーの変化:
$ U_\text{初} = \frac{1}{2}CV_0^2, \quad U_\text{終} = 2 \times \frac{1}{2}C\left(\frac{V_0}{2}\right)^2 = \frac{1}{4}CV_0^2 $エネルギーは半分に減少する。失われた \(\dfrac{1}{4}CV_0^2\) は接続時に流れる電流によるジュール熱として消費される。