物理 > 第4編 電気と磁気 > 第2章 電流

② 直流回路

🔌 1. 抵抗の接続

「水路を流れる水のように電流が流れる」——直列接続と並列接続で合成抵抗はどう変わるのか?

クリスマスツリーの電飾で、1つの電球が切れると全部消えてしまうことがあります。これはどんな接続方式?
並列接続
直列接続
直列接続では電流の通り道が1本なので、途中が切れると全体に電流が流れなくなります。家庭のコンセントは並列接続なので、1つの機器が壊れても他には影響しません。

直列接続

複数の抵抗を一列につないだ接続を直列接続(series connection)という。 直列接続では水路が1本道であるのと同様に, どの抵抗にも同じ大きさの電流 \(I\) が流れる

抵抗 \(R_1\),\(R_2\) に加わる電圧をそれぞれ \(V_1\),\(V_2\) とすると, オームの法則より \(V_1 = R_1 I\),\(V_2 = R_2 I\) である。 電源の電圧 \(V\) は各抵抗に加わる電圧の和に等しいから,

$$ V = V_1 + V_2 = R_1 I + R_2 I = (R_1 + R_2) I $$

2つの抵抗を1つの抵抗に置きかえたものを合成抵抗という。

\(R = \)\(R_1 + R_2\)
\(R\)〔\(\Omega\)〕:直列接続の合成抵抗
\(R_1\),\(R_2\)〔\(\Omega\)〕:各抵抗の抵抗値

一般に,\(n\) 個の抵抗 \(R_1, R_2, \cdots, R_n\) を直列接続したときの合成抵抗は

$$ R = R_1 + R_2 + \cdots + R_n $$
📌 ポイント

直列接続では電流は共通(\(I\)),電圧は和(\(V = V_1 + V_2\))。 合成抵抗は各抵抗の和であり,どの抵抗よりも大きくなる。

並列接続

複数の抵抗を並べてつないだ接続を並列接続(parallel connection)という。 並列接続では水路が分岐するのと同様に,各抵抗に同じ電圧 \(V\) が加わる

各抵抗に流れる電流は \(I_1 = \dfrac{V}{R_1}\),\(I_2 = \dfrac{V}{R_2}\) であり, 全体の電流はその和だから,

$$ I = I_1 + I_2 = \frac{V}{R_1} + \frac{V}{R_2} = \left(\frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\right) V $$

この式から,並列接続の合成抵抗 \(R\) は次のように表される。

\(\frac{1}{R} = \)\(\frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
\(R\)〔\(\Omega\)〕:並列接続の合成抵抗
\(R_1\),\(R_2\)〔\(\Omega\)〕:各抵抗の抵抗値

一般に,\(n\) 個の抵抗を並列接続したときの合成抵抗は

$$ \frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \cdots + \frac{1}{R_n} $$
直列接続並列接続
電流共通(同じ \(I\))和(\(I = I_1 + I_2\))
電圧和(\(V = V_1 + V_2\))共通(同じ \(V\))
合成抵抗\(R = R_1 + R_2\)\(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
大きさ各抵抗より大きい各抵抗より小さい
クリスマスの直列ライト家庭のコンセント
🔍 直列・並列の合成抵抗の導出

直列:電流が共通 \(I\) なので,\(V = V_1 + V_2 = R_1 I + R_2 I = (R_1 + R_2)I\)。 合成抵抗 \(R\) とすると \(V = RI\) だから \(R = R_1 + R_2\)。

並列:電圧が共通 \(V\) なので,\(I = I_1 + I_2 = \dfrac{V}{R_1} + \dfrac{V}{R_2} = \left(\dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}\right) V\)。 合成抵抗 \(R\) とすると \(I = \dfrac{V}{R}\) だから \(\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2}\)。

🧮 計算例:直列・並列の合成抵抗

条件:\(R_1 = 6.0\) \(\Omega\) と \(R_2 = 3.0\) \(\Omega\) の合成抵抗を直列・並列それぞれで求めよ。

直列:

$$ R = R_1 + R_2 = 6.0 + 3.0 = 9.0 \text{ \(\Omega\)} $$

次に並列接続の場合、逆数の和で合成抵抗を求める。

$$ \frac{1}{R} = \frac{1}{6.0} + \frac{1}{3.0} = \frac{1 + 2}{6.0} = \frac{3}{6.0} = \frac{1}{2.0} \quad \Rightarrow \quad R = 2.0 \text{ \(\Omega\)} $$

答え:直列 9.0 \(\Omega\)、並列 2.0 \(\Omega\)。並列の合成抵抗は各抵抗より小さくなる。

🏗️ 豆知識:家庭のコンセントは並列接続

家庭の電気配線はすべて並列接続になっている。 そのため,どのコンセントにも同じ電圧(AC100V)が供給される。 もし直列接続だったら,電気機器を増やすたびに各機器に加わる電圧が下がり, 正常に動作しなくなってしまう。

並列接続について正しい記述はどれ?
各抵抗に流れる電流は同じである
各抵抗に加わる電圧は同じである
合成抵抗は各抵抗の和である
合成抵抗は各抵抗より大きくなる
並列接続では電圧が共通で、電流が分かれます。合成抵抗は各抵抗より小さくなります。直列接続と逆の関係ですね。

🔀 2. キルヒホッフの法則

「複雑な回路でも解ける万能ツール」——電気量保存とオームの法則を拡張した2つの法則を学ぶ。

水道管の分岐点で、流れ込む水の量と流れ出る水の量はどうなる?
等しい
流れ出る方が多い
水が分岐点にたまり続けることはないので、流入量=流出量です。電流でも同じことが成り立ち、これがキルヒホッフの第1法則(電流則)の根拠です。

キルヒホッフの法則とは

単純な直列・並列では解けない回路に対して, キルヒホッフの法則(Kirchhoff's laws)が用いられる。 この法則は2つの法則からなる。

キルヒホッフの第1法則(電流則): 回路中の任意の交点(分岐点)について,流れこむ電流の和 = 流れ出る電流の和

これは電荷の保存則から導かれる。交点に電荷がたまり続けることはないから, 流入する電流と流出する電流は常に等しい。

$$ I_1 + I_2 + I_3 = I_4 + I_5 $$
交点に流れこむ電流の合計 = 流れ出る電流の合計
キルヒホッフの第2法則(電圧則): 回路中の一回りの閉じた経路について,起電力の和 = 電圧降下の和

閉じた経路を一周すると,電位は元の値に戻らなければならない。 したがって,電源が押し上げる電位(起電力)と, 抵抗で降下する電位(電圧降下 \(RI\))の和が一致する。

\(E_1 + E_2 = \)\(R_1 I_1 + R_2 I_2\)
\(E\)〔V〕:起電力(電池が電位を上昇させる量)
\(R\)〔\(\Omega\)〕:抵抗値
\(I\)〔A〕:電流

起電力と電圧降下の正負

キルヒホッフの第2法則を適用するとき,まず閉じた経路を一周する向きを決める(どちらでもよい)。

第1法則では電流の向きをどちらかに仮定して計算し, 結果が負になった場合は仮定と逆向きに電流が流れていることを意味する。

📌 ポイント

第1法則は各交点で1つの式,第2法則は各閉路で1つの式を立てる。 未知数の数だけ独立な式を立てて連立方程式を解けば,すべての電流が求まる。

🧮 キルヒホッフの法則の適用手順

Step 1:各枝路の電流の大きさと向きを仮定する(未知数 \(I_1, I_2, \cdots\))。

Step 2:回路中の交点について第1法則を立てる(流入 = 流出)。

Step 3:閉じた経路を1つ選び,一周する向きを決めて第2法則を立てる(起電力の和 = 電圧降下の和)。

Step 4:未知数の数だけ独立な式を立て,連立方程式を解く。

電流の値が負になれば,仮定した向きと逆向きに電流が流れている。

🧮 豆知識:キルヒホッフの法則の使い方 と

キルヒホッフの法則の使い方

キルヒホッフの法則は2つあります。1つ目の電流則(接合点則)では、任意の分岐点に流入する電流の和 = 流出する電流の和です。2つ目の電圧則(閉路則)では、任意の閉回路を一周したとき、起電力の和 = 電圧降下の和です。未知数の数だけ独立な式を立てれば連立方程式として解けます。

理想的な電池(内部抵抗 0)は存在しません。実際の電池は起電力 \(E\) と内部抵抗 \(r\) をもち、端子電圧は \(V = E - Ir\) です。大電流を流すほど端子電圧は下がります。バッテリーが弱くなると内部抵抗が増え、端子電圧が低下するのはこのためです。

🧮 計算例:キルヒホッフの法則で回路を解く

条件:起電力 \(E = 12\) V の電池に、\(R_1 = 4.0\) \(\Omega\) と \(R_2 = 6.0\) \(\Omega\) を直列に接続した。各抵抗の電圧降下を求めよ。

第2法則(閉路則)より

$$ E = R_1 I + R_2 I = (R_1 + R_2)I $$

これを \(I\) について解くと、

$$ I = \frac{E}{R_1 + R_2} = \frac{12}{4.0 + 6.0} = 1.2 \text{ A} $$

各抵抗の電圧降下は

$$ V_1 = R_1 I = 4.0 \times 1.2 = 4.8 \text{ V}, \quad V_2 = R_2 I = 6.0 \times 1.2 = 7.2 \text{ V} $$

答え:\(V_1 = 4.8\) V、\(V_2 = 7.2\) V。確認:\(V_1 + V_2 = 12\) V = \(E\) で第2法則が成り立つ。

🧑‍🔬 豆知識:キルヒホッフとは

グスタフ・キルヒホッフ(G. R. Kirchhoff, 1824-1887)はドイツの物理学者。 回路の法則を1845年にわずか21歳で発表した。 また,ブンゼンとともに分光学の基礎を築き,セシウムとルビジウムを発見した。 黒体放射の法則「キルヒホッフの放射法則」でも知られる。

キルヒホッフの第2法則(電圧則)の内容として正しいのは?
閉回路で起電力の和=電圧降下の和
分岐点で流入電流=流出電流
抵抗に流れる電流は電圧に比例する
第2法則は閉じた経路を一周したときの電位の収支に関する法則です。第1法則が電流則、第2法則が電圧則です。

🔋 3. 電池の起電力と内部抵抗

「電池に電流を流すと端子電圧が下がるのはなぜ?」——電池の内部にも抵抗があることを理解しよう。

スマホを充電しながら使うと、充電がなかなか進まないことがあります。これはなぜ?
電池が壊れているから
電流を使う分だけ充電に回る電流が減るから
充電器の電圧が下がるから
電流を使いながら充電すると、電池の内部抵抗による電圧降下が大きくなり、充電に回る電力が減ります。これは内部抵抗と端子電圧の関係で理解できます。

起電力とは

電池は化学反応により電極間に電位差をつくりだす。 電流が流れていない状態での電池の電極間の電位差を,電池の起電力(electromotive force, EMF)\(E\)〔V〕という。

内部抵抗と端子電圧

電池から電流 \(I\) が流れると,電池の内部にも抵抗(内部抵抗 \(r\))があるため, 内部で電圧降下 \(rI\) が生じる。 その結果,電池の端子間の電圧(端子電圧)\(V\) は起電力より小さくなる

\(V = \)\(E - rI\)
\(V\)〔V〕:端子電圧(電池の外部で測定される電圧)
\(E\)〔V〕:起電力
\(r\)〔\(\Omega\)〕:内部抵抗
\(I\)〔A〕:電流

電流が流れていないとき(\(I = 0\))は \(V = E\) となり,端子電圧は起電力に等しい。 電流が大きくなるほど内部での電圧降下 \(rI\) が大きくなり,端子電圧は下がる。

外部に抵抗 \(R\) をつないだ回路全体にキルヒホッフの第2法則を適用すると,

$$ E = RI + rI = (R + r)I $$

両辺を \((R + r)\) で割って電流について解くと、

$$ I = \frac{E}{R + r} $$
⚠️ 要注意!

起電力 \(E\) と端子電圧 \(V\) は異なる量である。 \(E\) は電池固有の値だが,\(V\) は電流に依存して変化する。 電流を流していないときだけ \(V = E\) となる。

最大消費電力

起電力 \(E\),内部抵抗 \(r\) の電池に外部抵抗 \(R\) を接続したとき, 外部抵抗での消費電力 \(P\) は

$$ P = I^2 R = \frac{E^2 R}{(R + r)^2} $$

この \(P\) が最大になるのは \(R = r\) のときであり,最大値は \(P_{\max} = \dfrac{E^2}{4r}\) となる。

📐 最大消費電力 \(R = r\) の証明

\(P = \dfrac{E^2 R}{(R + r)^2} = \dfrac{E^2}{(\sqrt{R} + \frac{r}{\sqrt{R}})^2 - 2r + 2r}\) を変形すると \(P = \dfrac{E^2}{\left(\sqrt{R} - \dfrac{r}{\sqrt{R}}\right)^2 + 4r}\) 。 分母は \(\sqrt{R} = \dfrac{r}{\sqrt{R}}\),つまり \(R = r\) のとき最小になり, \(P\) は最大値 \(\dfrac{E^2}{4r}\) をとる。

🧮 計算例:内部抵抗と端子電圧

条件:起電力 \(E = 1.5\) V、内部抵抗 \(r = 0.50\) \(\Omega\) の電池に外部抵抗 \(R = 4.5\) \(\Omega\) を接続した。電流と端子電圧を求めよ。

$$ I = \frac{E}{R + r} = \frac{1.5}{4.5 + 0.50} = \frac{1.5}{5.0} = 0.30 \text{ A} $$

求めた電流を使って端子電圧を計算すると、

$$ V = E - rI = 1.5 - 0.50 \times 0.30 = 1.5 - 0.15 = 1.35 \text{ V} $$

答え:\(I = 0.30\) A、\(V = 1.35\) V。内部抵抗で 0.15 V の電圧降下が生じ、端子電圧は起電力より小さい。

🚗 豆知識:自動車のバッテリーと内部抵抗

自動車の鉛蓄電池は起電力約12Vだが,エンジン始動時には数百アンペアの大電流が流れる。 内部抵抗が大きいと端子電圧が大きく低下し,セルモーターが回らなくなる。 古いバッテリーは内部抵抗が増大しているため,冬場にエンジンがかかりにくくなるのはこのためだ。

「起電力 \(E\) の電池に電流 \(I\) を流すと端子電圧は \(V = E - rI\) になる」——○か×か?
×
正しい記述です。内部抵抗 \(r\) による電圧降下 \(rI\) の分だけ端子電圧は起電力より小さくなります。

⚖️ 4. ホイートストンブリッジ

直列・並列の基本を組み合わせると、より高度な回路が理解できる。ホイートストンブリッジはその代表例である。「未知の抵抗を精密に測定する巧みな回路」——ブリッジ回路の平衡条件を理解しよう。

体重計は体の「電気抵抗」を使って体脂肪率を測定しています。抵抗を精密に測るための回路は次のうちどれ?
直列回路
並列回路
ブリッジ回路
ホイートストンブリッジ(ブリッジ回路)は、検流計の電流がゼロになる平衡条件を利用して抵抗を高精度で測定できます。体脂肪計やひずみゲージにも応用されています。

ホイートストンブリッジとは

未知の抵抗値 \(R_x\) を精密に測定する回路として,ホイートストンブリッジ(Wheatstone bridge)がよく用いられる。 抵抗 \(R_1\),\(R_2\),\(R_3\),\(R_x\) と検流計G,電池Eを図のように接続する。

\(R_3\) の値を調節し,検流計Gに電流が流れなくなったとき(ブリッジの平衡),次の関係が成りたつ。

\(\frac{R_1}{R_2} = \)\(\frac{R_3}{R_x}\)
\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\)〔\(\Omega\)〕:既知の抵抗値
\(R_x\)〔\(\Omega\)〕:未知の抵抗値

したがって,\(R_1\),\(R_2\),\(R_3\) の値から \(R_x\) を求めることができる。

$$ R_x = \frac{R_2 R_3}{R_1} $$

平衡条件の導出

検流計に電流が流れないとき,\(R_1\) と \(R_3\) に流れる電流を \(I_1\), \(R_2\) と \(R_x\) に流れる電流を \(I_2\) とする。 検流計の両端は等電位なので,

辺々割ると

$$ \frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_x} \quad \Longrightarrow \quad \frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_x} $$
📌 ポイント

ホイートストンブリッジは,検流計に流れる電流を0にして測定を行う。 そのため検流計の内部抵抗の影響を受けず,抵抗値を精密に測定できる。

メートルブリッジ

ホイートストンブリッジを応用した装置にメートルブリッジがある。 太さが一様で長さ1.00mの抵抗線ab上で接点cを動かし, 検流計に電流が流れない位置を見つける。 抵抗線のac間とcb間の抵抗値の比は長さの比に等しくなるので, ホイートストンブリッジの関係式から未知の抵抗値を求めることができる。

🧮 計算例:ホイートストンブリッジで未知抵抗を求める

条件:ホイートストンブリッジで \(R_1 = 100\) \(\Omega\)、\(R_2 = 200\) \(\Omega\)、\(R_3 = 150\) \(\Omega\) のとき平衡した。未知抵抗 \(R_x\) を求めよ。

平衡条件より

$$ \frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_x} \quad \Rightarrow \quad R_x = \frac{R_2 \times R_3}{R_1} = \frac{200 \times 150}{100} = 300 \text{ \(\Omega\)} $$

答え:\(R_x = 300\) \(\Omega\)。対辺の積が等しい:\(R_1 R_x = R_2 R_3 = 30000\) と確認できる。

🔬 発展:ブリッジ回路の応用

ホイートストンブリッジの原理は,ひずみゲージ(構造物の変形測定), 温度センサー(白金測温抵抗体),圧力センサーなど多くの精密測定に応用されている。 微小な抵抗変化をブリッジの不平衡電圧として高感度に検出できるため, 工学・医療・航空宇宙など幅広い分野で使われている。

ホイートストンブリッジが平衡しているとき、検流計に流れる電流はどうなっている?
最大
ゼロ
平衡時は検流計の両端が等電位になるため、電流はゼロです。この条件を利用して抵抗を精密に測定します。

📏 5. 電流計・電圧計

「電流計は直列に,電圧計は並列に」——測定器の接続方法と測定範囲の拡大について学ぶ。

高速道路の料金所で車の数を数えるには、車が必ず通る場所にカウンターを置く必要があります。電流を測る電流計も同じ発想で、どう接続する?
直列に接続する
並列に接続する
電流を測るには、電流が必ず通る経路に電流計を置く必要があるので直列に接続します。電圧計は2点間の電位差を測るので並列に接続します。

電流計

電流を測定する電流計は,回路に直列に接続する。 電流計の内部にも抵抗(内部抵抗)があり, 回路に接続することで電流が変化してしまう。 この変化を小さくするため,電流計の内部抵抗は小さくつくられている

分流器

電流計の測定範囲を \(n\) 倍に広げるには, 電流計に並列に抵抗を接続して分岐路をつくればよい。 この抵抗を分流器(shunt)という。 電流計の内部抵抗を \(r_\text{A}\) とすると,分流器の抵抗値は

\(R_\text{A} = \)\(\frac{r_\text{A}}{n - 1}\)
\(R_\text{A}\)〔\(\Omega\)〕:分流器の抵抗値
\(r_\text{A}\)〔\(\Omega\)〕:電流計の内部抵抗
\(n\):測定範囲の倍率(\(n \gt 1\))
📐 公式の導出:分流器と倍率器

分流器:測定範囲を \(n\) 倍にするとき,全電流 \(nI_0\) のうち電流計には \(I_0\) だけ流すため,分流器には \((n-1)I_0\) を流す。並列なので電圧が等しいから

$$ r_\text{A} \cdot I_0 = R_\text{A} \cdot (n-1)I_0 \quad \Rightarrow \quad R_\text{A} = \frac{r_\text{A}}{n-1} $$

倍率器:測定範囲を \(n\) 倍にするとき,全電圧 \(nV_0\) を電圧計と倍率器で分担する。直列なので電流が等しいから

$$ nV_0 = I(r_\text{V} + R_\text{V}), \quad V_0 = Ir_\text{V} \quad \Rightarrow \quad R_\text{V} = (n-1)r_\text{V} $$

電圧計

電圧(電位差)を測定する電圧計は,回路に並列に接続する。 電圧計を通じて流れる電流をなるべく小さくするため, 電圧計の内部抵抗は大きくつくられている

倍率器

電圧計の測定範囲を \(n\) 倍に広げるには, 電圧計に直列に抵抗を接続すればよい。 この抵抗を倍率器(multiplier)という。 電圧計の内部抵抗を \(r_\text{V}\) とすると,倍率器の抵抗値は

\(R_\text{V} = \)\((n - 1) r_\text{V}\)
\(R_\text{V}\)〔\(\Omega\)〕:倍率器の抵抗値
\(r_\text{V}\)〔\(\Omega\)〕:電圧計の内部抵抗
\(n\):測定範囲の倍率(\(n \gt 1\))
電流計電圧計
接続方法直列並列
内部抵抗小さい大きい
測定範囲拡大分流器(並列)倍率器(直列)
拡大用抵抗\(\frac{r_\text{A}}{n-1}\)\((n-1)r_\text{V}\)
🧮 計算例:分流器と倍率器の抵抗値

条件1:内部抵抗 \(r_\text{A} = 10\) \(\Omega\) の電流計の測定範囲を5倍にする分流器の抵抗を求めよ。

$$ R_\text{A} = \frac{r_\text{A}}{n - 1} = \frac{10}{5 - 1} = \frac{10}{4} = 2.5 \text{ \(\Omega\)} $$

条件2:内部抵抗 \(r_\text{V} = 5.0\) k\(\Omega\) の電圧計の測定範囲を10倍にする倍率器の抵抗を求めよ。

$$ R_\text{V} = (n - 1) r_\text{V} = (10 - 1) \times 5.0 = 45 \text{ k\(\Omega\)} $$

答え:分流器 2.5 \(\Omega\)、倍率器 45 k\(\Omega\)。分流器は小さい抵抗、倍率器は大きい抵抗であることに注意。

🤔 豆知識:デジタルマルチメーターの内部抵抗

現在広く使われているデジタルマルチメーターの電圧測定モードでは, 入力抵抗が10M\(\Omega\)以上あり,回路への影響はほとんど無視できる。 しかし,高インピーダンス回路の測定では依然として注意が必要である。 オシロスコープのプローブ(通常1M\(\Omega\) or 10M\(\Omega\))も同様の考慮が必要だ。

次の組み合わせで正しいのはどれ?
電流計=並列接続、電圧計=直列接続
電流計=内部抵抗が大きい、電圧計=内部抵抗が小さい
分流器=電流計に並列、倍率器=電圧計に直列
分流器=電流計に直列、倍率器=電圧計に並列
分流器は電流計に並列に接続して電流を分岐させ、倍率器は電圧計に直列に接続して電圧を分担させます。

🔬 6. 起電力の測定

「電流を流さずに起電力を測る」——電位差計の原理を学ぶ。

体温計を脇に挟んで測るとき、体温計自体が体温を奪うことで誤差が出ます。同様に電圧計も回路に影響を与えます。これを避ける工夫は?
電圧計をたくさん並列につなぐ
電流を流さずに電位差を比較する方法を使う
電圧計の内部抵抗をゼロにする
電位差計(ポテンショメーター)は被測定電池に電流を流さない状態で測定するため、内部抵抗の影響を受けずに起電力を正確に測定できます。

電位差計(ポテンショメーター)

電池の起電力を精密に測定する装置に電位差計(potentiometer)がある。 電位差計は,電源,一様な抵抗線ab,検流計Gからなる。

起電力が既知の標準電池 \(E_\text{S}\) を接続し,抵抗線ab上で検流計に電流が流れない位置cを見つける。 このとき acの長さを \(l_\text{S}\) とすると,\(E_\text{S}\) には電流が流れていないので

$$ E_\text{S} = (r \times l_\text{S}) \times I $$

次に,未知の電池 \(E_\text{X}\) に切り替えて同様に点c'の位置を求め,ac'の長さを \(l_\text{X}\) とすると

$$ E_\text{X} = (r \times l_\text{X}) \times I $$

これらの比をとると,電流 \(I\) や抵抗線の抵抗率 \(r\) が消去され,

$$ \frac{E_\text{X}}{E_\text{S}} = \frac{l_\text{X}}{l_\text{S}} $$
\(E_\text{X}\)〔V〕:未知の電池の起電力
\(E_\text{S}\)〔V〕:標準電池の起電力(既知)
\(l_\text{X}\),\(l_\text{S}\)〔m〕:それぞれの平衡点までの長さ

電位差計の利点は,測定時に被測定電池に電流を流さないため, 内部抵抗による電圧降下の影響を受けずに起電力を直接測定できることである。

📌 ポイント

電位差計(ポテンショメーター)は,検流計の電流を0にして測定する点でホイートストンブリッジと同じ発想。 電池に電流を流さないため,起電力そのものを精密に測定できる。

電位差計とホイートストンブリッジに共通する測定原理は?
検流計の電流をゼロにして測定する
電圧計で直接読み取る
オームの法則を使って計算する
どちらも「検流計に電流が流れない(ゼロ法)」という共通原理で精密測定を実現します。測定器の内部抵抗の影響を受けないのが利点です。

🎯 7. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:キルヒホッフの法則

複雑な回路では,キルヒホッフの第1法則(分岐点で電流の和=0)と 第2法則(閉回路で起電力の和=電圧降下の和)を連立して解く。

【解法の手順】

① 各枝に電流の向きを仮定し,\(I_1\),\(I_2\),\(I_3\) … と名付ける

② 分岐点ごとに第1法則を書く:\(I_1 = I_2 + I_3\)

③ 独立な閉回路ごとに第2法則を書く:\(E = I_1 R_1 + I_2 R_2\)

④ 連立方程式を解いて各電流を求める

🧮 ② 典型問題:内部抵抗と端子電圧

起電力 \(E\),内部抵抗 \(r\) の電池に外部抵抗 \(R\) を接続したとき, 回路を流れる電流と端子電圧を求める。

$ I = \frac{E}{R + r}, \quad V = E - Ir = \frac{ER}{R + r} $

ポイント:\(R\) が大きいほど端子電圧 \(V\) は起電力 \(E\) に近づく。 \(R \to \infty\)(開回路)で \(V = E\),\(R = 0\)(短絡)で \(V = 0\) となる。

🎯 ③ 頻出テーマ:ブリッジ回路

ホイートストンブリッジ回路は入試の定番テーマです。\(\frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_4}\) のとき検流計に電流が流れない(平衡条件)。この条件が成り立つとき中央の抵抗は無視でき、回路が簡単になります。非平衡時はキルヒホッフの法則で連立方程式を立てます。

🧮 ④ 典型問題:ホイートストンブリッジの平衡条件

設定:抵抗 \(R_1, R_2, R_3, R_x\) をブリッジ型に接続し、検流計に電流が流れない条件を求める。

導出:検流計に電流が流れないとき、c, d 点は等電位。

(1) を (2) で割ると

$ \frac{R_1}{R_3} = \frac{R_2}{R_x} \quad \Rightarrow \quad R_1 R_x = R_2 R_3 $

これを \(R_x\) について解くと、未知抵抗の値が求まる。

$ \frac{R_1}{R_2} = \frac{R_3}{R_x} \quad \Leftrightarrow \quad R_x = \frac{R_2 R_3}{R_1} $

ポイント:「対角の積が等しい」(\(R_1 R_x = R_2 R_3\))と覚えると使いやすい。平衡時は検流計の内部抵抗に依存しないため、精密な測定が可能。

🔑 まとめ