「スマートフォンもパソコンも半導体なしには動かない」——現代の電子機器を支える半導体の基本的な性質を理解しよう。
半導体は、電気の通しやすさが導体と不導体の中間の物質である。 代表的な半導体材料としてケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)がある。
半導体には金属にはない特徴的な性質がある。
金属は温度が上がると抵抗率が増加するが、半導体は温度が上がると抵抗率が減少する。 これは半導体では温度上昇により自由に動ける電子やホールが増えるためである。
不純物を含まない純粋な半導体を真性半導体(intrinsic semiconductor)という。 Si や Ge は低温では抵抗率が大きく電気を通しにくいが、温度が上がると固体中を移動できる電子などが生じ、電気を通すようになる。
真性半導体に微量の不純物を加えると、電気をはるかに通しやすくなる。これを不純物半導体(extrinsic semiconductor)といい、ダイオードやトランジスターに用いられる。 不純物の種類によってn 型半導体とp 型半導体に分けられる。
シリコン(Si, 4価)にリン(P, 5価)を微量混ぜると、余った電子が自由に動けるn型半導体になります。ホウ素(B, 3価)を混ぜると電子の不足(正孔)が生じるp型半導体になります。p型とn型を接合したのがpn接合ダイオードで、整流作用の基本素子です。
条件:シリコン(半導体)の抵抗率は \(\rho_\text{Si} = 2.3 \times 10^{3}\) \(\Omega\)・m、銅(導体)の抵抗率は \(\rho_\text{Cu} = 1.7 \times 10^{-8}\) \(\Omega\)・m である。抵抗率の比を求めよ。
$$ \frac{\rho_\text{Si}}{\rho_\text{Cu}} = \frac{2.3 \times 10^{3}}{1.7 \times 10^{-8}} \fallingdotseq 1.4 \times 10^{11} $$答え:シリコンの抵抗率は銅の約 \(10^{11}\) 倍。不純物を混ぜると \(10^{-2}\) \(\Omega\)・m 程度まで下げられ、電気の通しやすさを自在に制御できる。
金属(導体)は常に電気を通し、ゴム(絶縁体)は常に電気を通さない。しかし半導体は不純物や温度・光で電気伝導性を制御できる。この「制御可能」という性質が、スイッチや増幅器としての応用を可能にしている。
真性半導体は低温では電気を通しにくい。実用上は不純物を加えて電気伝導性を制御する。「不純物をほんの少し加えるだけで、電気の通り方が劇的に変わる」——n 型と p 型の違いを、結晶構造から理解しよう。
Si や Ge の結晶の中に、微量のリン(P)やアンチモン(Sb)などの5 価の元素(ドナー)を混ぜたものがn 型半導体(n-type semiconductor)である。
Si や Ge の原子は最も外側の電子殻に 4 個の価電子をもち、これを互いに共有した共有結合によって結晶をつくる。 P や Sb は 5 個の価電子をもつから、Si の結晶に微量入ると、そのうちの 4 つが共有結合に加わり、1 個の価電子が余る。この余った電子が結晶内を動きまわることができ、おもな電流の担い手となる。
電流の担い手をキャリア(carrier)というので、
Si や Ge の結晶の中に、微量のアルミニウム(Al)やインジウム(In)などの3 価の元素(アクセプタ)を混ぜたものがp 型半導体(p-type semiconductor)である。
Al や In の原子は価電子を 3 個しかもたないので、共有結合をするには電子が 1 個不足して、電子のない所ができる。 これをホール(正孔、positive hole)という。
電場を与えると、電子が移動してホールを埋める。電子が移ったあとが新しいホールになり、これを別の電子が埋めるというようにして、ホールは電場の向きに移動する。 このようにホールは正の電気をもつ粒子のようにふるまい、おもなキャリアとなる。
| n 型半導体 | p 型半導体 | |
|---|---|---|
| 不純物 | 5 価の元素(P, Sb など) | 3 価の元素(Al, In など) |
| 不純物の名称 | ドナー | アクセプタ |
| キャリア | 電子(負の電荷) | ホール(正の電荷) |
| 名前の由来 | negative(負) | positive(正) |
原子にはエネルギーの異なる電子の層(殻=電子殻)が複数存在する。最も外側の電子殻に入っている電子のうち、原子どうしが結びつくときに重要なはたらきを示す電子を価電子という。 Si は価電子を 4 個もち、隣の Si 原子と 1 個ずつ電子を共有して共有結合をつくる。
「p 型と n 型をつなぎ合わせると、電流が一方向にしか流れない素子ができる」——ダイオードの整流作用を理解しよう。
p 型半導体と n 型半導体をつなぎ合わせ(pn 接合、p-n junction)、両端に電極をつけた電子部品を半導体ダイオード(diode)という。p 型と n 型を接合した面を接合面という。
順方向に電圧を加えると、電場によって p 型の中のホールは n 型へ、n 型の中の電子は p 型へ引かれる。 このホールと電子は pn 接合面付近で 1 対ずつ結合して消える(これを再結合という)。 pn 接合面付近ではキャリアが消滅するが、電極からは新たにキャリアが供給されるため、電流が流れ続ける。
逆方向に電圧を加えると、電場によって p 型のホールは p 型側の電極へ、n 型の電子は n 型側の電極に引かれる。 その結果、pn 接合部付近にはキャリアがほとんど存在しない領域ができ、これを空乏層(depletion layer)という。 p 型と n 型の間に電位差が生じ、電流は流れない。
電圧スライダーで順方向・逆方向バイアスを加えて,キャリアの動きと空乏層の変化,I-V 特性曲線を確認しよう。
半導体ダイオードに電圧を加えた場合の電流 \(I\) と電圧 \(V\) の関係(I-V 特性)は、順方向では指数関数的に電流が増加し、逆方向ではほとんど電流が流れない。 この性質を利用して、電流の向きが周期的に変わる交流を直流に変えることができる(整流)。
条件:起電力 \(E = 6.0\) V の電池にダイオード(順方向電圧降下 \(V_D = 0.60\) V)と抵抗 \(R = 270\) \(\Omega\) を直列に接続した。回路を流れる電流を求めよ。
ダイオードが順方向バイアスのとき、ダイオードの電圧降下を引いた残りが抵抗にかかる。
$$ I = \frac{E - V_D}{R} = \frac{6.0 - 0.60}{270} = \frac{5.4}{270} = 0.020 \text{ A} = 20 \text{ mA} $$答え:\(I = 20\) mA。LED の標準的な駆動電流に相当する。逆方向バイアスでは \(I \fallingdotseq 0\)。
半導体に光が当たると電子が離れてホールとなる。太陽電池はこの現象を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変える素子である。 逆に、順方向の電圧を加えてキャリアが再結合するときに光を放出するのが発光ダイオード(LED)である。
「微弱な信号を大きく増幅する」——トランジスターの増幅作用と、現代の IC 技術を学ぼう。
テレビやラジオ、携帯電話は非常に弱い電気信号(電波)を受信する。この微弱な信号を耳に聞こえる音にするには、電気信号を大きくする(増幅する)必要がある。 電気信号を増幅するはたらき(増幅作用)をもつ電子部品がトランジスター(transistor)である。
3 つの不純物半導体を組み合わせたもので、構成する 3 つの部分をそれぞれエミッタ(E)、ベース(B)、コレクタ(C)という。
| 種類 | 構造 | 説明 |
|---|---|---|
| pnp 型 | p-n-p | 2 つの p 型の間に薄い n 型をはさむ |
| npn 型 | n-p-n | 2 つの n 型の間に薄い p 型をはさむ |
npn 型トランジスターを例にとると、エミッタからベースに向けてキャリア(電子)が送りこまれ、その大部分はコレクタに流れこむ。ベースは非常に薄いため、送りこまれたキャリアの大部分が再結合せずにコレクタへ流れる。
そのため、ベースの電極に流れる電流 \(I_B\)(ベース電流)に比べて、コレクタの電極に流れる電流 \(I_C\)(コレクタ電流)は非常に大きい値となる。この電流の関係を利用すると、
これをトランジスターの増幅作用という。
トランジスターは、ベース電流を制御することによって、コレクタ電流が流れる状態(ON)と、ほとんど流れない状態(OFF)の 2 つの状態をつくることができる。これをトランジスターのスイッチング作用という。 コレクタ電流の ON-OFF によってデジタル信号をつくりだすことができ、計算などの論理的な処理を電気回路で行うことができる。
IC(Integrated Circuit)は集積回路といい、多数のトランジスターやコンデンサー、抵抗などの電子部品(素子)を、きわめて小さい基板上に集積した電気回路である。 多くの場合 1000 個以上の素子を集積した IC を、大規模集積回路(LSI)(Large Scale Integration)という。 現在では 10 億ものトランジスターを実装した LSI も量産されている。
LSI は、コンピュータの主要部品としての CPU(中央処理装置)や RAM(記憶装置)のほか、特定の用途に合わせてプログラムしたり配置を随時変更できる FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、微細加工によってシリコン上に可動部品で実装した MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)など、多様な発展を遂げている。
「集積回路上のトランジスター数は約 2 年ごとに倍増する」というムーアの法則は約 50 年間成り立ってきた。現在の最先端プロセスは 3 nm 以下に達し、原子数十個分の幅でトランジスターをつくっている。物理的な限界が近づく中、3 次元積層や新材料の研究が進んでいる。
シリコン以外にも、ヒ化ガリウム(GaAs)やリン化インジウムガリウム(InGaP)といった化合物半導体が、高速応答性が要求される場面で使われている。LED や半導体レーザーにも化合物半導体が活躍している。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
入試では「ある元素を Si にドープすると何型半導体になるか」を問う問題が頻出です。判断の鍵は、ドープする元素の価電子数です。
「Si に In を加えると何型半導体になるか?」→ In は 3 価なので正孔が多数キャリア → p 型。価電子数が 5 なら n 型、3 なら p 型、と即答できるようにしよう。
p 型と n 型の半導体を接合した pn 接合の界面では、電子と正孔が再結合してキャリアが存在しない空乏層が形成されます。バイアス(外部電圧)によって空乏層の幅が変化し、電流の流れやすさが変わります。
この非対称な電流特性が整流作用の正体です。交流電圧を加えると、順バイアスの半サイクルだけ電流が流れ、交流を直流に変換できます。
ダイオードは順方向に電圧をかけると電流が流れ、逆方向では流れません(理想的な場合)。入試では「ダイオードを含む回路でどの方向に電流が流れるか」を判断する問題が出ます。ダイオードが ON(導通)か OFF(非導通)かを仮定して回路を解き、矛盾がないことを確認するのが解法です。
解法の手順:
ポイント:理想ダイオードでは順方向の電圧降下は 0、逆方向の電流は 0 として計算する。複数のダイオードがある場合は、すべての ON/OFF の組み合わせを試す必要がある場合もある。