物理 > 第4編 電気と磁気 > 第3章 電流と磁場

④ ローレンツ力

🧲 1. ローレンツ力

「磁場の中で電荷が力を受ける」——電流が磁場から受ける力の正体は,個々の荷電粒子にはたらくローレンツ力だ。

オーロラはなぜ北極・南極付近でしか見えないのでしょう?
極地は気温が低く光りやすいから
太陽に近いから
地球の磁力線が極地に集中し、荷電粒子が導かれるから
太陽風の荷電粒子は地球の磁場からローレンツ力を受けてらせん運動をしながら磁力線に沿って極地方へ導かれます。大気分子と衝突して発光するのがオーロラです。

導線の力から1個の電荷へ

磁場中に置いた導線に電流を流すと,導線は力を受ける。 電流の正体は電子の流れであるから,この力は導線内を運動する個々の荷電粒子が磁場から受ける力の総和と考えられる。

一般に,電気を帯びた粒子(荷電粒子)が磁場の中を運動すると力を受ける。 この力をローレンツ力(Lorentz force)という。

💡
ローレンツ力(Lorentz force): 磁場中を運動する荷電粒子が磁場から受ける力。オランダの物理学者ローレンツにちなむ。

ローレンツ力の大きさ

電気量 \(q\)〔C〕の荷電粒子が,磁束密度 \(B\)〔T〕の磁場の中を, 磁場に垂直な方向に速さ \(v\)〔m/s〕で運動しているとき, ローレンツ力の大きさ \(f\)〔N〕は次の式で表される。

\(f = \)\(qvB\)
\(f\)〔N〕:ローレンツ力の大きさ
\(q\)〔C〕:電気量の大きさ
\(v\)〔m/s〕:荷電粒子の速さ
\(B\)〔T〕:磁束密度の大きさ

粒子の速度が磁場と角 \(\theta\) をなしているときは,磁場と垂直な速度成分 \(v\sin\theta\) を考えて,

$$ f = qvB\sin\theta $$
\(\theta\):速度と磁場のなす角

シミュレーション:ローレンツ力を体験しよう

速度 v・磁束密度 B・角度 θ を変えてローレンツ力の大きさと向きを確認しよう。 電荷の正負を切り替えると力の向きが反転する。

ローレンツ力の向き

ローレンツ力の向きは,フレミングの左手の法則を荷電粒子に適用して求められる。 ただし注意が必要なのは,電流の向きを指す中指には「正電荷の速度の向き」を当てること。

⚠️ 要注意!

ローレンツ力は速度に垂直にはたらく。 よって,ローレンツ力は荷電粒子の速さを変えず(仕事をせず),運動の向きだけを変える

🤔 豆知識:「ローレンツ力は仕事をしない」理由

ローレンツ力 \(\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}\) は常に速度と垂直です。力と移動方向が垂直なので仕事は \(W = \vec{F}\cdot\vec{v} \cdot dt = 0\) です。つまり磁場は荷電粒子の速さを変えず、向きだけを変えます。サイクロトロン運動で粒子の速さが一定なのはこのためです。

🧮 計算例:ローレンツ力の大きさ

条件:磁束密度 \(B = 0.20\) T の磁場中を、電子(\(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C)が速さ \(v = 5.0 \times 10^{6}\) m/s で磁場に垂直に運動している。ローレンツ力を求めよ。

$$ F = evB = 1.6 \times 10^{-19} \times 5.0 \times 10^{6} \times 0.20 = 1.6 \times 10^{-13} \text{ N} $$

答え��\(F = 1.6 \times 10^{-13}\) N。力は速度と磁場の両方に垂直な向きにはたらき、電子は円運動する。

🌌 豆知識:オーロラとローレンツ力 と

オーロラとローレンツ力

オーロラは、太陽風の荷電粒子が地球の磁場からローレンツ力を受けてらせん運動をしながら極地方の大気に突入し、大気分子を励起して発光する現象です。酸素原子は緑(558nm)や赤(630nm)、窒素分子は青紫に発光します。オーロラが極地にしか現れないのは、磁力線が極地方に集中するためです。

ヘンドリック・ローレンツ(1853–1928)はオランダの理論物理学者。 電子論を提唱し,荷電粒子に対する電磁気力の一般式(ローレンツ力)を定式化した。 ローレンツ変換の名でも知られ,アインシュタインの特殊相対性理論の先駆者でもある。 1902年にノーベル物理学賞を受賞した。

ローレンツ力の性質として正しいのは?
荷電粒子の速さを大きくする
速度と同じ向きにはたらく
速度に垂直にはたらき、仕事をしない
ローレンツ力は常に速度に垂直なので仕事をしません。速さは変えず、運動の向きだけを変えます。だから等速円運動が起こるのです。

🔄 2. 磁場中の荷電粒子の円運動

ローレンツ力は常に速度に垂直にはたらくため、粒子の速さは変わらないが向きだけが変わる。これにより、磁場に垂直に入射した荷電粒子は円を描く——ローレンツ力が向心力となり、等速円運動が生じるのだ。

磁場に垂直に入射した荷電粒子が円運動するとき、速さが2倍になると周期はどうなる?
変わらない
2倍になる
半分になる
周期 \(T = \dfrac{2\pi m}{qB}\) には速さ \(v\) が含まれません。速さが変わっても周期は同じ!これがサイクロトロンの原理に使われる重要な性質です。

磁場に垂直に入射する場合

磁束密度 \(B\)〔T〕の一様な磁場の中に,質量 \(m\)〔kg〕,電気量 \(q\)〔C〕の荷電粒子が, 磁場に垂直に速さ \(v\)〔m/s〕で入射した場合を考える。

磁場からは運動方向に垂直にローレンツ力 \(f = qvB\) を受ける。 ローレンツ力は速度に常に垂直なので仕事をしない。 よって粒子の速さ \(v\) は一定に保たれる。 ローレンツ力の大きさも一定であり,この力が向心力となって粒子は等速円運動をする。

円運動の半径

等速円運動の運動方程式 \(m\dfrac{v^2}{r} = qvB\) より,円軌道の半径 \(r\) が求まる。

\(r = \)\(\frac{mv}{qB}\)
\(r\)〔m〕:円軌道の半径
\(m\)〔kg〕:荷電粒子の質量
\(v\)〔m/s〕:荷電粒子の速さ
\(q\)〔C〕:電気量の大きさ
\(B\)〔T〕:磁束密度の大きさ

円運動の周期

等速円運動の周期 \(T = \dfrac{2\pi r}{v}\) に \(r = \dfrac{mv}{qB}\) を代入すると,

\(T = \frac{2\pi r}{v} = \)\(\frac{2\pi m}{qB}\)
\(T\)〔s〕:円運動の周期
📌 ここが超重要

周期 \(T = \dfrac{2\pi m}{qB}\) は速さ \(v\) によらない。 つまり同じ種類の粒子(\(\dfrac{q}{m}\) が同じ)なら,速さが異なっても同じ周期で円運動する。 この性質がサイクロトロンの原理に利用される。

🧮 計算���:磁場中の電子の円運動の半径と周期

条件:電子(\(m = 9.1 \times 10^{-31}\) kg、\(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C)が速さ \(v = 2.0 \times 10^{7}\) m/s で磁束密度 \(B = 0.010\) T の磁場に垂直に入射した。円運動の半径と周期を���めよ。

$$ r = \frac{mv}{eB} = \frac{9.1 \times 10^{-31} \times 2.0 \times 10^{7}}{1.6 \times 10^{-19} \times 0.010} = \frac{1.82 \times 10^{-23}}{1.6 \times 10^{-21}} \fallingdotseq 0.011 \text{ m} = 1.1 \text{ cm} $$

次に周期について求めると、

$$ T = \frac{2\pi m}{eB} = \frac{2\pi \times 9.1 \times 10^{-31}}{1.6 \times 10^{-19} \times 0.010} = \frac{5.72 \times 10^{-30}}{1.6 \times 10^{-21}} \fallingdotseq 3.6 \times 10^{-9} \text{ s} = 3.6 \text{ ns} $$

答え:\(r \fallingdotseq 1.1\) cm、\(T \fallingdotseq 3.6\) ns。周期は速さに依存しない(サイクロトロン条件)。

📐 公式の導���:円運動の半径と周期

ローレンツ力が向心力となるので,等速円運動の運動方程式は

$$ m\frac{v^2}{r} = qvB $$

両辺を \(v\) で割ると

$$ \frac{mv}{r} = qB \quad \Rightarrow \quad r = \frac{mv}{qB} $$

周期は

$$ T = \frac{2\pi r}{v} = \frac{2\pi}{v} \cdot \frac{mv}{qB} = \frac{2\pi m}{qB} $$

\(v\) が約分されるため,周期は速さに依存しない。

比電荷

質量に対する電気量の比 \(\dfrac{q}{m}\)〔C/kg〕を,その荷電粒子の比電荷(specific charge)という。 同じ比電荷をもつ粒子は同じ周期で円運動するため, 磁場中での円運動を観測することで未知の粒子の種類を特定する手がかりとなる。

💡
比電荷(specific charge): 荷電粒子の電気量 \(q\) と質量 \(m\) の比 \(\dfrac{q}{m}\)〔C/kg〕。粒子の種類を特徴づける量。
❓ なぜ「速さが違っても周期が同じ」なのか

速さが大きい粒子は大きな円を描く(\(r \propto v\))。 円周の長さは半径に比例するので(\(2\pi r \propto v\)), 速い粒子は「大きな円を速く」,遅い粒子は「小さな円をゆっくり」回る。 その結果,1周にかかる時間は同じになる。

磁場に垂直に入射した荷電粒子の円運動の半径 \(r = \dfrac{mv}{qB}\) について。速さ \(v\) が2倍になると半径はどうなる?
半径は半分になる
半径は2倍になる
半径は変わらない
半径は4倍になる
\(r = \dfrac{mv}{qB}\) より、半径は速さ \(v\) に比例します。速さが2倍なら半径も2倍です。ただし周期は変わりません。

🌀 3. らせん運動

「磁場に斜めに入射すると?」——粒子は円運動と等速直線運動を合成したらせん運動を行う。

ねじを回すとき、ねじは「回転しながら前進」しますね。荷電粒子が磁場に斜めに入射すると同じような動きをします。この運動は何という?
放物運動
らせん運動
単振動
磁場に垂直な速度成分が円運動を、平行な成分が等速直線運動をするため、合成すると「らせん(ヘリックス)」になります。オーロラの荷電粒子もこのらせん運動をしています。

磁場に斜めに入射する場合

荷電粒子が磁場と角 \(\theta\) で入射する場合,速度を2つの成分に分解して考える。

この2つの運動を合成すると,粒子の軌道はらせん(ヘリックス)になる。

3Dで見るらせん運動

入射角 \(\alpha\) と磁場の強さ \(B\) を変えて,らせん運動の半径・ピッチがどう変わるか確認しよう。 \(\alpha = 0°\) で磁場方向の直進,\(\alpha = 90°\) で円運動になる。

$$ \text{らせんの半径:} r = \frac{mv\sin\theta}{qB} $$
\(\theta\):速度と磁場のなす角
\(v\sin\theta\):磁場に垂直な速度成分
🌏 豆知識:オーロラとらせん運動

太陽から飛来する荷電粒子(太陽風)は,地球の磁場の中でらせん運動を行い, 磁力線に沿って極地方へ導かれる。 これらの粒子が高層大気の分子と衝突して発光する現象がオーロラである。 オーロラが極地で多く見られるのは,磁力線が地表に向かって集中しているためだ。

荷電粒子が磁場に斜めに入射すると、磁場に平行な速度成分は力を受けない——○か×か?
×
正しいです。ローレンツ力は速度の磁場に垂直な成分にのみはたらきます。平行成分は力を受けず等速直線運動を続けるため、全体としてらせん運動になります。

⚙️ 4. サイクロトロン

「周期が速さによらない」性質を利用して,荷電粒子を高エネルギーまで加速する装置がサイクロトロンだ。

がん治療に使われる「重粒子線治療」では、炭素イオンを光速の約70%まで加速して腫瘍に照射します。この加速に使われる装置の原型は?
電子レンジ
サイクロトロン
MRI
サイクロトロンは荷電粒子を繰り返し加速する装置で、1930年代にローレンスが発明しました。現在の重粒子線治療装置はサイクロトロンの発展形(シンクロトロン)です。

加速器とは

電場や磁場によって荷電粒子を加速する装置を加速器(accelerator)という。 加速された高エネルギーの荷電粒子は,原子核や他の粒子に衝突させる実験などに利用される。 また,高エネルギーの荷電粒子が放射するX線(放射光)は,物質の構造解析をはじめ多くの用途に使われている。

サイクロトロンの原理

粒子の加速器の一つにサイクロトロン(cyclotron)がある。 D字形の中空の加速電極 D1,D2 を対向させて真空中に置き,この面に垂直に磁場を与える。

イオン源から出た荷電粒子は D1 に入り,円軌道を描いて D1 を出る。 D1 と D2 の間(ギャップ)で電圧を加えると粒子は加速される。 速さの増した粒子が D2 に入ると,さらに大きな半円を描いてギャップへ出る。 このとき前とは逆向きの電圧を加えると,粒子は再び加速される。

このくり返しによって粒子はギャップを通過するたびに速くなる。 ここで重要なのは,粒子が半周するのに要する時間 \(\dfrac{T}{2} = \dfrac{\pi m}{qB}\) が速さによらないことだ。 したがって,粒子の回転の周期に合わせた交流電圧を加えればよい。

シミュレーション:サイクロトロンの加速

D字型電極内で粒子が加速される様子を観察しよう。 ギャップを通るたびに速さが増し、軌道半径が大きくなるが、半周期は一定のままだ。

$$ \text{半周の時間:}\frac{T}{2} = \frac{\pi m}{qB} \quad (\text{速さに依存しない}) $$
軌道半径:\(r = \dfrac{mv}{qB}\)(速さに比例して大きくなる)
🧮 計算例:サイクロトロンの交流周波数

条件:磁束密度 \(B = 1.5\) T のサイクロトロンで陽子(\(m = 1.67 \times 10^{-27}\) kg、\(q = 1.6 \times 10^{-19}\) C)を加速する。交流電圧の周波数を求めよ。

$$ f = \frac{qB}{2\pi m} = \frac{1.6 \times 10^{-19} \times 1.5}{2\pi \times 1.67 \times 10^{-27}} = \frac{2.4 \times 10^{-19}}{1.049 \times 10^{-26}} \fallingdotseq 2.3 \times 10^{7} \text{ Hz} = 23 \text{ MHz} $$

答え:\(f \fallingdotseq 23\) MHz。この周波数は速さに依存しないので、加速の全過程で一定の交流周波数を使える。

🚀 豆知識:サイクロトロンとシンクロトロン

サイクロトロンは粒子が高速になると相対論的な質量増加により周期がずれるため, 高エネルギー加速には限界がある。 そこで磁場の強さと加速電圧の周波数を粒子の速さに合わせて変化させ, 一定半径の軌道で加速するシンクロトロンが開発された。 CERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)はシンクロトロンの一種である。

サイクロトロンで粒子が加速されても半周の時間が変わらない理由は?
速さが増すと半径も同じ割合で増すから
磁場が速さに比例して強くなるから
\(r = \dfrac{mv}{qB}\) より、速さ \(v\) が増すと半径 \(r\) も同じ割合で増えます。大きな円を速く回るので、半周にかかる時間 \(\dfrac{\pi m}{qB}\) は一定です。

🔋 5. ホール効果

「ローレンツ力で電流の正体がわかる」——導体や半導体のキャリア(電流の担い手)の正負や密度を調べる手法がホール効果だ。

スマホを回転させると画面が自動で縦横切り替わりますよね。この検出に使われるセンサーの原理は?
光の屈折
音波の反射
ホール効果(磁気センサー)
スマホの電子コンパスやフリップカバーの開閉検知にはホール素子(ホール効果を利用した磁気センサー)が使われています。ホール効果は磁場中の電流にローレンツ力がはたらくことで生じる電圧です。

ホール効果とは

電流が流れている導体や半導体の板に,電流に垂直な方向から磁場を加えると, 電流と磁場の両方に垂直な方向に電位差(ホール電圧)が生じる。 この現象をホール効果(Hall effect)という。

💡
ホール効果(Hall effect): 電流と磁場が垂直のとき,両者に垂直な方向にホール電圧が生じる現象。アメリカの物理学者ホールが発見(1879年)。

シミュレーション:ホール効果

導体板内のキャリア(電子/正孔)がローレンツ力で偏る様子を観察しよう。 キャリアの種類を切り替えるとホール電圧の極性が反転する。

ホール効果のしくみ

電流を担う荷電粒子(キャリア)がローレンツ力を受けて曲げられ, 板の片面に集まることで電場が生じる。 やがてこの電場による力 \(qE\) がローレンツ力 \(qvB\) とつりあい,定常状態になる。

つりあいの条件 \(qE = qvB\) より \(E = vB\) が成り立つ。 板の厚さを \(d\),ホール電圧を \(V_\text{H}\) とすると,

\(V_\text{H} = \)\(vBd\)
\(V_\text{H}\)〔V〕:ホール電圧
\(v\)〔m/s〕:キャリアの速さ
\(B\)〔T〕:磁束密度
\(d\)〔m〕:板の厚さ

電流 \(I = envS\)(\(n\) は単位体積あたりのキャリア数,\(S = hd\) は断面積)を代入すると,

$$ V_\text{H} = \frac{IB}{enh} $$
\(I\)〔A〕:電流
\(n\)〔1/m³〕:単位体積あたりのキャリア数
\(h\)〔m〕:板の幅(電流方向に垂直)
📐 公式の導出:ホール電圧 \(V_\text{H} = vBd\)

キャリア(電荷 \(q\))が速さ \(v\) で磁束密度 \(B\) の磁場中を運動すると,ローレンツ力 \(f = qvB\) を受けて板の片面に集まる。

これにより電場 \(E\) が生じ,電場による力 \(qE\) がローレンツ力とつりあうと定常状態になる。

$$ qE = qvB \quad \Rightarrow \quad E = vB $$

板の厚さを \(d\) とすると,ホール電圧は

$$ V_\text{H} = Ed = vBd $$

ホール効果でわかること

📌 ポイント

キャリアが電子(負電荷)の場合と正孔(正電荷)の場合では, ローレンツ力で集まる面は同じだが,電荷の符号が異なるためホール電圧の向き(高電位の面)が逆になる。 これによりキャリアの正負を判定できる。

💻 豆知識:ホール素子の応用

ホール効果を利用したホール素子は,磁気センサーとして広く使われている。 スマートフォンの電子コンパス,自動車のエンジン制御(回転数センサー), ノートPCの蓋の開閉検知など,身近な場面で活躍している。

📐 発展:微積分で見るサイクロトロン運動

質量 \(m\)、電荷 \(q\) の荷電粒子が一様磁場 \(\vec{B}\) 中を運動するとき:

$$ m\frac{d\vec{v}}{dt} = q\vec{v} \times \vec{B} $$

磁場が z 方向(\(\vec{B} = B\hat{z}\))の場合、成分で書くと:

$$ m\dot{v}_x = qBv_y, \quad m\dot{v}_y = -qBv_x $$

これらは連立微分方程式で、解は \(v_x = v_0\cos\omega_c t\)、\(v_y = -v_0\sin\omega_c t\)(\(\omega_c = qB/m\):サイクロトロン角振動数)。粒子は半径 \(r = mv_0/(qB)\) の円運動をし、その周期 \(T = 2\pi m/(qB)\) は速度に依存しません。

ホール効果で判定できないものはどれ?
キャリアの正負
キャリアの密度
磁束密度の大きさ
キャリアの質量
ホール効果では電荷 \(q\)、密度 \(n\)、速さ \(v\)、磁束密度 \(B\) を調べられますが、質量 \(m\) は直接測定できません。質量の測定には円運動の半径(質量分析器)を使います。

🎯 6. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:電場と磁場の複合問題

速度選別器(\(qE = qvB\) より \(v = E/B\))で特定の速度の粒子だけを選別し、その後磁場中で円運動させて質量や電荷を求めるのが質量分析器の原理です。入試ではこれらを組み合わせた問題が頻出。ポイントは「電場から受ける力 \(qE\) とローレンツ力 \(qvB\) の釣り合い」と「円運動の半径 \(r = mv/(qB)\)」の2つの式を使い分けることです。

🧮 ② 典型問題:速度選別器+質量分析器

設定:電場 \(E\) と磁場 \(B_1\) が直交する速度選別器を通過した荷電粒子(電荷 \(q\))が、磁束密度 \(B_2\) の磁場中で半径 \(r\) の円運動をする。粒子の質量 \(m\) を求めよ。

Step 1:速度選別器

電場による力 \(qE\) とローレンツ力 \(qvB_1\) がつりあう粒子のみ直進する。

$ qE = qvB_1 \quad \Rightarrow \quad v = \frac{E}{B_1} $

Step 2:質量分析器

磁場 \(B_2\) 中での円運動の半径は \(r = \dfrac{mv}{qB_2}\) であるから

$ m = \frac{qB_2 r}{v} = \frac{qB_1 B_2 r}{E} $

ポイント:速度選別器では \(v = E/B_1\) が粒子の質量・電荷に依存しないことが重要。質量分析器では同じ速度の粒子が質量に応じて異なる半径で曲がるため、質量の異なるイオンを分離できる。

🔑 まとめ