物理 > 第4編 電気と磁気 > 第4章 電磁誘導と電磁波

⑤ 電磁波

📡 1. 電磁波の発見と発生

「光は電磁波の一種である」——マクスウェルの理論的予言とヘルツの実験的証明が、電磁気学と光学を統一した。

電子レンジで食品が温まるのはなぜ?
電気で発熱体を温めている
赤外線を当てている
マイクロ波(電磁波)で水分子を振動させている
電子レンジは2.45GHzのマイクロ波(電磁波の一種)を照射し、食品中の水分子を振動させて発熱させています。

マクスウェルの予言

マクスウェル(イギリス)は、電磁気についての理論的な研究から、 変動する電場・磁場が光の速さ \(c\) と等しい速さで横波として真空中でも伝わることに気づき、 光もこの波の一種であると予言した。

その後、ヘルツ(ドイツ)はこの波の発生を実験的に確かめた。 この波は電磁波(electromagnetic wave)とよばれるようになり、 さまざまな光の現象が波長の短い電磁波として説明できることが示され、 光が電磁波の一種であることが確立された。

💡
電磁波(electromagnetic wave): 電場と磁場の振動が空間を伝わる横波真空中でも伝搬でき、光速 \(c = 3.0 \times 10^8 \text{ m/s}\) で進む。
$$ \text{磁場の変化} \to \text{電場の発生} \to \text{磁場の発生} \to \cdots \quad (\text{連鎖}) $$
変動する電場が磁場を生み、変動する磁場が電場を生む
この連鎖が空間を光速で伝わるのが電磁波

磁場の変化により生じる電場

電磁誘導で学んだように、コイルを貫く磁場が変化すると、コイルに電流が流れる。 これは、コイルの内部に電場(誘導電場)が生じたためである。 一般に、コイルがなく真空中であっても、

📌 ポイント 磁場が変化すると、そのまわりの空間に電場が生じる

電場の変化により生じる磁場

マクスウェルは,変化する電場がコンデンサーの極板間にも磁場を生み出すと考えた。電流が流れていない空間でも,電場の時間変化が磁場を作る——これを変位電流の考え方という。この発想により,電磁波の存在が理論的に予言された。

逆に、コンデンサーの極板間に交流電圧を加えて電場を変化させると、 そのまわりの空間に環状の磁場が生じる。 この磁場は、コンデンサーの極板間を電流がそのまま流れたと考えたときに生じる磁場に等しい。

📌 ポイント 電場が変化すると、そのまわりの空間に磁場が生じる

電磁波の発生

振動回路に電気振動が起こると、コンデンサーの極板間に振動する電場が生じる。 この振動する電場によって振動する磁場が生じ、 さらにその磁場の変化によって電場がつくられる。 このようにして、次々に発生する電場の電気力線と磁場の磁力線の振動が極板から離れて遠方へ伝わっていく。 この波が電磁波である。

電磁波の送信アンテナは、コンデンサーの極板を変形させて電磁波が空間へ出やすくしたものである。

シミュレーション:電磁波の放射

振動する電荷(アンテナ)から電磁波が放射される様子を観察しよう。 振動数を変えると波長が変化する。

🧑‍🔬 豆知識:ヘルツの実験

ハインリヒ・ヘルツ(1857-1894)は1888年、火花放電を利用した振動回路で電磁波を発生させ、 離れた場所に置いた受信用のリング(共振器)に火花が飛ぶことを確認した。 これがマクスウェルの予言した電磁波の最初の実験的検出である。 ヘルツはさらに、電磁波の反射・屈折・干渉・偏りも確認し、 電磁波が光と同じ性質をもつことを示した。

🔬 発展:変位電流

マクスウェルは、コンデンサーの極板間で電場が変化するとき、 実際に電荷が移動していなくても磁場が生じることを理論的に示した。 この「電場の変化が磁場をつくる」効果を変位電流とよぶ。 変位電流の発見により、電磁場の方程式が完成し、電磁波の存在が予言された。

電磁波は縦波?横波?
縦波
横波
電磁波は電場と磁場が進行方向に対して垂直に振動する横波です。

🌊 2. 電磁波の性質

マクスウェルは、変化する電場が磁場を生み、変化する磁場が電場を生むことを示した。この連鎖が空間を伝わるのが電磁波である——電場と磁場が互いに直交しながら光速で進む横波だ。

太陽の光が地球に届くのに約8分かかる。太陽までの距離は約1.5億km。光の速さは秒速何万km?
約3万 km/s
約30万 km/s
約300万 km/s
光(電磁波)の真空中の速さは \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s = 約30万 km/sです。

電場と磁場の振動方向

電磁波では、電場磁場が進行方向に垂直に、 かつ互いに垂直な方向に振動する。 電場と磁場は同位相で振動する(山と山、ゼロとゼロが一致する)。

電場から磁場のほうへ右ねじを回したとき、右ねじの進む向きが電磁波の進行方向である。

シミュレーション:電磁波の伝搬

電場(赤)と磁場(青)の振動の様子を観察しよう。 波長スライダーを操作して、\(c = f\lambda\) の関係を確認できる。

3Dで見る電磁波

電場(青)がx方向に、磁場(赤)がy方向に振動しながら、z軸方向に伝搬する様子を3次元で観察しよう。 マウスドラッグで視点を回転でき、Eと Bが常に互いに直交していることを確認できる。

電磁波の速さ

電磁波は真空中を光の速さ \(c\) で伝わる。 真空の誘電率を \(\varepsilon_0\)、透磁率を \(\mu_0\) とすると、 \(c\) は次のように表される。

\(c = \)\(\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}}\)
\(c\)〔m/s〕:光速(\(= 3.0 \times 10^8\) m/s)
\(\varepsilon_0\)〔F/m〕:真空の誘電率
\(\mu_0\)〔H/m〕:真空の透磁率

電気振動によって生じた電磁波の振動数 \(f\)〔Hz〕は、振動回路の固有周波数に等しい。 波の基本式より、

\(c = \)\(f\lambda\)
\(c\)〔m/s〕:電磁波の速さ(光速)
\(f\)〔Hz〕:振動数
\(\lambda\)〔m〕:波長

偏りと横波

電波の送信アンテナと受信アンテナの角度を平行にすると電波をよく受信できるが、 直角にすると受信しにくくなる。 これは電磁波が一定方向に偏って振動している横波であることを示している。

回折と干渉

波長が長い電磁波ほど回折しやすい性質がある。 FM放送(超短波)に比べて、AM放送(中波)は建物や山かげに電波が届きやすい。 また、回折した電磁波が互いに重なりあって干渉する場合がある。

遮蔽と反射・屈折

トンネルの中ではAM放送でも受信しにくい。このように電磁波は遮蔽される性質がある。 また、電磁波が金属板によって反射される性質は、衛星通信用のパラボラアンテナにも応用されている。 電磁波をパラフィンなどの面に斜めに当てると、透過するときに屈折する。

📡 豆知識:電磁波のスペクトルと用途

電磁波は波長によって名前と用途が変わります。電波(通信)、マイクロ波(電子レンジ・Wi-Fi)、赤外線(リモコン・暗視)、可視光(照明・光ファイバー)、紫外線(殺菌)、X線(医療撮影)、\(\gamma\)線(がん治療)。しかしすべて同じ電磁波で、速さは真空中で光速 \(c = 3 \times 10^8\) m/s です。

🧮 計算例:電磁波の速さの検証

条件:真空の誘電率 \(\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\) F/m と真空の透磁率 \(\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\) N/A\(^2\) から、電磁波の速さ \(c\) を計算せよ。

$$ c = \frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}} = \frac{1}{\sqrt{8.85 \times 10^{-12} \times 4\pi \times 10^{-7}}} $$

積を計算して平方根を整理すると、

$$ = \frac{1}{\sqrt{8.85 \times 12.57 \times 10^{-19}}} = \frac{1}{\sqrt{1.112 \times 10^{-17}}} = \frac{1}{1.055 \times 10^{-8.5}} $$

これを数値計算すると、

$$ \fallingdotseq 3.00 \times 10^{8} \text{ m/s} $$

答え:\(c \fallingdotseq 3.0 \times 10^{8}\) m/s。光速と一致する。マクスウェルはこの計算から「光は電磁波である」と結論づけた。

📶 豆知識:Wi-Fiと電子レンジが同じ周波数を使う理由 と

Wi-Fiと電子レンジが同じ周波数を使う理由

Wi-Fi(2.4GHz帯)と電子レンジは同じ周波数帯を使っています。電子レンジは水分子の共鳴周波数に近い2.45GHzのマイクロ波で食品を加熱します。2.4GHz帯は「ISM帯」と呼ばれる産業・科学・医療用の周波数で、免許不要で使えるためWi-Fiにも利用されています。電子レンジ使用中にWi-Fiが不安定になることがあるのはこのためです。

家庭用無線LANの周波数帯には2.4 GHz帯と5 GHz帯がある。 電子レンジは2.45 GHz付近の電磁波(マイクロ波)を使って水分子を振動させ加熱する。 このため、電子レンジの近くで2.4 GHz帯の無線LANを使うと干渉が起こりやすく、 通信が不安定になることがある。5 GHz帯ならこの問題は起こりにくい。

電磁波の速さ(真空中)はおよそいくら?
\(3.0 \times 10^8\) m/s
\(3.0 \times 10^5\) m/s
\(340\) m/s
電磁波(光)の真空中の速さは \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s です。340 m/s は音速です。

🌈 3. 電磁波の種類

電磁波は波長(振動数)の違いにより大きく分類される。すべて同じ「電磁波」だが、性質と用途は大きく異なる。

次のうち、波長が最も長い電磁波はどれ?
X線
可視光線
紫外線
電波
波長が長い順に:電波 > 赤外線 > 可視光線 > 紫外線 > X線 > γ線 です。

シミュレーション:電磁波スペクトル

電波からγ線まで、波長と振動数の違いによる分類をインタラクティブに確認しよう。 バーをクリック/タップすると各帯域の詳細が表示される。

電磁波のスペクトル

電磁波は、振動数の小さい(波長の長い)ほうから順に、 電波赤外線可視光線紫外線X線\(\gamma\) 線と大きく分類される。

種類 波長の目安 主な特徴・用途
電波 約 0.1 mm 以上 通信(AM/FM放送、テレビ、携帯電話、無線LAN)、GPS、レーダー
超長波(VLF) 10 km 〜 100 km 標準電波(時刻信号)
長波(LF) 1 km 〜 10 km 標準電波
中波(MF) 100 m 〜 1 km AMラジオ放送
短波(HF) 10 m 〜 100 m 非接触ICカード
超短波(VHF) 1 m 〜 10 m FMラジオ放送
極超短波(UHF) 100 mm 〜 1 m 地上デジタル放送、GPS、無線LAN
マイクロ波(SHF/EHF) 1 mm 〜 100 mm 電子レンジ、衛星放送、レーダー
赤外線 約 0.77 \(\mu\)m 〜 0.1 mm 熱線。リモコン、放射温度計、赤外線通信
可視光線 約 380 nm 〜 770 nm 人の目に感じる光。色の違いは波長の違い
紫外線 約 10 nm 〜 380 nm 化学線。殺菌、蛍光物質の発光、日焼けの原因
X線 約 0.01 nm 〜 10 nm 医療(レントゲン)、手荷物検査、結晶構造解析
\(\gamma\) 線 約 0.01 nm 以下 原子核から放出。がん治療(ガンマナイフ)
⚠️ 注意 紫外線、X線、\(\gamma\) 線は、波長(振動数)のみでは明確には区別されない。 発生の仕組みが異なる場合がある(例:X線は高速電子の急減速、\(\gamma\) 線は原子核の崩壊で発生)。

電波の細分類

電波はさらに波長により超長波(VLF)から極超短波(UHF)、マイクロ波(SHF・EHF)などに分類される。 波長が長いほど回折しやすく、山や建物の裏側にも届きやすい。 一方、波長が短い(周波数が高い)ほど大量のデータを高速に送れる。

$$ \gamma \text{線} < \text{X線} < \text{紫外線} < \text{可視光} < \text{赤外線} < \text{電波} \quad (\text{波長の順}) $$
波長が短いほど振動数が大きく、光子エネルギーが高い
可視光線の波長:約 380 nm(紫)〜 770 nm(赤)
🌏 豆知識:日本の標準電波

日本では、福島県のおおたかどや山標準電波送信所(40 kHz)と 佐賀県・福岡県のはがね山標準電波送信所(60 kHz)から長波の標準電波が送信されている。 電波時計はこの信号を受信して自動的に正確な時刻に合わせている。

🧮 計算例:電磁波の波長と振動数

条件:FM放送の周波数 \(f = 80\) MHz の電波の波長を求めよ。また、可視光の波長 \(\lambda = 550\) nm の振動数を求めよ。

電波:

$$ \lambda = \frac{c}{f} = \frac{3.0 \times 10^{8}}{80 \times 10^{6}} = \frac{3.0 \times 10^{8}}{8.0 \times 10^{7}} = 3.75 \text{ m} \fallingdotseq 3.8 \text{ m} $$

可視光:

$$ f = \frac{c}{\lambda} = \frac{3.0 \times 10^{8}}{550 \times 10^{-9}} = \frac{3.0 \times 10^{8}}{5.5 \times 10^{-7}} \fallingdotseq 5.5 \times 10^{14} \text{ Hz} $$

答え:FM電波の波長 \(\fallingdotseq 3.8\) m、緑色光の振動数 \(\fallingdotseq 5.5 \times 10^{14}\) Hz。同じ電磁波でも波長が \(10^{12}\) 倍も異なる。

赤外線

赤外線は、物体からの熱放射に多く含まれ、太陽光にも多く含まれる。 物体に当たると吸収されて熱エネルギーになりやすいため、熱線ともよばれる。

可視光線

可視光線は、人の目に感じる電磁波である。 波長の長い側から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫と色が変わる。

紫外線

紫外線は、非常に高温の物体から放射され、太陽光にも含まれる。 物体に化学変化を起こさせやすい性質をもつため、化学線ともよばれる。 蛍光物質に紫外線を当てると発光する。

X線・\(\gamma\) 線

X線や \(\gamma\) 線は波長がきわめて短い電磁波である。 X線は物質を透過する性質があり、医療のレントゲン撮影や手荷物検査に使われる。 \(\gamma\) 線は原子核の崩壊に伴って放出され、がん治療(ガンマナイフ)にも利用される。

🔬 発展:高温の物体からの放射(熱放射)

鉄を熱すると、温度が高くなるにつれて赤みを帯びた光を出すようになる。 高温の物体からは、可視光線や赤外線、紫外線などの電磁波が放出される。 この現象を熱放射という。 熱放射の強さの波長分布は温度によって異なり、 物体の温度が高いほど、強さが最大となる波長が短くなる(ウィーンの変位則)。

📐 発展:微積分で見るマクスウェル方程式と電磁波

マクスウェルは変位電流 \(\varepsilon_0\frac{\partial E}{\partial t}\) の概念を導入し、電場と磁場が互いに生成し合って空間を伝わる波(電磁波)を予言しました。電磁波の速さは:

$$ c = \frac{1}{\sqrt{\mu_0\varepsilon_0}} \ fallingdotseq 3.0 \times 10^8 \text{ m/s} $$

この値が光の速さと一致したことから、光が電磁波の一種であることが判明しました。マクスウェル方程式は電磁気学の全法則(ガウスの法則、ファラデーの法則、アンペールの法則)を4つの式に統一したものです。

次の電磁波を波長が短い順に並べたとき、正しいのはどれ?
電波 → 赤外線 → 可視光線 → X線
X線 → 可視光線 → 赤外線 → 電波
可視光線 → X線 → 電波 → 赤外線
波長が短い順は:γ線 → X線 → 紫外線 → 可視光線 → 赤外線 → 電波 です。

🎯 4. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:電磁波の分類と性質

電磁波のスペクトル(電波→赤外線→可視光線→紫外線→X線→γ線)の順序と、各帯域の特徴は入試の基本事項です。特に以下の点がよく問われます。

🧮 ② 典型問題:電磁波の波長と振動数の計算

FM放送の周波数 80 MHz の電波の波長を求めよ。

解法:\(\lambda = c/f = \dfrac{3.0 \times 10^8}{80 \times 10^6} = 3.75\) m

可視光線(波長 550 nm)の振動数を求めよ。

解法:\(f = c/\lambda = \dfrac{3.0 \times 10^8}{550 \times 10^{-9}} = 5.45 \times 10^{14}\) Hz

ポイント:単位の換算(MHz = \(10^6\) Hz, nm = \(10^{-9}\) m)を正確に行う。

📐 ③ 導出:電磁波の速さ \(c = 1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}\) の意味

マクスウェル方程式から導かれる波動方程式の解として、電磁波の速さは \(c = 1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}\) と表される。

\(\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\) F/m、\(\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7}\) H/m を代入すると、\(c \ fallingdotseq 3.0 \times 10^8\) m/s が得られ、光の速さと一致する。

このことからマクスウェルは「光は電磁波の一種である」と予言した。

🔑 まとめ