物理基礎 > 第1編 運動とエネルギー > 第1章 運動の表し方
「短距離走の選手と新幹線、スタートで先を行くのは?」——速度がどれだけ速く変化するかを表すのが加速度です。
速度が時間とともに変化する運動では、単位時間あたりの速度の変化を加速度といいます。 速度が変化する運動を加速度運動といいます。
加速度の単位はメートル毎秒毎秒(m/s²)。例えば「加速度が 2 m/s²」とは、1秒間に速度が 2 m/s ずつ増えることを意味します。
下の図で、加速度の概念を体験しよう。等速の車と加速する車を比べて、加速度の正・負による違いを観察してみましょう。
加速度もベクトル量なので、向きがあります。
速度と加速度の向きが同じ → 直後の速さは増える
速度と加速度の向きが逆 → 直後の速さは減る
※「加速度が負」=「速さが減る」とは限らない!
新幹線(発進時):0.5〜0.7 m/s²、エレベーター:0.8〜0.9 m/s²、地球上の落下:9.8 m/s²、チーター:30〜35 m/s²、H-IIBロケット:30〜35 m/s²。 チーターとロケットが同程度の加速度というのは驚きです。
「加速度が負だから減速している」と思いがちですが、これは正しくありません。正の向きに進む物体に負の加速度がはたらけば確かに減速しますが、負の向きに進む物体に負の加速度がはたらくと加速します。「速度と加速度の符号が同じなら加速、逆なら減速」が正しい判断基準です。
\(\Delta t\) を限りなく小さくすると瞬間の加速度が得られます。 これは \(v\)-\(t\) 図上の接線の傾きで表されます。
加速度の概念がわかったところで、加速度が一定の場合を詳しく調べましょう。「加速度が一定」の運動を式で表すと、3つの重要公式が得られ、これらがすべての力学計算の基本になります。
一直線上を一定の加速度 \(a\) で進む運動を等加速度直線運動といいます。 斜面を降下する台車の速さが一定の割合で増加するのが典型例です。
条件:\(v_0 = 0\)、\(a = 2.0\) m/s²、\(t = 5.0\) s
速度:\(v = v_0 + at = 0 + 2.0 \times 5.0 = 10\) m/s
$$ x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 = 0 + \frac{1}{2} \times 2.0 \times 5.0^2 = 25 \text{ m} $$答え:\(v = 10\) m/s、\(x = 25\) m
加速度 \(a\) が一定の運動について,\(t = 0\) で速度 \(v_0\),位置 \(x = 0\) として3つの公式を順に導く。
公式① \(v = v_0 + at\) の導出
加速度の定義より
$$ a = \frac{v - v_0}{t - 0} = \frac{v - v_0}{t} $$両辺に \(t\) をかけて整理すると
$$ v - v_0 = at \quad \Longrightarrow \quad v = v_0 + at $$公式② \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) の導出
v-t 図で \(v = v_0 + at\) の直線と \(t\) 軸で囲まれた面積が変位 \(x\) に等しい。 この面積は台形であるから
$$ x = \frac{1}{2}(v_0 + v) \times t $$①の \(v = v_0 + at\) を代入すると
$$ x = \frac{1}{2}(v_0 + v_0 + at) \times t = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 $$公式③ \(v^2 - v_0^2 = 2ax\) の導出
①より \(t = \dfrac{v - v_0}{a}\)。これを②に代入すると
$$ x = v_0 \cdot \frac{v - v_0}{a} + \frac{1}{2}a \left(\frac{v - v_0}{a}\right)^2 = \frac{v_0(v - v_0)}{a} + \frac{(v - v_0)^2}{2a} $$通分して整理すると
$$ x = \frac{2v_0(v - v_0) + (v - v_0)^2}{2a} = \frac{(v - v_0)(2v_0 + v - v_0)}{2a} = \frac{(v - v_0)(v + v_0)}{2a} = \frac{v^2 - v_0^2}{2a} $$よって
$$ v^2 - v_0^2 = 2ax $$以上のように,①の定義式から②と③がすべて導かれる。
公式②の導出:v-t 図の面積
v-t 図で v = v₀ + at の直線と t 軸で囲まれた面積が変位 x です。
台形の面積 = \(\frac{1}{2}(v_0 + v) \times t = \frac{1}{2}(v_0 + v_0 + at) \times t = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\)
よって \(x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2\) が導かれます。
3つの公式には5つの変数(\(v, v_0, a, t, x\))が含まれ、各公式は4つの変数を含みます。求めたい量と与えられた量から「不要な変数を含まない公式」を選ぶのがコツです。①\(v=v_0+at\)は\(x\)なし、②\(x=v_0t+\frac{1}{2}at^2\)は\(v\)なし、③\(v^2-v_0^2=2ax\)は\(t\)なし。この「何がないか」で選択すれば迷いません。
①より \(t = \frac{v - v_0}{a}\)。これを②に代入すると
\(x = v_0 \cdot \frac{v - v_0}{a} + \frac{1}{2}a\left(\frac{v - v_0}{a}\right)^2 = \frac{v^2 - v_0^2}{2a}\)
よって \(v^2 - v_0^2 = 2ax\)
等加速度直線運動の3公式を学びました。次は、これらの公式をグラフで「見える化」する方法です。「グラフの面積を読めば、物体がどれだけ移動したかわかる」——v-t 図は運動を視覚的に理解する最強のツールです。
傾き = 加速度 \(a\)
切片(\(t = 0\) の値) = 初速度 \(v_0\)
面積(\(v\)-\(t\) 曲線と \(t\) 軸の間) = 変位 \(x\)
| 等速直線運動 (\(a = 0\)) | 等加速度 (\(a \gt 0\)) | 等加速度 (\(a < 0\)) | |
|---|---|---|---|
| a-t 図 | \(a = 0\)(t 軸上) | 正の定数(水平線) | 負の定数(水平線) |
| v-t 図 | 水平線(\(v = v_0\)) | 右上がり直線 | 右下がり直線 |
| x-t 図 | 直線(\(x = v_0 t\)) | 下に凸の放物線 | 上に凸の放物線 |
斜面を上向きに転がした小球は、上昇中も下降中も常に負の加速度(斜面下向き)がはたらきます。
折り返し地点(最高点)では速度は 0 になりますが、加速度は 0 ではありません。
「加速度が負」は「速さが減る」とは限りません。負の向きに進む物体に負の加速度が加わると、速さは増えます。 大切なのは、速度と加速度の向きが同じか逆かです。
加速度 \(a\) は速度 \(v\) の時間微分、速度は位置 \(x\) の時間微分として定義されます。
$$ v = \frac{dx}{dt}, \quad a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2} $$
逆に、加速度を時間で積分すると速度の変化、速度を積分すると変位が得られます。
$$ v(t) = v_0 + \int_0^t a\,dt', \quad x(t) = x_0 + \int_0^t v(t')\,dt' $$
等加速度運動(\(a\) = 一定)の場合:
$$ v = v_0 + at, \quad x = v_0 t + \frac{1}{2}at^2 $$
v-t 図の「面積=変位」は、まさに \(x = \int v\,dt\) の意味です。微積分を使えば、加速度が一定でない運動(例:空気抵抗を受ける運動)でも同じ方法で解析できます。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
大学入試では、折れ線のv-t図から変位や加速度を読み取る問題が頻出です。v-t図が直線でなく折れ線の場合、各区間の面積(台形・三角形)を求め、符号に注意して足し合わせます。速度が負の区間の面積は「負の変位」(逆向きの移動)を意味します。
速度 \(v_0\) で等速運動する物体Aと、同じ位置から静止して加速度 \(a\) で加速する物体Bが追いつく時刻を求める問題。
【立式】Aの位置は \(x_A = v_0 t\)、Bの位置は \(x_B = \frac{1}{2}at^2\)。追いつく条件は \(x_A = x_B\) なので:
$ v_0 t = \frac{1}{2}at^2 $
両辺を \(t\) で割ると(\(t \neq 0\)):
$ v_0 = \frac{1}{2}at \quad \therefore\ t = \frac{2v_0}{a} $
【追いつく位置】この \(t\) をAの位置の式に代入すると:
$ x = v_0 \times \frac{2v_0}{a} = \frac{2v_0^2}{a} $
【チェック】BがAに追いつく前にAが最も引き離すのは、両者の速度が等しくなる時刻 \(v_0 = at\) より \(t = \frac{v_0}{a}\) のとき。
折れ線v-t図が与えられたとき、各区間を分けて面積を計算する。
手順:
① 各区間(直線区間ごと)に分割
② 各区間の面積を三角形・台形の公式で計算
③ v < 0 の区間は「負の変位」として符号に注意
④ 全区間の面積を足し合わせると全変位、絶対値の和が全移動距離