物理基礎 > 第1編 運動とエネルギー > 第2章 運動の法則
「ボールを打つ、引っ張る、押す」——物体を変形させたり運動の状態を変えたりする原因が力です。
力は大きさ・向き・作用点の3つで表されます(力の三要素)。 力はベクトル量で、記号は \(\vec{F}\) と表します。
地球上で物体にはたらく力の代表例が重力です。重力の大きさは質量 \(m\) と重力加速度 \(g\) の積で表されます。
力の大きさの単位はニュートン(記号 N)を用います。 力を図示するときは、作用点から力の大きさに相当した長さの矢印をかきます。
「力を加えないと物体は止まる」と考えがちですが、ニュートンの第1法則によれば、力がはたらかない(合力が0の)物体は等速直線運動を続けます。机の上で物体が止まるのは摩擦力がはたらくからです。宇宙空間では一度押した物体は力を加えなくても永遠に等速で進みます。
力の単位「ニュートン」は、万有引力の法則を発見したアイザック・ニュートン(1643-1727)にちなんで名付けられました。 1 N は、質量 1 kg の物体に 1 m/s² の加速度を生じさせる力の大きさです。
力の三要素と単位がわかったところで、物理で登場する代表的な力を整理しましょう。「重力・張力・垂直抗力・摩擦力・弾性力」——これらを正しく見分けることが、力学の問題を解く第一歩です。
| 接触力 | 非接触力(遠隔力) | |
|---|---|---|
| 特徴 | 物体が触れ合ってはたらく | 空間を隔ててはたらく |
| 例 | 垂直抗力、摩擦力、張力、弾性力 | 重力、静電気力、磁気力 |
地球が物体を鉛直下向きに引く力を重力といい、その大きさを重さといいます。 重さは質量に比例します。
下の図で、天体ごとの重力加速度の違いを体験しよう。同じ質量でも重さ(W = mg)が変わることを確認できます。
質量(単位 kg):物体に固有の量。場所によらない。
重さ(単位 N):物体にはたらく重力の大きさ。場所によって異なる(月面では地球の約 1/6)。
糸でおもりをつるすと、糸はおもりに対して上向きの力を及ぼします。 糸がぴんと張っているとき、糸につけられた物体に対して引く力を張力といいます。
机の上に置いた本が落下しないのは、面が物体に対して垂直な方向に力を及ぼしているからです。
この力を垂直抗力といいます。
また、面上で物体を動かそうとすると、運動を妨げる力が生じます。この力を摩擦力といいます。
摩擦力には静止摩擦力と動摩擦力があります。
もし摩擦力がゼロなら、歩くことも車を走らせることもできません。靴と地面の間の摩擦力が足を蹴り出す力を生み、タイヤと路面の摩擦力が車を前に進めています。摩擦は「邪魔なもの」ではなく、日常生活に不可欠な力です。
重力・張力・垂直抗力・摩擦力といった力を学びました。次に、変形した物体がもとの形に戻ろうとする力——弾性力を見ていきます。「ばねは伸ばした分だけ引き戻す力を出す」——弾性力は伸び(変形量)に比例する。
力を加えて変形した物体が、もとの形状にもどろうとして他の物体に及ぼす力を弾性力といいます。
ばねにおもりをつるすと、おもりの数とばねの伸びは比例します。この関係をフックの法則といいます。
比例定数 \(k\) をばね定数といいます。ばね定数が大きいばねほど、伸ばしたり縮めたりするのに大きな力が必要です。
\(x\) はばねの「全体の長さ」ではなく、自然の長さからの伸び(または縮み)です。
条件:\(k = 50\) N/m、\(x = 0.10\) m
$$ F = kx = 50 \times 0.10 = 5.0 \text{ N} $$答え:\(F = 5.0\) N
フックの法則 \(F = kx\) のばね定数 \(k\) は、ばねの材質・線径・巻数・コイル径で決まります。同じばねを半分に切ると、ばね定数は2倍になります。これは各巻きが独立した「ばね要素」として直列接続されているためです。ばね2本の並列では合成ばね定数は \(k_1 + k_2\)、直列では \(\frac{1}{k} = \frac{1}{k_1}+\frac{1}{k_2}\)(抵抗の並列と同じ形)です。
ばねに大きすぎる力を加えると、伸びと力の比例関係は成り立たなくなります。この限界を弾性限界といいます。弾性限界を超えると、ばねは元に戻らなくなり(塑性変形)、フックの法則は使えません。
ここまで学んだ力(張力・垂直抗力・摩擦力・弾性力)はすべて物体どうしが接触してはたらく力でした。しかし力には、物体が離れていてもはたらくものがあります。「下敷きで髪の毛が引き寄せられる」——重力と同じく、空間を隔ててはたらく力を見ていこう。
静電気力の大きさは、電荷の大きさと距離によって決まります。2つの電荷のあいだにはたらく力は、クーロンの法則で表されます。
下敷きを布でこすって髪の毛に近づけると、髪が引き寄せられます。このとき下敷きと髪の毛の間にはたらく力を静電気力といいます。
また、磁石が鉄製のクリップを引き寄せるとき、磁石とクリップの間にはたらく力を磁気力といいます。
静電気力と磁気力は、重力と同じように空間を隔ててはたらく力(非接触力)です。
力は大きく「接触力」と「非接触力(遠隔力)」に分けられます。 接触力:垂直抗力、摩擦力、張力、弾性力(物体が触れてはたらく)。 非接触力:重力、静電気力、磁気力(空間を隔ててはたらく)。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
入試の第一歩は正確な力の図示(自由体図)です。①重力、②接触力(垂直抗力・摩擦力・張力・ばねの力)、③遠隔力(電気力・磁気力)を漏れなく描くことが重要です。よくあるミスは「運動の向きの力」を描いてしまうこと。力は相互作用であり、運動の向きとは無関係です。
ばね定数 \(k_1\)、\(k_2\) のばね2本を接続したとき:
並列接続:合成ばね定数 \(k = k_1 + k_2\)(硬くなる)
直列接続:\(\dfrac{1}{k} = \dfrac{1}{k_1} + \dfrac{1}{k_2}\) → \(k = \dfrac{k_1 k_2}{k_1 + k_2}\)(柔らかくなる)
ポイント:直列では各ばねに同じ力がはたらき、伸びが足し合わされる。並列では各ばねの伸びが等しく、力が足し合わされる。
角度 \(\theta\) の斜面上の物体(質量 \(m\))にはたらく力:
重力の斜面方向成分:\(mg\sin\theta\)(斜面下向き)
重力の斜面垂直成分:\(mg\cos\theta\)(斜面に押しつける向き)
垂直抗力:\(N = mg\cos\theta\)
ポイント:重力を斜面方向と垂直方向に分解するのが基本。\(\sin\) と \(\cos\) の取り違えに注意。