物理基礎 > 第2編 熱 > 第1章 熱とエネルギー
「温度が高いほど分子が激しく動く」——温度の正体は原子・分子の熱運動の激しさです。
物質を構成する原子や分子は、不規則な運動(熱運動)をしています。温度が高いほど熱運動は激しくなります。水中の微粒子が不規則に動くブラウン運動は、水分子の熱運動による衝突が原因です。
条件:\(m = 200\) g、比熱 \(c = 4.2\) J/(g·K)、\(\Delta T = 80 - 20 = 60\) K
$$ Q = mc\Delta T = 200 \times 4.2 \times 60 = 50400 \text{ J} \fallingdotseq 50 \text{ kJ} $$答え:\(Q \fallingdotseq 50\) kJ
セルシウス温度(℃)は、1気圧で氷が溶ける温度を 0℃、水が沸騰する温度を 100℃ と定めた温度目盛りです。
温度を下げていくと熱運動はにぶくなり、約 −273℃ で熱運動が停止します。これを絶対零度といい、これを基準とした温度を絶対温度(単位: ケルビン K)といいます。
熱力学第三法則により、絶対零度(0 K = −273.15℃)に完全に到達することは不可能とされています。現在の実験では 10⁻¹⁰ K 程度まで冷却に成功していますが、ぴったり 0 K にはなりません。
前のカードで、温度は原子・分子の熱運動の激しさを表す量であることを学びました。「熱いコーヒーにミルクを入れると温度が下がる」——この温度変化の背後にある、高温から低温へ移動するエネルギーが熱です。
温度の異なる2つの物体を接触させると、高温の物体から低温の物体へエネルギーが移動します。やがて両者の温度が等しくなり、これを熱平衡といいます。このとき移動したエネルギーを熱(または熱量)といい、単位は J です。
熱量の保存:高温物体が失った熱量 = 低温物体が得た熱量(外部との熱のやりとりがない場合)。
日常では混同しがちですが、温度は物体の状態を表す量(℃やK)、熱は温度差のある物体間で移動するエネルギー(J)です。「この物体は100Jの熱を持っている」は不正確で、「この物体に100Jの熱を加えた」が正しい表現です。熱は移動するエネルギーの一形態であり、蓄えられるものではありません。
水の比熱(4.2 J/(g·K))は一般的な物質の中で最大級です。鉄は0.45、銅は0.39、アルミは0.90 J/(g·K)。水が温まりにくく冷めにくいため、海に囲まれた地域は気温の変化が穏やかになります。お風呂のお湯が長時間温かいのも、水の大きな比熱のおかげです。
水は比熱が非常に大きいため、温まりにくく冷めにくい物質です。海が気温の変動を和らげるのはこのためで、海辺の街は内陸の街より気温差が小さくなります。
前のカードで、熱量は \(Q = mc\Delta T\) で計算でき、比熱によって温まりやすさが異なることを学びました。しかし熱を加え続けると温度が上がるだけでなく、やがて物質の「姿」そのものが変わります。「氷→水→水蒸気」——この状態変化にはどれだけのエネルギーが必要なのでしょうか。
物質は固体・液体・気体の3つの状態(三態)をとります。状態変化のとき、温度は変わらず熱だけを吸収(または放出)します。この熱を潜熱といいます。
| 変化 | 名称 | 熱 |
|---|---|---|
| 固体→液体 | 融解 | 吸熱(融解熱) |
| 液体→気体 | 蒸発・沸騰 | 吸熱(気化熱) |
| 気体→液体 | 凝縮 | 放熱 |
| 液体→固体 | 凝固 | 放熱(凝固熱) |
水が蒸発するとき、周囲から気化熱を奪います。打ち水をすると地面の温度が下がり、涼しく感じるのはこのためです。汗をかくと涼しく感じるのも同じ原理です。
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高温物体が失う熱量=低温物体が得る熱量(熱量の保存)。\(m_1c_1(T_1 - T) = m_2c_2(T - T_2)\) から共通温度 \(T\) を求めます。状態変化(融解・蒸発)がある場合は、潜熱 \(mL\) の項を加えることを忘れないことが重要です。
問題設定:質量 \(m_1\)、比熱 \(c_1\)、温度 \(T_1\) の物体Aと、質量 \(m_2\)、比熱 \(c_2\)、温度 \(T_2\)(\(T_1 \gt T_2\))の物体Bを接触させる。外部との熱のやりとりはないとする。
外部との熱のやりとりがないので、高温物体Aが失った熱量 = 低温物体Bが得た熱量が成り立ちます(\(T\) は熱平衡後の共通温度)。
$ m_1 c_1 (T_1 - T) = m_2 c_2 (T - T_2) $
左辺を展開すると \(m_1 c_1 T_1 - m_1 c_1 T = m_2 c_2 T - m_2 c_2 T_2\) です。\(T\) を含む項を左辺にまとめると
$ m_1 c_1 T + m_2 c_2 T = m_1 c_1 T_1 + m_2 c_2 T_2 $
\(T\) でくくって両辺を割ると、共通温度が求まります。
$ T = \frac{m_1 c_1 T_1 + m_2 c_2 T_2}{m_1 c_1 + m_2 c_2} $
例えば、0℃ の氷(質量 \(m\))に温水を注ぐ場合、氷がすべて溶けるかどうかを先に確認する。
注意:状態変化中は温度が変化しないため、潜熱 \(mL\) の項を式に加えることを忘れないこと。