「スタジアムのウェーブ,走っている人はいますか?」——波は振動が伝わる現象で,媒質そのものは移動しない。
サッカーの応援などで見る「ウェーブ」。波はぐるっとスタジアムを一周しますが,観客は席を立って座るだけ。誰も横には移動していません。
では,池に石を投げた時の波紋はどうでしょう?
水は向こう岸まで流れているのでしょうか?
通常の波では媒質は移動しませんが、津波は海底から海面まで水全体が動く「浅水波」です。海が浅くなるにつれて波高が急増し、巨大な水の壁となって沿岸を襲います。津波の速さは深さ \(h\) を用いて \(v = \sqrt{gh}\) で表され、水深4000 mの外洋では時速約700 km(ジェット機並み)にもなります。
波の正体がわかったところで、波を正確に記述するための「ことば」を整理しましょう。波は「モノ」が移動するのではなく,ある場所で起きた「振動」が次々と隣へ伝わっていく現象です。
宇宙空間(真空)では音は伝わりません。音は空気の振動(縦波)なので、振動を伝える媒質(空気)がなければ波が発生しません。映画で宇宙空間で爆発音が鳴るのは演出上のフィクションです。ただし電磁波(光)は媒質を必要としないため、真空中でも伝わります。
波の用語がわかったところで、「なぜ振動が隣へ伝わるのか」という仕組みそのものを考えてみましょう。
媒質の各点は,隣の点と「手をつないでいる」と考えてください。 隣が動くと,引っ張られて自分も動く。この連鎖で波は進みますが,媒質そのものはその場で往復運動するだけです。
波が伝わるのは,媒質どうしの間に「弾性力(元の位置に戻ろうとする力)」が働いているからです。
バネでつながれたボールを想像してください。一つを動かせば,バネの力で隣のボールも動かされます。
この「バネ」の正体は,実は粒子間にはたらく電気的な力です。
粒子どうしは,近づきすぎると電子どうしが反発し,離れると電気的な引力(分子間力など)により引き合うため,常に「ちょうどいい距離」に戻ろうとします。
この力が次々と隣へ伝達されることで,波は伝わっていくのです。
波が伝わるとき媒質(水)自体は進みませんが、波のエネルギーは進みます。サーファーは波の斜面を滑り降りることで波のエネルギーを受け取り前進します。波が崩れる(ブレイクする)瞬間に水自体が前方に動くため、その勢いも利用しています。
実は,波が進んでも水そのものは流れてきません。
(※津波や浅瀬の波打ち際を除く)
水分子は,その場で円運動(あるいは上下運動)をして隣へ動きを伝えているだけです。
もし波が水を運んでいたら,ハワイの水が日本の海岸に押し寄せ,日本は水没してしまいます。
「横波は固体だけ、縦波は固体・液体・気体すべて」と習いますが、電磁波(光)は横波で真空中も伝わります。正確には「力学的な横波は固体でしか伝わらない」です。液体・気体は形を保つ復元力(剛性)がないため横方向の振動を伝えられませんが、電磁波は媒質を必要としない波です。
振動が伝わる仕組みを理解したところで、波の「形」に注目しましょう。1回だけの振動が伝わるパルス波と、連続して振動が伝わる連続波の違いを見ていきます。
「水面やロープを揺らすと波が生まれる」——振動と波の関係を,単振動から正弦波の発生まで順に見ていこう。
水面やロープの一点を揺らすと,その振動が周囲に伝わり,波が発生します。
波源の振動が媒質を伝わるには「時間」がかかります。このとき使われる時間の単位を整理しましょう。
単振動から正弦波が生まれることがわかりました。次は、その波形の各部分に名前をつけ、波を定量的に特徴づける量を確認しましょう。
下の図のように波形の最も高いところを山,最も低いところを谷といいます。
以下のシミュレーションで,1周期の間に正弦波がどれくらい進むか確認しましょう。 ボール(媒質)の一つ一つは上下に単振動することに注目してください。
ギターの弦を弾くと、弦の振動が空気に伝わって音になります。弦の長さを半分に押さえると波長が半分になり、振動数が2倍=1オクターブ高い音が出ます。弦楽器の「フレット」の位置は、波長と音程の関係を利用して設計されています。
振幅・波長・周期・振動数といった波の要素が揃いました。これらを結びつける、波動分野で最も重要で最後まで使い続ける「最強の公式」を学びましょう。
【Step 1】波は1周期 \(T\) [s] の間に,ちょうど1波長 \(\lambda\) [m] だけ進みます。
【Step 2】速さの基本公式「速さ=距離÷時間」にあてはめると, $$ v = \frac{\lambda}{T} $$
【Step 3】振動数と周期の関係 \(f = \frac{1}{T}\) より \(T = \frac{1}{f}\) を代入すると, $$ v = \frac{\lambda}{1/f} = f\lambda $$
したがって,\(v = f\lambda\) が得られます。
条件:\(f = 5.0\) Hz
$$ T = \frac{1}{f} = \frac{1}{5.0} = 0.20 \text{ s} $$答え:\(T = 0.20\) s
波の変位を \(y(x, t)\) とすると、ある位置 \(x\) の媒質の速度は時間に関する偏微分です。
$$ v_y = \frac{\partial y}{\partial t} $$
正弦波 \(y = A\sin\left(\frac{2\pi}{\lambda}x - \frac{2\pi}{T}t\right)\) の場合、媒質の速度は \(v_y = -\frac{2\pi A}{T}\cos\left(\frac{2\pi}{\lambda}x - \frac{2\pi}{T}t\right)\) です。各媒質点は単振動しており、変位が 0 の瞬間に速度が最大になります。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
振動数 440 Hz の音叉を鳴らしたとき、気温 15 ℃ での音波の波長を求めよ。
音速:\(V = 331.5 + 0.6 \times 15 = 340.5\) m/s
波長:\(\lambda = V/f = 340.5/440 \allingdotseq 0.77\) m
ポイント:波の速さは媒質で決まり、振動数は波源で決まる。媒質が変わると速さと波長は変化するが振動数は変わらない。
周期 \(T = 0.02\) s の波の振動数は \(f = 1/T = 1/0.02 = 50\) Hz。
波長 \(\lambda = 2.0\) m のとき、波の速さは \(v = f\lambda = 50 \times 2.0 = 100\) m/s。
ポイント:\(v = f\lambda = \lambda/T\) の3つの形を使い分ける。