物理基礎 > 第3編 波 > 第1章 波の性質

② 波の伝わり方

📷 1. 2つのグラフの違い:写真 vs ビデオ

「波のグラフには2種類ある」——形は似ていますが,どの瞬間・どの点を切り取るかによって読み取れる量が違います。

\(y\text{-}x\) グラフ(波形グラフ)から直接読み取れる量は?
波長 \(\lambda\)
周期 \(T\)
振動数 \(f\)
\(y\text{-}x\) グラフは「ある瞬間の波の形」を撮った写真のようなもので、山から山(または谷から谷)の距離として波長 \(\lambda\) を読み取れます。周期を読むには \(y\text{-}t\) グラフが必要です。

【2つの図の関係例】
下の $y-x$ 図で時間を少し進めたときに「位置 $x=0$ の媒質が上へ動く」ならば,対応する $y-t$ 図も「$t=0$ から上へ向かって動き出す」グラフになります。

📷
$y-x$図(波形グラフ)ある瞬間における波全体(媒質全体)の形を表します。カメラでパシャリと撮ったある瞬間の「写真」と同じです。このグラフから波長$\lambda$ を読み取ることができます。
📹
$y-t$図(振動グラフ): ある1点の媒質だけに注目し,その時間ごとの動きを表します。媒質の1点を撮影し続けた「記録映像」と同じです。このグラフから周期$T$ を読み取ることができます。
⚠️ 媒質の動く向きの判別法

波形を進行方向に「少しずらして」考える

波の進む向きに,波形をわずかに進めて(点線などで)書いてみましょう。 現在の波形(実線)から,進めた波形(点線)に向かって矢印を引くと,その点における媒質の動く向きが分かります。

$$ y\text{-}x \text{ グラフ} \to \text{波長 } \lambda \text{ を読み取る} \qquad y\text{-}t \text{ グラフ} \to \text{周期 } T \text{ を読み取る} $$
\(y\text{-}x\) 図:ある瞬間の波形の「写真」
\(y\text{-}t\) 図:ある1点の振動の「記録映像」
\(\text{媒質の動く向き} = \)\(\text{実線} \to \text{点線(進行方向にずらした波形)の方向}\)
波形を進行方向にわずかにずらした点線を描く
実線から点線への矢印が媒質の動く向き
📺 豆知識:心電図も y-t グラフ

病院で使われる心電図は、心臓の電気信号を時間ごとに記録した y-t グラフです。波の y-t グラフと同じ読み方で、波形の周期から心拍数が、波形の形状から心臓の異常がわかります。物理で学ぶグラフの読み方は医療にも直結しています。

波形グラフで、ある点の媒質がこれから上に動くか下に動くかを調べるには?
グラフの傾きだけを見る
波形を進行方向に少しずらして考える
振幅の大きさから判断する
波形を進行方向にわずかにずらした線(点線)を描き、実線から点線への向きが媒質の動く向きになります。これは入試でも頻出のテクニックです。

↕️ 2. 媒質の動きと速度

2種類のグラフの読み方がわかったところで、グラフから媒質の「速度」を読み取る方法を学びましょう。山や谷にいる媒質は速いのか遅いのか、意外な結果が見えてきます。

ブランコが一番高い位置(端っこ)にいるとき、速さはどうなっている?
最も速い
加速中
一瞬止まっている
ブランコは最も高い位置で一瞬止まり、中央(一番低い位置)を通るとき最速になります。波の媒質も同様に、山や谷(変位最大)では速さ0、中央(変位0)で速さ最大です。

波が進むとき,媒質(波を伝える物質)はその場で単振動しています。単振動では振動の上端下端では一瞬止まり(一瞬止まって折り返すため),中央付近では速く動きます(ブランコが一番下を通るときと同じ)。 正弦波において,媒質の変位方向の運動の速さ(速度の大きさ)は以下のようになります。

$$ v_{\text{媒質}} = 0 \quad (\text{山・谷}) \qquad v_{\text{媒質}} = \text{最大} \quad (\text{中心}) $$
変位最大(山・谷)の位置で速さ0(折り返し点)
変位0(中心)の位置で速さ最大
正弦波の媒質の速さが最大になるのはどの位置?
変位が0(振動の中心)の位置
山の頂上
谷の底
媒質が単振動しているため、変位が0の位置(振動の中心)で速さが最大になり、山や谷(変位最大)では一瞬止まります。ブランコが最も低い位置で最速になるのと同じです。

⏱️ 3. 波の「タイミング」

媒質の速度がわかったら、次は波の上の各点が「どのタイミングで振動しているか」に注目します。同じ動きをする点、正反対の動きをする点——位相の概念を学びましょう。

波の上で、山と山の位置にある2点は常に同じ動き方をしています。この関係を何という?
逆位相
同位相
干渉
常に同じ振動状態にある関係を「同位相」といいます。山と山、谷と谷のように、1波長の整数倍だけ離れた点どうしは同位相です。

周期的(繰り返し)な波の場合,媒質の各点は同じ単振動を繰り返しています。そこで,媒質の1点がどのような振動状態(変位や速度の向き)にあるかを表す量位相いそう といいます。

🤝
同位相どういそう: 互いに同じ振動状態にあること。例えば,どちらも「山」である点や,どちらも「谷」である点どうしなど。 $y-t$ 図は同じ形になる。
※距離が半波長 $\lambda/2$ の偶数だけ離れている点は同位相になります。
↔️
逆位相ぎゃくいそう: 変位の大きさが等しく,符号(プラス・マイナス)が逆である関係。一方の変位が最大のとき,他方は最小となります。$y-t$ 図は上下反転した形になる。
※距離が半波長 $\lambda/2$ の奇数だけ離れている点は逆位相になります。
$$ \text{同位相} : \Delta x = n\lambda \quad (n = 0, 1, 2, \ldots) \qquad \text{逆位相} : \Delta x = \left(n + \tfrac{1}{2}\right)\lambda $$
\(\Delta x\):2点間の距離
同位相:距離が波長の整数倍(= 半波長の偶数倍)
逆位相:距離が半波長の奇数倍
🤔 豆知識:「反射で位相が反転する」条件を正しく理解する

固定端反射では位相が反転(半波長ずれる)し、自由端反射では位相は変わりません。覚え方:固定端では端点が動けないため、入射波の変位を打ち消す反射波が必要→反転。自由端では端点が自由に動けるため、変位がそのまま反射→同位相。光の反射でも同様の現象があり、屈折率の大きい媒質で反射すると位相が反転します。

半波長 \(\lambda/2\) の偶数倍だけ離れた2点の振動状態は?
同位相
逆位相
無関係
半波長の偶数倍は波長の整数倍にあたるため、2点は常に同じ振動状態(同位相)になります。奇数倍なら逆位相です。

〰️ 4. 横波と縦波

前のカードで、波の上の各点が「どのタイミングで振動しているか」を表す位相の概念を学びました。「バネを縦に揺らすか,横に揺らすかで波の伝わり方が変わる」——次は媒質の振動方向と波の進行方向の関係に注目して,2種類の波を学ぼう。

地震が来たとき「カタカタ」と上下に揺れる初期微動と、「ユサユサ」と横に揺れる主要動。先に来るのはどっち?
カタカタ(初期微動=P波=縦波)
ユサユサ(主要動=S波=横波)
同時に来る
縦波であるP波(Primary wave)が先に到達し、横波であるS波(Secondary wave)が後から来ます。緊急地震速報はこの到着時間差を利用しています。

波には、媒質(揺れるもの)の振動方向によって2つの種類があります。特に「縦波」は、そのままではグラフにしづらいため、ちょっとした「変換テクニック」を使って扱います。

$$ \text{横波:} \vec{v}_{\text{振動}} \perp \vec{v}_{\text{進行}} \qquad \text{縦波:} \vec{v}_{\text{振動}} \parallel \vec{v}_{\text{進行}} $$
横波:ロープを左右に振ったときにできる波
縦波:ばねを押し引きしたときにできる波(疎密波)
波の進行方向と媒質の振動方向が垂直な波を何という?
縦波
横波
定常波
進行方向と振動方向が垂直な波が横波、平行な波が縦波です。光(電磁波)や地震のS波は横波、音波や地震のP波は縦波です。

↔️ 5. 横波と縦波の仕組み

横波と縦波の分類がわかったところで、それぞれの波で媒質がどのように動いているのか、もう少し詳しく仕組みを見ていきましょう。

音波は横波?縦波?
横波
縦波
どちらでもない
音波は縦波(疎密波)です。空気の分子が波の進行方向と同じ向きに振動し、密な部分と疎な部分が交互に伝わっていきます。

バネやロープを波の進行方向に対して垂直に振ると横波ができ,進行方向と同じ向きに押し引きすると縦波ができます。 縦波では媒質が密集したところを「密部」,まばらなところを「疎部」といい,別名「疎密波」とも呼ばれます。

💡
横波 (Transverse wave): 媒質の振動方向が,波の進行方向と「垂直」な波。光(電磁波)地震のS波など。
💡
縦波 (Longitudinal wave): 媒質の振動方向が,波の進行方向と「平行」な波。音波地震のP波など。
$$ \text{横波:振動方向} \perp \text{進行方向} \qquad \text{縦波:振動方向} \parallel \text{進行方向} $$
横波の例:光(電磁波)、地震のS波、弦の振動
縦波の例:音波、地震のP波、ばねの疎密波
🎵 豆知識:スピーカーは空気の縦波を作る装置

スピーカーの振動板が前後に振動すると、前方の空気が押されて「密」、引かれて「疎」の状態が交互に生まれます。これが空気中を伝わる縦波=音波です。低音(振動数が小さい)ほど振動板は大きく動く必要があるため、サブウーファーは大口径になっています。

縦波で媒質が密集したところを何という?
疎部
密部
縦波で媒質が密集した部分を「密部」、まばらな部分を「疎部」といいます。そのため縦波は「疎密波」とも呼ばれます。

⚛️ 6. 粒子の動きで見る違い

横波と縦波の仕組みを学びました。ここでは個々の粒子の動きに注目し、縦波の変位をグラフに表す「横波表示」の手法を身につけましょう。

縦波をグラフに描くには、媒質の変位をどう変換する?
そのまま横軸に描く
反時計回りに90度回転させて縦軸に描く
2倍に拡大して描く
縦波の変位(水平方向のずれ)を反時計回りに90度回転させて、縦軸方向に描きます。「右変位は上、左変位は下」がルールです。

一見わかりにくい「縦波」も,媒質(粒子)の一つひとつに注目すると,単に左右に振動しているだけであることがわかります。下のボタンで,縦波を回転させてグラフ(横波表示)にする様子を確認しましょう。

$$ \text{縦波の横波表示:右変位} \to \text{上(正)} \qquad \text{左変位} \to \text{下(負)} $$
変位の向きを反時計回りに90度回転させてプロットする
密部:変位が正→負の変化点、疎部:変位が負→正の変化点

📈 縦波のグラフ化(横波表示)のルール

縦波をグラフにする際は,媒質の「元の位置からのズレ(変位)」反時計回りに90度回転させてプロットします。

✍️
作図の合言葉:「右変位は上,左変位は下」
  • 媒質が(正の向き)にズレている (正の向き)に点を打つ
  • 媒質が(負の向き)にズレている (負の向き)に点を打つ
⚠️ 要注意!

グラフの形=実際の波の形ではない!

縦波を横波表示したグラフ($y-x$グラフ)を見たとき、媒質が上下に動いていると勘違いしがちです。グラフの $y$ 軸はあくまで「本来の振動方向($x$ 軸方向)へのズレ」を表しているに過ぎません。「山=右へズレ」「谷=左へズレ」と脳内変換しましょう。

🌊 豆知識:地震のP波とS波

地震波にはP波(縦波, Primary wave)とS波(横波, Secondary wave)があります。P波は速さ約5〜7 km/sで先に到着し、S波は約3〜4 km/sで後から来ます。緊急地震速報はP波を検知してS波が到達する前に警報を出す仕組みです。P波とS波の到着時刻差から震源までの距離がわかります。

🌏 地震波(P波とS波)について

地震が発生すると,まず伝わるのが縦波であるP波(Primary wave)です。その後に,横波であるS波(Secondary wave)が到達します。縦波は固体・液体・気体のすべてを伝わりますが,横波は「ずれる力」が必要なため,固体中しか伝わりません

縦波を横波表示したグラフで、媒質が「右にずれている」部分はどう描く?
上に描く(正の変位)
下に描く(負の変位)
描かない
「右変位は上、左変位は下」が縦波の横波表示のルールです。媒質が右(正の向き)にずれていれば、グラフでは上(正の向き)に点を打ちます。

⚡ 7. 波のエネルギー

ここまで波の形や媒質の動きを見てきました。では、波は物質を運ばないのに、なぜ遠くのものを揺らすことができるのでしょうか。波が運ぶ「エネルギー」に注目します。

波は媒質を運ばないのに、遠くのものを揺らすことができます。波が運んでいるのは何?
物質(媒質)
エネルギー
何も運んでいない
波は媒質を運びませんが、エネルギーを運びます。津波が遠くの海岸を破壊できるのも、波がエネルギーを伝えているからです。

波は媒質を運びませんが,「エネルギー」を運びます。その大きさは振幅と振動数に関係しています。振幅が大きいほど,振動数が大きいほど,エネルギーは強くなります。

$$ E \propto A^2 f^2 $$
\(E\):波のエネルギー
\(A\)〔m〕:振幅
\(f\)〔Hz〕:振動数
🧮 計算例:振動数 440 Hz、波長 0.77 m の音波の速さ

条件:\(f = 440\) Hz、\(\lambda = 0.77\) m

$$ v = f\lambda = 440 \times 0.77 \fallingdotseq 340 \text{ m/s} $$

答え:\(v \fallingdotseq 340\) m/s(空気中の音速に一致)

aria-label="シミュレーション:波のエネルギーと振幅・振動数の関係">
🔬 詳しく知る:単振動のエネルギーとの関係 (クリックで展開)
  1. 単振動する物体の力学的エネルギー $E$ は,振幅を $A$,角振動数を $\omega$,質量を $m$ とすると,$E = \frac{1}{2}m\omega^2 A^2$ で表される。
  2. ここで $\omega = 2\pi f$ を代入すると,$E = 2\pi^2 m f^2 A^2$ となる。
  3. 結論: $$ エネルギーは振動数 f の2乗と振幅 A の2乗に比例する。 $$
波のエネルギーは振幅 \(A\) にどう依存する?
\(A\) に比例
\(A\) に反比例
\(A^2\) に比例
波のエネルギーは振幅の2乗 \(A^2\) に比例します。振幅が2倍になるとエネルギーは4倍になります。振動数の2乗にも比例します。

➕ 8. 波の重ね合わせの原理

前のカードで、波はエネルギーを運ぶが媒質そのものは移動しないことを学びました。では、波どうしが出会ったときに何が起こるかを考えます。物体どうしはぶつかると跳ね返りますが、波には全く異なる性質があります。

2つの波がぶつかったとき、どうなる?
物体のように衝突して跳ね返る
互いにすり抜け、重なっている間だけ変位が足し算される
片方の波だけが残る
波どうしは物体と違って互いにすり抜けます(独立性)。重なっている間だけ変位が足し合わされ(重ね合わせの原理)、通過後は元の波形に戻ります。

2つの波がぶつかるとどうなるでしょうか? 物体同士なら「ドーン」と衝突して跳ね返りますが,波は違います。 2つの波は,お互いに影響を与えることなくすり抜け独立性),重なっている間だけ高さが足し算されます(重ね合わせの原理)。

$$ y_{\text{合成}} = y_1 + y_2 $$
重ね合わせの原理:合成波の変位は各波の変位の和
波は互いにすり抜ける(独立性)
🎧 豆知識:ノイズキャンセリングイヤホンは重ね合わせの原理

ノイズキャンセリングイヤホンは、外部の騒音を検出し、その逆位相の波を発生させることで合成変位をゼロにしています。まさに「山+谷=0」の重ね合わせの原理の応用です。完全な消音は難しいですが、低周波の騒音ほど効果的に打ち消せます。

重なった瞬間の波の高さは,2つの波の高さの和になります。
「山と谷」がぶつかると,打ち消し合って一瞬消えることもあります。

同じ大きさの山と谷がぶつかった瞬間、合成波の変位は?
0(打ち消し合う)
2倍になる
片方だけ残る
重ね合わせの原理により、山(正の変位)と同じ大きさの谷(負の変位)が重なると、変位の合計は0になります。ただし通過後は元の波形に戻ります。

🔄 9. 定常波(定在波)の発生

重ね合わせの原理を使うと、特別な条件で「進まない波」が生まれます。逆向きに進む同じ波が重なったとき、その場にとどまって振動する定常波の仕組みを見ていきましょう。

逆向きに進む同じ波長の2つの波が重なると、進行しない不思議な波ができます。この波を何という?
パルス波
疎密波
定常波(定在波)
逆向きに進む同じ波が重なると、その場に止まって振動する「定常波(定在波)」が生まれます。全く動かない点(節)と大きく揺れる点(腹)が交互に現れます。

波長・振幅・速さが同じで,向きが逆の2つの波が重なり合うことで生まれる波を定常波(定在波)といいます。

左右から進んできた波(緑・青)が重なると,全く動かない点(節)と大きく揺れる点(腹)を持つ波(赤)が生まれます。

\(\text{節と節の間隔} = \text{腹と腹の間隔} = \)\(\frac{\lambda}{2}\)
節と腹の間隔は \(\lambda/4\)
\(\lambda\)〔m〕:元の進行波の波長
全く動かない点()と大きく振れる点()が交互に現れ, その場に定在して振動する波を 定常波(定在波) といいます。
(節と節,腹と腹の間隔は $\frac{\lambda}{2}$ になります)
❓ Q. なぜ節と節の間隔は $\frac{\lambda}{2}$ なのか?

定常波の「節」は,右からの「山」と左からの「谷」(またはその逆)がぶつかって,互いに高さを打ち消し合う場所です。

波は1波長($\lambda$)ごとに元の形に戻りますが,「山」と「谷」はその半分の距離($\frac{\lambda}{2}$)だけずれた関係にあります。 つまり,波の形は半波長ごとに「山→谷→山…」と入れ替わります。

「打ち消し合い」が起こる条件もこのリズムに従うため,節(および腹)も半波長($\frac{\lambda}{2}$)ごとに等間隔で現れることになるのです。

定常波の節と節の間隔は?
\(\lambda\)(1波長)
\(\lambda/2\)(半波長)
\(\lambda/4\)(4分の1波長)
定常波の節と節(または腹と腹)の間隔は半波長 \(\lambda/2\) です。節と腹の間隔は \(\lambda/4\) になります。

🪞 10. 自由端反射と固定端反射

定常波は「逆向きの同じ波の重ね合わせ」で生じました。では、逆向きの波はどこから来るのでしょうか。その答えが「反射」です。端の固定のしかたで反射波の形が変わることを学びましょう。

ロープの端を柱に固定して波を送ると、山は何になって返ってくる?
谷になって返ってくる
山のまま返ってくる
消えてなくなる
固定端では端が動けないため、山は谷になって反射します(位相が反転)。一方、自由端では山がそのまま山として返ってきます。

波が壁に当たったときも「重ね合わせ」が起きています。やってくる波(入射波)と,壁から戻ってくる波(反射波)が重なり合うのです。
壁の種類によって,反射波の形が変わります。

📖
自由端反射(じゆうたんはんしゃ)
媒質が端で自由に動ける場合の反射。
山は山のまま反射する(位相の変化なし)。端点は常に(最大振幅)となる。
🧱
固定端反射(こていたんはんしゃ)
媒質が端で固定され動けない場合の反射。
山は谷となって反射する(位相が逆転する)。端点は常に(変位0)となる。
❓ Q. なぜ自由端は線対称、固定端は点対称に反射するのか?

自由端:境界は自由に動けるので,変位を0にしなくてよい。境界で変位がつながるように折り返すには左右だけ反転(上下はそのまま)すればよい → 線対称。

固定端:境界は動けないので,変位は常に0。境界で打ち消し合うには,仮想の波を折り返すときに上下も反転(山を谷に)する必要がある → 点対称。

$$ \text{自由端} : \text{山} \to \text{山} \quad (\text{同位相}) \qquad \text{固定端} : \text{山} \to \text{谷} \quad (\text{逆位相}) $$
自由端反射:端が自由に動ける → 位相変化なし、端は腹
固定端反射:端が固定 → 位相が反転、端は節
🪕 豆知識:楽器の弦と管は反射の宝庫

弦楽器の弦は両端が固定端(節)で、弦の振動は固定端反射によって定常波を作ります。一方、管楽器の開管(フルートなど)の開放端は自由端(腹)として機能します。楽器の音程は、この反射条件で決まる定常波の波長(=振動数)によって決まっています。

自由端反射で、端点は定常波のどこになる?
どちらでもない
自由端では媒質が自由に動けるため、端点は常に最大振幅の「腹」になります。固定端では動けないため「節」になります。

✏️ 11. 反射波の作図と合成

自由端・固定端で反射波がどう変わるかがわかりました。ここでは実際にパルス波の反射波を「作図」し、入射波と合成する手順を練習します。

固定端反射で、壁の向こう側に描いた透過波を折り返すとき、どのような対称性で折り返す?
そのまま折り返す
線対称(左右反転のみ)
点対称(上下左右反転)
固定端反射では壁の位置を中心に点対称(上下左右反転)で折り返します。自由端反射の場合は線対称(左右反転のみ)です。

反射波はどのように描けばよいのでしょうか? 壁の向こう側に「仮想の波」を考え,それを折り返すことで作図できます。

反射波の作図ステップ
  1. まず,壁がないものとして,壁を通り抜けた波(透過波)を点線などで描く。
  2. 反射の種類に合わせて,透過波を折り返す。
    • 自由端の場合:透過波を壁の位置で線対称(左右反転)に折り返す。
    • 固定端の場合:透過波を壁の位置で点対称(上下左右反転)に折り返す。
  3. やってくる「入射波」と,折り返した「反射波」を合成(足し合わせ)する。
$$ y_{\text{合成}} = y_{\text{入射}} + y_{\text{反射}} $$
自由端:透過波を線対称(左右反転)に折り返す → 反射波
固定端:透過波を点対称(上下左右反転)に折り返す → 反射波
反射波の作図で、最初に描くべきものは?
壁を通り抜けた透過波を点線で描く
いきなり反射波を描く
入射波を消す
まず壁がないものとして透過波を描き、次にそれを自由端なら線対称、固定端なら点対称に折り返すことで反射波が得られます。

〰️ 12. 連続波の反射

パルス波の反射作図を学びました。では、連続的に波を送り続けると何が起こるでしょうか。入射波と反射波の重ね合わせから定常波が生まれる様子を確認しましょう。

連続波を壁に送り続けると、入射波と反射波が重なって何ができる?
パルス波
疎密波
定常波
連続波を送り続けると入射波と反射波が重なり合い、定常波(定在波)が現れます。固定端では壁の位置が節、自由端では腹になります。

連続した波を送り続けると,入射波と反射波が重なり合い,その場に止まって振動する定常波(定在波)が現れます。

$$ \lambda_n = \frac{2L}{n} \quad (n = 1, 2, 3, \ldots) $$
\(\lambda_n\):n次の振動モードの波長
\(L\)〔m〕:弦(両端固定)の長さ
\(n = 1\):基本振動、\(n = 2\):2倍振動…
💡
入射波と反射波が重なると,ここでも 定常波 が生じます。
  • 自由端:壁の位置は常に「腹」になる。(隣の節までは $\lambda/4$)
  • 固定端:壁の位置は常に「節」になる。(隣の腹までは $\lambda/4$)
固定端反射で連続波を送った場合、壁の位置は定常波のどこになる?
節にも腹にもならない
固定端では壁が動けないため、常に「節」になります。一方、自由端では壁の位置が「腹」になります。隣の腹(または節)までの距離は \(\lambda/4\) です。

🎯 13. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:定常波の腹と節

定常波の問題では、固定端・自由端の反射条件を理解した上で、腹と節の位置を求めることが基本です。固定端は常に節、自由端は常に腹になります。腹と節は \(\lambda/4\) 間隔で交互に並びます。入試では弦の振動(両端固定)で「n番目の振動モードの波長は \(\lambda_n = 2L/n\)」を使う問題が頻出です。

🧮 ② 典型問題:y-x 図から媒質の動く向きを判定

正の向き(右)に進む波の y-x 図が与えられたとき、ある点の媒質の動く向きを求めるには:

手順:波形を進行方向(右)にわずかにずらした点線を描く。実線から点線へ向かう矢印の向きが、その点の媒質の動く向き。

速記法:右に進む波では、変位 0 で正の傾きの点は下向き、負の傾きの点は上向きに動く。

🧮 ③ 典型問題:縦波の横波表示から密・疎を読む

縦波を横波表示したグラフで、は右へのずれ(正の変位)、は左へのずれ(負の変位)を表す。

密部:変位が正から負に変わる点(グラフが右下がりに 0 を横切る点)

疎部:変位が負から正に変わる点(グラフが右上がりに 0 を横切る点)

周囲の粒子が集まってくる場所が密、離れていく場所が疎。

🔑 まとめ