物理基礎 > 第3編 波 > 第2章 音

⑥ 音の性質と伝わり方

🥁 1. 音の性質と伝わり方

太鼓をたたくと音が聞こえるのはなぜでしょう? 物体が振動すると、周りの空気が押されたり引かれたりして、圧力の変化が伝わっていきます。これが音波の正体です。

音は真空中でも伝わる?
はい、伝わる
いいえ、媒質が必要
光と同じ速さで伝わる
音は空気などの媒質を振動させて伝わる波なので、真空中では伝わりません。宇宙空間で音が聞こえないのはこのためです。
🧮 計算例:3.0 秒後に反射音が聞こえたときの壁までの距離

条件:\(v = 340\) m/s、\(t = 3.0\) s(往復時間)

$$ d = \frac{vt}{2} = \frac{340 \times 3.0}{2} = 510 \text{ m} $$

答え:\(d = 510\) m

空気の圧力が高い部分(密部)と低い部分(疎部)が交互に伝わっていく波を 縦波(疎密波)といいます。私たちの耳は、この鼓膜への圧力変化を感じ取っています。

$$ v = f\lambda $$
\(v\)〔m/s〕:音の速さ
\(f\)〔Hz〕:振動数
\(\lambda\)〔m〕:波長
音波は横波?縦波?
縦波(疎密波)
横波
横波と縦波の両方
音波は空気の分子が波の進行方向と同じ向きに振動する縦波(疎密波)です。密な部分と疎な部分が交互に伝わっていきます。

🎵 2. 音の3要素

音が空気の振動であることがわかりました。では、同じ「音」でも大きさ・高さ・音色が違うのはなぜでしょうか。音を特徴づける3つの要素を波の性質と結びつけて理解しましょう。

ピアノとギターで同じ「ド」の音を鳴らしても違って聞こえます。この違いを何という?
音の大きさ
音色
音の高さ
同じ高さ・大きさの音でも楽器によって聞こえ方が違うのは「音色」の違いです。音色は波形の形によって決まり、含まれる倍音のバランスが異なるためです。

音には「大きさ」「高さ」「音色」という3つの性質があります。これらは波形のどのような特徴に対応しているのでしょうか? オシロスコープ(波形を表示する装置)で確認してみましょう。

💡
音の3要素と波形
  • 音の大きさ振幅 が大きいほど、音は大きい。
  • 音の高さ振動数 が大きいほど、音は高い。
  • 音色波形 の形が違うと、音の聞こえ方が違う。
🎹 豆知識:オクターブと振動数

「ド」の音とその1つ上の「ド」の音は、1オクターブ違うといいます。 実は、1オクターブ高い音は、元の音のちょうど2倍の振動数を持っています。

  • ラの音 (A4) = 440 Hz
  • 高いラの音 (A5) = 880 Hz

このように振動数が簡単な整数比(1:2など)になると、私たちの耳には「よく調和した音」として聞こえます。

👂 豆知識:可聴域(かちょういき)

ヒトが聞くことのできる振動数の範囲(可聴域)は、一般に 20 Hz 〜 20000 Hz 程度と言われています。 実際に音を鳴らして確認してみましょう。(※音量に十分注意してください)

※ スピーカーの性能によっては、低音や高音が再生できない場合があります。
※ 年齢を重ねると高い音が聞こえにくくなる傾向があります(モスキート音)。

📊 年代別の可聴域の目安(高音域)

年代 聞こえる周波数の上限(目安)
10代 〜 20,000 Hz (ほぼ全て聞こえる)
20代 〜 17,000 Hz
30代 〜 16,000 Hz
40代 〜 15,000 Hz
50代 〜 12,000 Hz
60代〜 10,000 Hz 以下 (生活に支障はない範囲)

※ 個人差が大きく、聴覚の健康状態によって変化します。

🎵 豆知識:楽器の音色を決めるのは「倍音」

同じドの音(262Hz)でもピアノとバイオリンで音色が違うのは、含まれる倍音(基本振動数の整数倍の成分)の強さが異なるからです。倍音が豊富な楽器は温かみのある音、倍音が少ないと澄んだ音になります。音叉は倍音がほぼなく、純粋な正弦波に近い音を出します。

🤔 豆知識:「デシベル」は対数スケール

音の大きさは強度の対数で表します。10dB上がると音のエネルギーは10倍、20dBで100倍です。日常の音の例:ささやき声 30dB、普通の会話 60dB、電車内 80dB、ジェット機近く 120dB。120dBの音は30dBの音の10億倍のエネルギーを持ちます。人間の耳がこの巨大な範囲を感知できるのは驚異的です。

$$ \text{音の大きさ} \propto A^2, \quad \text{音の高さ} \propto f $$
\(A\):振幅(大きいほど大きな音)
\(f\)〔Hz〕:振動数(大きいほど高い音)
⚠️ 注意

波形と実際の音

実際の楽器の音などは、単純な正弦波ではなく、さまざまな振動数の波が混ざり合った「複雑な波形」をしています。これが音色の違いを生み出します。

音の高さを決めるのは波のどの要素?
振幅
振動数
波の速さ
音の高さは振動数によって決まります。振動数が大きいほど高い音になります。振幅は音の大きさ、波形は音色に対応します。

💨 3. 音の速さ

音の3要素は振幅・振動数・波形で決まることがわかりました。次は、音がどれくらいの速さで伝わるのか、そしてその速さは何によって変わるのかを調べましょう。

カミナリが光ってから音が遅れて聞こえるのはなぜ?
音の速さは光の速さよりはるかに遅いから
音は直進できないから
光が先に発生するから
光は秒速約30万kmで伝わりますが、音は空気中で秒速約340mしかありません。この速さの違いにより、遠くの雷では光が先に見え、音が遅れて届きます。

カミナリが光ってから音が聞こえるまで時間がかかるように、音の伝わる速さには限りがあります。空気中での音速 \(V\) は、温度 \(t\) [℃] によって変化します。

\(V = \)\(331.5 + 0.6t\)
\(V\)〔m/s〕:音速
\(t\)〔℃〕:気温

この式からわかるように、気温が高くなるほど音速は速くなります。 0℃ では約 331.5 m/s、15℃ では約 340 m/s です。

📐 公式の導出:\(V = 331.5 + 0.6t\)

【Step 1】理論的には、気体中の音速は \(V = \sqrt{\frac{\gamma R T}{M}}\)(\(\gamma\):比熱比、\(R\):気体定数、\(T\):絶対温度、\(M\):モル質量)で表されます。

【Step 2】空気(\(\gamma = 1.4\), \(M = 0.029\) kg/mol)を代入すると、0℃(273 K)で \(V_0 \ allingdotseq 331.5\) m/s が得られます。

【Step 3】\(V \propto \sqrt{T}\) を \(T = 273 + t\) で展開し、\(t\) が 273 に比べて小さいとき \(\sqrt{1 + t/273} \ allingdotseq 1 + t/546\) と近似すると、 $$ V \ allingdotseq 331.5 \times (1 + t/546) \ allingdotseq 331.5 + 0.607t \ allingdotseq 331.5 + 0.6t $$

この近似は −20℃〜40℃ 程度の範囲で十分正確です。

🧮 音速計算機

📖
媒質による違い

音は空気(気体)だけでなく、液体や固体のなかでも伝わります。

  • 水中(液体):約 1500 m/s(空気中の約4.5倍)
    例:クジラやイルカの鳴き声が遠くまで届く
  • 鉄中(固体):約 5950 m/s(空気中の約17.5倍)
    例:糸電話、鉄道のレールを伝わる音

一般に、固体 > 液体 > 気体 の順に音速は速くなります。

気温が高くなると、空気中の音速はどうなる?
速くなる
遅くなる
変わらない
空気中の音速は \(V = 331.5 + 0.6t\) で表され、気温 \(t\) が高いほど速くなります。0℃で約331.5 m/s、15℃で約340 m/sです。

🏔️ 4. 音の反射

音の速さがわかると、音が壁に当たって跳ね返る「反射」を定量的に扱えるようになります。やまびこの距離計算など、身近な現象に物理を使ってみましょう。

山に向かって「ヤッホー!」と叫ぶと、声が返ってくる現象を何という?
屈折
反射(やまびこ)
回折
音が壁や山に当たって返ってくる現象を反射といいます。やまびこ(こだま)は音の反射の身近な例です。

山びこのように、音が壁や山に当たって返ってくる現象を反射といいます。 コンサートホールなどで音が響く「残響」も、壁や天井での反射によるものです。

$$ d = \frac{vt}{2} $$
\(d\)〔m〕:壁までの距離
\(v\)〔m/s〕:音速
\(t\)〔s〕:音を出してから反射音が返るまでの時間(往復)
🐲 豆知識:鳴き竜(なきりゅう)

広い講堂や日光東照宮の薬師堂などで手を叩くと、「ビーン」という独特な音が聞こえることがあります。 これは天井と床の間で音が何度も往復反射し、特定の周波数の音が強調されることで起こる現象です。

音の反射を利用した身近な現象はどれ?
虹が見える
水中で音が速く伝わる
山びこ(こだま)が聞こえる
山びこ(こだま)は音が山や壁で反射して返ってくる現象です。コンサートホールの残響も音の反射によるものです。

🎸 5. うなり

音の反射は1つの音波の振る舞いでしたが、振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らすと、音の大小が周期的にくり返される不思議な現象が起こります。

2つのおんさの振動数がわずかに違うとき、同時に鳴らすと「ウォーン、ウォーン」と聞こえます。この現象は?
うなり
共鳴
回折
振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らすと、音の大小が周期的にくり返される「うなり」が生じます。これは2つの音波の重ね合わせによる現象です。

振動数がわずかに異なる2つのおんさを同時に鳴らすと、ウォーン、ウォーンと音の大小が周期的にくり返されて聞こえます。 このような現象をうなり(beat)といいます。

うなりは2つの音波が重なり合うことによって生じます。

📖
うなりの波形の読み取り方

振動数がわずかに異なる2つの音波が合成されると、上のシミュレーションのような波形が現れます:

  • 同位相で重なる:振幅が大きくなり、音が大きく聞こえる(山が重なる)
  • 逆位相で重なる:振幅が小さくなり、音が小さく聞こえる(山と谷が重なる)

この音の大小の周期的な変化が、「ウォーン、ウォーン」というように聞こえます。 合成波の緑色の点線(包絡線)が、音の大きさの変化を表しています。

🧮 うなりの回数の求め方

1秒当たりに生じるうなりの回数 \(f\) を求めてみましょう。うなりが1回生じる時間(うなりの周期)を \(T_0\) [s] とすると、 1秒間では \(\dfrac{1}{T_0}\) 回うなりが生じるので、次の関係が成り立ちます:

$$ f = \frac{1}{T_0} $$

一方、2つの音源の振動数をそれぞれ \(f_1\)、\(f_2\) [Hz] とすると、周期 \(T_0\) [s] の間に2つの音源から出る波の数 \(f_1T_0\) 個と \(f_2T_0\) 個は波1個分ずれており、次の関係が成り立ちます:

$$ |f_1T_0 - f_2T_0| = 1 $$

この式より \(|f_1 - f_2| \cdot T_0 = 1\) となり、\(T_0 = \dfrac{1}{|f_1 - f_2|}\) となります。 これを最初の式に代入すると、うなりの回数の公式が得られます:

\(\boldsymbol{f = \)\(|f_1 - f_2|}\)
\(f\)〔Hz〕:うなりの回数 (1秒間の回数)
\(f_1, f_2\)〔Hz〕:2つの音源の振動数

この式から、1秒間に振動数 \(f_1\)、\(f_2\) の差の数だけうなりが生じることがわかります。 2つの音源の振動数が接近している場合にうなりが聞こえます。

🔍 振動数が大きく離れている場合

振動数の差が大きすぎる場合(例:1秒間に15回以上)、うなりは個別の音の大小としては認識できなくなります。

なぜうなりが聞こえなくなるのか?

  • 脳の処理速度の限界:人間の聴覚は、1秒間に約15回を超える音の変化を個別に認識することが困難です。それ以上速い変化は「ザラザラした音」として聞こえます。
  • 2つの音として分離:振動数の差が非常に大きい場合(例:400 Hz と 4000 Hz)、脳は2つの別々の音として認識してしまい、うなりとしては聞こえません。
  • 可聴域との関係:2つの音の振動数が離れすぎると、音色が異なりすぎて「同じ種類の音の重なり」と認識されなくなります。

一般に、うなりが明瞭に聞こえるのは振動数の差が1〜10 Hz程度の場合です。 上のシミュレーションでスライダーを動かして、この違いを確認してみましょう。

振動数 440 Hz と 443 Hz のおんさを同時に鳴らすと、1秒間に何回うなりが生じる?
440回
883回
3回
うなりの回数は \(f = |f_1 - f_2| = |440 - 443| = 3\) 回/秒です。1秒間に3回「ウォーン」と音の大小が繰り返されます。

🎯 6. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

$ V = 331.5 + 0.6t \text{〔m/s〕} $
\(V\):空気中の音速
\(t\)〔℃〕:気温

🎯 ① 頻出テーマ:うなりの計算

振動数がわずかに異なる2つの音を同時に鳴らすと、うなりが聞こえます。うなりの回数は \(|f_1 - f_2|\) 回/秒です。入試では「おんさに粘土を付けて振動数を変化させた」「弦の張力を変えた」ときのうなりの変化から未知の振動数を求める問題が定番です。

🧮 ② 典型問題:うなりから振動数を求める

問題設定:振動数が未知のおんさAと、振動数 \(f_0\) のおんさBを同時に鳴らすと、毎秒 \(n\) 回のうなりが聞こえた。

ステップ1:うなりの公式から候補を絞る

うなりの回数は2つの振動数の差に等しいので、次の関係が成り立ちます。

$ |f_\text{A} - f_0| = n $

これより、\(f_\text{A} = f_0 + n\) または \(f_\text{A} = f_0 - n\) の2つの候補がある。

ステップ2:追加条件で1つに絞る

典型的な追加条件と判定法:

弦の張力を変える場合

弦の振動数は \(f = \dfrac{1}{2L}\sqrt{\dfrac{T}{\mu}}\) なので、張力 \(T\) を大きくすると \(f\) は大きくなる。同様に、うなりの増減から振動数の大小関係を判定できる。

🔑 まとめ