物理基礎 > 第4編 電気 > 第1章 物質と電気

① 電気の性質

⚡ 1. 静電気と帯電

「冬にドアノブを触るとバチッとくるのはなぜ?」——身近な静電気の現象を、電子の移動から理解しましょう。

冬にドアノブを触ると「バチッ」とくるのはなぜ?
静電気の放電
磁気の力
化学反応
体にたまった静電気(電荷)が金属に触れた瞬間に一気に放電するためです。このカードで静電気と帯電のしくみを学びましょう。

静電気とは

空気が乾燥しているとき、衣類を脱ぐとパチパチと音がしたり、下敷きで髪をこすると髪が逆立ったりします。 これは物体が電気を帯びるために起こる現象です。

一般に、物体が電気を帯びることを帯電といい、帯電した物体に分布している流れを伴わない電気を静電気といいます。 また、電気現象を生じさせるもの(電気)を電荷といいます。

💡
帯電:物体が電気を帯びること。摩擦・接触・静電誘導などで起こる。
静電気:帯電した物体に分布する、流れを伴わない電気。
電荷:電気現象を生じさせるもの。荷電粒子そのものを指すこともある。

正電荷と負電荷

電荷には正(+)負(−)の2種類があります。

正に帯電した電荷を正電荷、負に帯電した電荷を負電荷といいます。

下のシミュレーションで、2つの電荷の符号と大きさを変えて引力・斥力を体験しよう。

📌 ポイント

ガラス棒を絹の布でこするとガラス棒は正に帯電絹の布は負に帯電します。 塩化ビニルのパイプを毛皮でこすると、パイプは負に帯電します。

電気量と電気素量

電荷の量を電気量といい、単位にはクーロン(記号 C)を用います。 正電荷は正の電気量、負電荷は負の電気量をもちます。

陽子1個と電子1個がもつ電気量は、符号は正と負で異なりますが、大きさは等しく \(1.6 \times 10^{-19}\) C です。 これを電気素量 \(e\) といいます。帯電体がもつ電気量の大きさは、\(e\) の整数倍になります。

\(e = \)\(1.6 \times 10^{-19} \text{ C}\)
\(e\)〔C〕:電気素量(陽子1個・電子1個の電気量の大きさ)
⚡ 豆知識:冬に「バチッ」とくる静電気

冬場にドアノブに触れて「バチッ」とくるのは、体に蓄積した静電気が放電するからです。乾燥した空気(湿度が低い)は電気を通しにくく、衣服と体の摩擦で生じた電荷が逃げにくいため蓄積します。人体は数千ボルトに帯電することがあり、放電時に数アンペアの瞬間電流が流れますが、時間が極めて短いため危険ではありません。

🤔 豆知識:電子の「正体」が判明したのは19世紀末

1897年、J.J.トムソンが陰極線の実験で電子を発見しました。それまで「電気とは何か」は完全には理解されていませんでした。フランクリンが「正の電気」と名付けた方が実は電子(負の電荷)の不足した状態だったため、電流の向きと電子の移動方向が逆になるという不便な慣習が残っています。

🤔 豆知識:ドアノブでバチッとくる電圧は?

冬にドアノブに触れてパチッと感じるとき、体と金属の間の電圧は数千〜1万V以上にもなります。 しかし流れる電気量がごく微小なため、大きな危険はありません。痛みを感じるのは約3000V以上からです。

同じ種類の電荷どうしを近づけるとどうなる?
引きあう
反発しあう
何も起こらない
同種の電荷どうしは斥力(反発力)がはたらきます。異種の電荷どうしは引力がはたらきます。

🔬 2. 物体が帯電するしくみ

静電気の現象を見たところで、「なぜこすると電気が発生するの?」という根本的な問いに踏み込みましょう。帯電の正体は電子の移動です。原子の構造から理解します。

下敷きで髪をこすると静電気が起きます。このとき何が移動している?
陽子
電子
原子全体
摩擦帯電では電子が一方の物体からもう一方へ移動します。陽子は原子核に固定されており移動しません。

原子の構造

物質は多数の原子からできています。原子の中心には正の電荷をもつ原子核(陽子+中性子)があり、 そのまわりを負の電荷をもつ電子がとりまいています。

電気を帯びていない中性の原子では、陽子の数と電子の数が等しくなっています。

$$ e = 1.6 \times 10^{-19} \text{ C} $$
\(e\)〔C〕:電気素量(電子1個がもつ電荷の大きさ)
すべての電荷は \(e\) の整数倍(電荷の量子化)

摩擦帯電のしくみ

2つの物体をこすり合わせると、物体の表面間で電子の移動が起こります。 一方の表面付近の原子が電子を得て負に帯電し、他方は電子を失って正に帯電します。

つまり、帯電とは新たに電気が生まれるのではなく、電子が物体間を移動するだけの現象です。

🧮 計算例:2.0 C の電荷が 500 V/m の電場から受ける力

条件:\(q = 2.0\) C、\(E = 500\) V/m

$$ F = qE = 2.0 \times 500 = 1000 \text{ N} $$

答え:\(F = 1000\) N(= 1.0 kN)

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イオン

原子が電子を放出したり取り込んだりして電気を帯びた粒子をイオンといいます。 電子を放出して正の電気を帯びたものを陽イオン、 電子を取り込んで負の電気を帯びたものを陰イオンといいます。

📋 豆知識:帯電列を知ろう

物質を「こすり合わせたとき正に帯電しやすい順」に並べたものを帯電列といいます。 一般的な並び(正→負):毛皮 → ガラス → 絹 → 木綿 → 金属 → ゴム → 塩化ビニル。 帯電列で離れた物質どうしほど、こすったときに大きく帯電します。

摩擦帯電で物体が電気を帯びるとき、正しいのはどれ?
電子が物体間を移動する
新しい電荷が生まれる
陽子が物体間を移動する
帯電は電子が一方の物体から他方へ移動する現象です。新しい電荷が生まれるのではなく、陽子は原子核に固定されていて移動しません。

🧲 3. 静電誘導と箔検電器

摩擦による帯電は「接触して電子が移動する」ものでした。しかし実は、帯電体を近づけるだけで触れていない物体にも電荷の偏りが生じます。この現象(静電誘導)と、それを利用した検出器を学びましょう。

帯電した風船を壁に押し付けるとくっつきます。壁は帯電していないのになぜ?
壁が磁石になるから
重力が変化するから
壁の中の電荷が偏るから
帯電体を近づけると、壁の内部で電荷の偏りが生じ(誘電分極)、近い側に異種の電荷が現れて引力がはたらきます。これが静電誘導に関わる現象です。

導体と不導体

金属のように電気をよく通す物質を導体といいます。金属には、金属内を自由に動きまわれる電子(自由電子)が存在し、 電流は自由電子の移動によって生じます。

一方、電気を通しにくい物質を不導体絶縁体)といいます。 アクリル、塩化ビニル、ゴム、ガラスなどが不導体の例です。 不導体では電子がすべて構成粒子に属し、自由電子が存在しないため電気を通しにくくなります。

また、ケイ素(Si)などのように電気の通しやすさが導体と不導体の中間のものを半導体といいます。

導体 半導体 不導体(絶縁体)
自由電子 多い 少ない ほぼなし
電気の通しやすさ 通しやすい 中間 通しにくい
銅、鉄、アルミ ケイ素、ゲルマニウム ガラス、ゴム、塩化ビニル
温度と抵抗 温度↑で抵抗↑ 温度↑で抵抗↓ 非常に大きい
$$ F = k_0 \frac{q_1 q_2}{r^2} $$
\(F\)〔N〕:静電気力
\(q_1, q_2\)〔C〕:電荷
同種の電荷は反発(\(F > 0\))、異種は引力(\(F < 0\))

静電誘導

導体に帯電体を近づけると、帯電体に近い側の表面には帯電体と異種の電荷が現れ、 遠い側の表面には帯電体と同種の電荷が現れます。 この現象を静電誘導といいます。

自由電子が静電気力によって移動するために静電誘導が起こります。

下のシミュレーションで、静電誘導と箔検電器のしくみを確認しよう。帯電棒の距離を変えると、導体内の電荷の偏りと箔の開きが変化します。

📌 ポイント

静電誘導は導体で起こる現象です。自由電子が移動できるからこそ、電荷が偏ります。 不導体では自由電子がないため、代わりに誘電分極(構成粒子内の電子のずれ)が起こります。

箔検電器

物体が帯電しているかどうかを調べる装置に箔検電器があります。 金属円板・金属棒・2枚の金属箔からなり、帯電体を金属円板に近づけると静電誘導によって箔に同種の電荷が集まり、 箔が互いに反発して開きます

🔍 発展:誘電分極とは

不導体の電子は構成粒子から離れませんが、帯電体を近づけると静電気力によって電子の位置がわずかにずれます。 これを分極といいます。不導体に生じる静電誘導の現象を特に誘電分極といい、 不導体のことを誘電体ともいいます。

🎈 豆知識:風船が壁にくっつく理由

風船を髪でこすって壁に押し付けると、風船がくっつきます。 これは帯電した風船が壁(不導体)に誘電分極を起こし、近い側に異種の電荷が現れて引力が生じるためです。

静電誘導で、導体の帯電体に近い側にはどんな電荷が現れる?
帯電体と同種の電荷
帯電体と異種の電荷
電荷は現れない
静電誘導では、帯電体に近い側に異種の電荷、遠い側に同種の電荷が現れます。自由電子が静電気力で移動するためです。

⚖️ 4. 電気量保存の法則

摩擦帯電でも静電誘導でも、電子が「移動」しているだけで消えたり生まれたりはしていませんでした。帯電の前後で電気量の総和はどう変わるのか、自然界の基本法則を確認しましょう。

ガラス棒を絹でこすると、ガラスは正に帯電します。このとき絹は?
正に帯電する
帯電しない
負に帯電する
ガラスから絹へ電子が移動するので、電子を受け取った絹は負に帯電します。正と負の電気量の合計は0のまま変わりません。

電気量保存の法則

物体が帯電するときは、物体どうしが電気をやりとりするだけであり、新たに電気が生み出されたり失われたりすることはありません。 帯電の前後で電気量の総和は変わりません。これを電気量保存の法則といいます。

帯電の前後で、物体全体の電気量の総和は一定に保たれる。

たとえばガラス棒を絹の布でこすると、ガラス棒が \(+Q\) の電気量をもつとき、絹の布は \(-Q\) の電気量をもちます。 合計は \(+Q + (-Q) = 0\) で、こする前と変わりません。

ガラス棒絹の布合計
摩擦前000
摩擦後+Q−Q0
⚡ 豆知識:雷と電気量保存

雷は雲の中の氷の粒どうしの衝突で帯電が起こり、雲の上部が正、下部が負に帯電することで発生します。 地面との間で放電(落雷)が起こりますが、全体としての電気量は保存されています。 1回の落雷で移動する電気量は約5 C、電圧は数億Vにもなります。

摩擦帯電の前後で、2つの物体の電気量の総和はどうなる?
変わらない
増加する
減少する
電気量保存の法則により、帯電の前後で電気量の総和は一定に保たれます。電子が移動するだけで、新たに電気が生まれたり消えたりすることはありません。

🎯 5. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

$ Q = ne $
\(Q\)〔C〕:移動した電気量
\(n\):電子の個数
\(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C:電気素量

🎯 ① 頻出テーマ:帯電と静電誘導

接触帯電・摩擦帯電・静電誘導の違いを正確に理解することが重要です。静電誘導では電荷が移動するだけで、全体の電荷量は変わりません。箔検電器の実験で「帯電体を近づける→アースする→帯電体を遠ざける」の手順で逆符号の帯電が残る仕組みが頻出です。

🧮 ② 典型問題:箔検電器の操作手順

負に帯電させる手順:

1. 正に帯電した棒を金属板に近づける → 静電誘導で金属板側に負電荷、箔側に正電荷 → 箔が開く

2. 金属板に指で触れる(アース) → 箔側の正電荷が人体を通じて逃げる → 箔が閉じる

3. 指を離す → 負電荷だけが残る

4. 帯電棒を遠ざける → 残った負電荷が全体に分布 → 箔が開く(負に帯電)

ポイント:帯電棒と逆符号に帯電する。手順の順序を間違えないこと。

🧮 ③ 典型問題:電気量の計算

電子 \(n\) 個が移動したときの電気量 \(Q\) は、電気素量 \(e = 1.6 \times 10^{-19}\) C を用いて次のように求められます。

$ Q = ne $

例:\(1.0 \times 10^{10}\) 個の電子が移動した場合、

$ Q = 1.0 \times 10^{10} \times 1.6 \times 10^{-19} = 1.6 \times 10^{-9} \text{ C} = 1.6 \text{ nC} $

🔑 まとめ