「電池をつなぐと電球が光るのはなぜ?」——導線の中を流れる電気の正体と、電流の向きを理解しましょう。
電池と電球を導線でつなぐと、導線内を自由電子が移動します。 このように、電子やイオンなどが移動することによって生じる電荷の流れを電流といいます。 また、一定の向きに流れる電流を直流といいます。
下の図で、電流の正体と向きを確認しよう。電子の流れ(青)と電流の向き(赤)が逆であることを観察できます。
電流の向きは、正の電荷が移動する向きと定められています。 電池の正極から出て負極へ向かう向きです。
しかし実際に移動しているのは負の電荷をもつ自由電子なので、電流の向きと自由電子の移動の向きは逆になります。
電流の向きは「正電荷の移動する向き」です。実際の電子は逆向きに流れています。 この約束は歴史的な経緯によるものですが、物理では一貫してこの定義を使います。
導線を流れる電流の大きさは、単位時間あたりに導線の断面を通過する電気量の大きさで定義されます。 単位にはアンペア(記号 A)を用います。 1 A は、1秒あたりに 1 C の電気量が通過するときの電流の大きさです。
分岐点のない一回りの電気回路では、どの場所でも電流の大きさは等しい。
電流の向きは「正電荷の流れる向き」と定義されています。しかし実際に金属中を動いているのは負の電荷をもつ電子で、正電荷とは逆向きに移動します。これはフランクリンが電子の存在を知らない時代に定義した慣習が残っているためです。混乱しやすいですが、回路計算ではすべて「電流の向き」(正電荷の流れ)で統一して問題ありません。
金属中の自由電子の平均移動速度(ドリフト速度)は、1 A 程度の電流でもわずか 0.1 mm/s 程度です。 スイッチを入れた瞬間に電球が光るのは、電場の伝達が光速に近いからであり、1つ1つの電子が速く動いているわけではありません。
電流が「電子の流れ」であることがわかりました。では、電子を流す「押す力」にあたるものは何でしょうか。「電圧が高いとたくさん電流が流れる」——この電圧と電流の定量的な関係がオームの法則です。
電気回路を水路に例えると、水の流れが電流に、水路の高低差が電圧に対応します。 電圧は電流を流そうとするはたらきを表し、電位差とも呼ばれます。 単位にはボルト(記号 V)を用います。
導体に加える電圧 \(V\) をいろいろな値に変えて、流れる電流 \(I\) を測定しグラフに表すと、 原点を通る直線になります。つまり、導体に流れる電流は加える電圧に比例します。 これをオームの法則といいます。
式の \(R\) を導体の電気抵抗(または抵抗)といいます。 抵抗値が大きいほど電流は流れにくくなります。 単位にはオーム(記号 Ω)を用います。 1 Ω は、1 V の電圧を加えたとき 1 A の電流が流れるような抵抗値です。
条件:\(V = 6.0\) V、\(R = 20\) Ω
オームの法則 \(V = IR\) より
$$ I = \frac{V}{R} = \frac{6.0}{20} = 0.30 \text{ A} $$答え:\(I = 0.30\) A(= 300 mA)
小さい抵抗器では、色帯(カラーコード)で抵抗値と許容差を示しています。 左から1〜3番目の帯が数値、4番目が乗数、5番目が許容差を表します。 例:茶黒黒黄茶 = 100 × 10⁴ Ω ± 1% = 1.00 MΩ。
オームの法則で1つの抵抗の回路を扱えるようになりました。次は、複数の抵抗をどうつなぐかで回路全体の抵抗値がどう変わるかを学びます。直列と並列の2つの基本パターンを押さえましょう。
下のシミュレーションで、直列接続と並列接続の違いを確認しよう。抵抗値と電圧を変えて、電流の流れ方の違いを観察できます。
電流の流れが1本道となるような抵抗の接続を直列接続といいます。
オームの法則より \(V_1 = R_1 I\), \(V_2 = R_2 I\) なので、 \(V = (R_1 + R_2)I\) となります。
2つ以上の抵抗の両端どうしを接続するつなぎ方を並列接続といいます。
直列:電流は共通、電圧は和 → 合成抵抗は大きくなる
並列:電圧は共通、電流は和 → 合成抵抗は小さくなる
家庭の電気器具はすべて並列に接続されています。 並列接続なら各器具に同じ電圧(100 V)がかかり、1つの器具のスイッチを切っても他の器具には影響しません。 もし直列接続なら、1つの器具が切れると全体の回路が切れてしまいます。
ここまで抵抗値を「与えられたもの」として扱ってきましたが、抵抗値は導体の材質・長さ・太さで決まります。「同じ材質でも太い線は電気を通しやすい」——この関係を定量的に理解しましょう。
下の図で、導体の長さ・断面積・材質と抵抗の関係を確認しよう。
同じ材質の導体について、抵抗値は長さに比例し、断面積に反比例します。
比例定数 \(\rho\) は物質の材質と温度によって決まる値で、抵抗率(電気抵抗率、比抵抗)といいます。
| 物質 | 抵抗率〔Ω・m〕(20℃) |
|---|---|
| 銀(Ag) | \(1.6 \times 10^{-8}\) |
| 銅(Cu) | \(1.7 \times 10^{-8}\) |
| アルミニウム(Al) | \(2.7 \times 10^{-8}\) |
| 鉄(Fe) | \(9.6 \times 10^{-8}\) |
| ニクロム | \(1.1 \times 10^{-6}\) |
銅やアルミニウムは抵抗率が小さいため導線に使われ、ニクロムは抵抗率が大きいため抵抗器や電熱線に使われます。
一般に、金属の導体に電流が流れるとジュール熱が発生し、温度が上昇します。 温度が上がると導体内の陽イオンの熱運動が激しくなり、自由電子の進行が妨げられるため、抵抗値が増加します。
特定の物質を極低温に冷却すると、電気抵抗が完全に0になる「超伝導」が起きます。超伝導体に一度電流を流すと、抵抗がないため永遠に流れ続けます。MRI(磁気共鳴画像装置)の超伝導コイルはこの原理で強力な磁場を維持しています。現在、常温超伝導体の発見が物理学の大きな目標の一つです。
白熱電球のフィラメント(タングステン)は、温度が上がると抵抗値が大きく増加します。 そのため電流-電圧のグラフは直線にならず、オームの法則が厳密には成り立ちません。 このように抵抗値が電流によって変化する素子を非線形素子といいます。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
直列接続は \(R = R_1 + R_2\)、並列接続は \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)(つまり \(R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\))です。複雑な回路では、直列・並列を繰り返し合成して簡略化するか、キルヒホッフの法則を使います。入試では「どの部分が直列でどの部分が並列か」を見抜く力が問われます。
回路の読み方の基本:複雑な回路を簡略化するには、「どの部分が直列で、どの部分が並列か」を見抜くことが重要。
直列・並列それぞれの合成抵抗の公式を適用します。
$ \text{直列:} R = R_1 + R_2 \qquad \text{並列:} R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2} $
並列の公式は「積÷和」(和分の積)と覚えると便利。3つ以上のときは \(\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2} + \dfrac{1}{R_3}\) を使う。
複雑な回路では、以下の手順で簡略化する。
3つの抵抗が三角形(\(\Delta\))やY字型に接続されていて、単純な直列・並列に分解できない場合がある。この場合、Y-\(\Delta\) 変換を使って等価回路に変形できる。
$ R_a = \frac{R_1 R_2 + R_2 R_3 + R_3 R_1}{R_1} \quad \text{(Y→Δ変換)} $
物理基礎の範囲を超えるが、難関大入試ではときどき出題される。まずは直列・並列の組み合わせを確実にマスターしよう。
ランダムに生成される回路の合成抵抗を求めよう。スライダーで答えを入力し、チェックボタンで採点。解説表示でステップごとの簡略化を確認できます。