物理基礎 > 第4編 電気 > 第1章 物質と電気

② 電流と電気抵抗

🔋 1. 電流とは

「電池をつなぐと電球が光るのはなぜ?」——導線の中を流れる電気の正体と、電流の向きを理解しましょう。

電線の中を実際に流れている粒子は何?
電子
陽子
原子
金属の導線内では自由電子が移動することで電流が生じます。陽子は原子核に固定されていて動きません。

電流の正体

電池と電球を導線でつなぐと、導線内を自由電子が移動します。 このように、電子やイオンなどが移動することによって生じる電荷の流れを電流といいます。 また、一定の向きに流れる電流を直流といいます。

下の図で、電流の正体と向きを確認しよう。電子の流れ(青)と電流の向き(赤)が逆であることを観察できます。

電流の向き

電流の向きは、正の電荷が移動する向きと定められています。 電池の正極から出て負極へ向かう向きです。

しかし実際に移動しているのは負の電荷をもつ自由電子なので、電流の向きと自由電子の移動の向きは逆になります。

⚠️ 注意

電流の向きは「正電荷の移動する向き」です。実際の電子は逆向きに流れています。 この約束は歴史的な経緯によるものですが、物理では一貫してこの定義を使います。

電流の大きさ

導線を流れる電流の大きさは、単位時間あたりに導線の断面を通過する電気量の大きさで定義されます。 単位にはアンペア(記号 A)を用います。 1 A は、1秒あたりに 1 C の電気量が通過するときの電流の大きさです。

$$ I = \frac{Q}{t} \quad , \quad Q = It $$
\(I\)〔A〕:電流
\(Q\)〔C〕:電気量の大きさ
\(t\)〔s〕:時間
📌 ポイント

分岐点のない一回りの電気回路では、どの場所でも電流の大きさは等しい

🤔 豆知識:「電流の向き」と「電子の移動方向」が逆の理由

電流の向きは「正電荷の流れる向き」と定義されています。しかし実際に金属中を動いているのは負の電荷をもつ電子で、正電荷とは逆向きに移動します。これはフランクリンが電子の存在を知らない時代に定義した慣習が残っているためです。混乱しやすいですが、回路計算ではすべて「電流の向き」(正電荷の流れ)で統一して問題ありません。

🧮 豆知識:自由電子の速さは意外と遅い

金属中の自由電子の平均移動速度(ドリフト速度)は、1 A 程度の電流でもわずか 0.1 mm/s 程度です。 スイッチを入れた瞬間に電球が光るのは、電場の伝達が光速に近いからであり、1つ1つの電子が速く動いているわけではありません。

電流の向きと電子の移動方向の関係は?
同じ向き
逆向き
直角
電流の向きは「正電荷の移動する向き」と定義されています。実際に移動する電子は負電荷なので、電流の向きと電子の移動方向は逆になります。

📐 2. 電圧とオームの法則

電流が「電子の流れ」であることがわかりました。では、電子を流す「押す力」にあたるものは何でしょうか。「電圧が高いとたくさん電流が流れる」——この電圧と電流の定量的な関係がオームの法則です。

水路で水の量を増やすには高低差を大きくします。電気回路で電流を増やすには何を大きくする?
電圧
抵抗
導線の長さ
電圧は電流を流すための「電気的な高低差」です。電圧を大きくすると電流も大きくなります(オームの法則)。

電圧(電位差)

電気回路を水路に例えると、水の流れが電流に、水路の高低差が電圧に対応します。 電圧は電流を流そうとするはたらきを表し、電位差とも呼ばれます。 単位にはボルト(記号 V)を用います。

💡
電圧(電位差):回路の2点間の電位の差。電流を流すための「電気的な高低差」に相当する。

オームの法則

導体に加える電圧 \(V\) をいろいろな値に変えて、流れる電流 \(I\) を測定しグラフに表すと、 原点を通る直線になります。つまり、導体に流れる電流は加える電圧に比例します。 これをオームの法則といいます。

$$ V = RI \quad , \quad I = \frac{V}{R} $$
\(I\)〔A〕:電流
\(V\)〔V〕:電圧
\(R\)〔Ω〕:抵抗(電気抵抗)

式の \(R\) を導体の電気抵抗(または抵抗)といいます。 抵抗値が大きいほど電流は流れにくくなります。 単位にはオーム(記号 Ω)を用います。 1 Ω は、1 V の電圧を加えたとき 1 A の電流が流れるような抵抗値です。

🧮 計算例:6.0 V の電圧に 20 Ω の抵抗をつないだときの電流

条件:\(V = 6.0\) V、\(R = 20\) Ω

オームの法則 \(V = IR\) より

$$ I = \frac{V}{R} = \frac{6.0}{20} = 0.30 \text{ A} $$

答え:\(I = 0.30\) A(= 300 mA)

aria-label="シミュレーション:オームの法則(電圧と抵抗を変えてV-Iグラフを観察)">
🔍 豆知識:抵抗器のカラーコード

小さい抵抗器では、色帯(カラーコード)で抵抗値と許容差を示しています。 左から1〜3番目の帯が数値、4番目が乗数、5番目が許容差を表します。 例:茶黒黒黄茶 = 100 × 10⁴ Ω ± 1% = 1.00 MΩ。

オームの法則によると、抵抗値が大きいほど電流は?
流れにくくなる
流れやすくなる
変わらない
オームの法則 \(I = V/R\) より、電圧が一定なら抵抗が大きいほど電流は小さく(流れにくく)なります。

🔌 3. 抵抗の接続と合成抵抗

オームの法則で1つの抵抗の回路を扱えるようになりました。次は、複数の抵抗をどうつなぐかで回路全体の抵抗値がどう変わるかを学びます。直列と並列の2つの基本パターンを押さえましょう。

家庭のコンセントに電気器具をたくさんつなぐと、全体の電流は増える?減る?
減る
増える
変わらない
家庭の器具は並列接続なので、器具を増やすと合成抵抗が小さくなり、全体の電流は増えます。だからブレーカーが落ちることがあるのです。

下のシミュレーションで、直列接続と並列接続の違いを確認しよう。抵抗値と電圧を変えて、電流の流れ方の違いを観察できます。

直列接続

電流の流れが1本道となるような抵抗の接続を直列接続といいます。

オームの法則より \(V_1 = R_1 I\), \(V_2 = R_2 I\) なので、 \(V = (R_1 + R_2)I\) となります。

\(R = \)\(R_1 + R_2\)
\(R\)〔Ω〕:直列の合成抵抗
直列接続すると、抵抗は大きくなる

並列接続

2つ以上の抵抗の両端どうしを接続するつなぎ方を並列接続といいます。

\(\frac{1}{R} = \)\(\frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)
\(R\)〔Ω〕:並列の合成抵抗
並列接続すると、抵抗は小さくなる
📌 ポイント

直列:電流は共通、電圧は和 → 合成抵抗は大きくなる
並列:電圧は共通、電流は和 → 合成抵抗は小さくなる

🏠 豆知識:家庭のコンセントはなぜ並列?

家庭の電気器具はすべて並列に接続されています。 並列接続なら各器具に同じ電圧(100 V)がかかり、1つの器具のスイッチを切っても他の器具には影響しません。 もし直列接続なら、1つの器具が切れると全体の回路が切れてしまいます。

抵抗を並列接続すると、合成抵抗はどうなる?
大きくなる
小さくなる
変わらない
並列接続では電流の通り道が増えるため、合成抵抗は個々の抵抗より小さくなります。直列接続の場合は合成抵抗が大きくなります。

📊 4. 抵抗率

ここまで抵抗値を「与えられたもの」として扱ってきましたが、抵抗値は導体の材質・長さ・太さで決まります。「同じ材質でも太い線は電気を通しやすい」——この関係を定量的に理解しましょう。

同じ材質の銅線で、太い線と細い線ではどちらが電気を通しやすい?
細い線
太い線
同じ
断面積が大きい(太い)ほど電子の通り道が広くなり、抵抗が小さくなるため電気を通しやすくなります。

下の図で、導体の長さ・断面積・材質と抵抗の関係を確認しよう。

抵抗と形状の関係

同じ材質の導体について、抵抗値は長さに比例し、断面積に反比例します。

\(R = \)\(\rho \frac{l}{S}\)
\(R\)〔Ω〕:抵抗
\(\rho\)〔Ω・m〕:抵抗率
\(l\)〔m〕:抵抗の長さ
\(S\)〔m²〕:抵抗の断面積

比例定数 \(\rho\) は物質の材質と温度によって決まる値で、抵抗率(電気抵抗率、比抵抗)といいます。

いろいろな物質の抵抗率

物質抵抗率〔Ω・m〕(20℃)
銀(Ag)\(1.6 \times 10^{-8}\)
銅(Cu)\(1.7 \times 10^{-8}\)
アルミニウム(Al)\(2.7 \times 10^{-8}\)
鉄(Fe)\(9.6 \times 10^{-8}\)
ニクロム\(1.1 \times 10^{-6}\)

銅やアルミニウムは抵抗率が小さいため導線に使われ、ニクロムは抵抗率が大きいため抵抗器や電熱線に使われます。

抵抗と温度

一般に、金属の導体に電流が流れるとジュール熱が発生し、温度が上昇します。 温度が上がると導体内の陽イオンの熱運動が激しくなり、自由電子の進行が妨げられるため、抵抗値が増加します。

🔌 豆知識:超伝導と抵抗ゼロの世界

特定の物質を極低温に冷却すると、電気抵抗が完全に0になる「超伝導」が起きます。超伝導体に一度電流を流すと、抵抗がないため永遠に流れ続けます。MRI(磁気共鳴画像装置)の超伝導コイルはこの原理で強力な磁場を維持しています。現在、常温超伝導体の発見が物理学の大きな目標の一つです。

💡 豆知識:白熱電球のフィラメント

白熱電球のフィラメント(タングステン)は、温度が上がると抵抗値が大きく増加します。 そのため電流-電圧のグラフは直線にならず、オームの法則が厳密には成り立ちません。 このように抵抗値が電流によって変化する素子を非線形素子といいます。

抵抗率の式 \(R = \rho l / S\) によると、導体を長くすると抵抗はどうなる?
小さくなる
変わらない
大きくなる
抵抗は長さ \(l\) に比例するため、導体を長くすると抵抗は大きくなります。断面積 \(S\) に反比例するので、太くすると抵抗は小さくなります。

🎯 5. 入試対策

大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。

🎯 ① 頻出テーマ:直列・並列の合成抵抗

直列接続は \(R = R_1 + R_2\)、並列接続は \(\frac{1}{R} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2}\)(つまり \(R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2}\))です。複雑な回路では、直列・並列を繰り返し合成して簡略化するか、キルヒホッフの法則を使います。入試では「どの部分が直列でどの部分が並列か」を見抜く力が問われます。

🧮 ② 典型問題:直列・並列の合成抵抗の使い分け

回路の読み方の基本:複雑な回路を簡略化するには、「どの部分が直列で、どの部分が並列か」を見抜くことが重要。

ステップ1:回路の見方

ステップ2:合成抵抗の計算

直列・並列それぞれの合成抵抗の公式を適用します。

$ \text{直列:} R = R_1 + R_2 \qquad \text{並列:} R = \frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2} $

並列の公式は「積÷和」(和分の積)と覚えると便利。3つ以上のときは \(\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{R_1} + \dfrac{1}{R_2} + \dfrac{1}{R_3}\) を使う。

ステップ3:段階的に簡略化する

複雑な回路では、以下の手順で簡略化する。

発展:Y-\(\Delta\)(スター・デルタ)変換

3つの抵抗が三角形(\(\Delta\))やY字型に接続されていて、単純な直列・並列に分解できない場合がある。この場合、Y-\(\Delta\) 変換を使って等価回路に変形できる。

$ R_a = \frac{R_1 R_2 + R_2 R_3 + R_3 R_1}{R_1} \quad \text{(Y→Δ変換)} $

物理基礎の範囲を超えるが、難関大入試ではときどき出題される。まずは直列・並列の組み合わせを確実にマスターしよう。

回路の合成抵抗を練習しよう

ランダムに生成される回路の合成抵抗を求めよう。スライダーで答えを入力し、チェックボタンで採点。解説表示でステップごとの簡略化を確認できます。

🔑 まとめ