「乾電池とコンセントの電気はどう違う?」——直流(DC)と交流(AC)の基本的な違いを理解しましょう。
下の図で、直流と交流の波形・実効値・電力の違いを確認しよう。
条件:\(V_0 = 141\) V
$$ V_e = \frac{V_0}{\sqrt{2}} = \frac{141}{1.414} \fallingdotseq 100 \text{ V} $$答え:\(V_e \fallingdotseq 100\) V(家庭用コンセントは実効値 100 V)
乾電池から得られる電気は直流(DC)であり、電圧と電流の向きが一定です。一方、家庭のコンセントから得られる電気のように、電圧と電流の向きが周期的に変化している電気を交流(AC)といいます。
| 直流(DC) | 交流(AC) | |
|---|---|---|
| 電圧の向き | 一定 | 周期的に変化 |
| 電源の例 | 乾電池 | コンセント |
| 電圧波形 | 水平線 | 正弦波 |
| 変圧 | 困難 | 変圧器で容易 |
家庭で使われている 100 V の交流電圧の最大値は、実は約 141 V です。\(-141\,\text{V}\) ~ \(141\,\text{V}\) の間で周期的に変化しています。
これを「100 V」とよぶのは、この交流で電球を点灯させたときの明るさが、100 V の直流で点灯させたときと同じになるからです。このように、直流と同等の効果をもつ値を実効値といいます。
交流電圧計や交流電流計の目盛りが示す値は実効値です。最大値ではないことに注意しましょう。
抵抗 \(R\)〔\(\Omega\)〕に交流を流したとき、電力 \(P\)〔W〕は実効値を用いて直流と同じ式で表せます。
交流電圧がある状態から次に同じ状態になるまでの時間 \(T\)〔s〕を周期、1秒当たりの繰り返しの回数 \(f\)〔Hz〕を周波数(または振動数)といいます。
家庭用の交流では、東日本は 50 Hz、西日本は 60 Hz の周波数が使われています。
交流の最大の利点は変圧器で簡単に電圧を変えられること。高電圧で送電すれば電流が小さくなり送電ロス(\(P = I^2R\))が減ります。直流は蓄電池に蓄えやすく、電子回路に適しています。エジソン(直流派)とテスラ(交流派)の「電流戦争」は有名で、結局テスラの交流が送電の主流になりました。
明治時代に東京はドイツ製(50 Hz)、大阪はアメリカ製(60 Hz)の発電機を導入したことが原因です。統一には莫大なコストがかかるため、現在も東西で異なる周波数が使われています。静岡県の富士川付近が境界です。
交流電圧 \(V = V_0\sin\omega t\) の実効値は、1周期の二乗平均の平方根(RMS)です。
$$ V_{\text{rms}} = \sqrt{\frac{1}{T}\int_0^T V_0^2\sin^2\omega t\,dt} = \frac{V_0}{\sqrt{2}} $$
\(\sin^2\omega t\) の1周期平均が \(1/2\) であることを使います。家庭用コンセントの100Vはこの実効値で、最大値は \(100\sqrt{2} \allingdotseq 141\) V です。
直流と交流の違いがわかったところで、交流はどうやって作られ、どのように家庭まで届くのでしょうか。交流発電機、変圧器、送電のしくみを学びましょう。
磁場の中でコイルを一定の速さで回転させると、コイル面を貫く磁力線の数が周期的に変化します。そのため、電磁誘導によって周期的に変化する交流電圧が発生します。
交流発電を採用している発電所では、固定したコイル内で電磁石を回転させることで電力を取り出すのが一般的です。
発電所で発電された交流の電気は、変圧器(トランス)によって高い電圧に変えてから送電されます。変圧器で容易に電圧が変えられることは、直流にはない交流の特徴です。
変圧器は、巻数が異なるコイルを共通の鉄心(コア)に巻きつけた構造をしています。一次コイルに交流電流が流れると鉄心内に磁場が生じ、電磁誘導により二次コイルにも交流電流が流れます。
送電線には電気抵抗があり、ジュール熱を発生して電力の一部が失われます。送電線の電力損失 \(P'\) は次のように表せます。
一定の電力を送る場合、電圧を上げることで電力損失を小さくできる(電圧を10倍にすると損失は1/100になる)。このため、交流の電気は変圧器により非常に高い電圧に上げてから送電されています。
家庭にある電気ストーブ、換気扇などは交流の電気を直接使用しています。一方、ノートパソコンやバッテリーの充電器などは、コンバーター(ACアダプター)を用いて交流を直流に変換してから使用しています。交流を直流に変換することを整流といいます。
発電所から送り出される電圧は最大約 50 万 V です。これを何段階も変圧器で降圧し、最終的に家庭には 100 V(または 200 V)で届けられます。超高圧で送電するのは、電力損失を減らすためです。
交流は電流と電圧が周期的に変化するものでした。実は、電場と磁場の変化が空間を波として伝わる現象があり、これが電磁波です。「スマホの電波も光も同じ仲間?」——電磁波の性質と種類を学びましょう。
電気的な振動と磁気的な振動が対になって伝わる波を電磁波といいます。電磁波は電磁気の一種です。ある場所で電気的、あるいは磁気的な変化が生じると、その変化は遠方に電磁波として伝わります。
すべての電磁波は空気中を秒速約 30 万 km(光の速さ)で伝わります。
光やX線なども電磁波の一種で、振動数(または波長)の違いによって分類されます。振動数の小さい(波長の長い)ほうから順に並べると次のようになります。
| 種類 | 波長の範囲 | おもな利用例 |
|---|---|---|
| 電波 | 約 1 mm 以上 | ラジオ、テレビ、Wi-Fi、GPS |
| 赤外線 | 約 0.8 \(\mu\)m ~ 1 mm | リモコン、暖房器具 |
| 可視光線 | 約 380 ~ 780 nm | 照明、光通信 |
| 紫外線 | 約 10 ~ 380 nm | 殺菌灯、ブラックライト |
| X線 | 約 0.01 ~ 10 nm | レントゲン撮影 |
| \(\gamma\) 線 | 約 0.01 nm 以下 | がん治療 |
下のシミュレーションで、スライダーを動かして電磁波の種類と性質を探ろう。
可視光線は電磁波の中のごく狭い波長範囲です。人間の目に見えるのは可視光線だけで、それ以外の電磁波は目に見えません。
携帯電話は数GHzの電波、テレビのリモコンは赤外線、体温計(非接触型)も赤外線、電子レンジはマイクロ波を使います。可視光もX線も\(\gamma\)線もすべて電磁波で、違いは振動数(波長)だけです。ヘルツが1887年に実験で電磁波の存在を確認し、マクスウェルの理論の正しさが証明されました。
電子レンジは 2.45 GHz のマイクロ波(電波の一種)を使います。この周波数は水分子の振動を効率よく引き起こし、食品中の水を加熱します。金属は電磁波を反射するため、電子レンジに金属製の容器を入れてはいけません。
リモコンの送信部から出る赤外線は、肉眼では見えませんが、スマートフォンやデジタルカメラのセンサーは赤外線を検出できます。リモコンを操作しながらカメラ越しに見ると、光っているのが確認できます。
大学入試で頻出のテーマと解法のポイントを整理しよう。
家庭用コンセント 100 V の最大値は \(V_0 = V_e \sqrt{2} = 100\sqrt{2} \allingdotseq 141\) V。
逆に、最大値 \(V_0 = 200\) V の交流の実効値は \(V_e = 200/\sqrt{2} = 100\sqrt{2} \allingdotseq 141\) V。
ポイント:電力の計算には必ず実効値を使う。\(P = I_e V_e = I_e^2 R = V_e^2/R\)
電力 \(P_0\) を電圧 \(V_e\)、送電線の抵抗 \(R\) で送電するとき:
送電電流:\(I_e = P_0 / V_e\)
電力損失:\(P' = I_e^2 R = P_0^2 R / V_e^2\)
電圧を 10 倍にすると損失は \(1/100\) になる。だから高電圧送電が有利。
変圧器の式:\(V_1 : V_2 = N_1 : N_2\)。理想的な変圧器では \(V_1 I_1 = V_2 I_2\)(電力が保存される)。
交流電圧 \(V = V_0\sin\omega t\) を抵抗 \(R\) に加えたときの瞬間の電力:
\(P = V^2/R = V_0^2\sin^2\omega t / R\)
1周期の平均電力:\(\bar{P} = V_0^2/(2R)\)(\(\sin^2\) の平均は \(1/2\))
これが直流電圧 \(V_e\) と同じ電力なので:\(V_e^2/R = V_0^2/(2R)\)
よって \(V_e = V_0/\sqrt{2}\)