物理基礎 > 第5編 物理学と社会 > 第1章 エネルギーの利用

① エネルギーの移り変わり

🔋 1. いろいろなエネルギー

「私たちの暮らしはどんなエネルギーに支えられている?」——エネルギーにはさまざまな種類があり、互いに変換できることを学びましょう。

乾電池のエネルギーは、もともと何エネルギーが蓄えられている?
電気エネルギー
熱エネルギー
化学エネルギー
乾電池の内部では化学反応によって電気が生じます。つまり、もともと蓄えられているのは化学エネルギーです。このカードでエネルギーの種類を整理しましょう。
$$ \text{エネルギー} = \text{仕事をする能力}\ [\text{J}] $$
1 J = 1 N × 1 m
力学的・熱・電気・光・化学・核エネルギーなど種類がある

エネルギーの種類

これまでに学んだ力学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーのほかにも、いろいろな種類のエネルギーがあります。 エネルギーとは、他の物体に仕事をする能力のことです。

エネルギーの種類内容具体例
力学的エネルギー運動エネルギーと位置エネルギーの総和落下する物体、振り子
熱エネルギー分子の熱運動によるエネルギー火、温泉
電気エネルギー電気のもつエネルギー電池、発電機
光エネルギー光のもつエネルギー太陽光、LED
化学エネルギー物質がもつエネルギー食物、燃料
核エネルギー原子核がもつエネルギー原子炉、太陽
🍔 豆知識:食べ物のカロリーもエネルギー

食品の「カロリー」は化学エネルギーの量を表します。おにぎり1個(約 170 kcal)のエネルギーは約 712 kJ。これは 70 kg の人が 100 m の高さまで階段を登るのに必要な位置エネルギー(約 69 kJ)の約 10 倍です。ただし人体のエネルギー変換効率は約 25% なので、実際に使えるのは一部です。

太陽が光を放射しているエネルギーの源は?
化学エネルギー
核エネルギー
電気エネルギー
太陽の内部では水素の原子核が融合してヘリウムになる核融合反応が起きており、そのとき放出される核エネルギーが光や熱の源です。

🔄 2. エネルギーの変換と保存

さまざまなエネルギーの種類がわかりました。これらは互いに形を変えることができますが、「エネルギーは消えてなくなるのか?」——エネルギーの変換と保存則を理解しましょう。

手をこすり合わせると温かくなるのは、何エネルギーが何エネルギーに変わったから?
熱エネルギー → 力学的エネルギー
電気エネルギー → 熱エネルギー
力学的エネルギー → 熱エネルギー
手を動かす力学的エネルギーが、摩擦によって熱エネルギーに変換されます。エネルギーは形を変えて移り変わることを、このカードで学びましょう。

エネルギーの変換

いろいろな形のエネルギーは、互いに移り変わることができます。

化学
エネルギー

エネルギー
力学的
エネルギー
電気
エネルギー

エネルギー
$$ \text{化学} \rightleftharpoons \text{熱} \rightleftharpoons \text{力学} \rightleftharpoons \text{電気} \rightleftharpoons \text{光} $$
エネルギーは互いに変換できる

エネルギー保存則

エネルギーの変換においては、それに関係したすべてのエネルギーの和が一定に保たれます。これをエネルギー保存則といいます。

エネルギー保存則:エネルギーは形を変えても、その総量は一定に保たれる。エネルギーが新たに生まれたり消滅したりすることはない。

▲ ボールの落下で位置エネルギーと運動エネルギーの変換を観察しよう(合計は常に一定!)

🔬 発展:力学的エネルギー保存則との関係

第1編で学んだ「力学的エネルギー保存則」は、エネルギー保存則の特別な場合です。摩擦がある場合は力学的エネルギーの一部が熱エネルギーに変わりますが、すべてのエネルギーを合計すれば総量は変わりません。

エネルギー保存則によると、エネルギーの総量は変換の前後でどうなる?
必ず減少する
増加することもある
常に一定に保たれる
エネルギー保存則により、エネルギーは形を変えても総量は常に一定です。新たに生まれたり消滅したりすることはありません。

📊 3. エネルギーの変換効率

エネルギーの総量は保存されることがわかりました。しかし、変換のたびに一部は熱として散逸し、目的の形にすべてを変えることはできません。「エネルギーはすべて有効に使えるのか?」——変換効率と不可逆変化の概念を学びましょう。

白熱電球に投入した電気エネルギーのうち、光になるのはどのくらい?
約 5%
約 50%
約 90%
白熱電球は電気エネルギーの約 95% を熱として放出し、光に変わるのはわずか約 5% です。エネルギーの変換効率について、このカードで学びましょう。

変換効率とは

エネルギーを変換するとき、目的のエネルギーに変換される割合を変換効率(または熱効率)といいます。

\(\text{変換効率} = \)\(\frac{\text{有効に利用できるエネルギー}}{\text{投入したエネルギー}} \times 100 \;\text{[%]}\)

現実のエネルギー変換では、必ず一部が熱エネルギーなどとして散逸するため、変換効率は100% にはなりません

変換装置変換の種類効率の目安
火力発電(従来型)化学 → 熱 → 力学 → 電気約 40%
火力発電(複合サイクル)化学 → 熱 → 力学 → 電気約 50% 以上
白熱電球電気 → 光約 5%
LED電気 → 光約 30 ~ 50%
太陽電池光 → 電気約 15 ~ 25%
電気モーター電気 → 力学約 90%

不可逆変化

力学的エネルギーは摩擦などによって容易に熱エネルギーに変わりますが、熱エネルギーを完全に力学的エネルギーに戻すことはできません。このように、自然界のエネルギー変換には方向性があり、逆向きに完全に戻せない変化を不可逆変化といいます。

📌 ポイント

エネルギー保存則によりエネルギーの総量は不変ですが、不可逆変化により利用しやすいエネルギーは一方的に減少していきます。これがエネルギー問題の本質です。

▲ 摩擦のある面でボールが減速するようすを観察。力学的エネルギーは熱に変わり、元には戻らない

🤔 豆知識:永久機関はなぜ不可能か

外部からエネルギーを供給せずに動き続ける「永久機関」は、エネルギー保存則(第一種永久機関の不可能性)と不可逆変化の法則(第二種永久機関の不可能性)により、原理的に不可能です。歴史上多くの人が挑戦しましたが、すべて失敗しています。

💡 豆知識:LED がエネルギー効率に優れる理由

白熱電球は電気エネルギーの約 95% を熱として捨て、光に変わるのはわずか 5% です。LED は半導体の電子の遷移で直接光を出すため、熱への損失が少なく、効率が格段に高くなります。2014 年には青色 LED の発明で赤崎勇・天野浩・中村修二がノーベル物理学賞を受賞しました。

熱エネルギーを完全に力学的エネルギーに戻せない変化を何という?
エネルギー保存則
不可逆変化
変換効率
自然界のエネルギー変換には方向性があり、熱エネルギーを完全にもとの力学的エネルギーに戻すことはできません。このような一方向の変化を不可逆変化といいます。

🎯 4. 入試対策

共通テストでは「エネルギー保存」「変換効率」「不可逆変化」が頻出。数値計算だけでなく、概念理解も問われる。

🧮 ① 典型問題:火力発電の総合効率

ある火力発電所で、1.0 kg の石炭(発熱量 \(3.0 \times 10^7\) J/kg)を燃焼させたところ、最終的に \(1.2 \times 10^7\) J の電気エネルギーが得られた。この発電所の総合効率を求めよ。

【解法】

投入したエネルギー:

$ Q_{\text{in}} = 1.0 \times 3.0 \times 10^7 = 3.0 \times 10^7 \text{ J} $

得られた電気エネルギー:\(W = 1.2 \times 10^7\) J

総合効率:

$ \eta = \frac{W}{Q_{\text{in}}} = \frac{1.2 \times 10^7}{3.0 \times 10^7} = 0.40 = 40 \% $

ポイント残り60%は排熱・摩擦・送電損失などで失われる。火力発電の効率は実用的に35〜45%程度で、これは熱力学第二法則の制約による本質的な限界。

🧮 ② 典型問題:エネルギー保存と不可逆性

滑らかでない水平面で、質量 \(m = 2.0\) kg の物体を初速 \(v_0 = 3.0\) m/s で押し出したところ、\(L = 4.5\) m 進んで止まった。失われた運動エネルギーと、発生した熱エネルギーの関係を示せ。

【解法】

初めの運動エネルギー:

$ K_0 = \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2} \times 2.0 \times 3.0^2 = 9.0 \text{ J} $

止まったので運動エネルギーは0になった。失われた 9.0 J は摩擦により熱エネルギーに変換された(エネルギー保存)。

ポイント運動 → 熱 の変換は自発的に起こるが、熱 → 運動への逆変換は自発的には起こらない。これが不可逆変化の典型例で、エネルギーは保存されるが「質」は劣化している。

🎯 ③ 頻出テーマ:エネルギーの変換チェーン

身近な装置でエネルギーがどのように変換されているかを、チェーンで表現する問題が頻出。

ポイント変換段数が少ないほど総合効率が高くなる傾向がある。各段の効率が掛け合わされるため。

🔑 まとめ