物理基礎 > 第5編 物理学と社会 > 第1章 エネルギーの利用

② エネルギー資源と発電

⛽ 1. エネルギー資源

「私たちの電気はどこから来る?」——エネルギー資源の分類と特徴を理解しましょう。

日本の電気の多くを担っている発電方式はどれ?
火力発電
太陽光発電
原子力発電
日本では発電量の約 70% 以上を火力発電が占めています。化石燃料に大きく依存している現状と、その課題をこのカードから学んでいきましょう。

一次エネルギーと二次エネルギー

自然界に存在するままの形のエネルギー資源から直接利用することのできるエネルギーを一次エネルギーといいます。一次エネルギーを電気やガソリンなどに加工して利用するエネルギーを二次エネルギーといいます。

枯渇性エネルギーと再生可能エネルギー

化石燃料や天然ウランなどは地球上に存在する量に限りがあり、いずれ枯渇する可能性があります。こうしたエネルギー資源から得られるエネルギーを枯渇性エネルギーといいます。

一方、太陽光、地熱、バイオマスなどは今後も枯渇するおそれが少ないエネルギー資源です。こうした資源から得られるエネルギーを再生可能エネルギーといいます。

資源種別採掘可能年数(目安)
石油枯渇性約 50 年
天然ガス枯渇性約 51 年
石炭枯渇性約 132 年
ウラン枯渇性約 99 年
太陽光・風力・地熱再生可能半永久的
$$ \text{一次エネルギー} \xrightarrow{\text{変換}} \text{二次エネルギー(電気・ガソリン等)} $$
一次エネルギー:石油、石炭、天然ガス、太陽光、風力、地熱など
二次エネルギー:電気、ガソリン、都市ガス、水素など
📌 ポイント

二次エネルギーのうち、特に電気エネルギー他のエネルギーに変換しやすいため、私たちの生活で最も多くの用途に利用されています。

🌏 豆知識:太陽定数

太陽光線に垂直な面 1 m\(^2\) あたり約 1.36 kW のエネルギーが地球に届いています。この値を太陽定数といいます。太陽は内部の核融合反応によりこの莫大なエネルギーを放射しています。

太陽光や風力など、枯渇しにくいエネルギーを何という?
一次エネルギー
枯渇性エネルギー
再生可能エネルギー
太陽光・風力・地熱などは枯渇するおそれが少なく、繰り返し利用できるため「再生可能エネルギー」と呼ばれます。一次エネルギーは自然界から直接得られるエネルギーの総称です。

🏭 2. 化石燃料と火力発電

エネルギー資源の全体像がわかったところで、現在の主力である化石燃料に注目します。「なぜ日本の電気の多くは火力発電?」——そのしくみと課題を学びましょう。

火力発電で最終的にタービンを回しているのは何?
燃料そのもの
水蒸気や燃焼ガス
電磁石の力
火力発電では燃料を燃やして発生させた水蒸気や燃焼ガスでタービン(羽根車)を回し、発電機を動かします。エネルギーが何段階も変換されるしくみを見ていきましょう。

化石燃料の種類

石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は、太古に地中に埋もれた動植物が長い年月をかけて圧力や熱で変成されたと考えられています。

火力発電のしくみ

火力発電では化石燃料をボイラーで燃やし、発生した水蒸気や燃焼ガスでタービン(羽根車)を回しています。タービンに連結された発電機で電気を起こします。エネルギーの変換は化学エネルギー → 熱エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギーの順です。

\(\eta = \)\(\frac{W}{Q} \times 100\ \%\)
\(\eta\)〔%〕:熱効率
\(W\)〔J〕:得られた有効な仕事(電気エネルギー)
\(Q\)〔J〕:投入した熱エネルギー
⚠️ 注意

火力発電は発電量を調節しやすい利点がある一方、二酸化炭素(CO\(_2\))を多く排出し、地球温暖化の原因となる問題があります。

🔬 発展:コンバインドサイクル発電

コンバインドサイクルでは、まず燃焼ガスでガスタービンを回し、さらにその排熱で水蒸気を発生させて蒸気タービンも回します。2段階でエネルギーを取り出すため、従来型より高い効率を実現できます。

火力発電における最大の環境問題は?
CO\(_2\) の大量排出による地球温暖化
放射性廃棄物の処理
出力が天候に左右されること
火力発電は化石燃料を燃焼するため、大量の CO\(_2\) を排出します。これが地球温暖化の主な原因の一つです。出力の不安定さは太陽光・風力発電の課題です。

☢️ 3. 原子力と原子力発電

化石燃料には CO₂ 排出や資源枯渇の課題がありました。もう一つの大規模発電方式として、「原子力発電のエネルギーはどこから来る?」——原子核のエネルギーと発電のしくみ、その課題を学びましょう。

原子力発電のエネルギー源は何?
化石燃料の燃焼
水の位置エネルギー
原子核の核分裂
原子力発電ではウランなどの原子核が分裂するときに放出される莫大なエネルギーを利用しています。核分裂のしくみと課題をこのカードで学びましょう。

原子核の構成

原子の中心には原子核があり、正の電気をもつ陽子と電気をもたない中性子からなります。陽子と中性子を総称して核子といい、核子の総数を質量数といいます。

同位体と放射線

同じ元素でも中性子の数が異なる原子を互いに同位体(アイソトープ)といいます。天然に存在する原子核の中には不安定なものがあり、放射線を出しながら別の原子核に変わっていきます。この現象を放射性崩壊といいます。

放射線本体電離作用透過力
\(\alpha\) 線ヘリウム \(^4_2\)He の原子核弱(紙で遮蔽)
\(\beta\) 線電子中(アルミ板で遮蔽)
\(\gamma\) 線波長の短い電磁波強(鉛板・厚いコンクリート)

核分裂と原子力発電

ウラン \(^{235}_{92}\text{U}\) の原子核に中性子を衝突させると、原子核が2つに分かれるとともに2~3個の中性子が飛び出します。このような反応を核分裂といいます。

$$ E = mc^2 $$
\(E\)〔J〕:放出されるエネルギー
\(m\)〔kg〕:質量欠損(反応前後の質量の減少分)
\(c\)〔m/s〕:光速(\(3.0 \times 10^8\) m/s)

原子力発電では、原子炉でウランやプルトニウムの核分裂により生じるエネルギーで水蒸気を発生させ、タービンを回して発電しています。

💡
核分裂の連鎖反応が一定の割合に保たれた状態を臨界という。原子炉では制御棒で中性子を吸収し、連鎖反応を制御する。
$$ \text{核分裂のエネルギー変換:核エネルギー} \to \text{熱} \to \text{蒸気} \to \text{タービン} \to \text{電気} $$
ウラン1 gの核分裂 ≒ 石油2000 L分のエネルギー
制御棒で中性子を吸収 → 連鎖反応の速度を調節

原子力発電の課題

☀️ 豆知識:太陽のエネルギー源は核融合

太陽の内部では水素原子核が衝突して融合し、ヘリウム原子核になる核融合反応が起きています。核融合は核分裂と逆に、軽い原子核が融合してエネルギーを放出する反応です。地上での核融合発電の実現は、人類の長年の夢です。

原子炉で核分裂の連鎖反応を制御するために使われるものは?
冷却水
制御棒
タービン
制御棒は中性子を吸収する物質でできており、これを出し入れすることで核分裂の連鎖反応の速度を調節します。冷却水は熱を取り出す役割です。

🌱 4. 再生可能エネルギーと発電方式の比較

化石燃料にも原子力にもそれぞれ課題があることがわかりました。では、自然の力を利用する再生可能エネルギーはどうでしょうか。各発電方式の特徴を比較し、持続可能な社会のエネルギーミックスを考えましょう。

太陽光発電や風力発電に共通する課題は?
CO\(_2\) を大量に排出する
天候や時間帯で出力が変動する
燃料が枯渇する恐れがある
太陽光や風力は再生可能エネルギーで CO\(_2\) 排出も少ないですが、天候や時間帯に左右され出力が不安定という課題があります。各発電方式の長所と短所を比較しましょう。

水力発電

高い位置から流れる水の勢いでタービンを回して発電します。水のもつ位置エネルギーを電気エネルギーに変換するしくみです。

風力発電

風によって発電機に連結された風車を回し、電気を得ます。風のもつ運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。安定した出力を得るには風車の向きの制御技術が重要です。

太陽光発電

太陽電池(ソーラーパネル)は、シリコンなどの半導体が光を吸収して生じる電子を電流として取り出します。入射した太陽光エネルギーの十数%程度を電気エネルギーに変換できます。

地熱発電

地下深くのマグマで加熱された熱水から水蒸気を取り出し、タービンを回して発電します。日本は火山国であり、豊富な地熱資源をもっています

$$ P_{\text{水力}} = \rho g h Q \qquad P_{\text{風力}} = \tfrac{1}{2}\rho A v^3 $$
水力:落差 \(h\)、流量 \(Q\)、水の密度 \(\rho\) で出力が決まる
風力:風速 \(v\) の3乗に比例(風速2倍で出力8倍)

各発電方式の比較

発電方式一次エネルギーCO\(_2\) 排出出力安定性おもな課題
火力化石燃料多い安定温暖化、資源枯渇
原子力ウラン少ない安定安全性、廃棄物
水力水の位置E少ないやや安定適地の制限
太陽光太陽光少ない不安定天候依存、夜間不可
風力少ない不安定風況依存、騒音
地熱地熱少ない安定適地の制限、開発コスト

エネルギー資源の比較

6種類のエネルギー源を選んで,CO2排出量・コスト・設備利用率を棒グラフで比較しよう。 右の円グラフは日本の電源構成を示す。

🏔️ 豆知識:揚水発電は巨大な蓄電池

揚水発電は、電力需要の少ない夜間に余剰電力で水をくみ上げ、昼間の需要ピーク時に水を流して発電するしくみです。電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄えるため、大規模な「蓄電施設」といえます。

🌍 豆知識:持続可能性と SDGs

2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、エネルギー利用における再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させることが含まれています。化石燃料への依存を減らし、環境と経済を両立する社会の実現が世界的に求められています。

さまざまな発電方式を組み合わせて電力を供給する考え方を何という?
コンバインドサイクル
連鎖反応
エネルギーミックス
各発電方式にはそれぞれ長所と短所があるため、複数の方式を最適に組み合わせる「エネルギーミックス」が持続可能な社会の実現に重要です。

🎯 5. 入試対策

エネルギー資源と発電方式は共通テスト頻出。数値計算と、各発電方式の長所・短所の理解が問われる。

🧮 ① 典型問題:原子力発電の質量欠損と発電量

ウラン 1.0 g が完全に核分裂したとき、質量の 0.1% がエネルギーに変換されると仮定する。発電効率を 33% とすると、得られる電気エネルギーは何 J か。光速 \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s。

【解法】

質量 → エネルギー(\(E = mc^2\)):

$ \Delta m = 1.0 \times 10^{-3} \times 0.001 = 1.0 \times 10^{-6} \text{ kg} $ $ E = \Delta m c^2 = 1.0 \times 10^{-6} \times (3.0 \times 10^8)^2 = 9.0 \times 10^{10} \text{ J} $

効率 33%:

$ W = 0.33 \times 9.0 \times 10^{10} \fallingdotseq 3.0 \times 10^{10} \text{ J} $

ポイントウラン 1 g から電気エネルギー約 30 GJ(石炭約1トン分に相当)。この「エネルギー密度の高さ」が原子力発電の特徴。

🧮 ② 典型問題:太陽光発電のパネル面積

一般家庭の年間電力消費量を 4500 kWh とする。太陽光パネルの発電効率 15%、日本の年間日射量を \(1300\) kWh/m²/年とすると、必要なパネル面積は何 m² か。

【解法】

1 m² のパネルが1年間に発電する電力量:

$ 1300 \times 0.15 = 195 \text{ kWh/m}^2 $

必要面積:

$ S = \frac{4500}{195} \fallingdotseq 23 \text{ m}^2 $

ポイント屋根1枚分(約20〜30 m²)で一般家庭の電力をほぼ賄える。ただし実際には天候・時間帯による変動があり、蓄電や系統連系が必要。

🎯 ③ 頻出テーマ:発電方式の比較

共通テストでは「各発電方式の長所・短所」を表形式で問う問題が定番。

方式長所短所
火力出力調整◎、立地自由CO₂排出、燃料枯渇
原子力CO₂少、高エネルギー密度安全性、放射性廃棄物
水力出力調整◎、CO₂無立地制限、環境影響
太陽光設置容易、CO₂無天候依存、面積必要
風力大出力可、CO₂無風況依存、騒音
地熱安定供給、CO₂少立地制限、開発コスト

ポイントどの発電方式にも一長一短があり、単一の方式で全てを賄うことは不可能。エネルギーミックス(複数方式の組み合わせ)が現実解。

🔑 まとめ