物理基礎 > 第5編 物理学と社会 > 第1章 エネルギーの利用
「私たちの電気はどこから来る?」——エネルギー資源の分類と特徴を理解しましょう。
自然界に存在するままの形のエネルギー資源から直接利用することのできるエネルギーを一次エネルギーといいます。一次エネルギーを電気やガソリンなどに加工して利用するエネルギーを二次エネルギーといいます。
化石燃料や天然ウランなどは地球上に存在する量に限りがあり、いずれ枯渇する可能性があります。こうしたエネルギー資源から得られるエネルギーを枯渇性エネルギーといいます。
一方、太陽光、地熱、バイオマスなどは今後も枯渇するおそれが少ないエネルギー資源です。こうした資源から得られるエネルギーを再生可能エネルギーといいます。
| 資源 | 種別 | 採掘可能年数(目安) |
|---|---|---|
| 石油 | 枯渇性 | 約 50 年 |
| 天然ガス | 枯渇性 | 約 51 年 |
| 石炭 | 枯渇性 | 約 132 年 |
| ウラン | 枯渇性 | 約 99 年 |
| 太陽光・風力・地熱 | 再生可能 | 半永久的 |
二次エネルギーのうち、特に電気エネルギーは他のエネルギーに変換しやすいため、私たちの生活で最も多くの用途に利用されています。
太陽光線に垂直な面 1 m\(^2\) あたり約 1.36 kW のエネルギーが地球に届いています。この値を太陽定数といいます。太陽は内部の核融合反応によりこの莫大なエネルギーを放射しています。
エネルギー資源の全体像がわかったところで、現在の主力である化石燃料に注目します。「なぜ日本の電気の多くは火力発電?」——そのしくみと課題を学びましょう。
石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は、太古に地中に埋もれた動植物が長い年月をかけて圧力や熱で変成されたと考えられています。
火力発電では化石燃料をボイラーで燃やし、発生した水蒸気や燃焼ガスでタービン(羽根車)を回しています。タービンに連結された発電機で電気を起こします。エネルギーの変換は化学エネルギー → 熱エネルギー → 力学的エネルギー → 電気エネルギーの順です。
火力発電は発電量を調節しやすい利点がある一方、二酸化炭素(CO\(_2\))を多く排出し、地球温暖化の原因となる問題があります。
コンバインドサイクルでは、まず燃焼ガスでガスタービンを回し、さらにその排熱で水蒸気を発生させて蒸気タービンも回します。2段階でエネルギーを取り出すため、従来型より高い効率を実現できます。
化石燃料には CO₂ 排出や資源枯渇の課題がありました。もう一つの大規模発電方式として、「原子力発電のエネルギーはどこから来る?」——原子核のエネルギーと発電のしくみ、その課題を学びましょう。
原子の中心には原子核があり、正の電気をもつ陽子と電気をもたない中性子からなります。陽子と中性子を総称して核子といい、核子の総数を質量数といいます。
同じ元素でも中性子の数が異なる原子を互いに同位体(アイソトープ)といいます。天然に存在する原子核の中には不安定なものがあり、放射線を出しながら別の原子核に変わっていきます。この現象を放射性崩壊といいます。
| 放射線 | 本体 | 電離作用 | 透過力 |
|---|---|---|---|
| \(\alpha\) 線 | ヘリウム \(^4_2\)He の原子核 | 強 | 弱(紙で遮蔽) |
| \(\beta\) 線 | 電子 | 中 | 中(アルミ板で遮蔽) |
| \(\gamma\) 線 | 波長の短い電磁波 | 弱 | 強(鉛板・厚いコンクリート) |
ウラン \(^{235}_{92}\text{U}\) の原子核に中性子を衝突させると、原子核が2つに分かれるとともに2~3個の中性子が飛び出します。このような反応を核分裂といいます。
原子力発電では、原子炉でウランやプルトニウムの核分裂により生じるエネルギーで水蒸気を発生させ、タービンを回して発電しています。
太陽の内部では水素原子核が衝突して融合し、ヘリウム原子核になる核融合反応が起きています。核融合は核分裂と逆に、軽い原子核が融合してエネルギーを放出する反応です。地上での核融合発電の実現は、人類の長年の夢です。
化石燃料にも原子力にもそれぞれ課題があることがわかりました。では、自然の力を利用する再生可能エネルギーはどうでしょうか。各発電方式の特徴を比較し、持続可能な社会のエネルギーミックスを考えましょう。
高い位置から流れる水の勢いでタービンを回して発電します。水のもつ位置エネルギーを電気エネルギーに変換するしくみです。
風によって発電機に連結された風車を回し、電気を得ます。風のもつ運動エネルギーを電気エネルギーに変換します。安定した出力を得るには風車の向きの制御技術が重要です。
太陽電池(ソーラーパネル)は、シリコンなどの半導体が光を吸収して生じる電子を電流として取り出します。入射した太陽光エネルギーの十数%程度を電気エネルギーに変換できます。
地下深くのマグマで加熱された熱水から水蒸気を取り出し、タービンを回して発電します。日本は火山国であり、豊富な地熱資源をもっています。
| 発電方式 | 一次エネルギー | CO\(_2\) 排出 | 出力安定性 | おもな課題 |
|---|---|---|---|---|
| 火力 | 化石燃料 | 多い | 安定 | 温暖化、資源枯渇 |
| 原子力 | ウラン | 少ない | 安定 | 安全性、廃棄物 |
| 水力 | 水の位置E | 少ない | やや安定 | 適地の制限 |
| 太陽光 | 太陽光 | 少ない | 不安定 | 天候依存、夜間不可 |
| 風力 | 風 | 少ない | 不安定 | 風況依存、騒音 |
| 地熱 | 地熱 | 少ない | 安定 | 適地の制限、開発コスト |
6種類のエネルギー源を選んで,CO2排出量・コスト・設備利用率を棒グラフで比較しよう。 右の円グラフは日本の電源構成を示す。
揚水発電は、電力需要の少ない夜間に余剰電力で水をくみ上げ、昼間の需要ピーク時に水を流して発電するしくみです。電気エネルギーを位置エネルギーに変換して蓄えるため、大規模な「蓄電施設」といえます。
2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、エネルギー利用における再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させることが含まれています。化石燃料への依存を減らし、環境と経済を両立する社会の実現が世界的に求められています。
エネルギー資源と発電方式は共通テスト頻出。数値計算と、各発電方式の長所・短所の理解が問われる。
ウラン 1.0 g が完全に核分裂したとき、質量の 0.1% がエネルギーに変換されると仮定する。発電効率を 33% とすると、得られる電気エネルギーは何 J か。光速 \(c = 3.0 \times 10^8\) m/s。
【解法】
質量 → エネルギー(\(E = mc^2\)):
$ \Delta m = 1.0 \times 10^{-3} \times 0.001 = 1.0 \times 10^{-6} \text{ kg} $ $ E = \Delta m c^2 = 1.0 \times 10^{-6} \times (3.0 \times 10^8)^2 = 9.0 \times 10^{10} \text{ J} $効率 33%:
$ W = 0.33 \times 9.0 \times 10^{10} \fallingdotseq 3.0 \times 10^{10} \text{ J} $ポイント:ウラン 1 g から電気エネルギー約 30 GJ(石炭約1トン分に相当)。この「エネルギー密度の高さ」が原子力発電の特徴。
一般家庭の年間電力消費量を 4500 kWh とする。太陽光パネルの発電効率 15%、日本の年間日射量を \(1300\) kWh/m²/年とすると、必要なパネル面積は何 m² か。
【解法】
1 m² のパネルが1年間に発電する電力量:
$ 1300 \times 0.15 = 195 \text{ kWh/m}^2 $必要面積:
$ S = \frac{4500}{195} \fallingdotseq 23 \text{ m}^2 $ポイント:屋根1枚分(約20〜30 m²)で一般家庭の電力をほぼ賄える。ただし実際には天候・時間帯による変動があり、蓄電や系統連系が必要。
共通テストでは「各発電方式の長所・短所」を表形式で問う問題が定番。
| 方式 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|
| 火力 | 出力調整◎、立地自由 | CO₂排出、燃料枯渇 |
| 原子力 | CO₂少、高エネルギー密度 | 安全性、放射性廃棄物 |
| 水力 | 出力調整◎、CO₂無 | 立地制限、環境影響 |
| 太陽光 | 設置容易、CO₂無 | 天候依存、面積必要 |
| 風力 | 大出力可、CO₂無 | 風況依存、騒音 |
| 地熱 | 安定供給、CO₂少 | 立地制限、開発コスト |
ポイント:どの発電方式にも一長一短があり、単一の方式で全てを賄うことは不可能。エネルギーミックス(複数方式の組み合わせ)が現実解。