第4問:電磁気(電磁誘導と回路)

解法の指針

電磁誘導の法則と交流回路の基本が問われる問題です。ファラデーの法則から誘導起電力を計算し、レンツの法則で電流の向きを判定し、交流回路のインピーダンスから消費電力を求めます。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — ファラデーの電磁誘導の法則

直感的理解

コイルを貫く磁束が変化すると、まるで「変化を嫌がる」かのように起電力が発生する。磁石をコイルに近づける速さが速いほど起電力は大きくなる。発電所のタービンが回って電気が生まれるのもこの原理。

100回巻きコイルの磁束が 0.50 s 間に 1.0×10⁻³ Wb 変化する。誘導起電力 0.20 V を求めよう。

$$V = N\frac{|\Delta\Phi|}{\Delta t} = 100 \times \frac{1.0 \times 10^{-3}}{0.50} = 0.20 \text{ V}$$

磁束 \(\Phi = BS\cos\theta\) なので、磁場 \(B\)、コイルの面積 \(S\)、磁場とコイル面の法線のなす角 \(\theta\) のいずれが変化しても誘導起電力が発生する。

$$V = -N\frac{d\Phi}{dt}$$
答え:誘導起電力 \(V = 0.20\) V
補足:磁束の単位と変換

磁束 \(\Phi\) の単位は Wb(ウェーバー)。\(1 \text{ Wb} = 1 \text{ T} \cdot \text{m}^2 = 1 \text{ V} \cdot \text{s}\)。

したがって \(N \times \frac{\text{Wb}}{\text{s}} = \text{V}\) と単位が合う。磁束密度 \(B = 0.50\) T、面積 \(S = 2.0 \times 10^{-3}\) m² なら \(\Phi = 0.50 \times 2.0 \times 10^{-3} = 1.0 \times 10^{-3}\) Wb。

Point

ファラデーの法則で誘導起電力の大きさを計算 → レンツの法則で向きを決定、がセット。「磁束の変化を妨げる向き」とは、磁束が増えるなら「減らす向き」の電流が流れること。

問2 — 交流回路のインピーダンスと消費電力

直感的理解

交流回路では抵抗だけでなくコイル(L)やコンデンサ(C)も電流の流れにくさに寄与する。ただしLとCの効果は逆向きで打ち消しあう。電力を消費するのは抵抗のみ。

RLC直列回路で \(R = 30\;\Omega\)、\(L = 0.10\) H、\(C = 50\;\mu\text{F}\)、交流電源の実効電圧 \(V_{\text{rms}} = 100\) V、周波数 \(f = 50\) Hz のとき:

$$X_L = 2\pi f L = 2\pi \times 50 \times 0.10 = 31.4\;\Omega$$ $$X_C = \frac{1}{2\pi f C} = \frac{1}{2\pi \times 50 \times 50 \times 10^{-6}} = 63.7\;\Omega$$ $$Z = \sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2} = \sqrt{30^2 + (31.4 - 63.7)^2} = \sqrt{900 + 1045} \fallingdotseq 44\;\Omega$$

実効電流は \(I_{\text{rms}} = V_{\text{rms}} / Z = 100 / 44 \fallingdotseq 2.3\) A。消費電力は抵抗のみで:

$$P = I_{\text{rms}}^2 \times R = 2.3^2 \times 30 \fallingdotseq 160 \text{ W}$$
答え:\(Z = 50\;\Omega\)、消費電力 \(P = 200\) W(問題の数値設定による)
導出:なぜ消費電力は抵抗成分のみか

コイル(L)とコンデンサ(C)は電流と電圧の位相が \(90°\) ずれる。エネルギーを一時的に蓄えて返すだけで、1周期平均の消費電力はゼロ。

$$P_L = V_L I \cos 90° = 0, \quad P_C = V_C I \cos(-90°) = 0$$

抵抗は電流と電圧が同位相なので \(P_R = V_R I \cos 0° = I^2 R\)。回路全体の消費電力は \(P = I_{\text{rms}}^2 R\)。

補足:共振条件 \(X_L = X_C\)

\(X_L = X_C\) となる周波数を共振周波数という:

$$f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$$

共振時は \(Z = R\)(最小)となり、電流が最大になる。スライダーで周波数を変えて \(Z\) が最小になる点を探してみよう。

Point

交流回路の3つの量:\(X_L = \omega L\)(周波数に比例)、\(X_C = 1/(\omega C)\)(周波数に反比例)、\(R\)(一定)。電力を消費するのは \(R\) だけ。LとCは位相がずれるため電力を消費しない。

問3 — レンツの法則と誘導電流の向き

直感的理解

レンツの法則は「自然は変化を嫌う」という原理。磁束が増えようとしたら「減らしたい」、減ろうとしたら「増やしたい」向きに電流が流れる。誘導電流が作る磁場の向きを右ねじの法則で判定する。

N極を下にした磁石をコイルに近づけると、コイルを貫く下向きの磁束が増加する。レンツの法則より、磁束の増加を妨げる(上向きの磁場を作る)向きに誘導電流が流れる。

右ねじの法則により、上向きの磁場を作る電流は反時計回り(上から見て)。

$$\Phi \uparrow \;\Rightarrow\; \text{誘導電流は } \Phi \text{ を減少させる向き(反時計回り)}$$
答え:磁束増加 → 減少させる向き → 反時計回り
補足:レンツの法則の覚え方

変化にブレーキ」と覚える。磁束が増えたら減らす、減ったら増やす。これはエネルギー保存則の帰結でもある — もし同じ向きに電流が流れたら、磁石がさらに加速して無限にエネルギーが生まれてしまう(永久機関の否定)。

Point

レンツの法則の手順:①磁束の変化の向きを判定 → ②変化を妨げる磁場の向きを決定 → ③右ねじの法則で電流の向きを決定。磁石を「遠ざける」ときは逆向きになることに注意。