棒磁石を取り付けた台車が2つのコイルを通過するときの誘導起電力を、オシロスコープで観測する実験です。電磁誘導の基本法則とグラフの読み取りを組み合わせた思考力重視の大問です。
数値例:台車の速さ 1.0 m/s で磁石がコイルを通過し、コイルの巻数 N = 500、磁束変化 0.002 Wb が 0.01 s で起きると、誘導起電力は E = N × 0.002 ÷ 0.01 = 100 V。速さを 2 倍の 2.0 m/s にすると通過時間が半分の 0.005 s になり、E = 500 × 0.002 ÷ 0.005 = 200 V と 2 倍になる。
図2の読み取り:コイル1の誘導起電力のピークが $t_1 \fallingdotseq 0.40\,\text{s}$、コイル2のピークが $t_2 \fallingdotseq 0.60\,\text{s}$ に現れています。
速さの計算:等速直線運動を仮定すると、台車がコイル間の距離 $L = 0.20\,\text{m}$ を移動するのにかかった時間は
$$\Delta t = t_2 - t_1 = 0.60 - 0.40 = 0.20\,\text{s}$$したがって台車の速さは
$$v = \frac{L}{\Delta t} = \frac{0.20\,\text{m}}{0.20\,\text{s}} = 1.0\,\text{m/s}$$有効数字1桁で表すと $\boldsymbol{1 \times 10^{\,0}\,\text{m/s}}$ です。
誘導起電力のピーク(正の最大値)は、磁石の中心がコイルの位置を通過する瞬間に最も磁束変化率 $|d\Phi/dt|$ が大きくなる付近に対応します。
厳密には磁束 $\Phi(t)$ のグラフでは、磁石がコイル中心に来たとき $\Phi$ が最大になるので $d\Phi/dt = 0$(ゼロクロス)ですが、波形の正ピーク・負ピークのペア全体の「重心的な時刻」がコイル通過時刻に対応します。いずれのピークで読み取っても、2つのコイル間の時間差は同じです。
等速直線運動の速さ=距離÷時間。グラフから「同じ種類のピーク」の時間差を正確に読み取ることが重要。有効数字1桁の指定に注意し、$a \times 10^b$ の形で答える。
空欄16:コイルに電磁誘導による電流が流れると、その電流がつくる磁場は磁石の運動を妨げる向きに力を及ぼします(レンツの法則)。磁場が大きくなれば力も大きくなります。
ファラデーの法則より、誘導起電力は
$$\mathcal{E} = -N\frac{d\Phi}{dt}$$であり、コイルの抵抗を $R$ とすると流れる電流は
$$I = \frac{|\mathcal{E}|}{R}$$空欄17:台車が近づくときは小さく、遠ざかるときは大きいのではなく、オシロスコープの内部抵抗が関係します。実験で等速直線運動が保たれた理由は、コイルに流れる電流による力(ブレーキ力)が十分小さかったからです。これはオシロスコープの内部抵抗が大きいため、コイルを流れる電流が小さいからです。
しかし問題文の流れ(台車の運動はほぼ等速直線運動となった。力が小さい理由は…)を正確に読むと:
問題文を正確に読むと:
問題文を再確認すると、空欄17は「抵抗が $\fbox{17}$」の形で、「力が小さい理由」の文脈です。実験でほぼ等速直線運動が保たれた理由:
| 空欄 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 16 | 大きく | 磁場が大きいほど電磁力は大きい |
| 17 | 小さい | コイルの内部抵抗が小さい → だが問題文の文脈では「オシロスコープの内部抵抗が大きい」→ 流れる電流が小さい |
| 18 | 小さい | 空気抵抗が台車に与える影響は小さく無視できる |
オシロスコープの入力インピーダンス(内部抵抗)は通常 $1\,\text{M}\Omega$(100万オーム)と非常に大きいです。これは「電圧を測定するが、ほとんど電流を流さない」ためです。
コイルの誘導起電力は数十〜数百 mV 程度なので、$I = V/R \fallingdotseq 100 \times 10^{-3} / 10^6 = 10^{-7}\,\text{A}$ と極めて小さく、この電流が磁石に及ぼすブレーキ力はほぼゼロです。そのため台車は等速直線運動を維持できます。
電磁誘導のブレーキ力は $F \propto I \times B$。$I = \mathcal{E}/R$ なので、抵抗が大きいと電流が小さく、力も小さくなる。オシロスコープは入力抵抗が非常に大きいため、回路にほとんど電流が流れず、台車の運動に影響しない。
図3の変更前と変更後の比較:
| 特徴 | 変更前 | 変更後 | 変化倍率 |
|---|---|---|---|
| ピーク電圧 | 約100 mV | 約200 mV | 2倍 |
| ピーク幅 | 広い | 狭い(約1/2) | 1/2 |
| コイル間時間差 | 約0.20 s | 約0.10 s | 1/2 |
各選択肢の検証:
② 台車の速さを2倍にした場合:
他の選択肢の検討:
誘導起電力の時間積分は磁束変化の総量に等しい:
$$\int \mathcal{E}\,dt = -\Delta\Phi$$速さを変えても磁石とコイルの相対配置は同じなので $\Delta\Phi$ は不変 → グラフの「面積」は同じ。
変更後のグラフは「高さ2倍・幅1/2」なので面積 $= 2 \times (1/2) = 1$(不変)。これは速さ変更の特徴であり、磁石の強さを変えた場合は面積も変わるので区別できます。
速さが $k$ 倍になると:ピーク高さ $k$ 倍、ピーク幅 $1/k$ 倍、コイル間時間差 $1/k$ 倍。面積(=磁束変化)は不変。これは $\mathcal{E} = -d\Phi/dt$ で $dt$ が $1/k$ 倍になることから直接導ける。
Aさんの結果(図5)vs Bさんの結果(図6)の比較:
Aさんの図5では、3つのコイルすべてで同じ形のピーク対(正→負)が時間をずらして現れます:
Bさんの図6では:
反転の原因を考える:
ファラデーの法則 $\mathcal{E} = -N\dfrac{d\Phi}{dt}$ において、コイルの巻き方を逆にすると、磁束 $\Phi$ の正方向が反転するため、誘導起電力の正負が逆になります。
コイル2とコイル3の両方が反転しているので、「コイル2、コイル3の巻き方が逆であった」が正解です。
① コイル1の巻数が半分:巻数が半分になると、コイル1のピーク高さが半分になるだけで、コイル2・3のピーク対は反転しません。しかし図6ではコイル1の高さは変わらず、コイル2・3が反転しているので不適。
② コイル2・3の巻数が半分:巻数が半分になるとピーク高さが半分になるだけで、正負は反転しません。図6では高さではなく正負が反転しているので不適。
③ コイル1の巻き方が逆:この場合、コイル1のみが反転し、コイル2・3は正常のはず。図6とは逆のパターンです。
⑤ オシロスコープのプラスマイナスのつなぎ方が逆:接続を逆にすると全てのコイルの信号が反転するはず。しかし図6ではコイル1は正常でコイル2・3のみ反転しているので不適。
コイルの巻き方(巻き方向)は誘導起電力の正負を決定する。巻き方が逆のコイルでは、同じ磁束変化に対して起電力の符号が反転する。グラフの「形」ではなく「正負」の違いに注目するのがこの問題のポイント。
等加速度運動による変化:
装置を傾けると台車には重力の斜面方向成分 $mg\sin\theta$ が働き、等加速度運動(加速度 $a = g\sin\theta$)をします。台車がコイル $n$ を通過するときの速度を $v_n$ とすると:
$$v_1 \lt v_2 \lt v_3$$ピーク高さの変化:ファラデーの法則より
$$|\mathcal{E}| \propto \left|\frac{d\Phi}{dt}\right| \propto v$$速さが増すほどピーク電圧が大きくなるので、コイル1 < コイル2 < コイル3 の順にピークが高くなる。
ピーク間隔の変化:コイル間の距離を $L$、通過時の速さを $v$ とすると
$$\Delta t = \frac{L}{v}$$速さが増すほど通過時間は短くなるので、ピーク間隔は徐々に狭まる。
ピーク幅の変化:磁石がコイルを通過する時間も $\propto 1/v$ なので、後のコイルほどピークの幅が狭くなります。
| 特徴 | 等速直線運動 | 等加速度運動 |
|---|---|---|
| ピーク高さ | 一定 | 徐々に増加 |
| ピーク間隔 | 一定 | 徐々に減少 |
| ピーク幅 | 一定 | 徐々に減少 |
選択肢の中で「ピークが高くなり、間隔が狭まる」グラフは ④ です。
傾斜角 $\theta$、初速度 $v_0$ で滑り出す場合、加速度 $a = g\sin\theta$ として:
例えば $v_1 = 0.5\,\text{m/s}$, $a = 1\,\text{m/s}^2$, $L = 0.20\,\text{m}$ とすると:
ピーク電圧は $v_1 : v_2 : v_3 \fallingdotseq 1 : 1.6 : 2.0$ と増加し、
コイル間通過時間は $L/v_1 : L/v_2 : L/v_3 \fallingdotseq 1 : 0.62 : 0.49$ と減少します。
等加速度運動の $v$-$t$ グラフは右上がりの直線です。
コイル間を移動するのに要する時間は $v$-$t$ グラフの下の面積が $L$ になる区間で、速度が大きい区間ほどこの面積が短時間で $L$ に達するため、コイル間の通過時間は後になるほど短くなります。
また、各コイル通過時の瞬間速度が大きいほど $|d\Phi/dt|$ が大きいため、ピーク電圧も大きくなります。
等加速度運動では速さが時間とともに増加する。誘導起電力は速さに比例し、コイル間の通過時間は速さに反比例する。結果として、グラフのピークは「高くなり」「間隔は狭く」なっていく。定性的な推論で選択肢を絞れる問題。