第1問:小問集合(力学・熱・波・電磁気・原子)

解法の指針

共通テスト物理「第1問」は、各分野から独立した小問が5題出題される形式です。1問あたり5点(配点25点)と配点が高く、基本法則の正確な適用が合否を左右します。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — 力のモーメントのつり合い(体重計の読み)

直感的理解

シーソーの原理と同じ。支点から遠い側に重さがかかるほど、反対側の支点にかかる力は小さくなる。人が体重計bに近い側に立っているので、bの読みが大きく、aの読みが小さくなる。2つの体重計の読みの合計は人の体重60 kgに等しい。

変形しない長い板を水平な床に置き、両端に体重計 a, b を設置。60 kgの人が板の全長 \(L\) を \(2:1\) に内分する位置(体重計aから遠く、bに近い)に片足立ちする。

人の位置は体重計aから \(\dfrac{2}{3}L\)、体重計bから \(\dfrac{1}{3}L\) の距離にある。板の重さは無視する。

力のつり合い(鉛直方向):

$$N_a + N_b = 60g \quad \cdots (1)$$

力のモーメントのつり合い(体重計aを支点):

$$N_b \times L = 60g \times \frac{2}{3}L$$ $$N_b = 60 \times \frac{2}{3} = 40 \text{ kg重}$$

式(1)より:

$$N_a = 60 - 40 = 20 \text{ kg重}$$

体重計は垂直抗力の大きさを表示するので:

答え:③ 体重計 a = 20 kg、体重計 b = 40 kg
別解:体重計bを支点にしたモーメントのつり合い

体重計bの位置を支点にとると:

$$N_a \times L = 60g \times \frac{1}{3}L$$ $$N_a = 60 \times \frac{1}{3} = 20 \text{ kg重}$$

どちらの支点をとっても同じ結果になる。

補足:よくある間違い — 「2:1だから40と20」と即答するミス

「2:1の位置だから体重計の読みも2:1」は正しいが、どちらが大きいかの判断を誤りやすい。

人がbに近い → bが受ける力が大きい → \(N_b = 40\), \(N_a = 20\)。

④ (a=40, b=20) は「aに近い側に立っている」と読み間違えた場合の誤答。問題文の「体重計aから遠く、体重計bに近い」を正確に読み取ることが重要。

Point

力のモーメントのつり合いを使えば、連立方程式を解かずに一方の抗力を直接求められる。支点の選び方は「求めたくない力が通る点」を選ぶと計算が楽になる。また、近い方の体重計に大きな力がかかるというシーソーの直感も検算に有効。

問2 — 熱力学サイクル(断熱・定積・等温変化)

直感的理解

内部エネルギーは温度だけで決まる「状態量」。サイクルを一周すると元の状態に戻るので、内部エネルギーも元の値に戻る。p-V図でサイクルが反時計回りなら、気体は正味の仕事をされ(外から仕事を受け取り)、その分だけ熱を放出する。

p-V図上のサイクル A→B→C→A を分析する。

各過程の特徴

空欄2:内部エネルギーの変化

理想気体の内部エネルギーは温度のみの関数(状態量)。サイクルを一周すると元の状態 A に戻るので、温度も元に戻り、内部エネルギーも元の値に戻る。途中で増減はあるが、一周すれば \(\Delta U = 0\) である。

空欄3:気体がされた仕事・吸収した熱量の総和

p-V図でサイクルが反時計回りであることに注目する。

反時計回りのサイクルでは、気体が外にする仕事の総和 \(W_{\text{by}}\) は負(囲む面積の分だけ気体が外から仕事を受ける)。したがって:

気体がされた仕事の総和 \(W_{\text{on}} = -W_{\text{by}} > 0\) →

サイクル一周で \(\Delta U = 0\) なので、熱力学第一法則 \(\Delta U = Q + W_{\text{on}}\) より:

$$0 = Q_{\text{total}} + W_{\text{on}}$$ $$Q_{\text{total}} = -W_{\text{on}} < 0$$

気体が吸収した熱量の総和 \(Q_{\text{total}} < 0\) → (正味で熱を放出)

答え:空欄2 = ③(変化するがもとの値に戻る)、空欄3 = ③(ア = 正、イ = 負)
補足:時計回り vs 反時計回りの見分け方

時計回りサイクル(熱機関):気体が外にする仕事が正。高温から熱を吸収し、低温に熱を放出。差分が仕事になる。

反時計回りサイクル(冷凍機・ヒートポンプ):気体がされる仕事が正。外から仕事をもらい、低温から熱を吸い上げて高温に放出。

本問のサイクル A→B→C→A は反時計回りなので、冷凍機型。外から仕事を受け取り(ア=正)、正味で熱を放出する(イ=負)。

別解:各過程の仕事・熱を個別に符号判定

A→B(断熱膨張):\(Q_{AB} = 0\)、\(W_{\text{by}} > 0\)(膨張) → \(W_{\text{on}} < 0\)

B→C(定積加熱):\(W_{\text{on}} = 0\)(体積不変)、\(Q_{BC} > 0\)(加熱)

C→A(等温圧縮):\(W_{\text{on}} > 0\)(圧縮)、\(Q_{CA} < 0\)(等温圧縮で熱放出)

総和:\(W_{\text{on,total}} = W_{\text{on,AB}} + 0 + W_{\text{on,CA}}\)。A→B の膨張仕事よりも C→A の圧縮仕事の方が大きい(等温線が断熱線より上にあるため)ので、\(W_{\text{on,total}} > 0\)。

\(Q_{\text{total}} = 0 + Q_{BC} + Q_{CA} = -W_{\text{on,total}} < 0\)。

Point

内部エネルギーは状態量なので、どんな経路をたどっても出発点に戻れば変化量はゼロ。サイクルの回転方向(時計/反時計)で仕事と熱の正負が決まる。反時計回り → 気体がされた仕事 > 0、吸収した熱量 < 0。

問3 — 運動量・力学的エネルギーの保存(ブロックとそり)

直感的理解

運動量が保存するかどうかは「系に外力が働くか」で決まる。力学的エネルギーが保存するかは「摩擦や非保存力があるか」で決まる。そりが固定されている場合、床からの反作用が外力として働く。そりが自由に動ける場合、ブロック+そりの系に水平方向の外力はない。

クリック/タップで「固定」↔「自由」を切替

ブロックが岸からそりの上を水平に滑り、摩擦によって減速して停止する。ブロックとそりの系について、2つの場合で保存則を判定する。

空欄4:そりが岸に固定されている場合

運動量保存?

そりは岸に固定されているので、ブロックから受ける摩擦力に対して岸が反力を返す。つまり系に外力(岸からの水平抗力)が作用するため、運動量は保存しない

力学的エネルギー保存?

ブロックとそりの間に動摩擦力が作用し、運動エネルギーが熱に変換される。よって力学的エネルギーは保存しない

空欄5:そりが固定されておらず氷の上を動ける場合

運動量保存?

そりと氷の間に摩擦がないため、ブロック+そりの系に水平方向の外力は作用しない。よって水平方向の運動量は保存する

力学的エネルギー保存?

ブロックとそりの間にはやはり動摩擦力が作用するので、力学的エネルギーは保存しない(摩擦熱が発生)。

答え:空欄4 = ④(運動量も力学的エネルギーも保存しない)、空欄5 = ②(運動量は保存するが、力学的エネルギーは保存しない)
補足:「運動量保存の条件」の整理

系の運動量が保存する条件は外力の合力がゼロ(より正確には、着目する方向の外力成分がゼロ)。

  • 固定そり:ブロックの運動量は変化する。そりは動かないので運動量ゼロのまま。系全体の運動量はブロックの減速分だけ減少 → 非保存。外力の正体は岸からそりへの反力。
  • 自由そり:ブロックが減速する分、そりが加速する。ブロックの運動量の減少 = そりの運動量の増加 → 系全体の運動量は一定。
補足:よくある誤答パターン

③(運動量非保存、エネルギー保存)を選ぶ誤り:「そりが動けば摩擦による仕事がキャンセルされてエネルギーが保存する」と考えてしまうミス。実際には、ブロックとそりの相対変位に摩擦力を掛けた分だけエネルギーが熱に変わる。

①(両方保存)を選ぶ誤り:摩擦があるのにエネルギーが保存するケースは存在しない(動摩擦力は常に負の仕事をする非保存力)。

Point

運動量保存の判定は「外力の有無」、力学的エネルギー保存の判定は「非保存力(摩擦など)の有無」で行う。この2つの判定基準は独立であり、組合せで4パターンすべてがあり得る。摩擦がある系ではエネルギーは必ず非保存だが、運動量は外力次第で保存し得る。

問4 — 磁場中の荷電粒子の円運動(ローレンツ力)

直感的理解

磁場中を運動する荷電粒子はローレンツ力を受けて円運動する。正と負の粒子では力の向きが逆なので、回転方向が逆になる。また円運動の半径は \(r = \frac{mv}{|q|B}\) なので、同じ電荷量・同じ速さなら質量が大きいほど半径が大きい。

紙面に垂直(表→裏)の一様磁場 \(\vec{B}\) の中で、正と負の荷電粒子が磁場に垂直に同じ速さ \(v\) で運動する。電荷の大きさは等しく、正の粒子の方が質量が大きい。

円運動の半径

ローレンツ力 \(|q|vB\) が向心力になるので:

$$|q|vB = \frac{mv^2}{r} \quad \Rightarrow \quad r = \frac{mv}{|q|B}$$

電荷の大きさ \(|q|\)、速さ \(v\)、磁場 \(B\) が同じなので、半径は質量に比例する。正の粒子の方が質量が大きいので、正の粒子の方が大きい円を描く。

回転方向

磁場が紙面の裏向き(\(\vec{B}\) は紙面奥向き = \(\otimes\) 方向)のとき:

つまり正と負の粒子は逆方向に回転する。

答え:② — 正の粒子が大きい円、負の粒子が小さい円で、互いに逆方向に回転する図
補足:回転方向の具体的な決め方

例えば正の荷電粒子が右向き(\(+x\))に運動し、磁場が奥向き(\(-z\))の場合:

$$\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B} = q(v\hat{x}) \times (-B\hat{z}) = -qvB(\hat{x} \times \hat{z}) = qvB\hat{y}$$

力は \(+y\)(上向き)→ 粒子は上に曲がり、反時計回りに回転する。

負の荷電粒子では \(q < 0\) なので力は \(-y\)(下向き)→ 時計回り。

問題の選択肢では、この回転方向と半径の大小の組合せで正しい図を選ぶ。

Point

磁場中の荷電粒子の円運動は3つのポイントで整理する:
半径 \(r = mv/(|q|B)\) は質量に比例(同じ \(|q|, v, B\) のとき)
回転方向は電荷の正負で逆
周期 \(T = 2\pi m/(|q|B)\) は速さに依存しない(サイクロトロン条件)

問5 — 光電効果とプランク定数

直感的理解

光電効果のグラフ \(K_{\max}\) vs \(\nu\) は右上がりの直線で、その傾きがプランク定数 \(h\)。グラフ上で傾きを \(W\)(仕事関数)と \(\nu_0\)(限界振動数)だけで表せば \(h\) の式が得られる。

光電効果の式:

$$K_{\max} = h\nu - W$$

ここで \(W\) は金属の仕事関数、\(\nu_0\) は限界振動数(\(K_{\max} = 0\) となる振動数)。

\(K_{\max} = 0\) のとき:

$$0 = h\nu_0 - W \quad \Rightarrow \quad h\nu_0 = W$$

したがって:

$$\boxed{h = \frac{W}{\nu_0}}$$

グラフの傾き(= プランク定数 \(h\))は、y切片の絶対値 \(W\) をx切片 \(\nu_0\) で割った値に等しい。

答え:⑤ \(\displaystyle h = \frac{W}{\nu_0}\)
別解:グラフの傾きから直接求める

\(K_{\max}\) vs \(\nu\) のグラフは直線 \(K_{\max} = h\nu - W\) なので、傾きは \(h\)。

グラフ上の2点を読み取ると:

  • 点1:\((\nu_0, 0)\)(x切片)
  • 点2:\((0, -W)\)(y切片)

傾き = \(\dfrac{0 - (-W)}{\nu_0 - 0} = \dfrac{W}{\nu_0}\)

これがプランク定数 \(h\) に等しい。

補足:誤答の分析

① \(\nu_0 - W\):振動数と仕事関数(エネルギー)は次元が異なるので、引き算はできない。次元解析で即座に棄却できる。

② \(\nu_0 + W\):同様に次元不整合。

③ \(\nu_0 W\):次元は \(\text{Hz} \cdot \text{J} = \text{J}\cdot\text{s}^{-1} \cdot \text{J}\) で、プランク定数 \(\text{J}\cdot\text{s}\) とは合わない。

④ \(\frac{2\nu_0}{W}\):次元は \(\text{Hz}/\text{J} = 1/(\text{J}\cdot\text{s})\) で逆数になっている。

⑤ \(\frac{W}{\nu_0}\):次元は \(\text{J}/\text{Hz} = \text{J}\cdot\text{s}\) で、プランク定数の次元と一致。

Point

光電効果のグラフ問題は傾き・切片の物理的意味を問う定番。\(K_{\max} = h\nu - W\) の一次関数で、傾き = \(h\)y切片 = \(-W\)x切片 = \(\nu_0 = W/h\)。次元解析を活用すれば選択肢を大幅に絞れる。