第2問:空気中での落下運動に関する探究(配点25)

解法の指針

共通テスト物理「第2問」は、空気抵抗を受ける落下運動を題材にした探究活動(実験考察)の大問です。重ねたアルミカップを落下させ、終端速度と質量(枚数)の関係を調べます。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — 空気抵抗と終端速度の会話文 [ア]〜[ウ]

直感的理解

紙を落とすと最初はどんどん加速するが、やがて一定の速さで落ちる。これは空気抵抗が速さとともに増加し、重力とちょうど釣り合うから。抵抗力は運動と逆向き(ブレーキの役割)、速さが増すと抵抗力は増加し、正味の力が減るので加速度は減少する。

物体が空気中を落下するとき、物体には2つの力が働く:

[ア] 逆向き:抵抗力は物体の運動を妨げる方向に働くため、落下中は運動の向きと逆向き(上向き)。

初速度 \(0\) で落下させたとき、速さは \(0\) から徐々に増加する。抵抗力 \(R\) は速さに依存するため:

[イ] 増加:速さが増すにつれ、抵抗力の大きさは増加する。

運動方程式(下向きを正):

$$ma = mg - R$$

速さが増して \(R\) が大きくなると、正味の力 \(mg - R\) は小さくなるため:

[ウ] 減少:加速度の大きさは減少する。

最終的に \(R = mg\) となると \(a = 0\) になり、一定の速度(終端速度 \(v_t\))で落下する。

答え:⑥([ア] 逆向き [イ] 増加 [ウ] 減少)
補足:終端速度の物理的イメージ

落下を開始した直後は \(v \fallingdotseq 0\) なので \(R \fallingdotseq 0\)、ほぼ自由落下(\(a \fallingdotseq g\))。速さが増すにつれ \(R\) が増加し、加速度が徐々に小さくなる。十分な時間が経つと:

$$mg = R \quad \Rightarrow \quad a = 0 \quad \Rightarrow \quad v = v_t = \text{const.}$$

このように指数関数的に終端速度に漸近する。空中のスカイダイバーや雨粒の運動もこのメカニズム。

Point

空気抵抗を受ける落下運動では、速さが増すと抵抗力が増加し、加速度が減少する。\(R = mg\) になった瞬間に加速度がゼロとなり、以降は等速(終端速度)で落下する。「力のつり合い=等速運動」の典型例。

問2 — 終端速度 \(v_t\) の計算(\(n = 3\))

直感的理解

アルミカップを何枚か重ねて落下させると、20 cm ごとの通過時間を測定できる。落下が十分進んで等速になった区間(時間が一定になった区間)のデータから \(v_t = \Delta x / \Delta t\) を計算する。等速区間を見つけるのがカギ

表1のデータ(\(n = 3\))を確認する:

区間 [cm] 0〜2020〜4040〜6060〜80 80〜100100〜120120〜140140〜160
時間 [s] 0.14 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13 0.13

0〜20 cm の区間では 0.14 s だが、それ以降は 0.13 s で一定。つまり 20 cm 以降で終端速度に到達している。

終端速度は等速区間から:

$$v_t = \frac{\Delta x}{\Delta t} = \frac{0.20\;\text{m}}{0.13\;\text{s}} = 1.538...\;\text{m/s}$$

有効数字2桁に丸めると:

$$v_t = \underline{1.5} \times 10^{\underline{0}}\;\text{m/s}$$
答え:[9] = 1、[10] = 5、[11] = 0 → \(v_t = 1.5 \times 10^0\) m/s
補足:有効数字2桁への丸め方

\(0.20 / 0.13 = 1.538...\) を有効数字2桁にするとき:

  • 上位2桁は「1」と「5」
  • 3桁目は「3」→ 四捨五入で切り捨て
  • 結果:\(1.5\)

指数表記 \(a.b \times 10^c\) で \(a = 1\)、\(b = 5\)、\(c = 0\)。

\(\Delta x = 0.20\) m(有効数字2桁)、\(\Delta t = 0.13\) s(有効数字2桁)なので、答えも有効数字2桁で表す。

補足:なぜ最初の区間だけ時間が長いのか

最初の区間(0〜20 cm)では物体が静止状態から加速するため、平均速度が終端速度より小さい。したがって同じ距離を通過するのにより長い時間がかかる。

枚数が多い(\(n = 4, 5\))場合は終端速度が大きいため、到達までの加速距離も長くなり、最初の数区間まで時間の差が見られる。

Point

終端速度を実験データから求めるには、等間隔の通過時間が一定になった区間を見つける。その区間で \(v_t = \Delta x / \Delta t\)。有効数字の桁数は、元データの有効数字に合わせる(\(\Delta x\)、\(\Delta t\) の少ない方の桁数)。

問3 — \(v_t \propto n\) の予想が外れた理由

直感的理解

先生と生徒は「\(R = kv\) なら \(v_t = mg/k\) で、\(m \propto n\) だから \(v_t \propto n\) になるはず」と予想した。実際にグラフを描くと、データ点は直線的に増えるものの、その直線が原点を通らない(or 原点から大きく外れる)。これは「\(v_t\) と \(n\) が正比例する」という予想と矛盾する。

もし \(R = kv\) が正しければ、終端速度は:

$$kv_t = mg = n m_0 g \quad \Rightarrow \quad v_t = \frac{m_0 g}{k} \cdot n$$

つまり \(v_t\) と \(n\) は正比例(原点を通る直線)のはず。

しかし図3の測定データに最もフィットする直線を引くと、その直線は原点を大きく外れる(\(n = 0\) のとき \(v_t \neq 0\) になってしまう)。

これは \(v_t \propto n\)(原点を通る直線)の予想と矛盾する。

選択肢を検討すると:

答え:②(測定値のすべての点のできるだけ近くを通る直線が、原点から大きくはずれる)
補足:「原点を通る直線」の意味

2つの量 \(y\) と \(x\) が正比例 \(y = cx\) の関係にあるとき、\(y\text{-}x\) グラフは原点を通る直線になる。

実験データが直線に乗っていても、その直線の \(y\) 切片がゼロでなければ正比例ではない。\(v_t\text{-}n\) のフィット線が原点から外れるということは、\(v_t = c \cdot n\) の関係式が成り立たず、\(R = kv\) の仮定が誤っていることを意味する。

Point

正比例 \(y = cx\) が成り立つかどうかの判定は、データ点にフィットさせた直線が原点を通るかどうかを確認する。直線が原点から大きく外れれば、その比例関係は否定される。単に「直線に乗る」だけでは正比例とは限らない(\(y = ax + b\) の可能性がある)。

問4 — \(R = k'v^2\) のとき原点を通る直線になるグラフ

直感的理解

抵抗力が速さの2乗に比例する場合(\(R = k'v^2\))、終端速度では \(k'v_t^2 = mg = nm_0 g\)。つまり \(v_t^2 \propto n\)。この関係式を変形すれば、\(v_t^2\) vs \(n\) のグラフ、あるいは \(v_t\) vs \(\sqrt{n}\) のグラフが原点を通る直線になるとわかる。

抵抗力が \(R = k'v^2\)(速さの2乗に比例)の場合を考える。

終端速度では力がつり合うので:

$$k'v_t^2 = mg = n m_0 g$$ $$v_t^2 = \frac{m_0 g}{k'} \cdot n$$

つまり \(v_t^2\) は \(n\) に正比例する。ここから2通りの「原点を通る直線」グラフが作れる:

パターン1:\(v_t^2\) vs \(n\) → 直線(傾き \(m_0 g / k'\))

$$v_t^2 = \left(\frac{m_0 g}{k'}\right) n$$

パターン2:\(v_t\) vs \(\sqrt{n}\) → 直線(傾き \(\sqrt{m_0 g / k'}\))

$$v_t = \sqrt{\frac{m_0 g}{k'}} \cdot \sqrt{n}$$

選択肢表から、これに該当するのは:

答え:④ と ⑧
別解:他の組み合わせがなぜ不正解か

\(v_t^2 \propto n\) の関係を変形して、他の候補を検証する:

番号縦軸横軸関係式原点通過?
\(\sqrt{v_t}\)\(\sqrt{n}\)\(\sqrt{v_t} = c \cdot n^{1/4}\)×(\(\sqrt{n}\) で直線にならない)
\(\sqrt{v_t}\)\(n\)\(\sqrt{v_t} \propto n^{1/4}\)×
\(\sqrt{v_t}\)\(n^2\)非線形×
\(v_t\)\(\sqrt{n}\)\(v_t = c'\sqrt{n}\)
\(v_t\)\(n\)\(v_t \propto \sqrt{n}\)(曲線)×
\(v_t\)\(n^2\)非線形×
\(v_t^2\)\(\sqrt{n}\)\(v_t^2 \propto n\)(\(\sqrt{n}\) に対して曲線)×
\(v_t^2\)\(n\)\(v_t^2 = cn\)
\(v_t^2\)\(n^2\)\(v_t^2 \propto n\)(\(n^2\) に対して非線形)×
補足:R = kv と R = k'v² の物理的背景

流体力学的には:

  • \(R = kv\)(ストークス抵抗):低レイノルズ数(粘性支配の領域)。微小な球体がゆっくり落下する場合に成立。
  • \(R = k'v^2\)(慣性抵抗):高レイノルズ数(慣性支配の領域)。日常的なスケールの物体に適用されることが多い。

アルミカップの落下は後者に近く、\(R \propto v^2\) がよりよいモデルになる。

Point

べき乗関係 \(y = cx^a\) の検証は、適切な変数変換で「原点を通る直線」に変換できるかで判定する。\(v_t^2 \propto n\) なら、(1) \(v_t^2\) vs \(n\)、(2) \(v_t\) vs \(\sqrt{n}\) の2通りが直線になる。縦軸・横軸の「べき」の和が関係式と合うかを確認するのがコツ。

問5 — \(v\text{-}t\) グラフからの加速度と抵抗力の関係

直感的理解

抵抗力 \(R\) が速さ \(v\) にどう依存するかを調べたい。そのためには各瞬間の \(v\) と \(R\) の組を知る必要がある。\(v\) は \(y\text{-}t\) グラフから計算済み。\(R\) を求めるには運動方程式 \(ma = mg - R\) から \(a\) が必要。\(v\text{-}t\) グラフの各区間での速度変化から \(a\) を計算し、\(R = m(g - a)\) で抵抗力を求める。

\(R\) と \(v\) の関係を明らかにするための手順を考える。

ステップ1:図4の \(y\text{-}t\) グラフから、\(\Delta t = 0.05\) s ごとの平均速度を計算して \(v\text{-}t\) グラフ(図5)を作る。

$$v_i = \frac{y_{i+1} - y_i}{\Delta t}$$

ステップ2([エ] の選択):\(v\text{-}t\) グラフから加速度 \(a\) を求める方法を選ぶ。

3つの候補を検討する:

したがって [エ] = (c)

ステップ3([オ] の式):加速度 \(a\) がわかったら、抵抗力 \(R\) を求める。

鉛直下向きを正として運動方程式を立てると:

$$ma = mg - R$$ $$\therefore \quad R = m(g - a)$$

落下途中では \(0 \lt a \lt g\) なので \(R = m(g - a) \gt 0\)。終端速度では \(a = 0\) より \(R = mg\)(重力とつり合う)。

したがって [オ] = (c):\(R = m(g - a)\)。

答え:⑨([エ] (c) [オ] (c))
[エ] \(v\text{-}t\) グラフから \(\Delta t\) ごとの速度変化を求め \(a\text{-}t\) グラフをつくる
[オ] \(R = m(g - a)\)
補足:(a)の方法がなぜ不適切か

方法 (a) は「\(v\text{-}t\) グラフに直線を引いて傾きから \(a\) を求める」。これは等加速度運動(\(a\) = 一定)の場合に有効な方法。

しかし空気抵抗がある落下運動では、\(a\) は速さとともに変化する。\(v\text{-}t\) グラフは直線ではなく曲線になるため、「1本の直線の傾き」では各時刻の正しい加速度を得られない。

もし各点での接線を引くなら原理的には正しいが、実験データの散らばりに対して接線の傾きを正確に求めるのは困難。\(\Delta v / \Delta t\) で数値的に求める方法 (c) の方が実用的。

別解:運動方程式の符号確認

鉛直下向き正の座標を取る。落下中の物体に働く力は:

  • 重力:\(+mg\)(下向き)
  • 抵抗力:\(-R\)(上向き=運動と逆向き)

運動方程式:

$$ma = mg - R$$

これを \(R\) について解くと:

$$R = mg - ma = m(g - a)$$

落下の初期は \(a \fallingdotseq g\) なので \(R \fallingdotseq 0\)。終端速度では \(a = 0\) なので \(R = mg\)。物理的に矛盾なし。

選択肢 (a) \(R = m(g + a)\) だと、落下中 \(a \gt 0\) のとき \(R \gt mg\) となり、終端速度に達する前に抵抗力が重力を超えてしまう。初期(\(a \fallingdotseq g\))では \(R \fallingdotseq 2mg\) となり物理的に不合理。

Point

加速度が時間とともに変化する運動では、\(\Delta v / \Delta t\) で区間ごとの加速度を数値的に求める方法が有効。「直線の傾き」は等加速度運動でのみ使える手法。抵抗力は運動方程式 \(ma = mg - R\) から \(R = m(g - a)\) で求まる。