共通テスト物理「第2問」は、ペットボトルロケットを題材にした力学の大問です。圧縮空気で水を噴射する仕組みを通じて、連続の式(流量保存)・仕事とエネルギーの関係・運動量保存則が段階的に問われます。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| \(S_0\) | ペットボトルの断面積 |
| \(s\) | ノズルの断面積(\(s \ll S_0\)) |
| \(u\) | ノズルから噴出する水の速さ |
| \(u_0\) | ペットボトル内の水面が下降する速さ |
| \(p\) | 圧縮空気の圧力 |
| \(\rho_0\) | 水の密度 |
| \(M\) | ロケット全体(ボトル+水+空気)の質量 |
ホースの先をつまむと水が勢いよく出る。これは断面積が小さくなると速度が大きくなる「連続の式」の現れ。ペットボトルでも同じで、太いボトル(断面積 \(S_0\))から細いノズル(断面積 \(s\))に水が流れるとき、水の体積は保存されるので、ノズル側の速度 \(u\) はボトル内の水面速度 \(u_0\) より大きくなる。断面積比 \(s/S_0\) だけ速度が増幅される。
ノズルから速さ \(u\) で水が噴出するとき、短い時間 \(\Delta t\) の間にノズルを通過する水の体積 \(\Delta V\) は:
[ア]を求める:ノズルの断面積が \(s\)、水の速さが \(u\) なので、\(\Delta t\) 間に噴出する水は「断面積 × 速度 × 時間」で求まる。
$$\Delta V = s \cdot u \cdot \Delta t$$[イ]を求める:水は非圧縮性流体なので、ボトル内の水面が下がることで失われた体積と、ノズルから出た体積は等しい。ボトル内の水面速度を \(u_0\) とすると:
$$S_0 \cdot u_0 \cdot \Delta t = s \cdot u \cdot \Delta t = \Delta V$$これを整理すると連続の式が得られる:
$$S_0 \, u_0 = s \, u \quad \Rightarrow \quad u_0 = \frac{s}{S_0}\,u$$\(s \ll S_0\) なので \(u_0 \ll u\)。つまりノズルを細くするほど水面の下降速度 \(u_0\) は小さくなる(水面はゆっくり下がる)。
水は非圧縮性流体(密度一定)なので、ある断面を単位時間に通過する体積(体積流量)は管路のどの断面でも等しい。
$$Q = S_0 u_0 = su = \text{一定}$$これは質量保存則の流体版であり、連続の方程式(equation of continuity)と呼ばれる。
太い管から細い管に水が流れると、同じ体積を短時間で通過させなければならないため速度が大きくなる。庭のホースの先端をつまむと水が勢いよく飛ぶのはこの原理による。
\(\Delta V\) は体積なので次元は \([\text{m}^3]\)。
次元が合うのは \(su\Delta t\) のみ。[イ]も同様に \(u_0\) の次元 \([\text{m/s}]\) から \((s/S_0)u\) が唯一の正解。
非圧縮性流体の連続の式 \(S_0 u_0 = su\) は「断面積が小さいほど流速が大きい」ことを定量的に表す。ペットボトルロケットでは \(s \ll S_0\) なので、ノズルからの噴出速度 \(u\) はボトル内の水面速度 \(u_0\) の \(S_0/s\) 倍になる。この原理はベンチュリ管・消防ホースなど多くの応用例がある。
水の質量は「密度 × 体積」で決まる。水の密度 \(\rho_0\) と噴出体積 \(\Delta V\) がわかっているから、質量は直ちに \(\Delta m = \rho_0 \Delta V\)。一方、圧縮空気がする仕事は「気体が膨張するときの仕事」で、圧力 × 体積変化で計算できる。水が \(\Delta V\) だけ出ていくと空気は \(\Delta V\) だけ膨張するので、\(W' = p\Delta V\) となる。
噴出した水の質量 \(\Delta m\):
水の密度が \(\rho_0\)、噴出体積が \(\Delta V\) なので:
$$\Delta m = \rho_0 \,\Delta V$$圧縮空気がした仕事 \(W'\):
圧縮空気の圧力は \(p\)(一定とみなせる)。水が \(\Delta V\) だけ噴出すると、空気はその分だけ膨張する。気体が一定圧力 \(p\) で体積 \(\Delta V\) だけ膨張するとき、気体がする仕事は:
$$W' = p \,\Delta V$$これは熱力学で学ぶ「定圧変化での気体の仕事 \(W = p\Delta V\)」と同じ式。圧縮空気が水を押し出す力 \(F = pS_0\) に、水面の移動距離 \(\Delta x = u_0 \Delta t = \Delta V / S_0\) を掛けても同じ結果が得られる:
$$W' = F \cdot \Delta x = pS_0 \cdot \frac{\Delta V}{S_0} = p\,\Delta V$$問題文で定義されている記号を確認すると、\(\rho_0\) が水の密度、\(p\) が圧縮空気の圧力である。\(\rho\) という記号は問題文中に定義されていない。選択肢に \(\rho\Delta V\) があるが、定義されていない記号を使う式は不適切。
また次元の確認:\(\rho_0 \Delta V = [\text{kg/m}^3] \times [\text{m}^3] = [\text{kg}]\) ✓(質量の次元)。
圧縮空気が水面に及ぼす力は \(F = p \cdot S_0\)(圧力 × 断面積)。
\(\Delta t\) 間の水面の移動距離は \(\Delta x = u_0 \Delta t\)。連続の式から \(u_0 = \Delta V / (S_0 \Delta t)\) なので:
$$\Delta x = \frac{\Delta V}{S_0 \Delta t} \cdot \Delta t = \frac{\Delta V}{S_0}$$よって:
$$W' = F \cdot \Delta x = p S_0 \cdot \frac{\Delta V}{S_0} = p\,\Delta V$$力と移動距離の積からも \(p\Delta V\) が導かれる。これは熱力学の定圧過程の仕事と一致する。
気体が圧力 \(p\) で体積 \(\Delta V\) だけ膨張するときの仕事は \(W = p\Delta V\)。これは力学(\(W = F \cdot d\))と熱力学(\(W = p\Delta V\))の橋渡しとなる重要な関係式。ペットボトルロケットでは、圧縮空気のエネルギーが水の運動エネルギーに変換される。
圧縮空気がした仕事はどこへ行く?水がノズルから飛び出すときの運動エネルギーに変わる。ボトル内の水の運動エネルギーは \(u_0 \ll u\) なので無視できる。よって仕事 = 噴出水の運動エネルギーというエネルギー保存の式から噴出速度 \(u\) が求まる。これは \(p\)(圧力)と \(\rho_0\)(密度)だけで決まる美しい結果になる。
問題文の誘導に従い、\(\Delta t\) の間に噴出した水の物理量のうち、圧縮空気がした仕事 \(W'\) に等しいものを考える。
[ウ] の判定:
ボトル内の水の運動エネルギー(\(\frac{1}{2}\Delta m \cdot u_0^2\))は \(u_0 \ll u\) なので無視できる。よって仕事-運動エネルギーの定理から:
$$W' = \frac{1}{2}\Delta m \cdot u^2$$[エ] の導出:上式を \(u\) について解く:
$$u^2 = \frac{2W'}{\Delta m} \quad \Rightarrow \quad u = \sqrt{\frac{2W'}{\Delta m}}$$ここで前問の結果 \(W' = p\Delta V\) と \(\Delta m = \rho_0 \Delta V\) を代入すると:
$$u = \sqrt{\frac{2\,p\Delta V}{\rho_0 \Delta V}} = \sqrt{\frac{2p}{\rho_0}}$$この式は \(\Delta V\) に依存しない。つまり噴出速度 \(u\) は圧力 \(p\) と水の密度 \(\rho_0\) だけで決まる。
容器の側面に穴を開けたときの流出速度はトリチェリの定理で \(v = \sqrt{2gh}\)(\(h\) は水面から穴までの高さ)と表される。
ペットボトルロケットの場合、水面上の圧力が大気圧ではなく圧縮空気の圧力 \(p\) なので、水頭 \(\rho_0 g h\) の代わりに \(p\) が駆動力になる。形式的に \(p = \rho_0 g h_{\text{eff}}\) とすると \(h_{\text{eff}} = p / (\rho_0 g)\) であり:
$$u = \sqrt{2g \cdot \frac{p}{\rho_0 g}} = \sqrt{\frac{2p}{\rho_0}}$$これはトリチェリの定理の一般化と見なせる。
ベルヌーイの定理(定常流に対するエネルギー保存則)を水面とノズル出口に適用する:
$$p + \frac{1}{2}\rho_0 u_0^2 = p_{\text{atm}} + \frac{1}{2}\rho_0 u^2$$問題文の設定では大気圧 \(p_{\text{atm}}\) の影響は無視するので \(p_{\text{atm}} = 0\) とみなし、また \(u_0 \ll u\) なので:
$$p \fallingdotseq \frac{1}{2}\rho_0 u^2 \quad \Rightarrow \quad u = \sqrt{\frac{2p}{\rho_0}}$$同じ結果が得られる。ベルヌーイの定理はエネルギー保存則の流体力学版であり、問3の解法と本質的に同じことを述べている。
圧縮空気の仕事 \(W' = p\Delta V\) が噴出水の運動エネルギー \(\frac{1}{2}\Delta m \cdot u^2\) に変換される。運動量ではなく運動エネルギーであることが重要(次元の確認で判別可能)。最終結果 \(u = \sqrt{2p/\rho_0}\) はトリチェリの定理の一般化であり、圧力が高く密度が小さいほど噴出速度が大きくなることを示す。
ストッパーを外すと、ロケットは自由に動ける。水を下に噴射すると、その反動でロケットが上に飛ぶ。これは「水鉄砲を撃つと手が後ろに押される」のと同じ作用・反作用(運動量保存)。最初は全体が静止しているので全運動量はゼロ。噴射後も全運動量はゼロのままだから、水の運動量とロケットの運動量は大きさが等しく向きが逆。
Part B では、ストッパーを外してペットボトルが自由に動ける状態を考える。
初期条件(\(t = 0\)):
\(t = \Delta t\) の状態:
上向きを正とすると、運動量保存則は:
$$\underbrace{M \cdot \Delta v}_{\text{ロケットの運動量(上向き)}} + \underbrace{(-\Delta m \cdot u)}_{\text{水の運動量(下向き)}} = 0$$整理すると:
$$M\Delta v - \Delta m \cdot u = 0$$つまり \(M\Delta v = \Delta m \cdot u\)。ロケットが得る運動量は、噴出した水の運動量に等しい。
① \(\Delta m \cdot \Delta v + Mu = 0\):\(M\) と \(\Delta m\) が逆。ロケットの速度は \(\Delta v\)、水の速度は \(u\) なのに、入れ替わっている。
④ \(M\Delta v + \Delta m \cdot u = 0\):両方とも正の符号。上向きを正としたとき、水は下向きに動くので符号が反転するはず。もし両方正なら、全運動量は \(0\) にならず初期条件と矛盾する。
⑤〜⑧はエネルギー(\(\frac{1}{2}mv^2\))の式であり、運動量保存ではない。運動量(ベクトル量)とエネルギー(スカラー量)は別の保存則。
座標系を「下向き正」にとった場合:
両辺に \(-1\) を掛けると \(M\Delta v - \Delta m \cdot u = 0\) となり、同じ式が得られる。座標系の取り方に依存しない。
運動量保存則では、各物体の運動量の「向き」を正しく符号で表すことが決定的に重要。「上向き正」と決めたら、下向きに動く水の運動量は負になる。エネルギーの式(\(\frac{1}{2}mv^2\))と混同しないこと。運動量はベクトル量(向きあり)、運動エネルギーはスカラー量(向きなし)。
ロケットが飛び立つには、水を噴射する「推進力」が重力 \(Mg\) より大きくなければならない。推進力は「単位時間あたりにどれだけ運動量を生むか」で決まる。問4の \(M\Delta v = \Delta m \cdot u\) から、\(\Delta t\) で両辺を割れば推進力が得られる。推進力 \(= \Delta m \cdot u / \Delta t\) が \(Mg\) を超えることが飛行条件。
問4の運動量保存式 \(M\Delta v = \Delta m \cdot u\) の両辺を \(\Delta t\) で割ると:
$$\frac{M\Delta v}{\Delta t} = \frac{\Delta m \cdot u}{\Delta t}$$左辺は「ロケットの質量 × 加速度」= ロケットに働く力。右辺が噴出する水がロケットに及ぼす推進力(thrust)の大きさである:
$$F_{\text{推進}} = \frac{\Delta m \cdot u}{\Delta t}$$ロケットが地面を離れて上昇するには、推進力が重力 \(Mg\) より大きければよい:
$$F_{\text{推進}} > Mg$$ $$\frac{\Delta m \cdot u}{\Delta t} > Mg$$両辺に \(\Delta t\) を掛けて整理すると:
$$\Delta m \cdot u > Mg\Delta t$$ペットボトルロケットの典型的なパラメータで計算してみる:
噴出速度:\(u = \sqrt{2p/\rho_0} = \sqrt{2 \times 3 \times 10^5 / 1000} = \sqrt{600} \fallingdotseq 24.5\) m/s
単位時間の噴出質量:\(\Delta m / \Delta t = \rho_0 \cdot s \cdot u = 1000 \times 10^{-4} \times 24.5 = 2.45\) kg/s
推進力:\(F = (\Delta m / \Delta t) \cdot u = 2.45 \times 24.5 \fallingdotseq 60\) N
重力:\(Mg = 0.5 \times 9.8 = 4.9\) N
推進力は重力の約12倍!十分に飛び立てる。実際のペットボトルロケットが勢いよく飛ぶのは、推進力が重力を大きく上回るためである。
実際のロケット(宇宙ロケットなど)では、燃料が減って質量が時々刻々変化する。この場合の速度増分はツィオルコフスキーのロケット方程式で表される:
$$\Delta v = u \ln\frac{M_0}{M_f}$$\(M_0\) は初期質量、\(M_f\) は燃料消費後の質量、\(u\) は噴射速度(排気速度)。
この問題の \(M\Delta v = \Delta m \cdot u\) は、\(\Delta t\) が十分小さいときの近似式であり、ツィオルコフスキーの式を微小時間で展開した1次近似に相当する。共通テストではこの近似で十分。
不等式の両辺の次元を確認する。左辺と右辺の次元が一致する選択肢だけが物理的に意味を持つ。
| 選択肢 | 左辺の次元 | 右辺の次元 | 一致? |
|---|---|---|---|
| \(\Delta v > g\) | m/s | m/s² | ✗ |
| \(\Delta v > 2g\) | m/s | m/s² | ✗ |
| \(\Delta m \cdot \Delta v > Mg\) | kg·m/s | N = kg·m/s² | ✗ |
| \(\Delta v > g\Delta t\) | m/s | m/s | ✓ |
| \(\Delta v > 2g\Delta t\) | m/s | m/s | ✓ |
| \(\Delta m \cdot u > Mg\Delta t\) | kg·m/s | kg·m/s | ✓ |
次元が一致するのは ④⑤⑥ の3つ。この中から物理的に正しいものを選ぶ。
④ \(\Delta v > g\Delta t\) は \(M\Delta v / \Delta t > Mg\) と同値だが、これは \(M\) で割った後の式。問題文は「推進力の大きさ \(\Delta m \cdot u / \Delta t\) が \(Mg\) より大きくなる条件」なので、⑥が直接的に対応する。
ロケットの推進力は「単位時間あたりに噴出する運動量」\(F = \Delta m \cdot u / \Delta t\)。飛び立つには推進力 \(>\) 重力、すなわち\(\Delta m \cdot u > Mg\Delta t\)。この式から、(1) 噴出速度 \(u\) が大きい、(2) 単位時間の噴出質量 \(\Delta m / \Delta t\) が大きい、(3) ロケット全体の質量 \(M\) が小さい ほど飛びやすいことがわかる。次元解析で選択肢を3つに絞り、物理的意味で最終回答を決定する戦略が有効。