本問は金属線(弦)の固有振動に関する実験問題です。U字型磁石の磁場中に置かれた弦に交流電流を流して振動させ、定在波を観察する実験を題材に、電磁力の方向、定在波の波長、固有振動数と張力・直径の関係を問います。
数値例:振動数 \(f = 440\) Hz、波の速さ \(V = 340\) m/s のとき、波長は
\(\lambda = \dfrac{V}{f} = \dfrac{340}{440} = 0.773\) m ≒ 77 cm
弦の長さ \(L = 0.85\) m の基本振動では \(\lambda_1 = 2L = 2 \times 0.85 = 1.70\) m
力の方向の特定:弦に流れる電流の方向はx軸方向、磁場はy軸方向です。フレミングの左手の法則(電磁力 $\vec{F} = I\vec{L} \times \vec{B}$)より、
$$\vec{F} = I\vec{L} \times \vec{B} \quad \Rightarrow \quad \hat{x} \times \hat{y} = \hat{z}$$したがって、弦の中央部分はz軸に平行な力を受けます。
腹か節かの判定:弦の中央部分に力が加わって振動するので、中央部分は最も大きく振動する点 = 腹になります。交流電流の周波数を調節して共鳴させると、奇数次振動($n = 1, 3, 5, \ldots$)では中央が腹になる定在波が生じます。
弦の中央に力を加えて振動させるので、中央が腹になる振動モードのみが共鳴します。
一般に、$n$ が奇数のとき中央が腹、偶数のとき中央が節になります。ただし、実験では完全に偶数次が消えるわけではなく、主に奇数次が強く観察されるということです。
フレミングの左手の法則は「電流 → 磁場 → 力」の順で、中指・人差し指・親指に対応。ベクトルの外積 $\hat{x} \times \hat{y} = \hat{z}$ と同じ結果。弦の中央で外力を加える実験では、中央は必ず腹になる。
固定端の定在波の条件:弦の両端は固定端なので節になります。$n$ 次振動(腹が $n$ 個)では、弦の長さ $L$ に半波長が $n$ 個入るため、
$$L = n \cdot \frac{\lambda_n}{2}$$これを $\lambda_n$ について解くと
$$\lambda_n = \frac{2L}{n}$$腹が3個のとき($n = 3$)は
$$\lambda_3 = \frac{2L}{3}$$| 次数 $n$ | 腹の数 | 節の数(端含む) | 波長 $\lambda_n$ |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | 2 | $2L$ |
| 2 | 2 | 3 | $L$ |
| 3 | 3 | 4 | $\frac{2L}{3}$ |
| 4 | 4 | 5 | $\frac{L}{2}$ |
| $n$ | $n$ | $n+1$ | $\frac{2L}{n}$ |
上のシミュレーションで各モードのボタンを押して、定在波のパターンの違いを確認してみましょう。
固定端の定在波は $L = n \cdot \frac{\lambda}{2}$ が基本公式。「腹が $n$ 個 = $n$ 次振動 = 半波長が $n$ 個」と対応づけて覚える。波長は $\frac{2L}{n}$ で、$n$ が大きいほど短くなる。
固有振動数の公式:弦の波の速さを $v$ とすると、$n$ 次振動の振動数は
$$f_n = \frac{v}{\lambda_n} = \frac{v}{\frac{2L}{n}} = \frac{n}{2L} \cdot v$$これは $f_n$ と $n$ の比例関係を表しており、原点を通る直線のグラフになります。
傾きの物理的意味:
$$f_n = \underbrace{\frac{v}{2L}}_{\text{傾き}} \cdot n$$傾き $= \frac{v}{2L}$ であり、$L$ は弦の長さで一定。したがって、傾きは弦を伝わる波の速さ $v$ に比例します。
弦を伝わる横波の速さは
$$v = \sqrt{\frac{S}{\rho}}$$ここで $S$ は張力、$\rho$ は線密度(単位長さあたりの質量)です。この関係は問4以降で重要になります。
傾き $\frac{v}{2L}$ から $v$ を求めれば、間接的に弦の線密度などの物理量も推定できます。これが「グラフの傾きから物理量を読み取る」という共通テスト頻出のパターンです。
$n = 1$ のとき $f_1 = \frac{v}{2L}$(基本振動数)なので、
$$f_n = n f_1$$つまり $f_n$ は $n$ の1次関数で、傾き $= f_1 = \frac{v}{2L}$。$L$ は定数なので、傾きは $v$ に比例するとわかります。
$f_n = \frac{nv}{2L}$ のグラフは原点を通る直線。傾き $= \frac{v}{2L} \propto v$(波の速さに比例)。共通テストでは「グラフの傾き・切片が何を意味するか」を問う問題が頻出。公式を $y = ax + b$ の形に整理して読み取る習慣をつけよう。
固有振動数と張力の理論的関係:弦を伝わる横波の速さは
$$v = \sqrt{\frac{S}{\rho}}$$$\rho$(線密度)は弦の材質と太さで決まる定数。$n = 3$ の固有振動数は
$$f_3 = \frac{3}{2L} v = \frac{3}{2L} \sqrt{\frac{S}{\rho}} = \frac{3}{2L\sqrt{\rho}} \cdot \sqrt{S}$$$L$ と $\rho$ は一定なので、
$$\boxed{f_3 \propto \sqrt{S}}$$グラフの判定:4つのグラフのうち、横軸を $\sqrt{S}$ としたグラフが原点付近を通る直線に最もよくフィットします。これは $f_3 \propto \sqrt{S}$ という理論的予測と一致します。
実験データから比例関係を推定するには、横軸を変換して直線になるかを試します。
上のシミュレーションでボタンを切り替えると、各プロットでのデータ点の並びを比較できます。$\sqrt{S}$ のプロットだけがきれいな直線に乗ることが確認できます。
$f_3$ の次元は $[\text{Hz}] = [\text{s}^{-1}]$ です。張力 $S$ の次元は $[\text{N}] = [\text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2}]$。
$f_3 = \frac{3}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}}$ において、$\rho$ は $[\text{kg/m}]$ なので
$$\sqrt{\frac{S}{\rho}} = \sqrt{\frac{[\text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2}]}{[\text{kg/m}]}} = \sqrt{[\text{m}^2 \cdot \text{s}^{-2}]} = [\text{m/s}]$$これは速さの次元で整合します。$f_3 \propto \sqrt{S}$ が次元的にも正しいことが確認できます。
弦の振動数は $f_n \propto \sqrt{S}$(張力の平方根に比例)。グラフで比例関係を推定するには「横軸を変換して直線になるものを探す」のが定石。理論式 $v = \sqrt{S/\rho}$ から $f \propto \sqrt{S}$ を導けることも確認しておこう。
実験データの確認:
| $d = 0.1$ mm | $d = 0.2$ mm | $d = 0.3$ mm | |
|---|---|---|---|
| $f_1$ [Hz] | 29.4 | 14.9 | 9.5 |
| $f_3$ [Hz] | 89.8 | 44.3 | 28.8 |
| $f_5$ [Hz] | 146.5 | 73.9 | 47.4 |
$f_1$ と $d$ の比例関係を確認:$f_1 \cdot d$ の値を計算します。
| $d$ [mm] | $f_1$ [Hz] | $f_1 \times d$ | $f_1 \times d^2$ |
|---|---|---|---|
| 0.1 | 29.4 | 2.94 | 0.294 |
| 0.2 | 14.9 | 2.98 | 0.596 |
| 0.3 | 9.5 | 2.85 | 0.855 |
$f_1 \times d$ の値がほぼ一定($\fallingdotseq 2.9$)なので、
$$f_1 \times d = \text{const} \quad \Rightarrow \quad \boxed{f_1 \propto \frac{1}{d}}$$理論的な裏付け:同じ材質(密度 $\sigma$ [kg/m³])の金属線の線密度 $\rho$ は
$$\rho = \sigma \cdot \pi\left(\frac{d}{2}\right)^2 = \frac{\pi \sigma}{4} d^2 \propto d^2$$基本振動数の公式に代入すると
$$f_1 = \frac{1}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \propto \frac{1}{\sqrt{\rho}} \propto \frac{1}{\sqrt{d^2}} = \frac{1}{d}$$$f_n \propto 1/d$ なら、$f_3 \times d$ や $f_5 \times d$ も一定になるはずです。
| $d$ [mm] | $f_3 \times d$ | $f_5 \times d$ |
|---|---|---|
| 0.1 | 8.98 | 14.65 |
| 0.2 | 8.86 | 14.78 |
| 0.3 | 8.64 | 14.22 |
いずれもほぼ一定であり、$f_n \propto 1/d$ が確認できます。わずかなばらつきは実験誤差によるものです。
直径の比と振動数の比を確認する方法もあります。
直径が $k$ 倍になると振動数が $1/k$ 倍になるので、$f_1 \propto 1/d$ です。
もし $f_1 \propto 1/d^2$ なら、直径2倍で振動数は $1/4$ になるはずですが、実際は $1/2$ なので $1/d^2$ は否定されます。
問3〜5の結果をまとめると、弦の固有振動数の完全な公式が得られます。
$$f_n = \frac{n}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}}$$ここで $\rho = \frac{\pi \sigma}{4} d^2$ を代入すると
$$f_n = \frac{n}{2L} \cdot \frac{1}{d} \sqrt{\frac{4S}{\pi \sigma}} = \frac{n}{\pi L d} \sqrt{\frac{S}{\sigma}}$$この式から、問題文の最後にある「弦を伝わる横波の速さ、力の大きさ、線密度の関係式を推定できる」が理解できます。具体的には $v = \sqrt{S/\rho}$ という関係です。
実験データから比例関係を見抜くには「$f \times d^k$ が一定になる $k$ を探す」のが効率的。$f \times d =$ const なら $f \propto 1/d$。理論的には線密度 $\rho \propto d^2$ から $f \propto 1/\sqrt{\rho} \propto 1/d$ が導かれる。共通テストでは理論と実験データの対応を問う出題パターンが定番。