第3問:弦の固有振動(配点25)

解法の指針

本問は金属線(弦)の固有振動に関する実験問題です。U字型磁石の磁場中に置かれた弦に交流電流を流して振動させ、定在波を観察する実験を題材に、電磁力の方向、定在波の波長、固有振動数と張力・直径の関係を問います。

問題の構成

全体を貫くポイント

数値例:振動数 \(f = 440\) Hz、波の速さ \(V = 340\) m/s のとき、波長は

\(\lambda = \dfrac{V}{f} = \dfrac{340}{440} = 0.773\) m ≒ 77 cm

弦の長さ \(L = 0.85\) m の基本振動では \(\lambda_1 = 2L = 2 \times 0.85 = 1.70\) m

問1:弦が受ける力の方向と腹・節の判定

直感的理解
弦(金属線)はx方向に張られ、電流もx方向に流れる。磁場はy方向。フレミングの左手の法則で「電流 × 磁場 → 力」と考えると、力はz軸方向(紙面に垂直)に働く。弦の中央で力を加えて振動させるので、中央は最も大きく揺れる「」になる。

力の方向の特定:弦に流れる電流の方向はx軸方向、磁場はy軸方向です。フレミングの左手の法則(電磁力 $\vec{F} = I\vec{L} \times \vec{B}$)より、

$$\vec{F} = I\vec{L} \times \vec{B} \quad \Rightarrow \quad \hat{x} \times \hat{y} = \hat{z}$$

したがって、弦の中央部分はz軸に平行な力を受けます。

腹か節かの判定:弦の中央部分に力が加わって振動するので、中央部分は最も大きく振動する点 = 腹になります。交流電流の周波数を調節して共鳴させると、奇数次振動($n = 1, 3, 5, \ldots$)では中央が腹になる定在波が生じます。

答え:⑤ ア:z軸、イ:腹
補足:なぜ奇数次振動のみ観察されるか

弦の中央に力を加えて振動させるので、中央が腹になる振動モードのみが共鳴します。

  • $n = 1$(基本振動):中央が腹 → 共鳴する
  • $n = 2$(2次振動):中央が節 → 共鳴しにくい
  • $n = 3$(3次振動):中央が腹 → 共鳴する

一般に、$n$ が奇数のとき中央が腹、偶数のとき中央が節になります。ただし、実験では完全に偶数次が消えるわけではなく、主に奇数次が強く観察されるということです。

Point

フレミングの左手の法則は「電流 → 磁場 → 力」の順で、中指・人差し指・親指に対応。ベクトルの外積 $\hat{x} \times \hat{y} = \hat{z}$ と同じ結果。弦の中央で外力を加える実験では、中央は必ず腹になる。

問2:3個の腹をもつ定在波の波長

直感的理解
弦の両端は固定端なので節になる。腹が3個ということは「節-腹-節-腹-節-腹-節」と並び、半波長が3つ分で弦の全長 $L$ に等しい。つまり $L = 3 \times \frac{\lambda}{2}$ なので $\lambda = \frac{2L}{3}$。

固定端の定在波の条件:弦の両端は固定端なので節になります。$n$ 次振動(腹が $n$ 個)では、弦の長さ $L$ に半波長が $n$ 個入るため、

$$L = n \cdot \frac{\lambda_n}{2}$$

これを $\lambda_n$ について解くと

$$\lambda_n = \frac{2L}{n}$$

腹が3個のとき($n = 3$)は

$$\lambda_3 = \frac{2L}{3}$$
答え:③ $\displaystyle \lambda = \frac{2L}{3}$
補足:各次数の定在波のパターン
次数 $n$腹の数節の数(端含む)波長 $\lambda_n$
112$2L$
223$L$
334$\frac{2L}{3}$
445$\frac{L}{2}$
$n$$n$$n+1$$\frac{2L}{n}$

上のシミュレーションで各モードのボタンを押して、定在波のパターンの違いを確認してみましょう。

Point

固定端の定在波は $L = n \cdot \frac{\lambda}{2}$ が基本公式。「腹が $n$ 個 = $n$ 次振動 = 半波長が $n$ 個」と対応づけて覚える。波長は $\frac{2L}{n}$ で、$n$ が大きいほど短くなる。

問3:$f_n$ vs $n$ グラフの傾きの物理的意味

直感的理解
固有振動数の公式 $f_n = \frac{n}{2L} v$ を見ると、$f_n$ は $n$ に比例し、その比例定数(グラフの傾き)は $\frac{v}{2L}$。$L$ は弦の長さで一定だから、傾きは波の速さ $v$ に比例する。

固有振動数の公式:弦の波の速さを $v$ とすると、$n$ 次振動の振動数は

$$f_n = \frac{v}{\lambda_n} = \frac{v}{\frac{2L}{n}} = \frac{n}{2L} \cdot v$$

これは $f_n$ と $n$ の比例関係を表しており、原点を通る直線のグラフになります。

傾きの物理的意味:

$$f_n = \underbrace{\frac{v}{2L}}_{\text{傾き}} \cdot n$$

傾き $= \frac{v}{2L}$ であり、$L$ は弦の長さで一定。したがって、傾きは弦を伝わる波の速さ $v$ に比例します。

答え:② 弦を伝わる波の速さ
補足:波の速さと張力の関係

弦を伝わる横波の速さは

$$v = \sqrt{\frac{S}{\rho}}$$

ここで $S$ は張力、$\rho$ は線密度(単位長さあたりの質量)です。この関係は問4以降で重要になります。

傾き $\frac{v}{2L}$ から $v$ を求めれば、間接的に弦の線密度などの物理量も推定できます。これが「グラフの傾きから物理量を読み取る」という共通テスト頻出のパターンです。

別解:$f_n = n f_1$ の関係から考える

$n = 1$ のとき $f_1 = \frac{v}{2L}$(基本振動数)なので、

$$f_n = n f_1$$

つまり $f_n$ は $n$ の1次関数で、傾き $= f_1 = \frac{v}{2L}$。$L$ は定数なので、傾きは $v$ に比例するとわかります。

Point

$f_n = \frac{nv}{2L}$ のグラフは原点を通る直線。傾き $= \frac{v}{2L} \propto v$(波の速さに比例)。共通テストでは「グラフの傾き・切片が何を意味するか」を問う問題が頻出。公式を $y = ax + b$ の形に整理して読み取る習慣をつけよう。

問4:$f_3$ と張力 $S$ の関係

直感的理解
弦の振動数は $f_n \propto \sqrt{S}$ なので、横軸を $\sqrt{S}$ にしたグラフが直線になるはず。4つのグラフのうち $\sqrt{S}$ のグラフだけが原点付近を通る直線に見えるので、$f_3 \propto \sqrt{S}$ と推定できる。

固有振動数と張力の理論的関係:弦を伝わる横波の速さは

$$v = \sqrt{\frac{S}{\rho}}$$

$\rho$(線密度)は弦の材質と太さで決まる定数。$n = 3$ の固有振動数は

$$f_3 = \frac{3}{2L} v = \frac{3}{2L} \sqrt{\frac{S}{\rho}} = \frac{3}{2L\sqrt{\rho}} \cdot \sqrt{S}$$

$L$ と $\rho$ は一定なので、

$$\boxed{f_3 \propto \sqrt{S}}$$

グラフの判定:4つのグラフのうち、横軸を $\sqrt{S}$ としたグラフが原点付近を通る直線に最もよくフィットします。これは $f_3 \propto \sqrt{S}$ という理論的予測と一致します。

答え:② $f_3$ は $\sqrt{S}$ に比例する
補足:グラフの直線性の判定方法

実験データから比例関係を推定するには、横軸を変換して直線になるかを試します。

  • $f \propto S$ なら $f$ vs $S$ が直線
  • $f \propto S^2$ なら $f$ vs $S^2$ が直線
  • $f \propto \sqrt{S}$ なら $f$ vs $\sqrt{S}$ が直線
  • $f \propto 1/S$ なら $f$ vs $1/S$ が直線

上のシミュレーションでボタンを切り替えると、各プロットでのデータ点の並びを比較できます。$\sqrt{S}$ のプロットだけがきれいな直線に乗ることが確認できます。

別解:次元解析による確認

$f_3$ の次元は $[\text{Hz}] = [\text{s}^{-1}]$ です。張力 $S$ の次元は $[\text{N}] = [\text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2}]$。

$f_3 = \frac{3}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}}$ において、$\rho$ は $[\text{kg/m}]$ なので

$$\sqrt{\frac{S}{\rho}} = \sqrt{\frac{[\text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2}]}{[\text{kg/m}]}} = \sqrt{[\text{m}^2 \cdot \text{s}^{-2}]} = [\text{m/s}]$$

これは速さの次元で整合します。$f_3 \propto \sqrt{S}$ が次元的にも正しいことが確認できます。

Point

弦の振動数は $f_n \propto \sqrt{S}$(張力の平方根に比例)。グラフで比例関係を推定するには「横軸を変換して直線になるものを探す」のが定石。理論式 $v = \sqrt{S/\rho}$ から $f \propto \sqrt{S}$ を導けることも確認しておこう。

問5:$f_1$ と直径 $d$ の関係

直感的理解
金属線の断面積は $\pi(d/2)^2 \propto d^2$。同じ材質なら線密度(単位長さの質量)は断面積に比例するので $\rho \propto d^2$。振動数は $f_1 \propto 1/\sqrt{\rho} \propto 1/\sqrt{d^2} = 1/d$。つまり直径が2倍になると振動数は半分になる。

実験データの確認:

$d = 0.1$ mm$d = 0.2$ mm$d = 0.3$ mm
$f_1$ [Hz]29.414.99.5
$f_3$ [Hz]89.844.328.8
$f_5$ [Hz]146.573.947.4

$f_1$ と $d$ の比例関係を確認:$f_1 \cdot d$ の値を計算します。

$d$ [mm]$f_1$ [Hz]$f_1 \times d$$f_1 \times d^2$
0.129.42.940.294
0.214.92.980.596
0.39.52.850.855

$f_1 \times d$ の値がほぼ一定($\fallingdotseq 2.9$)なので、

$$f_1 \times d = \text{const} \quad \Rightarrow \quad \boxed{f_1 \propto \frac{1}{d}}$$

理論的な裏付け:同じ材質(密度 $\sigma$ [kg/m³])の金属線の線密度 $\rho$ は

$$\rho = \sigma \cdot \pi\left(\frac{d}{2}\right)^2 = \frac{\pi \sigma}{4} d^2 \propto d^2$$

基本振動数の公式に代入すると

$$f_1 = \frac{1}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}} \propto \frac{1}{\sqrt{\rho}} \propto \frac{1}{\sqrt{d^2}} = \frac{1}{d}$$
答え:④ $f_1$ は $\displaystyle\frac{1}{d}$ に比例する
補足:$f_3$ と $f_5$ でも確認

$f_n \propto 1/d$ なら、$f_3 \times d$ や $f_5 \times d$ も一定になるはずです。

$d$ [mm]$f_3 \times d$$f_5 \times d$
0.18.9814.65
0.28.8614.78
0.38.6414.22

いずれもほぼ一定であり、$f_n \propto 1/d$ が確認できます。わずかなばらつきは実験誤差によるものです。

別解:比の確認

直径の比と振動数の比を確認する方法もあります。

  • $d_{0.2}/d_{0.1} = 2$ に対し $f_1(0.1)/f_1(0.2) = 29.4/14.9 \fallingdotseq 1.97 \fallingdotseq 2$
  • $d_{0.3}/d_{0.1} = 3$ に対し $f_1(0.1)/f_1(0.3) = 29.4/9.5 \fallingdotseq 3.09 \fallingdotseq 3$

直径が $k$ 倍になると振動数が $1/k$ 倍になるので、$f_1 \propto 1/d$ です。

もし $f_1 \propto 1/d^2$ なら、直径2倍で振動数は $1/4$ になるはずですが、実際は $1/2$ なので $1/d^2$ は否定されます。

補足:弦の振動数の完全な公式

問3〜5の結果をまとめると、弦の固有振動数の完全な公式が得られます。

$$f_n = \frac{n}{2L}\sqrt{\frac{S}{\rho}}$$

ここで $\rho = \frac{\pi \sigma}{4} d^2$ を代入すると

$$f_n = \frac{n}{2L} \cdot \frac{1}{d} \sqrt{\frac{4S}{\pi \sigma}} = \frac{n}{\pi L d} \sqrt{\frac{S}{\sigma}}$$

この式から、問題文の最後にある「弦を伝わる横波の速さ、力の大きさ、線密度の関係式を推定できる」が理解できます。具体的には $v = \sqrt{S/\rho}$ という関係です。

Point

実験データから比例関係を見抜くには「$f \times d^k$ が一定になる $k$ を探す」のが効率的。$f \times d =$ const なら $f \propto 1/d$。理論的には線密度 $\rho \propto d^2$ から $f \propto 1/\sqrt{\rho} \propto 1/d$ が導かれる。共通テストでは理論と実験データの対応を問う出題パターンが定番。