第1問:小問集合(熱・力学・電気)

解法の指針

物理基礎の各分野(熱・力学・電気)から1問ずつ出題された小問集合です。いずれも基本公式の正確な適用が求められます。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 熱量の保存(スープの平衡温度)

直感的理解
20℃の器に80℃のスープを入れると、スープは冷め、器は温まる。最終的にどちらも同じ温度(平衡温度)に落ち着く。器の熱容量160 J/Kは「器全体を1℃温めるのに160 Jの熱が必要」という意味。スープは質量160 g × 比熱4.0 J/(g·K) = 640 J/K の熱容量に相当するので、器よりスープのほうが熱容量が大きく、平衡温度は80℃寄り(中間より高め)になるはず。

設定:20℃ の器(熱容量 $C_{\text{器}} = 160\;\text{J/K}$)に、80℃ のスープ 160 g(比熱 $c = 4.0\;\text{J/(g·K)}$)を入れます。蒸発の影響や外部との熱の出入りは無視します。

立式:熱量保存の法則「スープが失った熱量 = 器が得た熱量」を使います。平衡温度を $T$〔℃〕とおくと、

$$mc(80 - T) = C_{\text{器}}(T - 20)$$

数値を代入します。スープの熱容量は $mc = 160 \times 4.0 = 640\;\text{J/K}$ です。

$$640(80 - T) = 160(T - 20)$$

計算:展開して整理します。

$$51200 - 640T = 160T - 3200$$ $$51200 + 3200 = 160T + 640T$$ $$54400 = 800T$$ $$T = \frac{54400}{800} = 68\;\text{℃}$$
答え:⑤ 68℃
別解:熱容量の比を使った直感的な解法

器の熱容量 160 J/K とスープの熱容量 640 J/K の比は $1 : 4$ です。温度変化の比は熱容量の逆比 $4 : 1$ になります。

温度差は $80 - 20 = 60$℃ なので、

$$\text{器の温度上昇} = 60 \times \frac{4}{4+1} = 48\;\text{℃}$$ $$\text{平衡温度} = 20 + 48 = 68\;\text{℃}$$

スープ側からも確認:$80 - 60 \times \frac{1}{5} = 80 - 12 = 68$℃ ✓

補足:「熱容量」と「比熱×質量」の違い

器は「熱容量 160 J/K」と直接与えられています。これは器全体を1 K 温めるのに必要な熱量です。一方、スープは質量と比熱が個別に与えられているため、$mc = 160 \times 4.0 = 640\;\text{J/K}$ と計算して熱容量を求めます。

問題で「比熱容量」(単位 J/(g·K))と「熱容量」(単位 J/K)のどちらが与えられているかを見極めることが大切です。

Point

熱量保存では「高温側が失った熱量 = 低温側が得た熱量」を立式する。器のように熱容量が直接与えられている場合は $Q = C \Delta T$、スープのように質量と比熱が別々に与えられている場合は $Q = mc \Delta T$ を使い分ける。

問2 運動エネルギー(鉛直上方への運動)

直感的理解
床に静止する物体に上向きの力 $F$ を加え続けて高さ $h$ まで持ち上げる。力 $F$ がした仕事は $Fh$(上向き)、重力がした仕事は $-mgh$(下向き)。合力のした仕事がそのまま運動エネルギーになる。$F > mg$ なら物体は加速し続け、運動エネルギーは正になる。

設定:床に静止している質量 $m$ の小物体に、大きさ $F$ の一定の力を鉛直上方に加え続けます($F > mg$)。小物体が床から高さ $h$ の点 A を通過するときの運動エネルギーを求めます。空気抵抗は無視します。

立式:仕事と運動エネルギーの定理(合力のした仕事 = 運動エネルギーの変化)を使います。初速 0 なので、

$$K = W_{\text{合力}} = W_F + W_{\text{重力}}$$

力 $F$ は上向き、移動も上向きに $h$ なので:

$$W_F = Fh$$

重力 $mg$ は下向き、移動は上向きに $h$ なので:

$$W_{\text{重力}} = -mgh$$

したがって運動エネルギーは:

$$K = Fh - mgh = (F - mg)h$$
答え:④ $(F - mg)h$
別解:エネルギー保存則で考える

力 $F$ のした仕事を「外力のした仕事」として、エネルギー保存で考えることもできます。

$$W_F = \Delta K + \Delta U$$ $$Fh = K + mgh$$ $$K = Fh - mgh = (F - mg)h$$

結果は同じです。「仕事=運動エネルギーの変化+位置エネルギーの変化」とするか、「合力の仕事=運動エネルギーの変化」とするかの違いです。

補足:各選択肢の検討
  • ① $0$:$F = mg$ のとき等速になるが、$F > mg$ なので加速する。不正解。
  • ② $mgh$:重力の位置エネルギーの増加分。力 $F$ の仕事を無視している。不正解。
  • ③ $Fh$:力 $F$ のした仕事だが、重力の負の仕事を考慮していない。不正解。
  • ④ $(F - mg)h$:合力のした仕事。正解。
  • ⑤ $(F + mg)h$:合力で足し算しているが、$F$ と $mg$ は逆向きなので引き算が正しい。不正解。
  • ⑥ $\frac{1}{2}mv^2$:運動エネルギーの定義式そのもの。$F, m, g, h$ で表していないため不適。
Point

仕事の計算では力と変位の向きの関係に注意する。同じ向き → 正の仕事、逆向き → 負の仕事。合力のした仕事がそのまま運動エネルギーの変化になる(仕事−運動エネルギーの定理)。

問3 電気量と電子の数(モバイルバッテリー)

直感的理解
電流 1.0 A は「毎秒 1.0 C の電荷が流れる」ということ。160 秒間で合計 160 C の電荷が流れる。電子1個の電荷は $1.6 \times 10^{-19}$ C と極めて小さいので、160 C には膨大な数($10^{21}$ 個オーダー)の電子が含まれている。

設定:モバイルバッテリーを直流電源で 160 秒間充電します。充電中の電流を電流計で測ると 1.0 A で一定でした。このとき電流計を通過した電子の数を求めます。電子1個あたりの電気量は $e = 1.6 \times 10^{-19}$ C です。

ステップ1:電流計を通過した電気量 $Q$ を求めます。

$$Q = It = 1.0 \times 160 = 160\;\text{C}$$

ステップ2:電子の数 $N$ を求めます。電気量 $Q$ は電子 $N$ 個分の電荷なので、

$$Q = Ne$$ $$N = \frac{Q}{e} = \frac{160}{1.6 \times 10^{-19}}$$

指数計算を丁寧に行います:

$$N = \frac{1.60 \times 10^{2}}{1.6 \times 10^{-19}} = 1.0 \times 10^{2-(-19)} = 1.0 \times 10^{21}\;\text{個}$$
答え:⑥ $1.0 \times 10^{21}$ 個
補足:指数計算のコツ

$\frac{a \times 10^m}{b \times 10^n} = \frac{a}{b} \times 10^{m-n}$ を使います。

$$\frac{160}{1.6 \times 10^{-19}} = \frac{1.6 \times 10^2}{1.6 \times 10^{-19}} = \frac{1.6}{1.6} \times 10^{2 - (-19)} = 1.0 \times 10^{21}$$

$160 = 1.6 \times 10^2$ と変換して係数を揃えると、指数の引き算だけで済みます。

補足:電流の向きと電子の移動方向

電流の向き(正電荷の移動方向)と電子の移動方向はです。ただしこの問題では電子の「数」のみを問うているので、向きを考える必要はありません。電流 $I$ = 1秒あたりに通過する電荷の量(符号なし)として扱えばOKです。

Point

$Q = It$(電気量 = 電流 × 時間)→ $N = Q / e$(電子の数 = 電気量 ÷ 電子1個の電荷)の2段階。指数の計算では係数を揃えてから割ると間違いが減る。

問4 白熱電球とLEDの効率

直感的理解
白熱電球は60 W の電力を消費するが、光に変わるのはたった10%(=6 W)。残り90%は熱になってしまう。LED電球はわずか15 W で同じ明るさ(同じ光エネルギー)を出せるので、はるかに効率がよい。LED の効率 = 6 W ÷ 15 W = 40%。

設定:電球の「効率」を「消費する電力量のうち、光エネルギーとして放出される割合」と定義します。白熱電球は消費電力 60 W、効率 10%。LED電球は消費電力 15 W で、白熱電球と同じ光エネルギーを放出します。

ア(白熱電球が1時間に放出する光エネルギー):

$$P_{\text{光}} = 60\;\text{W} \times 0.10 = 6.0\;\text{W}$$

1時間点灯するので:

$$E_{\text{光}} = 6.0\;\text{W} \times 1\;\text{h} = 6.0\;\text{Wh}$$

イ(LED電球の効率):LED電球も同じ光エネルギー 6.0 Wh を1時間で放出するので、光の出力は 6.0 W です。消費電力は 15 W なので:

$$\text{効率} = \frac{P_{\text{光}}}{P_{\text{消費}}} = \frac{6.0}{15} = 0.40 = 40\;\text{%}$$
答え:① ア=6.0(Wh)、イ=40(%)
別解:比の計算で効率を求める

白熱電球とLED電球は同じ光出力なので、

$$60\;\text{W} \times 10\% = 15\;\text{W} \times x\%$$ $$x = \frac{60 \times 10}{15} = 40\;\text{%}$$

消費電力が $60/15 = 4$ 倍小さくなったので、効率は $10\% \times 4 = 40\%$ と求まります。

補足:Wh(ワット時)の単位について

1 Wh = 1 W × 1 h = 1 W × 3600 s = 3600 J です。この問題では「1時間点灯したときの光エネルギーは何 Wh か」と聞いているので、W に時間(h)を掛けるだけです。

J(ジュール)に変換すると $6.0\;\text{Wh} = 6.0 \times 3600 = 21600\;\text{J}$ ですが、選択肢が Wh 単位なので変換不要です。

Point

エネルギー変換効率 = 有用な出力 ÷ 総入力。白熱電球は90%が熱、LED電球は60%が熱。同じ明るさなのに消費電力が $60 → 15$ W と $\frac{1}{4}$ になるのは、効率が $10% → 40%$ と4倍になったため。