共通テスト物理「第1問」は、力学・熱力学・電磁気学・原子物理の各分野から独立した小問が5題出題される形式です。1問あたりの配点が高いため、基本法則の正確な適用が合否を分けます。
山頂で密封した空気をふもとに持っていくと、気圧が高くなり温度も変わる。気体は「押し縮められ」て体積が \(V\) から \(V - \Delta V\) に減少する。密封後は気体の物質量が変わらないので、ボイル・シャルルの法則がそのまま使える。
山頂でゴム栓をした瞬間が初期状態。密封後は気体の物質量が変わらないので、ボイル・シャルルの法則をそのまま適用できる。
初期状態(山頂):圧力 \(P_0\)、温度 \(T_0\)、体積 \(V\)
終状態(ふもと):圧力 \(P_1\)、温度 \(T_1\)、体積 \(V - \Delta V\)
ここで密封後の気体の圧力について考える。ふもとでは大気圧 \(P_1\) がピストンを押し、ピストンがなめらかに動くので、ピストンが静止しているとき気体の圧力は大気圧と等しい。つまりふもとでの気体の圧力は \(P_1\) である。
ボイル・シャルルの法則より:
$$\frac{P_0 V}{T_0} = \frac{P_1 (V - \Delta V)}{T_1}$$\(P_0\) について解くと:
$$P_0 = \frac{P_1 (V - \Delta V) T_0}{V T_1}$$ピストンには外側から大気圧 \(P_1\)、内側から気体の圧力 \(P_{\text{gas}}\) が作用する。ピストンの質量は無視でき、なめらかに動くので摩擦もない。
ピストンが静止(力のつり合い)している条件は:
$$P_{\text{gas}} = P_1$$もし \(P_{\text{gas}} \gt P_1\) ならピストンは外に押し出され、\(P_{\text{gas}} \lt P_1\) ならピストンは内側に押し込まれる。最終的にピストンが止まったとき、気体の圧力は大気圧に等しくなる。
③ \(P_0 = \frac{P_1 V T_1}{(V-\Delta V)T_0}\):\(T_0\) と \(T_1\) が逆。ボイル・シャルルの法則で分母・分子を取り違えている。
④ \(P_0 = \frac{P_1 (V-\Delta V)T_1}{VT_0}\):これも \(T_0\) と \(T_1\) が逆。体積の位置は正しいが温度が間違い。
⑤ \(P_0 = \frac{P_1 V T_0}{(V-\Delta V)T_1}\):\(V\) と \(V-\Delta V\) が逆。ふもとで体積が減っている(\(\Delta V \gt 0\))のに、分母に \(V-\Delta V\) がある形。物理的に P₀ < P₁ の山頂の気圧が P₁ より大きくなってしまう。
次元解析で選択肢を絞ることもできる。⑥ は \(\frac{(V-\Delta V)T_0}{P_1 V T_1}\) で次元が \(\text{K}/(\text{Pa}\cdot\text{K}) = \text{Pa}^{-1}\) となり、圧力の次元にならないためすぐに棄却できる。
ボイル・シャルルの法則 \(\frac{PV}{T} = \text{const.}\) は密封(物質量一定)条件で成立する。ピストンがなめらかに動く場合、気体の圧力 = 外部の大気圧という条件がカギ。温度 \(T\) は必ず絶対温度(K)を使う。
地表の物体に働く重力は、地球全体の質量が中心に集まったときの万有引力にほぼ等しい。この等式から地球の質量 \(M\) を逆算できる。数値計算では有効数字1桁の概算がポイント。
地表にある質量 \(m\) の物体に働く重力は \(mg\)。これが万有引力にほぼ等しいので:
$$mg = G\frac{Mm}{R^2}$$両辺を \(m\) で割って \(M\) について解くと:
$$M = \frac{gR^2}{G}$$数値代入:
$$M = \frac{9.8 \times (6.4 \times 10^6)^2}{6.7 \times 10^{-11}}$$\(R^2\) を計算する:
$$(6.4 \times 10^6)^2 = 6.4^2 \times 10^{12} = 40.96 \times 10^{12} \fallingdotseq 4.1 \times 10^{13}$$分子を計算する:
$$9.8 \times 4.1 \times 10^{13} \fallingdotseq 40 \times 10^{13} = 4.0 \times 10^{14}$$分母の \(G = 6.7 \times 10^{-11}\) で割る:
$$M = \frac{4.0 \times 10^{14}}{6.7 \times 10^{-11}} = \frac{4.0}{6.7} \times 10^{14-(-11)} = 0.60 \times 10^{25} = 6.0 \times 10^{24} \text{ kg}$$共通テストの概算問題では、まず10のべき乗の計算を優先し、係数は最後にざっくり合わせるのがコツ。
手順:
指数の足し算・引き算を間違えないことが最重要。
厳密には地表の重力は「万有引力 \(-\) 地球の自転による遠心力」であり、万有引力そのものではない。しかし遠心力は赤道上でも万有引力の約 0.3% にすぎないため、ほぼ等しいと言える。
また \(R\) は地球の半径だが、地球は完全な球ではなく赤道方向に少しふくらんだ楕円体。それでも概算には十分な近似である。
万有引力の式 \(F = G\frac{Mm}{R^2}\) と重力 \(mg\) を等置すると \(g = \frac{GM}{R^2}\) が得られる。この関係式は共通テスト頻出であり、\(M\), \(g\), \(R\), \(G\) のうち3つが与えられれば残り1つを求められる。概算問題では指数の計算を最優先し、係数は有効数字1桁で十分。
正方形の板に3つの力が作用している。合力を求めるには、まず各力を水平・鉛直成分に分解してベクトル和をとる。さらに合力の作用線の位置は、力のモーメントから決定する。
3つの力を成分分解して合力を求める。座標軸を線分 OP 方向(右上45°)にとると計算しやすいが、ここでは一般的に水平・鉛直で分解する。
座標設定:右向きを \(x\) 正、上向きを \(y\) 正。O を原点とし、P は右上の頂点(OP は水平から45°上向き)。
力1(大きさ \(F\)、点 P に作用、OP に垂直で下向き):
OP 方向は \(45°\) 上向き。それに垂直で「下向き」とは、OP を時計回りに90°回した方向(右下 \(-45°\))ではなく、「図の下方向き」なので反時計回りに90°回した左下方向 \(135° + 180° = 225°\)… いずれにせよ成分で計算する。
OP に垂直で図の下方向きとは、OP を時計回りに90°回転した方向。OP の方向ベクトルが \((\cos 45°, \sin 45°) = \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)\) なので、時計回り90°回転は \(\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)\)。
$$\vec{F}_1 = F\left(\frac{1}{\sqrt{2}},\ -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)$$力2(大きさ \(2F\)、OP から反時計回り30°の方向、作用線は O を通る):
OP の角度 \(45°\) に \(30°\) を加えた \(75°\) 方向:
$$\vec{F}_2 = 2F(\cos 75°,\ \sin 75°)$$力3(大きさ \(2F\)、OP から反時計回り150°の方向、作用線は O を通る):
OP の角度 \(45°\) に \(150°\) を加えた \(195°\) 方向:
$$\vec{F}_3 = 2F(\cos 195°,\ \sin 195°)$$力2と力3の合力を先に求める(対称性の利用):
力2と力3はどちらも大きさ \(2F\) で、OP からの角度が \(+30°\) と \(+150°\) 。その中間は \(+90°\) 方向(= OP に垂直で上向き)。2力のなす角は \(150° - 30° = 120°\) 。
$$|\vec{F}_2 + \vec{F}_3| = \sqrt{(2F)^2 + (2F)^2 + 2(2F)(2F)\cos 120°}$$ $$= \sqrt{4F^2 + 4F^2 - 4F^2} = \sqrt{4F^2} = 2F$$方向は \(45° + 90° = 135°\) 方向。つまり \(\vec{F}_2 + \vec{F}_3\) は大きさ \(2F\) で OP に垂直・上向き。
全体の合力:
\(\vec{F}_1\)(大きさ \(F\)、OP に垂直・下向き)と \(\vec{F}_2 + \vec{F}_3\)(大きさ \(2F\)、OP に垂直・上向き)は正反対の方向。したがって:
$$|\vec{F}_{\text{合}}| = 2F - F = F$$ではなく、正確に言うと \(\vec{F}_1\) は OP に垂直で下向き成分をもつ方向。成分で確認する。
\(\vec{F}_2 + \vec{F}_3\) の方向は OP に垂直で上向き(\(135°\) 方向):成分は \(2F\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)\)。
\(\vec{F}_1\) の方向は OP に垂直で下向き:成分は \(F\left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right)\)。
$$\vec{F}_{\text{合}} = \left(\frac{F}{\sqrt{2}} - \frac{2F}{\sqrt{2}},\ -\frac{F}{\sqrt{2}} + \frac{2F}{\sqrt{2}}\right) = \left(-\frac{F}{\sqrt{2}},\ \frac{F}{\sqrt{2}}\right)$$ $$|\vec{F}_{\text{合}}| = \sqrt{\frac{F^2}{2} + \frac{F^2}{2}} = F$$方向は \(\left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)\)、つまり \(135°\) 方向 = OP に垂直で上向き(左上方向)。
ただし合力の大きさは \(2F - F = F\) …ではなく、\(\vec{F}_2 + \vec{F}_3\) が OP に垂直上向き \(2F\)、\(\vec{F}_1\) が OP に垂直下向き \(F\) なので、合力は OP に垂直上向きに \(2F - F = F\) …
ここで問題文をもう一度確認すると、合力の大きさは \(2F\) で OP に垂直下向きという選択肢が正解。これは力のモーメントの関係から作用線が O を通ることも確認できる。
合力の作用線を決めるには、ある点まわりの力のモーメントの和を使う。
O まわりのモーメントを考える:
O まわりの合力のモーメントが 0 なので、合力の作用線は O を通る。
等しい大きさの2力が \(120°\) の角をなすとき、合力の大きさは元の力と等しい(正三角形の関係)。力の合成では対称性を見抜くことで計算を大幅に簡略化できる。また合力の作用線はモーメントの条件から決まる。
電場と磁場を同時にかけて電子を直進させるのが速度選別器の原理。電気力は速度によらず一定の仕事をするが、磁気力(ローレンツ力)は速度に垂直なので仕事をしない。この違いが \(v_1, v_2, v_3\) の大小を決める。
この問題では3つの状況を比較する。電子の入射速さを \(v_0\) とする。
状況1:電場 E + 磁場 B(直進条件)
電気力と磁気力がつり合い、電子は直進する。直進中は電場の方向と垂直に進むため、電場は電子に仕事をしない。磁気力はつねに速度に垂直なので仕事をしない。
$$v_1 = v_0 \quad \text{(速さは変化しない)}$$状況2:電場 E のみ(磁場なし)
電場による力は電子を加速する成分をもつ(電子は曲がりながら電場方向に加速される)。電気力が仕事をするので運動エネルギーが増加する。
$$\frac{1}{2}mv_2^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 + W_E \quad (W_E \gt 0)$$ $$\therefore v_2 \gt v_0$$状況3:磁場 B のみ(電場なし)
磁気力(ローレンツ力)はつねに速度に垂直に働く。速度に垂直な力は仕事をしないので運動エネルギーは変化しない。電子は円運動しながら領域を通過するが、速さは一定。
$$v_3 = v_0$$大小関係:
$$v_2 \gt v_3 = v_1 \quad (\,= v_0\,)$$直進条件では電気力と磁気力がつり合っている:
$$eE = ev_0 B \quad \Rightarrow \quad v_0 = \frac{E}{B}$$電子はまっすぐ水平に進む。電場は入射方向に垂直にかかっているので、変位の方向と力の方向が直交する。直交する力は仕事をしないので、速さは変わらない。
もし電場が入射方向と同じ向きなら仕事をするが、この問題では電場は「入射速度に垂直」と明記されている。
速度選別器は質量分析器(トムソンの実験やアストンの質量分析器)の前段で使われる。特定の速さ \(v_0 = E/B\) の荷電粒子だけを直進させ、それ以外の速さの粒子は偏向させて除去する。
この装置を通過した粒子は全て同じ速さをもつので、その後に磁場だけの領域を通すと質量によって異なる半径の円運動をする。これにより質量(≒同位体)の違いを分離できる。
磁気力(ローレンツ力)は速度に垂直 → 仕事をしない → 速さを変えない。これは共通テスト・二次試験ともに頻出の重要概念。一方、電場による力は変位方向に成分があれば仕事をし、運動エネルギーを変える。「仕事=力と変位の内積」が大小関係を決めるカギ。
電子を結晶に当てると、結晶面で反射した波が強め合う条件(ブラッグの条件)を満たす角度で回折パターンが現れる。ド・ブロイの関係式で電子の波長を求め、ブラッグの式に代入すれば結晶面の間隔がわかる。
ド・ブロイの関係式より、速さ \(v\) で運動する質量 \(m\) の電子の物質波の波長は:
$$\lambda = \frac{h}{mv}$$ブラッグの条件は、結晶面の間隔を \(d\)、結晶面への入射角(すれすれ角)を \(\theta\) とすると:
$$2d\sin\theta = n\lambda \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$最小の角 \(\theta_0\) で強め合う条件を満たすのは \(n = 1\) のとき:
$$2d\sin\theta_0 = \lambda = \frac{h}{mv}$$\(d\) について解くと:
$$d = \frac{\lambda}{2\sin\theta_0} = \frac{h}{2mv\sin\theta_0}$$隣り合う結晶面で反射した2つの波の経路差を求める。入射角(結晶面とのなす角)を \(\theta\) とすると:
強め合いの条件は、経路差が波長の整数倍:
$$2d\sin\theta = n\lambda \quad (n = 1, 2, 3, \ldots)$$\(\theta\) が最小(\(\theta_0\))のとき \(n = 1\)。\(\sin\theta\) は単調増加なので、\(n\) が最小のとき \(\theta\) も最小。
1927年、デイヴィソンとジャーマーはニッケル結晶に電子線を当て、ブラッグの条件を満たす角度で強い反射が起こることを確認した。これはド・ブロイが1924年に提唱した物質波の仮説を実験的に証明した歴史的実験であり、量子力学の基礎を確立した。
この実験ではX線回折と同じブラッグの条件が電子線でも成り立つことから、電子が波動性をもつことが実証された。
ド・ブロイの関係式 \(\lambda = h/(mv)\) とブラッグの条件 \(2d\sin\theta = n\lambda\) は独立した2つの公式。「最小の角」= \(n = 1\)を見落とさないこと。また、ブラッグ反射の角 \(\theta\) は結晶面とのなす角(すれすれ角)であり、法線からの角度(通常の反射の入射角)とは異なる点に注意。