第2問:単振り子の周期を精度よく測定する探究活動(配点25)

解法の指針

共通テスト物理「第2問」は、単振り子の周期測定を題材にした探究活動(実験考察)の大問です。前半(問1・問2)は単振り子の力学と単振動の公式、後半(問3〜問5)は実験の誤差・精度に関する思考力が問われます。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — 小球にはたらく運動方向の力(復元力)

直感的理解

振り子を引いて離すと、重力の「円弧に沿った成分」が小球を最下点に引き戻す。この成分が復元力。糸の張力は糸に沿った方向(円の法線方向)なので運動方向の力には寄与しない。振れ角が小さいとき \(\sin\theta \fallingdotseq \theta\) とすると、復元力は \(\theta\) に比例する形になり、単振動の条件が満たされる。

小球には重力 \(mg\)(鉛直下向き)と糸の張力 \(T\)(糸に沿って支点向き)が作用する。運動方向(円弧の接線方向)の力を考える。

糸の張力は糸に沿った方向、つまり円の法線方向に働く。接線方向の成分は \(0\) なので、運動方向の力には寄与しない。

重力の接線成分を求める。糸が鉛直と角度 \(\theta\) をなすとき、重力 \(mg\) の接線方向成分は:

$$F = -mg\sin\theta$$

マイナス符号は「振れ角 \(\theta\) が正のとき、力が負の向き(最下点に向かう向き)に働く」ことを意味する。これが復元力である。

ここで問題文の条件「\(\sin\theta \fallingdotseq \theta\)」(小角近似)を適用すると:

$$F = -mg\sin\theta \fallingdotseq -mg\theta$$
答え:② \(F = -mg\theta\)
補足:他の選択肢が誤りである理由

① \(F = -mg\):角度 \(\theta\) に依存しない定数力。これでは「振れ角が大きいほど強い力で引き戻される」性質が表現できない。等加速度運動であり単振動にならない。

③ \(F = -mg\frac{\theta}{\theta_0}\):振幅 \(\theta_0\) で割っている。復元力に振幅が入る物理的な理由がない。力は「いま \(\theta\) がどこにあるか」だけで決まる。

④ \(F = -\frac{1}{2}mg\theta^2\):\(\theta^2\) に比例する力はつねに負(片側にしか押さない)。復元力にならない。次元的にも \(\theta^2\) は無次元の二乗で形が不自然。

⑥ \(F = -mgL\theta\):次元を確認すると \([mg] = \text{N}\)、\([L\theta] = \text{m}\) なので \(F\) の次元が \(\text{N}\cdot\text{m}\)(力のモーメント)になってしまい力ではない。

別解:次元解析による選択肢の絞り込み

\(F\) は力なので次元は \([\text{N}] = [\text{kg}\cdot\text{m/s}^2]\) でなければならない。

\(\theta\) は無次元(ラジアン)なので、\(mg\theta\) の次元は \(\text{N} \times 1 = \text{N}\)。✓

\(mgL\theta\) の次元は \(\text{N} \times \text{m} \times 1 = \text{N}\cdot\text{m}\)。✗(力のモーメントの次元)

この時点で ⑥ は除外でき、次元が合うのは ①②③④⑤ の5つ。さらに物理的考察で ② に絞り込む。

Point

単振り子の復元力は\(F = -mg\sin\theta\)。小角近似 \(\sin\theta \fallingdotseq \theta\) で \(F \fallingdotseq -mg\theta\) となり、変位に比例する復元力が得られる。これが単振動の条件 \(F = -k\,x\)(\(k\) は定数)に対応する。張力は法線方向なので運動方向の力には入らないことを忘れないこと。

問2 — 変位 x の時間変化と角振動数 ω

直感的理解

単振動の変位は \(\sin\) または \(\cos\) で表される。どちらを使うかは \(t = 0\) のときの位置と速度の向きで決まる。問題では \(t = 0\) に「原点を負から正へ通過」なので、\(x(0) = 0\) かつ \(v(0) \gt 0\)。これは \(\sin\) 型。角振動数は復元力の比例定数から自動的に決まる。

問1 で復元力が \(F = -mg\theta\) とわかった。円弧に沿った変位を \(x = L\theta\) とすると、\(\theta = x/L\) なので:

$$F = -mg \cdot \frac{x}{L} = -\frac{mg}{L}\,x$$

これは単振動の復元力 \(F = -Kx\) の形であり、「ばね定数」に相当するのは \(K = mg/L\)。

角振動数 \(\omega\) を求める:

単振動で \(F = -Kx\) のとき、角振動数は:

$$\omega = \sqrt{\frac{K}{m}} = \sqrt{\frac{mg/L}{m}} = \sqrt{\frac{g}{L}}$$

変位 \(x(t)\) の式を決定する [ア]:

単振動の一般解は \(x = A\sin(\omega t + \varphi)\)。初期条件を適用する:

\(x(0) = A\sin\varphi = 0\) より \(\varphi = 0\) または \(\pi\)。

\(v(0) = A\omega\cos\varphi\)。\(v(0) \gt 0\) で \(A\omega \gt 0\) なので \(\cos\varphi \gt 0\)、つまり \(\varphi = 0\)。

振幅 \(A = L\theta_0\) とあわせて:

$$x = L\theta_0 \sin\omega t \qquad \text{where} \quad \omega = \sqrt{\frac{g}{L}}$$
答え:[ア] \(x = L\theta_0 \sin\omega t\) [イ] \(\omega = \sqrt{g/L}\)
補足:sin 型と cos 型の使い分け

\(\sin\) 型と \(\cos\) 型の違いは、\(t = 0\) の位置にある。

\(t = 0\) の状態 使う関数
正の端(\(x = A\))にいる \(\cos\) \(x = A\cos\omega t\)
原点を正の向きに通過 \(\sin\) \(x = A\sin\omega t\)
負の端(\(x = -A\))にいる \(-\cos\) \(x = -A\cos\omega t\)
原点を負の向きに通過 \(-\sin\) \(x = -A\sin\omega t\)

この対応を覚えておけば、初期位相の計算を省略できる。

別解:周期の公式から角振動数を導く

単振り子の周期の公式 \(T = 2\pi\sqrt{L/g}\) を知っていれば、角振動数は直ちに:

$$\omega = \frac{2\pi}{T} = \frac{2\pi}{2\pi\sqrt{L/g}} = \sqrt{\frac{g}{L}}$$

ただし共通テストでは「なぜこの式になるか」を問われるので、復元力 → 運動方程式 → 角振動数の導出過程を理解しておくべき。

Point

単振動の式を決めるには (1) 角振動数 \(\omega\)(2) 初期位相 \(\varphi\) の2つが必要。\(\omega\) は復元力の比例定数と質量から決まり(系の固有振動数)、\(\varphi\) は初期条件で決まる。「\(t = 0\) で原点を正に通過 → \(\sin\) 型」は頻出パターンなので即答できるようにしたい。

問3 — 測定誤差と往復回数 N の効果

直感的理解

ストップウォッチで1往復だけ測ると、0.2秒ずれただけで大きな誤差になる。10往復の合計を測って10で割れば、0.2秒のずれは「0.02秒のずれ」に圧縮される。\(N\) を大きくするほど、1回の読み取りミスの影響が \(1/N\) に薄まる。これが「回数を増やして精度を上げる」実験技法の本質。

\(N\) 往復する正確な時間を \(t_N^{\text{true}}\) とすると、実際の測定値は読み取り誤差 \(\Delta t\) だけずれている:

$$t_N^{\text{measured}} = t_N^{\text{true}} + \Delta t$$

これを \(N\) で割って周期を求めると:

$$T_N = \frac{t_N^{\text{measured}}}{N} = \frac{t_N^{\text{true}} + \Delta t}{N} = \frac{t_N^{\text{true}}}{N} + \frac{\Delta t}{N} = T_{\text{true}} + \frac{\Delta t}{N}$$

ここで \(\frac{t_N^{\text{true}}}{N} = T_{\text{true}}\)(正しい周期)であるから:

[ウ]:周期の誤差は \(\displaystyle\frac{\Delta t}{N}\)

[エ]:\(\Delta t \gt 0\) のとき正しい値より大きく見積もられる(時間が余分に測定されるため)

[オ]:\(N\) が大きいほど \(\displaystyle\frac{\Delta t}{N}\) は小さくなる → 誤差は小さくなる

答え:[ウ] \(\Delta t/N\) [エ] 大きく [オ] 小さく
補足:なぜ「大きく」見積もられるのか

問題文では「\(\Delta t\) だけ多く測定された」(正確な値より長い時間で止めた)場合を考えている。

\(t_N^{\text{measured}} = t_N^{\text{true}} + \Delta t\) で \(\Delta t \gt 0\) なので、割り算した後の \(T_N\) も \(T_{\text{true}}\) より大きい。つまり周期を過大評価する。

逆に \(\Delta t \lt 0\)(早く止めた)なら周期は過小評価される。いずれの場合も誤差の絶対値は \(|\Delta t|/N\) であり、\(N\) が大きいほど縮小する。

補足:系統誤差と偶然誤差の違い

この問題で扱っている誤差は「1回の読み取りで必ず同じ量だけずれる」タイプ。これは系統誤差(systematic error)に分類される。

系統誤差:毎回同じ方向にずれる。\(N\) を増やすと \(1/N\) に縮小できる。例:反応時間のずれ。

偶然誤差(random error):毎回ランダムにずれる。\(N\) 回の測定の平均をとると \(1/\sqrt{N}\) に縮小できる。

この問題では \(\Delta t\) が一定値(系統誤差)として扱われているため、\(1/N\) で割り算するだけで誤差が縮小するのである。

Point

「\(N\) 往復を測って \(N\) で割る」は、1回の読み取り誤差を \(1/N\) に圧縮するテクニック。共通テストの実験考察問題では「なぜ多数回測定するのか」の理由を定量的に説明させる出題が定番。\(N\) を \(2\) 倍にすれば誤差は \(1/2\) に、\(10\) 倍にすれば \(1/10\) になることを数式で示せるようにしておこう。

問4 — オシロスコープの波形から周期を読み取る

直感的理解

レーザー光を振り子の最下点付近に当て、小球が光を遮るたびにセンサーが反応してオシロスコープにパルスが表示される。振り子は1往復で最下点を 2回 通過するので、隣接する2つのパルスの間隔は半周期。周期は「パルス1つおき」の間隔に等しい。ただし、問題の図の矢印が「周期と一致する部分」を示すのだから、等間隔の隣接パルスのどの組を選ぶかが問われる。

実験装置の仕組みを整理する:

  1. レーザー光を振り子の最下点付近で水平に照射する
  2. 小球が最下点を通過するとき、レーザー光を遮る
  3. 光センサーがレーザーの遮断を検知し、オシロスコープにパルス信号を送る

重要な考察:振り子は1往復で最下点を 2回 通過する(行きと帰り)。したがって:

問題の図(オシロスコープ画面)では等間隔のパルスが並んでいる。「周期と一致する」のは隣接パルスではなく、1つおきのパルスの間隔である。

問題の選択肢では、隣接パルス間の間隔を示す矢印が「周期」と一致するものを選ぶか、1つおきの間隔かを見分ける必要がある。

答え:隣接パルスの間隔(= \(T/2\))ではなく、パルス1つおきの間隔が周期 \(T\) に対応する矢印を選ぶ。
オシロスコープの TIME/DIV の読み取りから具体的な周期を算出する。
補足:パルスの間隔が等間隔にならない場合

理論的には「行き」と「帰り」で最下点を通過する時間間隔は等しい(振り子の運動は左右対称)。しかし実際にはレーザーの位置が完全に最下点と一致しないと、行きと帰りで通過時刻がわずかにずれて2種類の間隔が交互に現れる。

正確な実験では、レーザーの高さを精密に調整して最下点に合わせるか、パルスを「2つおき」で読んで1周期を求める。後者の方法なら、レーザーの位置が多少ずれても周期は正確に測定できる。

補足:TIME/DIV の読み方とパルス間隔の算出

オシロスコープの TIME/DIV は「画面のマス目1つ分が何秒に相当するか」を表す。

例えば TIME/DIV = 100 ms で、隣接パルスの間隔がマス目 5 つ分なら:

$$\frac{T}{2} = 5 \times 100 \text{ ms} = 500 \text{ ms} = 0.500 \text{ s}$$ $$T = 2 \times 0.500 = 1.000 \text{ s}$$

この方法はストップウォッチより精度が高い。TIME/DIV の精度とパルスの読み取り精度で有効数字が決まる。

Point

振り子が1往復すると最下点を2回通過する。レーザー+光センサーで得られるパルスの間隔は半周期 \(T/2\)であり、周期そのものではない。オシロスコープの波形を読むときは 「パルス何個分が何目盛りか」を数え、TIME/DIV を掛けて時間に変換する。ストップウォッチの手動計測に比べ、この方法は反応時間の誤差がないため精度が格段に高い。

問5 — 不確かさと有効数字

直感的理解

測定値には必ず「不確かさ」がある。不確かさは「この桁までは信頼できるが、次の桁は怪しい」という情報を与える。有効数字はその「信頼できる桁数」を表し、不確かさの大きさで有効数字の桁数が決まる。不確かさが 0.001 s なら、小数第3位まで意味があるので有効数字4桁になる。

オシロスコープによる精密測定で、周期が \(T = 1.006\) s、不確かさが \(\pm 0.002\) s と得られたとする。

有効数字の決め方:

不確かさが \(0.002\) s ということは、小数第3位(0.001 の位)まで測定に意味がある。したがって \(1.006\) の4桁すべてが有効であり、有効数字4桁で表記する。

不確かさとの整合性チェック:

答え:\(T = 1.006\) s(有効数字4桁)
不確かさ \(\pm 0.002\) s に対応し、小数第3位まで有効。
補足:有効数字と不確かさの関係の一般則

測定値の最後の有効桁不確かさの位は同じ桁に揃える。

不確かさ 意味のある最後の桁 表記例 有効数字
\(\pm 0.1\) s 小数第1位 \(1.0 \pm 0.1\) s 2桁
\(\pm 0.01\) s 小数第2位 \(1.01 \pm 0.01\) s 3桁
\(\pm 0.002\) s 小数第3位 \(1.006 \pm 0.002\) s 4桁
補足:ストップウォッチとオシロスコープの精度比較

この問題全体を通して、2つの測定法の精度を比較できる。

ストップウォッチ法(問3):

  • 人間の反応時間 \(\Delta t \fallingdotseq 0.2\)〜\(0.3\) s が誤差の主因
  • \(N = 10\) 往復測定で \(\Delta t / N = 0.02\)〜\(0.03\) s → 有効数字2桁程度
  • \(N = 50\) にしても \(0.004\)〜\(0.006\) s → 有効数字3桁が限界

オシロスコープ法(問4〜5):

  • レーザー遮断の検知は \(\mu\)s オーダーの精度
  • TIME/DIV の読み取り精度で \(\pm 0.001\)〜\(0.002\) s 程度 → 有効数字4桁
  • 人間の反応時間が入らないため、原理的に高精度

この「精度の段階的向上」が、第2問全体のストーリーである。

Point

有効数字の桁数は不確かさの位で決まる。不確かさが小数第 \(n\) 位にあるなら、測定値も小数第 \(n\) 位まで書く。「とりあえず電卓の表示をそのまま書く」のは物理的に無意味であり、不確かさの範囲内でしか測定値は信頼できない。共通テストでは「なぜその桁で丸めるのか」の定量的理由を問うことがあるので、有効数字と不確かさの関係を数値で説明できるようにしておこう。