第4問:電磁気 — 電磁誘導と RC 回路(配点25)

解法の指針

一様な磁場中を導体棒がレール上を滑る電磁誘導と、誘導起電力を用いた RC 回路の充電を扱う複合問題です。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1:誘導起電力の向きと大きさ

直感的理解
磁場中を導体棒が動くと、棒内の自由電子がローレンツ力を受けて片側に偏る。これが起電力の源。棒の長さ $L$、速さ $v$、磁束密度 $B$ から $V_0 = BLv$ で計算できる。向きはフレミングの右手の法則で決まる。

ファラデーの法則から:磁束密度 $B$ の一様磁場中(紙面裏向き)で、長さ $L$ の導体棒が速度 $v$ で右に動くとき、磁束 $\Phi$ の変化率は

$$\frac{d\Phi}{dt} = BL\frac{dx}{dt} = BLv$$

誘導起電力の大きさ:

$$V_0 = BLv$$

向きの判定:レンツの法則より、磁束が増加する向きに対して打ち消す方向の誘導電流が流れます。磁場が紙面裏向き(手前から奥)で回路面積が増加するので、磁束を減らす=紙面手前向きの磁場を作る方向、すなわち反時計回りの電流。導体棒には a → b の向きの起電力が生じます。

答え: a → b 向きに $V_0 = BLv$
別解:ローレンツ力から考える

導体棒内の正電荷 $+q$ が速度 $v$(右向き)で磁場 $B$(紙面裏向き)中を動くとき、ローレンツ力は

$$\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}$$

右手の法則で、$\vec{v}$(右)× $\vec{B}$(奥)= 上向き(a の方向)。したがって正電荷は a 側に押され、起電力は a → b 方向(外部回路では b → a に電流が流れる)。

1つの電荷が棒の端から端まで(距離 $L$)移動するときにされる仕事は $W = qvBL$。起電力は単位電荷あたりの仕事なので $V_0 = vBL = BLv$。

具体例:数値で確認

例えば B = 0.50 T、L = 0.40 m、v = 2.0 m/s のとき、起電力は V₀ = 0.50 × 0.40 × 2.0 = 0.40 V です。抵抗 R = 2.0 Ω なら電流は I = 0.40 ÷ 2.0 = 0.20 A となります。

Point

誘導起電力 $V_0 = BLv$ は「面積の変化率 × 磁束密度」と同じ。ファラデーの法則(磁束変化)とローレンツ力(力の視点)の2つのアプローチがあるが、同じ結果を与える。向きの判定はレンツの法則(磁束変化を妨げる向き)が確実。

問2:回路に流れる電流

直感的理解
導体棒は「動く電池」のようなもの。起電力 $V_0 = BLv$ の電池が抵抗 $R$ に接続された単純な回路と同じ。オームの法則 $I = V_0/R$ で電流が求まる。導体棒自身の抵抗が無視できるなら、$R$ のみが回路の抵抗。

等価回路:導体棒の起電力 $V_0 = BLv$ を電池とみなすと、抵抗 $R$ のみの閉回路になります。

オームの法則:

$$I = \frac{V_0}{R} = \frac{BLv}{R}$$

電流の向きは問1で求めた起電力の向き(a → b)に対応し、外部回路(抵抗側)では b → a → 上レール → 下レールの方向に流れます。

答え:① $\displaystyle I = \frac{BLv}{R}$
補足:導体棒に内部抵抗がある場合

導体棒の抵抗を $r$ とすると、回路の全抵抗は $R + r$ となり

$$I = \frac{BLv}{R + r}$$

本問では導体棒の抵抗は無視できるため $r = 0$ として $I = BLv/R$。実際の問題では「導体棒の抵抗は無視できる」という条件を見落とさないこと。

Point

電磁誘導の回路は「動く導体棒=電池」と等価。回路全体の抵抗を正しく求めてオームの法則を適用する。導体棒の内部抵抗が指定されていなければゼロとして扱う。

問3:等速運動に必要な外力

直感的理解
電流が流れる導体棒は磁場から力(アンペール力)を受ける。レンツの法則から、この力は棒の運動を妨げる向き(左向き)になる。等速運動を維持するには、この電磁力と釣り合うだけの外力を右向きに加え続ける必要がある。

導体棒に働くアンペール力:電流 $I$ が流れる長さ $L$ の導体棒が磁束密度 $B$ の磁場中で受ける力は

$$F_{\text{em}} = BIL = B \cdot \frac{BLv}{R} \cdot L = \frac{B^2L^2v}{R}$$

レンツの法則より、この力は運動を妨げる向き(左向き)です。

等速運動の条件:加速度ゼロなので力のつり合いより

$$F = F_{\text{em}} = \frac{B^2L^2v}{R}$$

エネルギーの関係:外力がする仕事率(パワー)は

$$P = Fv = \frac{B^2L^2v^2}{R} = \frac{V_0^2}{R} = I^2R$$

これは抵抗 $R$ で消費されるジュール熱に一致。外力の仕事がすべてジュール熱に変換されることが確認できます。

答え:① $\displaystyle F = \frac{B^2L^2v}{R}$
補足:エネルギー収支の確認

等速運動で運動エネルギーは変化しないので、外力がする仕事はすべて抵抗で消費されます。

  • 外力の仕事率:$P_{\text{外}} = Fv = \frac{B^2L^2v^2}{R}$
  • 抵抗の消費電力:$P_R = I^2R = \left(\frac{BLv}{R}\right)^2 R = \frac{B^2L^2v^2}{R}$

$P_{\text{外}} = P_R$ が成立し、エネルギー保存則が確認できます。

Point

「等速運動を維持する外力」=「電磁力(制動力)に等しい力」。$F = BIL$ に $I = BLv/R$ を代入すると $F = B^2L^2v/R$ となる。この式は $v$ に比例するので、速ければ速いほど大きな外力が必要。エネルギーの流れ:外力の仕事 → 電気エネルギー → ジュール熱。

問4:RC 回路の充電 — 電気量の時間変化

直感的理解
抵抗 $R$ を含む回路にコンデンサー $C$ を追加すると、誘導起電力 $V_0$ で充電が始まる。最初は電流が大きく急速に充電されるが、コンデンサーの電圧が $V_0$ に近づくにつれて電流は弱まり、充電速度も遅くなる。これが「指数関数的に飽和する」パターン。

RC 回路の充電方程式:起電力 $V_0$ の電源に直列に抵抗 $R$ とコンデンサー $C$ が接続されたとき、キルヒホッフの法則より

$$V_0 = RI + \frac{Q}{C}$$

$I = \frac{dQ}{dt}$ を代入して微分方程式を解くと

$$Q(t) = CV_0\left(1 - e^{-t/(RC)}\right)$$

グラフの特徴:

答え:② 時刻 $0$ から指数関数的に増加し $CV_0$ に近づく
別解:微分方程式の解法過程

$V_0 = R\frac{dQ}{dt} + \frac{Q}{C}$ を変形すると

$$\frac{dQ}{dt} = \frac{V_0}{R} - \frac{Q}{RC} = \frac{CV_0 - Q}{RC}$$

変数分離して積分:

$$\int_0^Q \frac{dQ'}{CV_0 - Q'} = \int_0^t \frac{dt'}{RC}$$ $$-\ln\left(\frac{CV_0 - Q}{CV_0}\right) = \frac{t}{RC}$$ $$Q = CV_0\left(1 - e^{-t/(RC)}\right)$$

電流は $I = \frac{dQ}{dt} = \frac{V_0}{R}e^{-t/(RC)}$ で、時間とともに指数関数的に減少します。

補足:時定数 τ = RC の物理的意味

時定数 $\tau = RC$ は「充電が約 63% 完了するまでの時間」を表します。

  • $t = \tau$:$Q \fallingdotseq 0.63\,CV_0$(63%充電)
  • $t = 2\tau$:$Q \fallingdotseq 0.86\,CV_0$(86%充電)
  • $t = 3\tau$:$Q \fallingdotseq 0.95\,CV_0$(95%充電)
  • $t = 5\tau$:$Q \fallingdotseq 0.99\,CV_0$(実用的に完了)

$R$ が大きい(電流が流れにくい)ほど、また $C$ が大きい(充電すべき電荷が多い)ほど、$\tau$ は大きくなります。

Point

RC 回路の充電は指数関数 $Q = CV_0(1 - e^{-t/RC})$ で表される。グラフ選択問題では「$t = 0$ でゼロから始まる」「飽和値 $CV_0$ に漸近する」「直線的ではなく曲線」の3点を確認すれば判別できる。初期傾きは $V_0/R$(初期電流が最大)。

問5:コンデンサーに蓄えられたエネルギー

直感的理解
十分時間が経つとコンデンサーの電圧は起電力 $V_0$ と等しくなり、電流はゼロになる。コンデンサーに蓄えられた電荷は $Q = CV_0$ で、蓄えられたエネルギーは $U = \frac{1}{2}CV_0^2 = \frac{Q^2}{2C}$。これは2つの公式だが同じ値を表す。

十分時間が経過後の状態:電流 $I = 0$、コンデンサーの電圧 $V_C = V_0$、蓄えられた電荷 $Q = CV_0$

蓄えられたエネルギー:コンデンサーのエネルギーは以下の3通りで表せますが、すべて同じ値です。

$$U = \frac{1}{2}CV_0^2 = \frac{1}{2}QV_0 = \frac{1}{2}\frac{Q^2}{C}$$

$Q = CV_0$ を代入すれば

$$U = \frac{1}{2}CV_0^2 = \frac{1}{2}\frac{(CV_0)^2}{C} = \frac{1}{2}CV_0^2$$

どの公式を使っても同じ結果になることが確認できます。

答え:④ $\displaystyle U = \frac{1}{2}CV_0^2$(①と③は同値)
補足:充電過程のエネルギー収支

充電完了までに電源がする仕事は $W_{\text{源}} = QV_0 = CV_0^2$ です。一方、コンデンサーに蓄えられたエネルギーは $U = \frac{1}{2}CV_0^2$ で、電源の仕事の半分しかありません。

残りの半分 $\frac{1}{2}CV_0^2$ は抵抗 $R$ でジュール熱として失われます。これは抵抗値 $R$ の大小によらない(驚くべき結果!)。

$$W_{\text{源}} = U_C + U_R$$ $$CV_0^2 = \frac{1}{2}CV_0^2 + \frac{1}{2}CV_0^2$$

$R$ が大きいと充電に時間がかかるが、発熱量は同じ。$R$ が小さいと短時間で充電されるが、大電流のため単位時間あたりの発熱が大きい。結果として積分すると同じ値になります。

別解:Q-V グラフの面積から理解する

コンデンサーの $V = Q/C$ のグラフ(原点を通る直線)の下の面積が蓄えられたエネルギーです。

面積 = 三角形の面積 = $\frac{1}{2} \times Q \times V_0 = \frac{1}{2} \times CV_0 \times V_0 = \frac{1}{2}CV_0^2$

これは「わずかな電荷 $dQ$ を運ぶのに必要な仕事 $VdQ$ を $0$ から $Q$ まで積分する」ことに対応します。

$$U = \int_0^{Q} V\,dQ = \int_0^{CV_0} \frac{Q}{C}\,dQ = \frac{Q^2}{2C}\bigg|_0^{CV_0} = \frac{1}{2}CV_0^2$$
Point

コンデンサーのエネルギー $U = \frac{1}{2}CV^2 = \frac{Q^2}{2C} = \frac{1}{2}QV$ は3通りの表現があるが本質は同じ。「$Q = CV$」の関係を使えば相互変換できる。RC 回路の充電では電源の仕事の半分が抵抗で熱になることも重要(抵抗値によらない)。

まとめ

直感的理解
電磁誘導で「運動→起電力→電流→力」の因果関係を追い、RC回路の充電特性と合わせた総合問題。エネルギー保存の観点で全体を俯瞰することが大切。

電磁誘導の基本公式

RC 回路の充電

Point

第4問は電磁誘導 → 回路 → RC充電という一連の流れ。各段階で「何がエネルギーの供給源か」「どこでエネルギーが変換されるか」を意識すると、問題全体の構造が見通せる。$V_0 = BLv$、$I = V_0/R$、$F = BIL$、$U = \frac{1}{2}CV^2$ の4公式が柱。