共通テスト物理「第1問」は、波動・電磁気・力学・原子・熱力学の各分野から独立した小問が5題出題される形式です。1問あたりの配点が高く、基本法則の正確な適用が合否を分けます。
救急車が近づいてくるとき、サイレンの音は高く聞こえる。これは音源が動くことで、前方に放たれる音波が「圧縮」され波長が短くなるため。音が観測者に届くまでには光と違って有限の時間がかかり、それは単純に距離 ÷ 音速で求まる。
救急車が点Oから観測者Aに向かって速さ \(v_s = 20\) m/s で接近している。OA間の距離は720 m、音速 \(V = 340\) m/s。
空欄ア:サイレンの音が届くまでの時間
サイレンを鳴らし始めた瞬間、救急車は点Oにいる。この瞬間に発した音が観測者Aまで伝わる時間は:
$$t = \frac{720}{340} = \frac{72}{34} = \frac{36}{17} \fallingdotseq 2.118 \text{ s}$$したがってア = 2.1(秒)。
空欄イ:観測者が聞くサイレンの振動数
音源(救急車)が観測者に近づく場合のドップラー効果の公式:
$$f' = f \times \frac{V}{V - v_s}$$960 Hz のサイレンに対して:
$$f_1' = 960 \times \frac{340}{340 - 20} = 960 \times \frac{340}{320} = 960 \times \frac{17}{16}$$ $$= 960 \times 1.0625 = 1020 \text{ Hz}$$770 Hz のサイレンに対して:
$$f_2' = 770 \times \frac{340}{320} = 770 \times \frac{17}{16} = \frac{13090}{16} = 818.125 \fallingdotseq 820 \text{ Hz}$$観測者は、振動数約 1020 Hz と約 820 Hz の音が交互に入れ替わるサイレンとして聞く。
したがってイ = 1020。
共通テストでは電卓が使えないため、分数の簡約が計算のカギになる。
$$\frac{340}{320} = \frac{17}{16}$$960 × 17/16 は次のように計算できる:
$$960 \div 16 = 60,\quad 60 \times 17 = 1020$$770 × 17/16 は:
$$770 \div 16 = 48.125 \quad \text{(割り切れない)}$$しかし選択肢が「1020」を含むのはア=2.0の②とア=2.1の⑤だけ。到達時間 2.118... ≒ 2.1 からア=2.1なので、⑤が確定する。
「サイレンを鳴らし始めてから観測者に音が届くまで」の時間は、音が720 mを進む時間である。救急車も動いているが、音が発せられた瞬間の音源位置から観測者までの距離を音速で割ればよい。
発した瞬間にOにいるので、距離は720 m。音速 340 m/s で:
$$t = \frac{720}{340} = 2.12 \text{ s} \fallingdotseq 2.1 \text{ s}$$このとき救急車は \(20 \times 2.1 = 42\) m 進んで、OA間は678 mに縮まっている。しかし最初の音の到達時間は720 mの距離で決まる。
ドップラー効果:音源が速さ \(v_s\) で近づくとき \(f' = f \cdot \frac{V}{V - v_s}\)。分母 \(V - v_s\) は音源前方の波長が圧縮されることを表す。音の到達時間は「音が発せられた位置」から観測者までの距離を音速で割る。電卓なしの計算では分数の簡約(340/320 = 17/16)が重要。
直流でランプを明るくしたいなら、余計な抵抗を入れない。コイルは直流ではただの導線(抵抗ゼロ)。コンデンサーは直流を完全に遮断する。交流に切り替えると、コイルとコンデンサーのリアクタンスが等しい(直列共振)条件でインピーダンスが最小になり、ランプが最も明るくなる。
配電板にランプ、電源、ホルダー1・ホルダー2があり、ホルダーに回路素子(導線・コイル・コンデンサー・抵抗器)を装着する。
空欄2:直流でランプが最も明るくつく組合せ
直流回路での各素子の性質を整理する:
ランプを最も明るくするには、ホルダーに入れる素子の合計抵抗を最小にすればよい。
コンデンサーを入れると直流が流れないのでランプは点灯しない(③④⑥は不可)。
抵抗器を入れると抵抗が増える(②⑤は明るさが落ちる)。
導線+コイルなら合計抵抗ゼロ → 最も明るい。
空欄3:交流でランプが最も明るくつく組合せ
交流に変更し、角周波数に対するリアクタンスの条件が与えられている:
$$\omega L = \frac{1}{\omega C} = R$$つまり誘導リアクタンス = 容量リアクタンス = 抵抗値。
各組合せのインピーダンス \(Z\) を比較する:
④のコイル+コンデンサーの直列共振では、誘導リアクタンスと容量リアクタンスが打ち消し合い、インピーダンスがゼロになる。回路全体のインピーダンスはランプの抵抗だけになるため、最も大きな電流が流れ、最も明るく点灯する。
コイルとコンデンサーを直列接続したとき、\(\omega L = \frac{1}{\omega C}\) が成立する角周波数 \(\omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}\) を共振角周波数という。
この条件では:
これは「ブランコのタイミングを合わせると大きく揺れる」のと同じ原理で、エネルギーがコイル(磁場エネルギー)とコンデンサー(電場エネルギー)の間を効率よく行き来する。
ランプの抵抗を \(R_L\) として、各選択肢での電流の大きさを比較する。交流電源の電圧を \(V_0\) とすると:
④が最も電流が大きく、ランプが最も明るい。
直流 vs 交流での素子の違いを正確に把握する。直流ではコイルは導線と同じ(抵抗ゼロ)、コンデンサーは絶縁体。交流では \(\omega L = 1/(\omega C)\) のとき直列共振が起き、コイル+コンデンサーのインピーダンスがゼロになる。共振条件は電気分野の最重要テーマの一つ。
バスが加速すると、車内のすべての物体に慣性力(加速の逆向き)が働く。空気より重い CO₂ 風船は慣性力に従って後方に傾くが、空気より軽い He 風船は浮力の効果で逆方向(前方)に傾く。これは「コップの水を傾けると水面が後方で上がる」のと同じ原理で、軽い物体は「気圧の勾配」によって加速方向に押される。
二酸化炭素(CO₂)入りの風船とヘリウム(He)入りの風船を糸で結び、バスに乗っている人が手で持っている。
直線加速時(図5の確認):
バスが直線道路を一定の加速度で加速すると、バス内の非慣性系では後方向きの慣性力が働く。
He 風船が前方に傾く理由:加速時、車内の空気には後方への慣性力が働き、空気は後方に寄ろうとする。すると前方の気圧が下がり、後方の気圧が上がる。He 風船は周囲の空気より軽いため、この気圧勾配に沿って前方に押される(浮力の原理と同じ)。
カメラAから見た図5では、CO₂ が後方に傾き He が前方に傾く様子が確認できる(二人にはほとんど止まって見えた)。
左カーブ時(空欄4):
バスが一定の半径・一定の速さで左カーブを走行するとき、バス内では外向き(右向き)の遠心力が働く。
カメラBはバスの後ろ側に取り付けられ、前方を向いて撮影している。この視点では:
選択肢の図を見ると、He(上の風船)が左に、CO₂(下の風船)が右に傾いているのは②。
アルキメデスの原理の一般化で理解できる。重力場で浮力が働くのと同様に、加速度場でも「浮力に相当する力」が働く。
加速度 \(a\) で加速するバス内では、密度 \(\rho\) の物体に対して見かけの力は:
$$F_{\text{見かけ}} = -\rho_{\text{物体}} V a + \rho_{\text{空気}} V a = (\rho_{\text{空気}} - \rho_{\text{物体}}) V a$$ここで \(V\) は物体の体積。
これは水中の気泡が浮き上がるのと全く同じ原理。加速の向きを「重力の向き」と読み替えれば、軽いものは「浮き上がる」(加速の向きに動く)。
カメラBは後方から前方を見ている。左カーブなのでカーブの中心は左側、外側は右側。
5つの選択肢を分析すると:
キーポイントは「重い方が外側、軽い方が内側」。これは直線加速時の「重い方が後方、軽い方が前方」と同じ原理を回転運動に適用したもの。
加速するバス内では慣性力(加速と逆向き)が全てに働く。しかし空気より軽い He 風船は「浮力の効果」で慣性力と逆向きに動く。これは密度差と気圧勾配による現象であり、重力場での浮力と同じ原理。「重いものは慣性力の向き、軽いものは逆」と覚える。カーブでは遠心力を慣性力として同様に考える。
X線の光子が静止電子に衝突すると、エネルギーの一部を電子に渡す。光子はエネルギーを失うので、散乱後のX線の振動数は下がり(波長は長くなる)。これは「ビリヤードの玉が止まっている玉に当たると減速する」のと同じ。運動量保存の2成分から電子の反跳角が求まる。
波長 \(\lambda\) のX線(光子)が、静止している質量 \(m\) の電子に弾性衝突する。光子のエネルギーは \(\frac{hc}{\lambda}\)、運動量は \(\frac{h}{\lambda}\)。
空欄ウ:散乱X線の波長 \(\lambda'\) と入射X線の波長 \(\lambda\) の大小
衝突前後のエネルギー保存より:
$$\frac{hc}{\lambda} = \frac{hc}{\lambda'} + \frac{1}{2}mv^2$$電子の運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2 > 0\) なので:
$$\frac{hc}{\lambda} > \frac{hc}{\lambda'}$$ $$\therefore\ \lambda' > \lambda$$散乱X線の波長は入射X線より大きい。光子がエネルギーを失い、波長が長くなる。
空欄エ:\(\theta = 90°\) のとき、電子の反跳角 \(\phi\)
衝突前後の運動量保存を \(x\) 成分と \(y\) 成分に分けて立式する。
\(x\) 方向(入射X線の進行方向):
$$\frac{h}{\lambda} = \frac{h}{\lambda'}\cos\theta + mv\cos\phi$$\(y\) 方向:
$$0 = \frac{h}{\lambda'}\sin\theta - mv\sin\phi$$\(\theta = 90°\) を代入すると:
\(x\) 方向:\(\cos 90° = 0\) より
$$\frac{h}{\lambda} = mv\cos\phi \quad \cdots (1)$$\(y\) 方向:\(\sin 90° = 1\) より
$$\frac{h}{\lambda'} = mv\sin\phi \quad \cdots (2)$$(2) ÷ (1) より:
$$\frac{h/\lambda'}{h/\lambda} = \frac{mv\sin\phi}{mv\cos\phi} = \tan\phi$$ $$\tan\phi = \frac{\lambda}{\lambda'}$$ここで問題文の条件「\(\lambda\) と \(\lambda'\) はほぼ等しい」を使うと:
$$\tan\phi \fallingdotseq \frac{\lambda}{\lambda} = 1$$ $$\therefore\ \phi \fallingdotseq 45°$$厳密に計算すると、コンプトン散乱による波長の変化量は:
$$\lambda' - \lambda = \frac{h}{mc}(1 - \cos\theta)$$ここで \(\frac{h}{mc}\) はコンプトン波長と呼ばれ、電子の場合 \(\fallingdotseq 2.43 \times 10^{-12}\) m。
\(\theta = 90°\) のとき \(\cos\theta = 0\) なので:
$$\lambda' - \lambda = \frac{h}{mc} \fallingdotseq 0.00243 \text{ nm}$$X線の波長(\(\sim 0.1\) nm)に比べて十分小さいので、\(\lambda \fallingdotseq \lambda'\) の近似は妥当。
入射光子の運動量 \(\frac{h}{\lambda}\) は \(x\) 方向のみ。\(\theta = 90°\) で散乱されたX線の運動量 \(\frac{h}{\lambda'}\) は \(y\) 方向のみ。
運動量保存より、電子の運動量は:
$$mv\cos\phi = \frac{h}{\lambda},\quad mv\sin\phi = \frac{h}{\lambda'}$$これは直角三角形の2辺で、電子の運動量ベクトルが斜辺にあたる。\(\lambda \fallingdotseq \lambda'\) なら2辺がほぼ等しいので、直角二等辺三角形 → \(\phi = 45°\)。
この「運動量の直角三角形」を描けば、式を解かなくても角度がわかる。
コンプトン散乱の問題は、(1) エネルギー保存で波長の大小を判断、(2) 運動量保存の \(x, y\) 成分分解で角度を求める、という2段階で解く。\(\theta = 90°\) では \(\cos\theta = 0\) により \(x\) 方向の式が大幅に簡単になる。\(\lambda \fallingdotseq \lambda'\) の近似を使うタイミングを見極めるのがコツ。tanφ = λ/λ' は覚えておくと便利。
同じ圧力・同じ体積なのに温度が違うということは、物質量(モル数)が違う。温度が高い方はモル数が少なく、温度が低い方はモル数が多い。内部エネルギーは「\(\frac{3}{2}PV\)」と書けるので、\(P\) と \(V\) が同じなら温度に関係なく等しい。
同じ種類の単原子分子の理想気体が、同じ体積 \(V\) の2つの容器に入っている。圧力 \(P\) は等しく、温度(絶対温度)\(T_1 \neq T_2\) は異なる。
まず基本関係式を確認する。
理想気体の状態方程式 \(PV = nRT\) より、\(P\) と \(V\) が等しいので:
$$n_1 T_1 = n_2 T_2 = \frac{PV}{R} = \text{一定}$$つまり \(T_1 \neq T_2\) なら \(n_1 \neq n_2\)。温度が高い方はモル数が少ない。
(a) 内部エネルギー \(U\)
単原子理想気体の内部エネルギーは:
$$U = \frac{3}{2}nRT$$\(nRT = PV\) を代入すると:
$$U = \frac{3}{2}PV$$\(P\) と \(V\) が等しいので、\(U_1 = U_2\)(等しい)。
(b) 分子1個あたりの平均運動エネルギー \(\bar{\varepsilon}\)
$$\bar{\varepsilon} = \frac{3}{2}k_B T$$\(T_1 \neq T_2\) なので、\(\bar{\varepsilon}_1 \neq \bar{\varepsilon}_2\)(異なる)。
(c) 分子の二乗平均速度(根平均二乗速度)\(v_{\text{rms}}\) と物質量 \(n\) の積
$$v_{\text{rms}} = \sqrt{\frac{3k_B T}{m}} = \sqrt{\frac{3RT}{M_{\text{mol}}}}$$ここで \(m\) は分子1個の質量、\(M_{\text{mol}}\) はモル質量。
$$n \cdot v_{\text{rms}} = n\sqrt{\frac{3RT}{M_{\text{mol}}}} = \sqrt{\frac{3R}{M_{\text{mol}}}} \cdot n\sqrt{T}$$\(nT = \text{一定}\) から \(n = \frac{C}{T}\)(\(C = PV/R\))なので:
$$n\sqrt{T} = \frac{C}{T} \cdot \sqrt{T} = \frac{C}{\sqrt{T}}$$\(T_1 \neq T_2\) のとき \(\frac{C}{\sqrt{T_1}} \neq \frac{C}{\sqrt{T_2}}\) だから、\(n_1 v_{\text{rms},1} \neq n_2 v_{\text{rms},2}\)(異なる)。
等しいのは (a) のみ。
一見、内部エネルギー \(U = \frac{3}{2}nRT\) は温度 \(T\) に比例するように見える。しかし「同じP、同じV」の制約のもとでは \(nT = PV/R\) が一定なので、\(T\) が上がると \(n\) が下がり、積 \(nT\) は変わらない。
物理的にいえば:
合計の運動エネルギー(= 内部エネルギー)はちょうど等しくなる。
(c) の量 \(n \cdot v_{\text{rms}}\) を少し変形してみる:
$$n \cdot v_{\text{rms}} = n\sqrt{\frac{3RT}{M_{\text{mol}}}} = \sqrt{\frac{3R \cdot n^2 T}{M_{\text{mol}}}}$$ここで \(n^2 T = n \cdot (nT) = n \cdot \frac{PV}{R}\) なので、\(n^2 T\) は \(n\) に比例する。
\(n_1 \neq n_2\) だから \(n^2 T\) も異なり、(c) は等しくならない。
もし問われていたのが \(n \cdot v_{\text{rms}}^2\) なら:
$$n \cdot v_{\text{rms}}^2 = n \cdot \frac{3RT}{M_{\text{mol}}} = \frac{3R}{M_{\text{mol}}} \cdot nT = \text{一定}$$これは等しくなる。\(v_{\text{rms}}\) と \(v_{\text{rms}}^2\) の違いに注意。
「同じP、同じV」の理想気体では \(nT\) が一定。内部エネルギー \(U = \frac{3}{2}nRT = \frac{3}{2}PV\) はnT の積に比例するので等しい。一方、分子1個の平均運動エネルギーは \(T\) のみに依存するので異なる。\(n\sqrt{T}\) のような量は \(nT\) とは異なる形なので注意。状態方程式から \(nT = \text{const.}\) を導き、各量を \(nT\) で表せるかどうかがこの手の問題の解法の核心。