第2問はなめらかな水平面上の一直線上での衝突を段階的に拡張していく問題です。壁との衝突(問1)→ 2物体の弾性衝突(問2)→ ばねで接続された物体系との衝突(問3・問4)と、基本から応用へ積み上げる構成になっています。
ボールを壁にぶつけると、跳ね返りの速さは元より小さくなる。その比が反発係数 \(e\)。速さが \(v_0\) から \(ev_0\) に減るので、運動エネルギーの変化を計算すればよい。\(e = 1\) なら完全弾性衝突でエネルギー損失ゼロ、\(e = 0\) なら完全非弾性衝突で全運動エネルギーが失われる。
設定:質量 \(m\) の小物体Aが速度 \(v_0\)(\(v_0 > 0\))で固定された壁に衝突する。Aと壁の間の反発係数を \(e\) とする。
反発係数の定義から跳ね返り速度を求める:
壁は固定されているので、壁の速度は衝突前後ともに \(0\) である。反発係数の定義より:
$$e = \frac{\text{跳ね返りの相対速度}}{\text{衝突前の相対速度}} = \frac{v_{\text{壁}}' - v_A'}{v_A - v_{\text{壁}}} = \frac{0 - v_A'}{v_0 - 0}$$よって衝突後のAの速度は:
$$v_A' = -ev_0$$(マイナス符号は壁と逆向き=跳ね返り方向を意味する)
失われた力学的エネルギーを計算する:
$$\Delta E = \frac{1}{2}mv_0^2 - \frac{1}{2}m(ev_0)^2 = \frac{1}{2}mv_0^2 - \frac{1}{2}me^2v_0^2 = \frac{1}{2}mv_0^2(1 - e^2)$$選択肢に \((1-e)\) と \((1-e^2)\) が登場する。紛らわしいが、エネルギーは速度の2乗に比例するため、速度が \(e\) 倍になるとエネルギーは \(e^2\) 倍になる。
損失エネルギーが \((1-e)\) に比例するのは運動量の変化(\(mv_0 - m \cdot ev_0 = mv_0(1-e)\))であり、エネルギーではない。
次元でも確認:\(\frac{1}{2}mv_0^2\) はエネルギー(\(\text{J}\))であり、\(mv_0\) は運動量(\(\text{kg}\cdot\text{m/s}\))。選択肢①②は \(mv_0 \times\) 無次元量なのでエネルギーの次元ではなく、即座に除外できる。
\(1 - e^2 = (1+e)(1-e)\) と因数分解できる。これを物理的に解釈すると:
$$\Delta E = \frac{1}{2}mv_0^2(1+e)(1-e)$$\((1-e)\) が衝突の「非弾性度」を、\((1+e)\) が「衝突の激しさ」を表している。
壁との衝突では跳ね返り速度が \(ev_0\) になり、失われる力学的エネルギーは \(\frac{1}{2}mv_0^2(1-e^2)\) である。エネルギーは速度の2乗に比例するので、損失は \((1-e)\) ではなく \((1-e^2)\) に比例する。
質量 \(m\) の物体が静止した質量 \(M\) の物体に正面衝突する。弾性衝突なので運動エネルギーは保存される。\(m = M\) なら入射物体は止まり、標的が同じ速度で飛び出す(ビリヤードのイメージ)。\(m \ll M\) なら入射物体はほぼ同じ速さで跳ね返り、\(m \gg M\) ならほとんど速度を変えずに通過する。
設定:質量 \(m\) のAが速度 \(v_0\) で、静止した質量 \(M\) のB₁に弾性衝突する。衝突後のA、B₁の速度をそれぞれ \(v\)、\(V_1\) とする。
使う法則:運動量保存則と運動エネルギー保存則の2つを連立する。
運動量保存則:
$$mv_0 = mv + MV_1 \quad \cdots (1)$$運動エネルギー保存則(弾性衝突の条件):
$$\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}MV_1^2 \quad \cdots (2)$$(1) を変形すると:\(m(v_0 - v) = MV_1 \quad \cdots (1')\)
(2) を変形すると:\(m(v_0^2 - v^2) = MV_1^2\)、つまり \(m(v_0-v)(v_0+v) = MV_1^2 \quad \cdots (2')\)
\((2') \div (1')\)(\(v_0 \neq v\) の場合):
$$v_0 + v = V_1 \quad \cdots (3)$$(1) と (3) を連立して \(V_1\) を消去すると:
$$mv_0 = mv + M(v_0 + v)$$ $$mv_0 - Mv_0 = mv + Mv = (m+M)v$$ $$\boxed{v = \frac{m - M}{m + M}\,v_0}$$(3) に代入して:
$$V_1 = v_0 + v = v_0 + \frac{m-M}{m+M}v_0 = \frac{(m+M) + (m-M)}{m+M}v_0$$ $$\boxed{V_1 = \frac{2m}{m+M}\,v_0}$$弾性衝突は反発係数 \(e = 1\) である。反発係数の定義:
$$e = \frac{V_1 - v}{v_0 - 0} = 1$$よって \(V_1 - v = v_0\)、すなわち \(V_1 = v_0 + v \quad \cdots (3)\)。
これを運動量保存 \(mv_0 = mv + MV_1\) に代入すれば、エネルギー保存式を使わずに同じ結果が得られる。
弾性衝突問題では、エネルギー保存の代わりに \(e = 1\) を使う方が計算が楽である。
| 条件 | \(v\) | \(V_1\) | 物理的意味 |
|---|---|---|---|
| \(m = M\) | \(0\) | \(v_0\) | ビリヤード(速度交換) |
| \(m \ll M\) | \(\fallingdotseq -v_0\) | \(\fallingdotseq 0\) | 壁に跳ね返る |
| \(m \gg M\) | \(\fallingdotseq v_0\) | \(\fallingdotseq 2v_0\) | 軽い物体が弾き飛ばされる |
答えが出たら、このような極限ケースで検算すると、式の正しさを素早く確認できる。
弾性衝突の公式 \(v = \frac{m-M}{m+M}v_0\)、\(V_1 = \frac{2m}{m+M}v_0\) は頻出。導出は運動量保存 + エネルギー保存(または \(e=1\))の連立。導出と同時に \(m=M\) のケースで検算する癖をつけよう。
B₁とB₂がばねでつながっている系に物体Aが衝突する。AはB₁とだけ弾性衝突し、衝突直後はB₁だけが動き、B₂はまだ静止している。しかし系B全体(B₁+ばね+B₂、質量\(2M\))の速度はB₁の運動量を全体の質量で割ったもの。AとBの間の反発係数は、「剛体」ではない内部自由度を持つ物体との衝突なので、A-B₁間の弾性衝突にもかかわらず、A-B全体の反発係数は1より小さくなる。衝突エネルギーの一部がばねの内部振動に「吸収」されるためである。
設定:問2と同じくAがB₁に弾性衝突する。ただし今度はB₁(質量\(M\))とB₂(質量\(M\))がばね定数\(k\)の軽いばねでつながっている。衝突直後、B₁は速度\(V_1\)で動き出し、B₂は静止したままである。
[ア] 反発係数の式を求める:
B₁, ばね, B₂ を一つの物体B(質量 \(2M\))とみなす。Bの運動量は B₁とB₂の運動量の和であり、Bの速度\(V\)は:
$$V = \frac{MV_1 + M \cdot 0}{2M} = \frac{V_1}{2}$$AとBの反発係数の定義は:
$$e_{AB} = \frac{\text{衝突後の相対速度}}{\text{衝突前の相対速度}} = \frac{V - v}{v_0 - 0} = \frac{V - v}{v_0}$$(\(V > v\) なので分子は正。B全体が右へ、Aは左へまたは遅く右へ動く)
[イ] 反発係数の値を計算する:
問2の結果を代入する。\(V = V_1/2 = \dfrac{m}{m+M}v_0\)、\(v = \dfrac{m-M}{m+M}v_0\) より:
$$e_{AB} = \frac{V - v}{v_0} = \frac{\dfrac{m}{m+M}v_0 - \dfrac{m-M}{m+M}v_0}{v_0} = \frac{\dfrac{m - (m-M)}{m+M}v_0}{v_0} = \frac{M}{m+M}$$\(m > 0\)、\(M > 0\) なので \(\dfrac{M}{m+M} < 1\)。よって反発係数は1より小さい。
AとB₁の衝突自体は弾性(反発係数 \(e = 1\))である。しかしBを「一つの物体」と見たときの反発係数が1未満になる理由は、衝突のエネルギーの一部がばねの内部振動エネルギーに変換されるためである。
B₁は\(V_1\)で動くが、B₂はまだ静止している。B全体の重心速度は\(V = V_1/2\)だが、残りのエネルギー(B₁とB₂の相対運動のエネルギー)はばねの振動として系内部に蓄えられる。
外から見ると、A-B系全体の運動エネルギーはA-B₁弾性衝突で保存されるが、そのうちBの「並進運動エネルギー」は減少し、「内部エネルギー」が増加している。これはちょうどマクロな非弾性衝突と同じ構造である。
\(m = M\) のとき:
公式からも:\(M/(m+M) = M/(2M) = 1/2\)。一致する。確かに1より小さい。
内部自由度を持つ物体との衝突では、個々の要素間の衝突が弾性であっても、系全体の反発係数は1未満になりうる。衝突エネルギーの一部が内部振動(ばねの弾性エネルギー)に変換されるためである。反発係数 \(= M/(m+M)\) は質量比で決まり、\(m\) が大きいほど(= 入射体が重いほど)反発係数は小さくなる。
衝突直後、B₁は速度\(V_1\)、B₂は速度0で、ばねの変形はまだゼロ。Bの力学的エネルギーはこの瞬間のB₁の運動エネルギーそのもの。その後B₁がB₂をばねで押し、やがてB₁とB₂が同じ速度(=重心速度\(V\))になった瞬間、ばねが最大に伸びる。このとき重心系での運動エネルギーがすべてばねの弾性エネルギーに変換されている。
[ウ] 衝突直後のBの力学的エネルギー:
衝突直後、B₁は速度\(V_1\)で運動し、B₂は静止、ばねは自然長のままである。よってBの力学的エネルギーはB₁の運動エネルギーのみ:
$$E_B = \frac{1}{2}MV_1^2$$これを \(V = V_1/2\) すなわち \(V_1 = 2V\) で書き換えると:
$$E_B = \frac{1}{2}M(2V)^2 = \frac{1}{2}M \cdot 4V^2 = 2MV^2$$[エ] ばねの自然長からの最大伸びを求める:
ばねが最大に伸びるのは、B₁とB₂の速度が等しくなる瞬間である。このとき両者の速度は重心速度\(V\)に等しい。
重心系でのエネルギー保存を考える。衝突直後の重心系での運動エネルギーは:
最大伸び \(\Delta x_{\max}\) の瞬間に、この内部運動エネルギーがすべてばねの弾性エネルギーに変換される:
$$\frac{1}{2}k(\Delta x_{\max})^2 = MV^2$$ $$(\Delta x_{\max})^2 = \frac{2MV^2}{k}$$ $$\Delta x_{\max} = \sqrt{\frac{2M}{k}}\,V$$2体のばね振動系では、換算質量 \(\mu\) と相対速度を使うと見通しがよい。
$$\mu = \frac{M \cdot M}{M + M} = \frac{M}{2}$$衝突直後のB₁とB₂の相対速度は \(V_1 - 0 = 2V\)。重心系での運動エネルギーは:
$$E_{\text{内部}} = \frac{1}{2}\mu \cdot (2V)^2 = \frac{1}{2} \cdot \frac{M}{2} \cdot 4V^2 = MV^2$$最大伸び(相対速度が0になる瞬間)で:
$$\frac{1}{2}k(\Delta x_{\max})^2 = MV^2 \implies \Delta x_{\max} = V\sqrt{\frac{2M}{k}}$$同じ結果が得られる。換算質量 \(\mu = M_1 M_2/(M_1+M_2)\) は2体問題の標準的な手法であり、覚えておくと有用。
Bの力学的エネルギー \(2MV^2\) を並進と内部に分解すると:
| 成分 | 式 | 値 |
|---|---|---|
| 全体の力学的エネルギー | \(\frac{1}{2}MV_1^2\) | \(2MV^2\) |
| 並進(重心の運動) | \(\frac{1}{2}(2M)V^2\) | \(MV^2\) |
| 内部(ばね振動) | \(2MV^2 - MV^2\) | \(MV^2\) |
ちょうど半分ずつに分かれる。これは \(M_1 = M_2\)(等質量)の場合の特有の結果であり、重心から見て対称な運動をするためである。
ばねの最大伸びは、この内部エネルギー \(MV^2\) がすべてばねの弾性エネルギーに変換された瞬間に対応する。
問3でA-B全体の反発係数が\(M/(m+M) < 1\)と求まった。これはA-B系で見ると「非弾性衝突」に見えることを意味する。
A-B₁間の衝突は弾性なので、A+B₁+B₂系全体のエネルギーは保存される。しかしBを一つの物体と見なした場合:
この「内部エネルギー」こそが、問3で反発係数が1未満になった原因であり、問4のばねの最大伸びの源である。マクロな物体間の非弾性衝突では、この内部エネルギーが熱や音として散逸するが、本問ではばねの弾性エネルギーとして保存されている点が興味深い。
ばねでつながった物体系の運動は重心系で考えるとすっきりする。系全体の力学的エネルギーは「重心の並進KE」+「内部KE(相対運動)」に分解でき、ばねの最大伸びは内部KEがすべてばね弾性エネルギーに変換された瞬間。等質量(\(M = M\))の場合、両者はちょうど半分ずつになる。