平行板極板間の一様電場中で荷電粒子が放物運動し、その後一様磁場中で等速円運動する複合問題です。装置1(電場)と装置2(磁場)の2段構成で、力学の斜方投射との類似性を活かして解きます。
数値例:抵抗 \(R = 10\) Ω に電圧 \(V = 20\) V を加えると、電流は
\(I = \dfrac{V}{R} = \dfrac{20}{10} = 2.0\) A
消費電力は \(P = IV = 2.0 \times 20 = 40\) W、\(t = 5.0\) s 間のジュール熱は \(Q = Pt = 40 \times 5.0 = 200\) J
荷電粒子の軌道から電場の向きを読み取る:
荷電粒子(電気量 $-e$)は極板Bの穴から入射し、極板間で放物運動した後、極板Bのもう一方の穴から飛び出します。これは斜方投射と同じ構造で、電気力が「重力」の役割を果たします。
粒子が極板Bから入射して極板A方向に進み、やがて引き戻されて極板Bに戻ります。これは「ボールを投げ上げると重力で落ちてくる」のと同じ状況です。
静電気力の向き:粒子を引き戻す力は極板B方向に働いています。電気量 $-e$(負電荷)に対して
$$\vec{F} = (-e)\vec{E} \quad \text{(極板B方向)}$$よって電場 $\vec{E}$ は極板Bから極板Aの向きです。電場は高電位から低電位に向かうので
$$\text{極板Bの電位} > \text{極板Aの電位} \quad \Longrightarrow \quad \text{極板Bの電位が高い}$$電源電圧について:極板間の電圧は $V = Ed$ です。定常状態では極板間に電流は流れないので、抵抗器での電圧降下はゼロ。したがって
$$\text{直流電源の電圧} = Ed$$回路は「直流電源 → 抵抗器 → 平行板極板」の直列接続です。定常状態では極板間に電流が流れないため(絶縁体で隔てられているため)、抵抗器を流れる電流もゼロです。
オームの法則より、抵抗器の電圧降下 $= IR = 0 \times R = 0$ です。
よってキルヒホッフの法則から
$$V_{\text{電源}} = V_{\text{抵抗}} + V_{\text{極板}} = 0 + Ed = Ed$$もし選択肢に「$Ed$ より大きい」があった場合、それは電流が流れて抵抗で電圧降下がある場合に相当しますが、本問では定常状態なので該当しません。
方法1:軌道の曲がりから判定
負電荷が入射後に曲がって戻ってくる → 電気力は入射方向と逆(引き戻す向き)→ 負電荷なので電場は電気力と逆向き。
方法2:仕事・エネルギーから判定
粒子が極板Aに近づくとき減速 → 電気力は負の仕事 → 電位エネルギーが増加 → 負電荷にとって極板A側が電位エネルギーの高い側 → 極板B側が高電位。
具体的な計算:例えば R = 10 Ω、V = 20 V のとき、I = V/R = 20/10 = 2.0 A である。消費電力は P = 2.0 × 20 = 40 W、t = 5.0 s 間のジュール熱は Q = 40 × 5.0 = 200 J となる。
「定常状態で極板間に電流が流れない」→ 抵抗での電圧降下ゼロ → 電源電圧 = 極板間電圧 $Ed$。電場の向きは荷電粒子の軌道の曲がり方から判定する。負電荷が引き戻される → 電場は逆向き → 高電位側が判明。
仕事と変位の関係:
静電気力は電場方向(極板に垂直な方向)にのみ働きます。仕事は
$$W = \vec{F} \cdot \Delta\vec{r} = F \cdot \Delta x_{\perp}$$ここで $\Delta x_{\perp}$ は極板に垂直な方向(A-B方向)の変位です。
入射と射出の位置:荷電粒子は極板Bの穴から入り、極板Bの別の穴から出ます。つまり
$$\Delta x_{\perp} = 0 \quad \text{(同じ極板から出入り)}$$したがって
$$W = eE \times 0 = 0$$これは斜方投射で「同じ高さに戻ってくるとき重力のした仕事はゼロ」と同じ原理です。粒子の運動エネルギーも変化しないので、飛び出した直後の速さは $v_0$ のままです。
一様電場中のポテンシャルエネルギーは、極板に垂直な方向の位置のみで決まります。
$$U = (-e) \cdot (-E) \cdot x_{\perp} = eEx_{\perp}$$入射時と射出時で $x_{\perp}$ が同じ(ともに極板B上)なので $\Delta U = 0$。
エネルギー保存則 $\Delta K + \Delta U = 0$ より $\Delta K = 0$。つまり運動エネルギー変化なし → 仕事 $= 0$。
45° 入射なので初速度の成分は
射出時は $v_{\perp}$ の向きが逆転していますが大きさは同じ。よって速さは $v_0$ のまま。射出角度も 45° です。
「同じ極板から出入りする」→ 力の方向の変位ゼロ → 仕事ゼロ。斜方投射で地面に戻るときの重力の仕事と完全にパラレル。この結果から「飛び出した粒子の速さは入射時と同じ $v_0$」という重要な情報が得られ、問3以降で使う。
座標設定:極板に平行な方向を $x$ 軸、極板に垂直な方向(BからAに向かう向き)を $y$ 軸とします。
初速度の成分:
$$v_x = v_0 \cos 45° = \frac{v_0}{\sqrt{2}}, \quad v_y = v_0 \sin 45° = \frac{v_0}{\sqrt{2}}$$加速度:電場方向($y$ 軸負の向き = B方向)に
$$a = \frac{eE}{m} \quad \text{($y$ 軸負方向)}$$$y$ 方向の運動(等加速度):
$$y(t) = \frac{v_0}{\sqrt{2}} t - \frac{1}{2} \cdot \frac{eE}{m} \cdot t^2$$粒子が極板Bに戻る条件 $y(T) = 0$ より
$$\frac{v_0}{\sqrt{2}} T = \frac{1}{2} \cdot \frac{eE}{m} \cdot T^2$$ $$T = \frac{2mv_0}{\sqrt{2}\,eE} = \frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE}$$$x$ 方向の運動(等速):
$$L = v_x \cdot T = \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE} = \frac{mv_0^2}{eE}$$$E$ について解く:
$$\boxed{E = \frac{mv_0^2}{eL}}$$斜方投射の飛距離の公式 $R = \dfrac{v_0^2 \sin 2\theta}{g}$ において、重力加速度 $g$ を加速度 $a = eE/m$ に、射角 $\theta = 45°$ に置き換えると
$$L = \frac{v_0^2 \sin 90°}{eE/m} = \frac{mv_0^2}{eE}$$よって $E = \dfrac{mv_0^2}{eL}$。$\sin 2 \times 45° = \sin 90° = 1$ なので、45° 入射は式が最もシンプルになります。
$\cos 45° = \sin 45° = 1/\sqrt{2}$ ですが、飛行時間 $T$ に $\sqrt{2}$ が分子に現れ、$x$ 方向の速度の $1/\sqrt{2}$ と打ち消し合います。
$$L = \underbrace{\frac{v_0}{\sqrt{2}}}_{v_x} \times \underbrace{\frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE}}_{T} = \frac{v_0 \cdot \cancel{\sqrt{2}} \cdot mv_0}{\cancel{\sqrt{2}} \cdot eE} = \frac{mv_0^2}{eE}$$45° 入射のおかげで $\sqrt{2}$ が完全にキャンセルし、答えに $\sqrt{2}$ が含まれません。選択肢に $\sqrt{2}$ が入ったものが多数ある中で、$\sqrt{2}$ なしの③が正解というのが面白いポイントです。
荷電粒子の一様電場中の運動 = 斜方投射。$x$ 方向は等速、$y$ 方向は等加速度で分解する。45° 入射では $\sin 2\theta = 1$ となり飛距離の式が最もシンプル。$\sqrt{2}$ がキャンセルするので、答えに $\sqrt{2}$ が含まれない選択肢を選ぶのが計算ミスのチェックにもなる。
装置2の設定:装置1を飛び出した荷電粒子(質量 $m$、電気量 $-e$、速さ $v_0$)が、一様磁場の領域に境界面に垂直に入射し、半円を描いて飛び出します。
点Qでの力の向き:
点Qは半円軌道の最下点(境界面から最も遠い点)です。等速円運動では力は常に円の中心方向(向心力)を向きます。円の中心は境界面上(PとRの中点)にあるので
$$\text{点Qでのローレンツ力は境界方向(上向き)= a の方向}$$磁場の向きの判定:
点Qでの速度を $v_0$(右向き)、ローレンツ力を上向き(a方向)とします。電気量 $-e$ の粒子に対して
$$\vec{F} = (-e)\vec{v} \times \vec{B}$$$\vec{F}$ が上向き、$\vec{v}$ が右向きのとき:
粒子は点Pから境界面に垂直(下向き)に入射し、左に曲がって半円を描きます(P → Q → R の順)。
負電荷 $-e$ が下向きに進むとき左に曲がる磁場の向き:
あるいは、フレミングの左手の法則(電流の向き = 負電荷の運動と逆向き)を使っても同じ結果が得られます。
紙面を $xy$ 平面とし、右を $+x$、上を $+y$、紙面の手前を $+z$ とします。
点Qでの速度:$\vec{v} = v_0 \hat{x}$(右向き)
磁場(裏から表):$\vec{B} = B\hat{z}$(手前向き)
$$\vec{v} \times \vec{B} = v_0 B(\hat{x} \times \hat{z}) = v_0 B(-\hat{y}) = -v_0 B\hat{y} \quad \text{(下向き)}$$ $$\vec{F} = (-e)(\vec{v} \times \vec{B}) = (-e)(-v_0 B\hat{y}) = ev_0 B\hat{y} \quad \text{(上向き ✓)}$$磁場中の円運動の問題では、①まず円の中心方向を特定(= 向心力の方向)、②次に $\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}$ でベクトル積の向きから磁場の向きを決定。負電荷の場合は $q = -e$ なので外積の結果が反転することに注意。フレミングの左手の法則を使う場合、電流の向きは負電荷の運動と逆向きにとる。
条件の整理:
質量 $m'$ の荷電粒子(電気量 $-e$)を装置1に入射させ、質量 $m$ の粒子と同じ軌道を描くように入射速度 $v_0'$ を調整します。
Step 1:同じ軌道条件から $v_0'$ を求める
問3の結果 $E = mv_0^2/(eL)$ は質量 $m$、速度 $v_0$ の粒子に対するものでした。同じ電場 $E$、同じ極板間隔で同じ軌道を描く条件は
$$E = \frac{m'v_0'^2}{eL}$$2つの式を等しくおくと
$$\frac{mv_0^2}{eL} = \frac{m'v_0'^2}{eL}$$ $$mv_0^2 = m'v_0'^2$$ $$v_0' = v_0\sqrt{\frac{m}{m'}}$$Step 2:円運動の半径を求める
磁場中の等速円運動の半径は
$$r = \frac{mv_0}{eB}, \quad r' = \frac{m'v_0'}{eB}$$$v_0'$ を代入すると
$$r' = \frac{m' \cdot v_0\sqrt{\dfrac{m}{m'}}}{eB} = \frac{v_0\sqrt{m \cdot m'}}{eB}$$Step 3:$PR'/PR$ の比を求める
$PR = 2r = \dfrac{2mv_0}{eB}$、$PR' = 2r' = \dfrac{2v_0\sqrt{mm'}}{eB}$ なので
$$\frac{PR'}{PR} = \frac{2r'}{2r} = \frac{r'}{r} = \frac{\dfrac{v_0\sqrt{mm'}}{eB}}{\dfrac{mv_0}{eB}} = \frac{\sqrt{mm'}}{m} = \sqrt{\frac{m'}{m}}$$同じ軌道を描くので $mv_0^2 = m'v_0'^2$、つまり運動エネルギーが等しい。
$$K = \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}m'v_0'^2$$円運動の半径 $r = mv/(eB)$ を $K$ で表すと
$$r = \frac{mv}{eB} = \frac{\sqrt{2mK}}{eB}$$(∵ $K = \frac{1}{2}mv^2 \Rightarrow mv = \sqrt{2mK}$)
$K$ が同じなので
$$\frac{r'}{r} = \frac{\sqrt{2m'K}}{\sqrt{2mK}} = \sqrt{\frac{m'}{m}}$$$m' > m$ の場合:
$m' < m$ の場合:
この原理は質量分析器と同じです。同じ運動エネルギーで磁場に入射すると、重い粒子ほど大きな円弧を描きます。
本問の装置は、実際の質量分析器(マススペクトロメーター)と同じ原理です。
到達位置の差($PR' - PR$)から未知の質量を同定できます。例えば同位体の分離に利用されます。
「同じ軌道を描く」= 同じ運動エネルギー($mv_0^2 = m'v_0'^2$)。速度が質量の平方根に反比例して変わることを見逃すと、「質量比がそのまま半径比」と誤答してしまう。半径 $r = mv/(eB) = \sqrt{2mK}/(eB)$ と書き直すと、$K$ が同じとき $r \propto \sqrt{m}$ であることが明確になる。これは質量分析器の原理そのもの。