第4問:電磁気 — 一様電場・磁場中の荷電粒子の運動(配点25)

解法の指針

平行板極板間の一様電場中で荷電粒子が放物運動し、その後一様磁場中で等速円運動する複合問題です。装置1(電場)と装置2(磁場)の2段構成で、力学の斜方投射との類似性を活かして解きます。

問題の構成

全体を貫くポイント

数値例:抵抗 \(R = 10\) Ω に電圧 \(V = 20\) V を加えると、電流は

\(I = \dfrac{V}{R} = \dfrac{20}{10} = 2.0\) A

消費電力は \(P = IV = 2.0 \times 20 = 40\) W、\(t = 5.0\) s 間のジュール熱は \(Q = Pt = 40 \times 5.0 = 200\) J

問1:直流電源の電圧と極板Bの電位

直感的理解
負の電荷 $-e$ が極板Bから入射し、極板Aに向かってカーブしてまた極板Bに戻ってくる。これは「ボールを投げ上げたら落ちてくる」のと同じ。つまり電気力が極板A→Bの向き(引き戻す向き)に働いている。負電荷を引き戻す電場の向きから、Bが高電位とわかる。

荷電粒子の軌道から電場の向きを読み取る:

荷電粒子(電気量 $-e$)は極板Bの穴から入射し、極板間で放物運動した後、極板Bのもう一方の穴から飛び出します。これは斜方投射と同じ構造で、電気力が「重力」の役割を果たします。

粒子が極板Bから入射して極板A方向に進み、やがて引き戻されて極板Bに戻ります。これは「ボールを投げ上げると重力で落ちてくる」のと同じ状況です。

静電気力の向き:粒子を引き戻す力は極板B方向に働いています。電気量 $-e$(負電荷)に対して

$$\vec{F} = (-e)\vec{E} \quad \text{(極板B方向)}$$

よって電場 $\vec{E}$ は極板Bから極板Aの向きです。電場は高電位から低電位に向かうので

$$\text{極板Bの電位} > \text{極板Aの電位} \quad \Longrightarrow \quad \text{極板Bの電位が高い}$$

電源電圧について:極板間の電圧は $V = Ed$ です。定常状態では極板間に電流は流れないので、抵抗器での電圧降下はゼロ。したがって

$$\text{直流電源の電圧} = Ed$$
答え:③
ア:$Ed$ である、イ:高い
(直流電源の電圧は $Ed$、極板Aに比べて極板Bの電位が高い)
補足:なぜ電源電圧は $Ed$ と等しいのか

回路は「直流電源 → 抵抗器 → 平行板極板」の直列接続です。定常状態では極板間に電流が流れないため(絶縁体で隔てられているため)、抵抗器を流れる電流もゼロです。

オームの法則より、抵抗器の電圧降下 $= IR = 0 \times R = 0$ です。

よってキルヒホッフの法則から

$$V_{\text{電源}} = V_{\text{抵抗}} + V_{\text{極板}} = 0 + Ed = Ed$$

もし選択肢に「$Ed$ より大きい」があった場合、それは電流が流れて抵抗で電圧降下がある場合に相当しますが、本問では定常状態なので該当しません。

補足:電場の向きの判定法

方法1:軌道の曲がりから判定

負電荷が入射後に曲がって戻ってくる → 電気力は入射方向と逆(引き戻す向き)→ 負電荷なので電場は電気力と逆向き。

方法2:仕事・エネルギーから判定

粒子が極板Aに近づくとき減速 → 電気力は負の仕事 → 電位エネルギーが増加 → 負電荷にとって極板A側が電位エネルギーの高い側 → 極板B側が高電位。

具体的な計算:例えば R = 10 Ω、V = 20 V のとき、I = V/R = 20/10 = 2.0 A である。消費電力は P = 2.0 × 20 = 40 W、t = 5.0 s 間のジュール熱は Q = 40 × 5.0 = 200 J となる。

Point

「定常状態で極板間に電流が流れない」→ 抵抗での電圧降下ゼロ → 電源電圧 = 極板間電圧 $Ed$。電場の向きは荷電粒子の軌道の曲がり方から判定する。負電荷が引き戻される → 電場は逆向き → 高電位側が判明。

問2:静電気力がした仕事

直感的理解
荷電粒子は極板Bの穴から入り、極板Bの別の穴から出る。つまり電場方向(極板に垂直な方向)の変位はゼロ。静電気力は電場方向にしか働かないので、仕事 $W = F \cdot \Delta x = 0$。斜方投射で「同じ高さに戻ってきたら重力の仕事はゼロ」と同じ。

仕事と変位の関係:

静電気力は電場方向(極板に垂直な方向)にのみ働きます。仕事は

$$W = \vec{F} \cdot \Delta\vec{r} = F \cdot \Delta x_{\perp}$$

ここで $\Delta x_{\perp}$ は極板に垂直な方向(A-B方向)の変位です。

入射と射出の位置:荷電粒子は極板Bの穴から入り、極板Bの別の穴から出ます。つまり

$$\Delta x_{\perp} = 0 \quad \text{(同じ極板から出入り)}$$

したがって

$$W = eE \times 0 = 0$$

これは斜方投射で「同じ高さに戻ってくるとき重力のした仕事はゼロ」と同じ原理です。粒子の運動エネルギーも変化しないので、飛び出した直後の速さは $v_0$ のままです。

答え:⑦ $W = 0$
別解:エネルギー保存則から確認

一様電場中のポテンシャルエネルギーは、極板に垂直な方向の位置のみで決まります。

$$U = (-e) \cdot (-E) \cdot x_{\perp} = eEx_{\perp}$$

入射時と射出時で $x_{\perp}$ が同じ(ともに極板B上)なので $\Delta U = 0$。

エネルギー保存則 $\Delta K + \Delta U = 0$ より $\Delta K = 0$。つまり運動エネルギー変化なし → 仕事 $= 0$。

補足:速度成分ごとの変化

45° 入射なので初速度の成分は

  • 極板に平行な方向(穴の並び方向):$v_{\parallel} = v_0 \cos 45° = \dfrac{v_0}{\sqrt{2}}$(一定、力を受けない)
  • 極板に垂直な方向(A→B方向):$v_{\perp} = v_0 \sin 45° = \dfrac{v_0}{\sqrt{2}}$(静電気力で減速→停止→加速→逆向きに $\dfrac{v_0}{\sqrt{2}}$)

射出時は $v_{\perp}$ の向きが逆転していますが大きさは同じ。よって速さは $v_0$ のまま。射出角度も 45° です。

Point

「同じ極板から出入りする」→ 力の方向の変位ゼロ → 仕事ゼロ。斜方投射で地面に戻るときの重力の仕事と完全にパラレル。この結果から「飛び出した粒子の速さは入射時と同じ $v_0$」という重要な情報が得られ、問3以降で使う。

問3:電場の強さ $E$ を $v_0$ で表す

直感的理解
45° の斜方投射で飛距離が $L$ になる条件を求めるのと同じ。水平方向は等速($v_0 \cos 45°$)、垂直方向は等加速度(加速度 $eE/m$)。「飛距離 = $L$」の条件から $E$ が定まる。

座標設定:極板に平行な方向を $x$ 軸、極板に垂直な方向(BからAに向かう向き)を $y$ 軸とします。

初速度の成分:

$$v_x = v_0 \cos 45° = \frac{v_0}{\sqrt{2}}, \quad v_y = v_0 \sin 45° = \frac{v_0}{\sqrt{2}}$$

加速度:電場方向($y$ 軸負の向き = B方向)に

$$a = \frac{eE}{m} \quad \text{($y$ 軸負方向)}$$

$y$ 方向の運動(等加速度):

$$y(t) = \frac{v_0}{\sqrt{2}} t - \frac{1}{2} \cdot \frac{eE}{m} \cdot t^2$$

粒子が極板Bに戻る条件 $y(T) = 0$ より

$$\frac{v_0}{\sqrt{2}} T = \frac{1}{2} \cdot \frac{eE}{m} \cdot T^2$$ $$T = \frac{2mv_0}{\sqrt{2}\,eE} = \frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE}$$

$x$ 方向の運動(等速):

$$L = v_x \cdot T = \frac{v_0}{\sqrt{2}} \cdot \frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE} = \frac{mv_0^2}{eE}$$

$E$ について解く:

$$\boxed{E = \frac{mv_0^2}{eL}}$$
答え:③ $\displaystyle E = \frac{mv_0^2}{eL}$
別解:斜方投射の飛距離の公式から

斜方投射の飛距離の公式 $R = \dfrac{v_0^2 \sin 2\theta}{g}$ において、重力加速度 $g$ を加速度 $a = eE/m$ に、射角 $\theta = 45°$ に置き換えると

$$L = \frac{v_0^2 \sin 90°}{eE/m} = \frac{mv_0^2}{eE}$$

よって $E = \dfrac{mv_0^2}{eL}$。$\sin 2 \times 45° = \sin 90° = 1$ なので、45° 入射は式が最もシンプルになります。

補足:$\sqrt{2}$ が消える理由

$\cos 45° = \sin 45° = 1/\sqrt{2}$ ですが、飛行時間 $T$ に $\sqrt{2}$ が分子に現れ、$x$ 方向の速度の $1/\sqrt{2}$ と打ち消し合います。

$$L = \underbrace{\frac{v_0}{\sqrt{2}}}_{v_x} \times \underbrace{\frac{\sqrt{2}\,mv_0}{eE}}_{T} = \frac{v_0 \cdot \cancel{\sqrt{2}} \cdot mv_0}{\cancel{\sqrt{2}} \cdot eE} = \frac{mv_0^2}{eE}$$

45° 入射のおかげで $\sqrt{2}$ が完全にキャンセルし、答えに $\sqrt{2}$ が含まれません。選択肢に $\sqrt{2}$ が入ったものが多数ある中で、$\sqrt{2}$ なしの③が正解というのが面白いポイントです。

Point

荷電粒子の一様電場中の運動 = 斜方投射。$x$ 方向は等速、$y$ 方向は等加速度で分解する。45° 入射では $\sin 2\theta = 1$ となり飛距離の式が最もシンプル。$\sqrt{2}$ がキャンセルするので、答えに $\sqrt{2}$ が含まれない選択肢を選ぶのが計算ミスのチェックにもなる。

問4:磁場中の等速円運動 — 力と磁場の向き

直感的理解
磁場中の荷電粒子はローレンツ力を受けて円運動する。点Qは円の最下点(境界から最も遠い点)なので、ローレンツ力は円の中心=境界方向(上向き)を向く。負電荷がこの力を受ける磁場の向きをフレミングの左手の法則で判定する。

装置2の設定:装置1を飛び出した荷電粒子(質量 $m$、電気量 $-e$、速さ $v_0$)が、一様磁場の領域に境界面に垂直に入射し、半円を描いて飛び出します。

点Qでの力の向き:

点Qは半円軌道の最下点(境界面から最も遠い点)です。等速円運動では力は常に円の中心方向(向心力)を向きます。円の中心は境界面上(PとRの中点)にあるので

$$\text{点Qでのローレンツ力は境界方向(上向き)= a の方向}$$

磁場の向きの判定:

点Qでの速度を $v_0$(右向き)、ローレンツ力を上向き(a方向)とします。電気量 $-e$ の粒子に対して

$$\vec{F} = (-e)\vec{v} \times \vec{B}$$

$\vec{F}$ が上向き、$\vec{v}$ が右向きのとき:

$$\therefore \quad \text{磁場の向きは裏から表(紙面手前向き)}$$
答え:②
ウ = a(上向き・境界方向)、エ = 裏から表
別解:軌道の曲がり方から直接判定

粒子は点Pから境界面に垂直(下向き)に入射し、左に曲がって半円を描きます(P → Q → R の順)。

負電荷 $-e$ が下向きに進むとき左に曲がる磁場の向き:

  • 正電荷なら右に曲がるので、負電荷は逆の左に曲がる
  • 正電荷 $+e$ が下向きに進むとき右に曲がる磁場:$\vec{F}$(右)$= (+e)\vec{v}$(下) $\times \vec{B}$。$\vec{v} \times \vec{B}$ が右向きになるには $\vec{B}$ が裏から表
  • 負電荷 $-e$ では力が逆転して左向き → 左に曲がる ✓

あるいは、フレミングの左手の法則(電流の向き = 負電荷の運動と逆向き)を使っても同じ結果が得られます。

補足:ローレンツ力の外積の計算

紙面を $xy$ 平面とし、右を $+x$、上を $+y$、紙面の手前を $+z$ とします。

点Qでの速度:$\vec{v} = v_0 \hat{x}$(右向き)

磁場(裏から表):$\vec{B} = B\hat{z}$(手前向き)

$$\vec{v} \times \vec{B} = v_0 B(\hat{x} \times \hat{z}) = v_0 B(-\hat{y}) = -v_0 B\hat{y} \quad \text{(下向き)}$$ $$\vec{F} = (-e)(\vec{v} \times \vec{B}) = (-e)(-v_0 B\hat{y}) = ev_0 B\hat{y} \quad \text{(上向き ✓)}$$
Point

磁場中の円運動の問題では、①まず円の中心方向を特定(= 向心力の方向)、②次に $\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}$ でベクトル積の向きから磁場の向きを決定。負電荷の場合は $q = -e$ なので外積の結果が反転することに注意。フレミングの左手の法則を使う場合、電流の向きは負電荷の運動と逆向きにとる。

問5:質量 $m'$ の荷電粒子の $PR'$ 間の長さ

直感的理解
「装置1で同じ軌道を描く」条件から、質量が変わると入射速度も変わる。円運動の半径 $r = mv/(eB)$ は質量と速度の両方に依存する。速度の変化を見逃すと誤答になる陥穽がある。

条件の整理:

質量 $m'$ の荷電粒子(電気量 $-e$)を装置1に入射させ、質量 $m$ の粒子と同じ軌道を描くように入射速度 $v_0'$ を調整します。

Step 1:同じ軌道条件から $v_0'$ を求める

問3の結果 $E = mv_0^2/(eL)$ は質量 $m$、速度 $v_0$ の粒子に対するものでした。同じ電場 $E$、同じ極板間隔で同じ軌道を描く条件は

$$E = \frac{m'v_0'^2}{eL}$$

2つの式を等しくおくと

$$\frac{mv_0^2}{eL} = \frac{m'v_0'^2}{eL}$$ $$mv_0^2 = m'v_0'^2$$ $$v_0' = v_0\sqrt{\frac{m}{m'}}$$

Step 2:円運動の半径を求める

磁場中の等速円運動の半径は

$$r = \frac{mv_0}{eB}, \quad r' = \frac{m'v_0'}{eB}$$

$v_0'$ を代入すると

$$r' = \frac{m' \cdot v_0\sqrt{\dfrac{m}{m'}}}{eB} = \frac{v_0\sqrt{m \cdot m'}}{eB}$$

Step 3:$PR'/PR$ の比を求める

$PR = 2r = \dfrac{2mv_0}{eB}$、$PR' = 2r' = \dfrac{2v_0\sqrt{mm'}}{eB}$ なので

$$\frac{PR'}{PR} = \frac{2r'}{2r} = \frac{r'}{r} = \frac{\dfrac{v_0\sqrt{mm'}}{eB}}{\dfrac{mv_0}{eB}} = \frac{\sqrt{mm'}}{m} = \sqrt{\frac{m'}{m}}$$
答え:① $\displaystyle \frac{PR'}{PR} = \sqrt{\frac{m'}{m}}$ 倍
別解:運動エネルギーと半径の関係から

同じ軌道を描くので $mv_0^2 = m'v_0'^2$、つまり運動エネルギーが等しい

$$K = \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}m'v_0'^2$$

円運動の半径 $r = mv/(eB)$ を $K$ で表すと

$$r = \frac{mv}{eB} = \frac{\sqrt{2mK}}{eB}$$

(∵ $K = \frac{1}{2}mv^2 \Rightarrow mv = \sqrt{2mK}$)

$K$ が同じなので

$$\frac{r'}{r} = \frac{\sqrt{2m'K}}{\sqrt{2mK}} = \sqrt{\frac{m'}{m}}$$
補足:$m' > m$ と $m' < m$ の場合の違い

$m' > m$ の場合:

  • $v_0' < v_0$(重いので遅い入射が必要)
  • $r' > r$(運動量 $= m'v_0' = \sqrt{mm'} \cdot v_0 > mv_0$ なので半径は大きい)
  • $PR' > PR$

$m' < m$ の場合:

  • $v_0' > v_0$(軽いので速い入射が必要)
  • $r' < r$(運動量が小さいので半径も小さい)
  • $PR' < PR$

この原理は質量分析器と同じです。同じ運動エネルギーで磁場に入射すると、重い粒子ほど大きな円弧を描きます。

補足:質量分析器との関連

本問の装置は、実際の質量分析器(マススペクトロメーター)と同じ原理です。

  1. 加速部(装置1に相当):電場で荷電粒子を加速。全粒子が同じ運動エネルギーを持つ。
  2. 分離部(装置2に相当):磁場で円運動させる。質量に応じて半径が異なるため、質量ごとに異なる位置に到達する。

到達位置の差($PR' - PR$)から未知の質量を同定できます。例えば同位体の分離に利用されます。

Point

「同じ軌道を描く」= 同じ運動エネルギー($mv_0^2 = m'v_0'^2$)。速度が質量の平方根に反比例して変わることを見逃すと、「質量比がそのまま半径比」と誤答してしまう。半径 $r = mv/(eB) = \sqrt{2mK}/(eB)$ と書き直すと、$K$ が同じとき $r \propto \sqrt{m}$ であることが明確になる。これは質量分析器の原理そのもの。