第2問:力学(台車の直線運動の実験)

解法の指針

台車に載せたスマートフォンの磁気センサーで、レール上の磁石を通過するタイミングを計測し、台車の運動を分析する実験問題です。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1 — 磁石通過時刻と台車の速さ

直感的理解

スマートフォンのセンサーが磁石の真上を通過するとき、磁場の強さがピークになる。ピークの時刻を読み取れば通過時刻がわかる。台車が速いほど短い時間でピークが現れ、ピーク幅も狭くなる。

読み取り:図2(a)のグラフのピーク位置を読み取ります。ピークは磁石の真上をセンサーが通過した時刻に対応します。

グラフを見ると、ピークの頂点は時刻 2.68 s 付近にあります。

$$\text{ア} = 2.68 \text{ s}$$

速さの比較:図2の(a)と(b)を比べます。

ピーク幅が狭い方が通過速度が大きいので、速さが大きいのは(b)のグラフです。

$$\text{ピーク幅} \propto \frac{1}{v} \quad \Longrightarrow \quad \text{幅が狭い方が速い}$$
答え:ア = 2.68、イ = (b)(選択肢 ④)
補足:ピーク幅と速度の関係

磁場の強さ \(B\) はセンサーと磁石の距離 \(r\) に依存し、距離が近いほど大きくなります。台車が速度 \(v\) で移動するとき、磁石付近に滞在する時間は \(\Delta t \fallingdotseq \frac{\ell}{v}\)(\(\ell\) は磁場が顕著に検出される範囲の長さ)です。

$$\Delta t_{\text{ピーク幅}} \fallingdotseq \frac{\ell}{v}$$

したがって速い台車ほどピークが鋭く(幅が狭く)なり、遅い台車ほどピークがなだらか(幅が広く)なります。ピークの高さ(最大磁場強度)はセンサーと磁石の最接近距離で決まるため、速度によらずほぼ同じになります。

別解:通過時刻の選択肢の絞り込み

選択肢のアの値は 2.58、2.68、3.30 の3つです。図2(a)のグラフで横軸を確認すると:

  • 2.58 s はピーク頂点の手前(立ち上がり途中)
  • 2.68 s がちょうどピーク頂点
  • 3.30 s はピークの右側の裾付近

磁石を「ちょうど真横を通過した時刻」はピークの頂点で読み取るため、2.68 s が正解です。

Point

ピークの頂点がセンサーが磁石の真上を通過した瞬間。ピーク幅が狭い方が速い台車に対応する。グラフの「高さ」ではなく「幅」に注目して速度を判断しよう。

問2 — 等速運動と等間隔磁石のグラフ

直感的理解

手で押して離された台車は(空気抵抗を無視すれば)等速直線運動をする。等間隔に置かれた磁石を等速で通過すれば、ピーク間の時間間隔は一定になる。ピークの高さも磁石がすべて同じなので一定。

分析:手で押して原点0で手を離した台車は、その後等速直線運動をします(空気抵抗は無視)。

等速直線運動では、一定間隔 \(\Delta x\) ごとに配置された磁石を通過する時間間隔 \(\Delta t\) は一定です:

$$v = \text{一定} \quad \Longrightarrow \quad \Delta t = \frac{\Delta x}{v} = \text{一定}$$

各磁石は同じ大きさ・同じ向きなので、通過時のピークの高さも同じです。

したがって、グラフは等間隔・等高のピークが5本並ぶ形になります。

$$\text{ピーク間隔} = \frac{x_2 - x_1}{v} = \frac{x_3 - x_2}{v} = \cdots = \text{一定}$$
答え:① (ピーク等間隔・等高)
補足:他の選択肢が不正解な理由

各選択肢の特徴を整理します:

  • :ピーク等間隔・等高 → 等速直線運動に対応 ✓
  • :ピーク等間隔・高さが変化 → 磁石の強さが異なる場合(本問では同一磁石なので不適)
  • :ピーク間隔が狭まる・等高 → 加速運動に対応(問3の状況)
  • :ピーク間隔が狭まる・高さも変化 → 加速+磁石の違い(本問では不適)

等速運動+同一磁石なので、ピーク間隔も高さも一定の①が正解です。

別解:グラフ形状の定性的判断法

磁場の強さのグラフ形状は、以下の2つの要素で決まります:

  1. ピーク間隔:台車の速度変化による
    • 等速 → 等間隔
    • 加速 → 間隔が次第に狭くなる
    • 減速 → 間隔が次第に広がる
  2. ピーク高さ:磁石の種類・センサーとの距離による
    • 同一磁石・同一距離 → 等高
    • 異なる磁石 → 高さが変わる

この2要素の組合せで4パターンの選択肢が構成されています。

Point

等速直線運動 = 等間隔ピーク。速度が一定なら、等間隔に置かれた磁石を通過するまでの時間も一定になる。これが等速直線運動の定義そのもの。

問3 — 加速運動する台車のグラフ

直感的理解

糸でつないだおもりの重力が台車を引っ張り、台車は等加速度運動をする。速度が増すにつれて磁石を通過する時間間隔が短くなるので、ピーク同士の間隔は次第に狭くなる。磁石自体は同じなので、ピークの高さは変わらない。

分析:おもりの重力により糸を通じて台車に一定の力が加わり、台車は等加速度直線運動をします。

加速度 \(a\) で運動する台車の速度は時間とともに増加します:

$$v(t) = v_0 + at \quad (v_0 \fallingdotseq 0)$$

磁石間隔 \(\Delta x\) は一定ですが、速度が増すにつれて通過に要する時間は短くなります:

$$\Delta t_n = \frac{\Delta x}{v_n} \quad \text{(} v_n \text{ は} n \text{番目の磁石通過時の速度)}$$

\(v_1 < v_2 < v_3 < v_4 < v_5\) なので \(\Delta t_1 > \Delta t_2 > \Delta t_3 > \Delta t_4\) となり、ピーク間隔は次第に狭くなります。

磁石はすべて同一なので、ピークの高さは一定です。

答え:② (ピーク間隔が狭まる・等高)
補足:等加速度運動の位置と時間の関係

等加速度運動 \(x = \frac{1}{2}at^2\)(\(v_0 = 0\) の場合)より、\(n\) 番目の磁石位置 \(x_n = n \cdot \Delta x\) に達する時刻 \(t_n\) は:

$$t_n = \sqrt{\frac{2n \cdot \Delta x}{a}}$$

隣接するピーク間の時間差は:

$$\Delta t_n = t_{n+1} - t_n = \sqrt{\frac{2\Delta x}{a}}\left(\sqrt{n+1} - \sqrt{n}\right)$$

\(\sqrt{n+1} - \sqrt{n}\) は \(n\) が大きくなるほど小さくなるため、ピーク間隔が次第に狭くなることが定量的に確認できます。

具体的に \(n = 1, 2, 3, 4\) の比:

$$\sqrt{2}-\sqrt{1} : \sqrt{3}-\sqrt{2} : \sqrt{4}-\sqrt{3} : \sqrt{5}-\sqrt{4}$$ $$= 0.414 : 0.318 : 0.268 : 0.236$$
別解:打点タイマーとの類似性

この実験は、従来の記録タイマー(打点タイマー)を用いた実験の現代版と考えられます。打点タイマーでは一定時間間隔ごとの位置を記録しますが、本問では逆に、一定位置間隔ごとの通過時刻を記録しています。

打点タイマーの紙テープで「打点間隔が広がる」のが加速運動ですが、本実験では「ピーク間隔が狭まる」のが加速運動に対応します。

Point

加速運動ではピーク間隔が次第に狭くなる。速度が増すほど次の磁石に早く到達するため、時間間隔が短縮される。等速運動(問2:等間隔)との違いを明確にしよう。

問4 — v-tグラフの傾きから加速度を求める

直感的理解

\(v\text{-}t\) グラフの傾き(変化率)がそのまま加速度。直線の傾き \(\frac{\Delta v}{\Delta t}\) を読み取るだけで加速度が求まる。グラフが直線であることは、加速度が一定(等加速度運動)であることを意味する。

読み取り:図5の \(v\text{-}t\) グラフから、すべてのデータ点のなるべく近くを通る直線を引き、その傾きを求めます。

グラフから2点を読み取ります(直線上の離れた2点を選ぶと精度が上がります):

$$\text{点1:} (t_1, v_1) \fallingdotseq (2.0, \ 0.40 \ \text{m/s})$$ $$\text{点2:} (t_2, v_2) \fallingdotseq (3.5, \ 1.06 \ \text{m/s})$$

加速度は \(v\text{-}t\) グラフの傾きなので:

$$a = \frac{\Delta v}{\Delta t} = \frac{v_2 - v_1}{t_2 - t_1} = \frac{1.06 - 0.40}{3.5 - 2.0} = \frac{0.66}{1.5} = 0.44 \ \text{m/s}^2$$
答え:\(a = 0.44 \ \text{m/s}^2\)(選択肢 ③)
補足:読み取り点の選び方と精度

傾きの精度を高めるコツ:

  • データ点そのものではなく、近似直線上の点を読む
  • できるだけ離れた2点を選ぶ(\(\Delta t\) が大きいほど誤差が減る)
  • 目盛の切りの良い点で読むと計算ミスを防げる

仮に違う2点 \((1.8, 0.32)\) と \((3.2, 0.94)\) で計算しても:

$$a = \frac{0.94 - 0.32}{3.2 - 1.8} = \frac{0.62}{1.4} = 0.44 \ \text{m/s}^2$$

近似直線上の点を選べば、どこで読んでも同じ傾きが得られます。

別解:選択肢からの消去法

グラフの大まかな見積りから、選択肢を絞ることができます。

\(t = 1.5\) s で \(v \fallingdotseq 0.2\) m/s、\(t = 3.5\) s で \(v \fallingdotseq 1.1\) m/s とすると:

$$a \fallingdotseq \frac{1.1 - 0.2}{3.5 - 1.5} = \frac{0.9}{2.0} = 0.45 \ \text{m/s}^2$$

選択肢で最も近いのは 0.44 m/s²。

他の選択肢との比較:

  • 0.19 m/s² → グラフの傾きとしては緩やかすぎる
  • 0.27 m/s² → まだ小さい
  • 0.44 m/s² → 読み取りと一致 ✓
  • 0.74 m/s² 以上 → 傾きとしては急すぎる
補足:加速度の物理的意味

この加速度 \(a = 0.44\) m/s² は、おもりの重力が台車を加速した結果です。台車+おもりの系で運動方程式を立てると:

$$(M + m)a = mg$$

ここで \(M\) は台車の質量、\(m\) はおもりの質量です。加速度が \(g = 9.8\) m/s² よりはるかに小さいのは、おもりの質量が台車の質量に比べて十分小さいためです:

$$a = \frac{m}{M + m} g \fallingdotseq 0.44 \text{ m/s}^2 \quad \Longrightarrow \quad \frac{m}{M+m} \fallingdotseq \frac{0.44}{9.8} \fallingdotseq 0.045$$

おもりの質量は台車の質量の約 \(\frac{1}{21}\) ということがわかります。

Point

\(v\text{-}t\) グラフの傾き = 加速度。傾きを求めるときは、データ点ではなく近似直線上のなるべく離れた2点を使うと精度が高くなる。単位は \(\frac{\text{m/s}}{\text{s}} = \text{m/s}^2\)。