大問1(力学)— ばねつき小球と台・壁の反発衝突

解法の指針

質量 \(M\) の台の上で、ばね(ばね定数 \(k\))につながれた小球(質量 \(m\))が台の右壁と反発係数 \(e\) で衝突する。台は固定されている場合と自由に動ける場合の 2 シナリオで、エネルギー・運動量・単振動の観点から運動を分析する総合問題。

着眼点

全体を貫くポイント

数値例で感覚をつかむ

抽象的な文字式だけだと感覚がつかみにくいので、仮に \(m = 0.10\) kg, \(M = 0.30\) kg, \(k = 40\) N/m, \(d = 0.10\) m, \(v_0 = 3.0\) m/s, \(e = 0.80\) とおいて主要量を計算してみよう(答えの形は覚える必要なし、オーダー感覚のため):

$$v_1 = d\sqrt{k/m} = 0.10 \times \sqrt{40/0.10} = 0.10 \times 20 = 2.0\text{ m/s}$$

\(v_0 = 3.0 > v_1 = 2.0\) なので壁に届く。衝突直前の速さは \(v = \sqrt{9.0 - 4.0} = \sqrt{5.0} = 2.24\) m/s。ばね最大縮みは \(d_1 = \sqrt{0.64(3.0^2 \times 0.10/40 - 0.01) + 0.01} = \sqrt{0.64 \times 0.0125 + 0.01} = \sqrt{0.018} = 0.134\) m。

問1 (4) の最終エネルギーは \(E_1 = 0.5 \times 40 \times 0.01 = 0.20\) J。初期 \(E_0 = 0.5 \times 0.10 \times 9.0 = 0.45\) J の 約 44 % まで減衰することがわかる。

問1 (1) 壁衝突直前の小球の速さ \(v\)

直感的理解
台が固定されているのでばねも固定端として働く。小球は O から右壁 \(x=d\) までばねを伸ばしながら進む。運動エネルギーの一部はばねの弾性エネルギーに取られるので、壁到達時の速さは初速 \(v_0\) より小さい。エネルギー保存で一発。

立式:台は床に固定されているので、ばねの左端は静止端。非保存力は働かないので、自然長位置 O(\(x=0\))と右壁到達位置(\(x=d\))の間で力学的エネルギー保存則が成り立つ。

$$\frac{1}{2}m v_0^2 = \frac{1}{2}m v^2 + \frac{1}{2}k d^2$$

整理:両辺を \(2/m\) 倍して

$$v^2 = v_0^2 - \frac{k d^2}{m}$$

したがって壁に衝突する直前の速さは

$$v = \sqrt{v_0^2 - \frac{k d^2}{m}}$$
答え: \(\displaystyle v = \sqrt{v_0^2 - \dfrac{k d^2}{m}}\)
補足:なぜ台を通しての仕事を考えなくてよいのか

ばねの両端が小球と「固定された台」なので、ばねのエネルギーは両端の相対位置のみで決まる。台が動かないのでばねの中心も動かず、ばね全体の運動エネルギーは 0。小球の運動エネルギー減少分がすべてばねの弾性エネルギー増加になる。

Point なめらかな面・ばねは保存系。非保存力(ここでは壁衝突のみ)が入らない区間では機械的エネルギー保存則を式 1 本で使い切ろう。

問1 (2) 壁に届く最低初速 \(v_1\)

直感的理解
小球がぎりぎり壁に届くとき(\(v=0\) で \(x=d\) に到達)が最低初速。エネルギー保存で \(\frac{1}{2}mv_1^2 = \frac{1}{2}kd^2\) とおけば \(v_1\) が出る。\(v_0 > v_1\) なら壁に届いて衝突する。

立式:小球がちょうど壁に届く瞬間の速さを \(0\) とし、O から \(x=d\) までのエネルギー保存を書く。

$$\frac{1}{2}m v_1^2 = \frac{1}{2}k d^2$$

解く:両辺を \(2/m\) 倍して平方根をとる。

$$v_1^2 = \frac{k d^2}{m} \quad\Longrightarrow\quad v_1 = d\sqrt{\frac{k}{m}}$$

これで (1) の結果は \(v = \sqrt{v_0^2 - v_1^2}\) と書き直せ、\(v_0 > v_1\) のときに限り実数になる(壁に届く条件)ことが見てとれる。

答え: \(\displaystyle v_1 = d\sqrt{\dfrac{k}{m}}\)
補足:\(v_0 = v_1\) のとき何が起こる?

ちょうど壁で速さが 0 になるので、衝突せず(静かに壁に触れるだけ)、ばねに押し戻されて O まで戻り、再び右へ進み…と永遠に単振動する。振幅はちょうど \(d\)。

Point 「ちょうど到達する条件」は終端速度=0とおくのが鉄則。極限条件をエネルギー等式に落とし込む典型パターン。

問1 (3) 衝突後のばねの縮みの最大値 \(d_1\)

直感的理解
壁衝突の直後、小球の速さは \(ev\)(逆向き)。小球は自然長位置 O を通過するときの速さはこの \(ev\) のまま(ばね位置でエネルギー保存)…ではなく、壁の位置 \(x=d\) でばねはすでに伸び \(d\) の弾性エネルギーをもっている。衝突直後からばねが縮みつつ小球を左に押し、自然長を越えて縮み \(d_1\) で再び瞬間停止する。エネルギー保存で解く。

壁衝突直後の速さ:反発係数の定義(壁は静止)より、衝突直後の小球の速さは \(ev\)(向きは \(-x\))。その位置はまだ \(x=d\) で、ばねは伸び \(d\) の弾性エネルギーをもっている。

立式:衝突直後(\(x=d\), 速さ \(ev\))からばね最大縮み位置(\(x=-d_1\), 速さ \(0\))まで力学的エネルギー保存則を適用。

$$\frac{1}{2}m(ev)^2 + \frac{1}{2}k d^2 = 0 + \frac{1}{2}k d_1^2$$

整理:両辺を \(2\) 倍して

$$m e^2 v^2 + k d^2 = k d_1^2$$

(1) の結果 \(v^2 = v_0^2 - \dfrac{kd^2}{m}\) を代入して \(m e^2 v^2 = e^2(m v_0^2 - k d^2)\)、よって

$$k d_1^2 = e^2(m v_0^2 - k d^2) + k d^2$$

\(e<1\) なのでこのままでは整理しづらい。(4) との流れを見やすくするため、\(mv^2 = mv_0^2 - kd^2\) を用いて次のように書ける:

$$d_1^2 = \frac{e^2 m v^2}{k} + d^2 - d^2 \cdot (1 - 1) \cdot \text{(略)}$$

より厳密に両辺を整理すると、

$$d_1 = \sqrt{\frac{e^2 m v^2}{k} + \frac{(1-e^2)\cdot 0}{1}} \cdot \text{ではなく、} \quad d_1^2 = \frac{m(ev)^2}{k} + d^2 - d^2$$

ここで「衝突直後のエネルギー = 衝突直前のエネルギー × \(e^2\)」の関係を使うと簡潔。衝突直前のエネルギーは \(\frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}kd^2 = \frac{1}{2}mv_0^2\)(初期と同じ、エネルギー保存)。衝突直後の全エネルギーは運動エネルギー分だけが \(e^2\) 倍

$$E_{\text{衝突直後}} = \frac{1}{2}m(ev)^2 + \frac{1}{2}k d^2$$

最大縮み位置では運動エネルギーが 0 なので、これがすべてばねの弾性エネルギー \(\frac{1}{2}k d_1^2\) に等しい:

$$\frac{1}{2}m e^2 v^2 + \frac{1}{2}k d^2 = \frac{1}{2}k d_1^2 \;\Longrightarrow\; d_1^2 = \frac{m e^2 v^2}{k} + d^2$$

(1) の \(m v^2 = m v_0^2 - k d^2\) を代入して、

$$d_1^2 = e^2\left(\frac{m v_0^2}{k} - d^2\right) + d^2$$

よって

$$d_1 = \sqrt{e^2\left(\frac{m v_0^2}{k} - d^2\right) + d^2}$$
答え: \(\displaystyle d_1 = \sqrt{\,e^2\left(\dfrac{m v_0^2}{k} - d^2\right) + d^2\,}\)
補足:\(e=1\)(完全弾性衝突)の場合の確認

\(e=1\) なら \(d_1 = \sqrt{m v_0^2/k}\)。これは \(v_0\) の運動エネルギー全部がばねに蓄えられたときの縮みと同じで、エネルギー損失が 0 だから衝突前の単純な単振動の最大振幅に一致する。物理的に整合。

\(e=0\) なら \(d_1 = d\)。衝突で速さ 0 になり、そこからばねが \(d\) だけ伸びた状態から単振動するので最大縮みは \(-d\)(壁から見て振幅 \(d\))。これも整合。

Point 反発係数 \(e\) が絡む衝突では、運動エネルギーだけが \(e^2\) 倍に減り、ばねの弾性エネルギーは衝突で変化しない(衝突は瞬間的で位置は変わらないから)。衝突直後のエネルギーを正しく書けるかが勝負。

問1 (4) 十分時間後の力学的エネルギー \(E_1\)

直感的理解
衝突のたびに運動エネルギーは \(e^2\) 倍。壁に何回も衝突するうちに、壁に届かなくなるほど振幅が小さくなる。ちょうど壁に触れなくなる限界は振幅 = \(d\)。このとき全エネルギー \(\frac{1}{2}kd^2\)(最大変位でのばねのみ)。

考え方:衝突のたびに運動エネルギーが \(e^2\) 倍になるので、衝突するたびに壁直前の速さ \(v\) は \(v_n = e^n v\) と小さくなり、対応するばねの最大伸び(振幅側)も減っていく。無限回衝突後の極限では、もはや壁にぎりぎり届かない状態=振幅 \(d\) の単振動になる。

なぜ振幅 \(d\) に収束するか:もし振幅が \(d\) より小さければ、衝突が永遠に起きず、振幅 \(d\) 未満の単振動のまま保存される(保存系)。逆に振幅が \(d\) を超えると次の衝突でまたエネルギーが減る。したがって極限は「振幅がちょうど \(d\)」、すなわち壁にちょうど触れる(または触れない)単振動

立式:振幅 \(d\) の単振動の最大弾性エネルギーは

$$E_1 = \frac{1}{2} k \, d^2$$

これを小球+ばね系のエネルギーと等置すれば終わり(小球は最大変位で速さ 0、ばねは最大伸び \(d\))。

答え: \(\displaystyle E_1 = \dfrac{1}{2} k d^2\)
補足:衝突回数が有限でも厳密に \(E_1\) に収束する?

衝突直前の速さは \(v_n = e^n v\) で等比的に減るが、0 にはならない。しかし衝突直後の運動エネルギー \(\frac{1}{2}m v_n^2 e^2 = \frac{1}{2}m v^2 e^{2(n+1)} \to 0\)。よって \(n \to \infty\) で運動エネルギー → 0、ばねの伸びの到達点 → \(d\)、総エネルギー → \(\frac{1}{2}kd^2\)。

現実には「ちょうど \(d\) の振幅」に厳密に一致するまでには無限回かかるが、十分に大きい \(n\) で近似的に \(E_1\) に十分近づく。

Point 反発衝突のある単振動の最終状態:「壁に届かない限界の振幅 = \(d\)」 がキー。幾何学的条件(振幅)がそのままエネルギー境界を決める。

問2 台が自由に動けるときの穴埋め ①〜⑥

直感的理解
台の固定を外すと、ばねは小球を右に引くと同時に台を左に引く反作用を受ける。小球が x 方向にばねを伸ばすと、台はその反作用で同方向(実は 2 体系の重心を挟んで逆方向)に加速する。台とともに動く観測者(非慣性系)にとっては、慣性力を含めた運動方程式が単振動になる。換算質量 \(\mu = \dfrac{mM}{m+M}\) を使うと単純。

① 台の運動方程式 \(MA = \)? 小球が \(x\) を通過するとき、ばねの伸びは \(x - x_{\text{cart}}\) だが、ここでは地面基準での小球位置 \(x\) を使い、台はまだ初期位置から大きく動いていないとしてばねの伸び ≒ \(x\)(厳密には台基準での伸び)。ばねは台の左壁を \(+x\) 向きに引くので:

$$MA = k x \quad \text{→ ①} = \boxed{k x}$$

② 台共系での小球の運動方程式 \(m a = \)? 台の加速度 \(A\) に対して慣性力 \(-mA\) が加わる。台共系で見たばねの伸びはやはり \(x\)(台基準での座標)。ばねの復元力は \(-kx\)。

$$ma = -kx - mA \quad \text{→ ②} = \boxed{-kx - mA}$$

③ A を消去した単振動の運動方程式 ① より \(A = kx/M\)。②に代入して

$$ma = -kx - m\cdot\frac{kx}{M} = -k\left(1+\frac{m}{M}\right)x = -\frac{k(m+M)}{M} x$$

両辺を \(m\) で割って

$$a = -\frac{k(m+M)}{mM} x$$

④ 振動中心:\(a \propto -x\) の形なので中心は \(x=0\)。

$$\text{④} = \boxed{0}$$

⑤ 角振動数:\(a = -\omega^2 x\) と比較して

$$\omega^2 = \frac{k(m+M)}{mM} \;\Longrightarrow\; \omega = \sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}\quad \text{→ ⑤} = \boxed{\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}}$$

⑥ 壁衝突の最低初速 \(v_1\)(問 2 の記号):単振動の初期条件は \(x=0, \dot x = v_0\) なので、振幅 \(X = v_0/\omega\)。壁到達の条件 \(X \ge d\)、すなわち

$$v_0 \ge \omega d \;\Longrightarrow\; v_1 = \omega d = d\sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}\quad \text{→ ⑥} = \boxed{d\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}}$$

以降、この \(v_1\) を問 2 の \(v_2\) と同一視する(記号の都合上、問題文では \(v_2\) を使う):\(v_2 = d\sqrt{k(m+M)/(mM)}\)。

答え:
① \(kx\) / ② \(-kx - mA\) / ③(A 消去後)\(-\dfrac{k(m+M)}{M}x\) / ④ \(0\) / ⑤ \(\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}\) / ⑥ \(v_2 = d\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}\)
別解:換算質量 \(\mu\) で一発

2 体系の相対運動は換算質量 \(\mu = \dfrac{mM}{m+M}\) を使って、相対座標 \(r = x_{\text{ball}} - x_{\text{cart}}\) について

$$\mu \ddot r = -k(r - r_0)$$

と書ける(\(r_0\) は自然長)。これは単純な単振動で

$$\omega = \sqrt{\frac{k}{\mu}} = \sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}$$

となる。非慣性系の慣性力を扱わずに済む上、物理的意味(「2 体系は換算質量を持った 1 体に等価」)も明快。

Point 自由に動ける台の上でのばね振動は換算質量で角振動数を出すのが速い。穴埋め形式では求められたとおりに「慣性力を含む運動方程式」で解き、検算に換算質量法を使うと間違いが減る。

問3 (1) 単振動の振幅

直感的理解
振幅 \(X = v_0/\omega\) で、\(v_0 = 2v_2\)、\(v_2 = \omega d\) だから \(v_0/\omega = 2d\)。壁の位置 \(d\) より振幅が大きいので、小球は壁に衝突する前に十分な「加速分」を持っている。

立式:台共系では小球は \(x=0\) を中心とした角振動数 \(\omega\) の単振動で、初期条件は \(x(0)=0, \dot x(0) = v_0\)。

$$x(t) = \frac{v_0}{\omega}\sin(\omega t), \qquad \dot x(t) = v_0 \cos(\omega t)$$

振幅の値:\(v_0 = 2v_2 = 2\omega d\) を代入して

$$X = \frac{v_0}{\omega} = \frac{2\omega d}{\omega} = 2d$$
答え: 振幅 \(= 2d\)
補足:振幅とエネルギーの関係

単振動の全エネルギーは \(\frac{1}{2}\mu \omega^2 X^2\)(\(\mu\) は換算質量)。振幅 \(X\) が 2 倍ならエネルギーは 4 倍。実際、初期運動エネルギーは \(\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}m(2v_2)^2 = 2 m v_2^2\)。地上系では台の運動エネルギーも加わるので注意。

Point 単振動の振幅は初期条件(位置と速度)で決まる。ここでは初期位置 0、初期速度 \(v_0\) なので振幅 \(= v_0/\omega\)。

問3 (2) 衝突直前・直後の速度(台共系)

直感的理解
単振動は等速円運動の正射影。振幅 \(2d\) の円を考え、影が \(x=d\) を横切る瞬間の円運動での位置から接線速度の射影を読めば、衝突直前の速さが出る。あとは反発係数を掛ければ直後の速さ。

等速円運動の正射影法:振幅 \(2d\)、角振動数 \(\omega\) の単振動は、半径 \(2d\) で角速度 \(\omega\) の等速円運動の影。\(x = 2d \sin(\omega t)\) と書く。壁の位置 \(x = d\) に達するのは

$$2d \sin(\omega t) = d \;\Longrightarrow\; \sin(\omega t) = \frac{1}{2} \;\Longrightarrow\; \omega t = \frac{\pi}{6}$$

(\(+\)方向に進む最初の到達時点)。このとき小球の速度は

$$\dot x = 2d\,\omega \cos(\omega t) = 2d\,\omega \cos\frac{\pi}{6} = 2d\omega \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \sqrt{3}\,d\,\omega$$

ここで \(d\omega = v_2\) なので、

$$\dot x_{\text{直前}} = \sqrt{3}\, v_2$$

衝突直後:壁は台に固定されており、台共系では壁は静止している。反発係数の定義(壁静止)より、衝突直後の速さは \(e\) 倍、向きは逆転。

$$\dot x_{\text{直後}} = -\sqrt{3}\, e\, v_2$$
答え:
別解:エネルギー保存から直接求める

台共系でのエネルギー保存(ばね位置の弾性エネルギー + 運動エネルギー)で:

$$\frac{1}{2}\mu v_0^2 = \frac{1}{2}\mu v_{\text{壁}}^2 + \frac{1}{2}k d^2$$

ここで \(v_0 = 2v_2\) を代入、\(\mu\omega^2 = k\) を使って

$$v_{\text{壁}}^2 = 4 v_2^2 - \frac{k d^2}{\mu} = 4v_2^2 - \omega^2 d^2 = 4 v_2^2 - v_2^2 = 3 v_2^2$$ $$v_{\text{壁}} = \sqrt{3}\,v_2$$

同じ結果が得られる。円運動の正射影法とエネルギー保存はどちらも覚えておく価値あり。

Point 単振動の中の任意の位置での速さは、\(v = \omega\sqrt{X^2 - x^2}\)(\(X\) は振幅)で即答できる公式が便利。ここでは \(\omega\sqrt{(2d)^2 - d^2} = \omega d\sqrt{3} = \sqrt{3}v_2\)。

問3 (3) \(E_2 - E_1\)

直感的理解
台が自由になると系全体の運動量 \(mv_0\) が保存される。どれだけ衝突してもこれは変わらない。一方、衝突は台共系でのエネルギーを減らす。十分時間後の全エネルギーは「重心並進 KE」+「ばね+相対運動の残りエネルギー = \(\frac{1}{2}kd^2\)」

重心速度の計算:初期状態は小球 \(v_0 = 2v_2\)、台 \(0\)。系全体の運動量保存:

$$p_{\text{tot}} = m v_0 = 2 m v_2$$ $$V_G = \frac{p_{\text{tot}}}{m+M} = \frac{2 m v_2}{m+M}$$

重心並進の運動エネルギー:

$$K_G = \frac{1}{2}(m+M) V_G^2 = \frac{1}{2}(m+M)\left(\frac{2m v_2}{m+M}\right)^2 = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M}$$

相対運動の最終エネルギー:重心系で見ると、問 1 と同じ構造の「壁+ばね+小球(換算質量 \(\mu\))」の問題に帰着する。相対運動は衝突ごとに \(e^2\) 倍に減衰し、最終的に振幅が \(d\) に収束する単振動になる。最終エネルギーは振幅 \(d\) のばね弾性エネルギー:

$$E_{\text{rel, final}} = \frac{1}{2} k d^2$$

全エネルギー \(E_2\)

$$E_2 = K_G + E_{\text{rel, final}} = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M} + \frac{1}{2} k d^2$$

\(E_2 - E_1\):問 1 (4) より \(E_1 = \frac{1}{2}k d^2\) なので、相対運動部分は打ち消しあって

$$E_2 - E_1 = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M}$$
答え: \(\displaystyle E_2 - E_1 = \dfrac{2 m^2 v_2^2}{m+M}\)
補足:なぜ相対運動の最終エネルギーは \(\frac{1}{2}kd^2\) なのか

重心系で見ると、台も小球も「重心」を中心に運動し、ばねは両者を結ぶ 1 次元ばねとして働く(換算質量 \(\mu\) の 1 体問題に等価)。壁は台に固定されているので、重心系でも台の右壁は(台とともに動いているが)相対座標で「壁の位置=\(d\)」。したがって問 1 と全く同じ構造で、衝突のたびに相対運動のエネルギーが \(e^2\) 倍になり、振幅が \(d\) に収束する。最終エネルギーは \(\frac{1}{2}kd^2\)。

Point 「台が動ける系」では重心運動と相対運動に分離するのが定石。重心並進は保存(損失なし)、相対運動だけが衝突で減衰する。

問4 (1) ばねを外した場合:\(n\) 回衝突後の速さ

直感的理解
ばねがないので、衝突と衝突の間は小球も台も等速直線運動。台共系で見ると、衝突のたびに小球の速さが \(e\) 倍になる(壁は台に固定されているので台共系で静止)。方向は反転。初期速さは(台静止だから)台共系でも \(v_0\)。

台共系での衝突の扱い:台に固定された左右の壁は、台共系で見れば静止した剛壁。壁との反発係数は \(e\)。よって台共系では、1 回の壁衝突で小球の速さは \(e\) 倍、向きは反転する。衝突と衝突の間は外力ゼロ(ばねなし)なので、台共系でも小球は等速直線運動。

台共系での初期速度:初期は台が静止しているので、地上系と台共系で同じ \(v_0\)。

衝突のたびに:

$$|v^{(1)}| = e v_0,\quad |v^{(2)}| = e^2 v_0,\quad \ldots,\quad |v^{(n)}| = e^n v_0$$

一般式

$$\boxed{\,|v^{(n)}| = e^n v_0\,}$$
答え: \(\displaystyle e^n v_0\)
補足:なぜ台共系で衝突を考えるのが楽か

地上系では壁(台に付属)が動いているので、反発係数の式は \((v_{\text{ball}}' - v_{\text{wall}}') = -e(v_{\text{ball}} - v_{\text{wall}})\) と少しややこしい。台共系なら壁は常に静止で、単純に \(v'_{\text{ball}} = -e\, v_{\text{ball}}\)。これを衝突ごとに \(n\) 回繰り返すだけ。

運動量と反発係数から地上系で解くこともできるが、\(v_{\text{ball}}' = \frac{(m-eM)v_{\text{ball}} + (1+e)M v_{\text{cart}}}{m+M}\) のような複雑な式になる。台共系を使うと手数が激減する。

Point 剛体壁が並進運動している系では、壁に乗った観測者の視点(台共系)で考えると衝突が単純化する。反発係数の定義は「両者の相対速度」で書ける。

問4 (2) 十分時間後の力学的エネルギー \(E_3\)

直感的理解
問 4 (1) で示した通り、台共系での小球の速さは \(e^n v_0 \to 0\)(\(n\to\infty\))。つまり無限回衝突後、小球と台は同じ速度で一緒に動く。全運動量保存から共通速度が決まり、力学的エネルギーは重心並進のみ。

最終速度:全運動量は保存。初期運動量 \(p = m v_0\)(台は静止)。最終状態では台と小球が同じ速度 \(V_f\) で動く。

$$m v_0 = (m + M) V_f \;\Longrightarrow\; V_f = \frac{m v_0}{m + M}$$

最終エネルギー:ばねがないので弾性エネルギーはゼロ。運動エネルギーのみ。

$$E_3 = \frac{1}{2}(m + M) V_f^2 = \frac{1}{2}(m+M)\left(\frac{m v_0}{m+M}\right)^2 = \frac{m^2 v_0^2}{2(m+M)}$$

別表現:\(E_3 = \dfrac{m}{m+M}\cdot \dfrac{1}{2} m v_0^2\)、すなわち初期運動エネルギーの \(\dfrac{m}{m+M}\) 倍が重心並進として残る。残り \(\dfrac{M}{m+M}\) 倍は衝突で熱として失われる。

答え: \(\displaystyle E_3 = \dfrac{m^2 v_0^2}{2(m+M)}\)
補足:完全非弾性衝突 1 回との比較

\(e = 0\) なら 1 回目の衝突で小球と台が一体化し、即座に \(E_3\) に到達する。実際、\(e = 0\) を問 4 (1) に代入すると \(|v^{(1)}| = 0\)、すなわち台共系で小球が停止=地上系で台と同じ速度=重心速度。

\(0 < e < 1\) の場合は無限回衝突で漸近的に \(E_3\) に収束するが、最終的なエネルギーは \(e\) に依存せず同じ値になる(運動量保存のみで決まる)。これは意外と覚えておくと便利な結果。

Point ばねなしの系で無限回反発衝突が起きる場合の最終状態は、完全非弾性衝突と同じ結果になる(運動量保存のみで共通速度が決まり、それ以上の相対運動はなくなる)。反発係数 \(e\) の値によらず \(E_3\) は同じ。