質量 \(M\) の台の上で、ばね(ばね定数 \(k\))につながれた小球(質量 \(m\))が台の右壁と反発係数 \(e\) で衝突する。台は固定されている場合と自由に動ける場合の 2 シナリオで、エネルギー・運動量・単振動の観点から運動を分析する総合問題。
抽象的な文字式だけだと感覚がつかみにくいので、仮に \(m = 0.10\) kg, \(M = 0.30\) kg, \(k = 40\) N/m, \(d = 0.10\) m, \(v_0 = 3.0\) m/s, \(e = 0.80\) とおいて主要量を計算してみよう(答えの形は覚える必要なし、オーダー感覚のため):
$$v_1 = d\sqrt{k/m} = 0.10 \times \sqrt{40/0.10} = 0.10 \times 20 = 2.0\text{ m/s}$$\(v_0 = 3.0 > v_1 = 2.0\) なので壁に届く。衝突直前の速さは \(v = \sqrt{9.0 - 4.0} = \sqrt{5.0} = 2.24\) m/s。ばね最大縮みは \(d_1 = \sqrt{0.64(3.0^2 \times 0.10/40 - 0.01) + 0.01} = \sqrt{0.64 \times 0.0125 + 0.01} = \sqrt{0.018} = 0.134\) m。
問1 (4) の最終エネルギーは \(E_1 = 0.5 \times 40 \times 0.01 = 0.20\) J。初期 \(E_0 = 0.5 \times 0.10 \times 9.0 = 0.45\) J の 約 44 % まで減衰することがわかる。
立式:台は床に固定されているので、ばねの左端は静止端。非保存力は働かないので、自然長位置 O(\(x=0\))と右壁到達位置(\(x=d\))の間で力学的エネルギー保存則が成り立つ。
$$\frac{1}{2}m v_0^2 = \frac{1}{2}m v^2 + \frac{1}{2}k d^2$$整理:両辺を \(2/m\) 倍して
$$v^2 = v_0^2 - \frac{k d^2}{m}$$したがって壁に衝突する直前の速さは
$$v = \sqrt{v_0^2 - \frac{k d^2}{m}}$$ばねの両端が小球と「固定された台」なので、ばねのエネルギーは両端の相対位置のみで決まる。台が動かないのでばねの中心も動かず、ばね全体の運動エネルギーは 0。小球の運動エネルギー減少分がすべてばねの弾性エネルギー増加になる。
立式:小球がちょうど壁に届く瞬間の速さを \(0\) とし、O から \(x=d\) までのエネルギー保存を書く。
$$\frac{1}{2}m v_1^2 = \frac{1}{2}k d^2$$解く:両辺を \(2/m\) 倍して平方根をとる。
$$v_1^2 = \frac{k d^2}{m} \quad\Longrightarrow\quad v_1 = d\sqrt{\frac{k}{m}}$$これで (1) の結果は \(v = \sqrt{v_0^2 - v_1^2}\) と書き直せ、\(v_0 > v_1\) のときに限り実数になる(壁に届く条件)ことが見てとれる。
ちょうど壁で速さが 0 になるので、衝突せず(静かに壁に触れるだけ)、ばねに押し戻されて O まで戻り、再び右へ進み…と永遠に単振動する。振幅はちょうど \(d\)。
壁衝突直後の速さ:反発係数の定義(壁は静止)より、衝突直後の小球の速さは \(ev\)(向きは \(-x\))。その位置はまだ \(x=d\) で、ばねは伸び \(d\) の弾性エネルギーをもっている。
立式:衝突直後(\(x=d\), 速さ \(ev\))からばね最大縮み位置(\(x=-d_1\), 速さ \(0\))まで力学的エネルギー保存則を適用。
$$\frac{1}{2}m(ev)^2 + \frac{1}{2}k d^2 = 0 + \frac{1}{2}k d_1^2$$整理:両辺を \(2\) 倍して
$$m e^2 v^2 + k d^2 = k d_1^2$$(1) の結果 \(v^2 = v_0^2 - \dfrac{kd^2}{m}\) を代入して \(m e^2 v^2 = e^2(m v_0^2 - k d^2)\)、よって
$$k d_1^2 = e^2(m v_0^2 - k d^2) + k d^2$$\(e<1\) なのでこのままでは整理しづらい。(4) との流れを見やすくするため、\(mv^2 = mv_0^2 - kd^2\) を用いて次のように書ける:
$$d_1^2 = \frac{e^2 m v^2}{k} + d^2 - d^2 \cdot (1 - 1) \cdot \text{(略)}$$より厳密に両辺を整理すると、
$$d_1 = \sqrt{\frac{e^2 m v^2}{k} + \frac{(1-e^2)\cdot 0}{1}} \cdot \text{ではなく、} \quad d_1^2 = \frac{m(ev)^2}{k} + d^2 - d^2$$ここで「衝突直後のエネルギー = 衝突直前のエネルギー × \(e^2\)」の関係を使うと簡潔。衝突直前のエネルギーは \(\frac{1}{2}mv^2 + \frac{1}{2}kd^2 = \frac{1}{2}mv_0^2\)(初期と同じ、エネルギー保存)。衝突直後の全エネルギーは運動エネルギー分だけが \(e^2\) 倍で
$$E_{\text{衝突直後}} = \frac{1}{2}m(ev)^2 + \frac{1}{2}k d^2$$最大縮み位置では運動エネルギーが 0 なので、これがすべてばねの弾性エネルギー \(\frac{1}{2}k d_1^2\) に等しい:
$$\frac{1}{2}m e^2 v^2 + \frac{1}{2}k d^2 = \frac{1}{2}k d_1^2 \;\Longrightarrow\; d_1^2 = \frac{m e^2 v^2}{k} + d^2$$(1) の \(m v^2 = m v_0^2 - k d^2\) を代入して、
$$d_1^2 = e^2\left(\frac{m v_0^2}{k} - d^2\right) + d^2$$よって
$$d_1 = \sqrt{e^2\left(\frac{m v_0^2}{k} - d^2\right) + d^2}$$\(e=1\) なら \(d_1 = \sqrt{m v_0^2/k}\)。これは \(v_0\) の運動エネルギー全部がばねに蓄えられたときの縮みと同じで、エネルギー損失が 0 だから衝突前の単純な単振動の最大振幅に一致する。物理的に整合。
\(e=0\) なら \(d_1 = d\)。衝突で速さ 0 になり、そこからばねが \(d\) だけ伸びた状態から単振動するので最大縮みは \(-d\)(壁から見て振幅 \(d\))。これも整合。
考え方:衝突のたびに運動エネルギーが \(e^2\) 倍になるので、衝突するたびに壁直前の速さ \(v\) は \(v_n = e^n v\) と小さくなり、対応するばねの最大伸び(振幅側)も減っていく。無限回衝突後の極限では、もはや壁にぎりぎり届かない状態=振幅 \(d\) の単振動になる。
なぜ振幅 \(d\) に収束するか:もし振幅が \(d\) より小さければ、衝突が永遠に起きず、振幅 \(d\) 未満の単振動のまま保存される(保存系)。逆に振幅が \(d\) を超えると次の衝突でまたエネルギーが減る。したがって極限は「振幅がちょうど \(d\)」、すなわち壁にちょうど触れる(または触れない)単振動。
立式:振幅 \(d\) の単振動の最大弾性エネルギーは
$$E_1 = \frac{1}{2} k \, d^2$$これを小球+ばね系のエネルギーと等置すれば終わり(小球は最大変位で速さ 0、ばねは最大伸び \(d\))。
衝突直前の速さは \(v_n = e^n v\) で等比的に減るが、0 にはならない。しかし衝突直後の運動エネルギー \(\frac{1}{2}m v_n^2 e^2 = \frac{1}{2}m v^2 e^{2(n+1)} \to 0\)。よって \(n \to \infty\) で運動エネルギー → 0、ばねの伸びの到達点 → \(d\)、総エネルギー → \(\frac{1}{2}kd^2\)。
現実には「ちょうど \(d\) の振幅」に厳密に一致するまでには無限回かかるが、十分に大きい \(n\) で近似的に \(E_1\) に十分近づく。
① 台の運動方程式 \(MA = \)? 小球が \(x\) を通過するとき、ばねの伸びは \(x - x_{\text{cart}}\) だが、ここでは地面基準での小球位置 \(x\) を使い、台はまだ初期位置から大きく動いていないとしてばねの伸び ≒ \(x\)(厳密には台基準での伸び)。ばねは台の左壁を \(+x\) 向きに引くので:
$$MA = k x \quad \text{→ ①} = \boxed{k x}$$② 台共系での小球の運動方程式 \(m a = \)? 台の加速度 \(A\) に対して慣性力 \(-mA\) が加わる。台共系で見たばねの伸びはやはり \(x\)(台基準での座標)。ばねの復元力は \(-kx\)。
$$ma = -kx - mA \quad \text{→ ②} = \boxed{-kx - mA}$$③ A を消去した単振動の運動方程式 ① より \(A = kx/M\)。②に代入して
$$ma = -kx - m\cdot\frac{kx}{M} = -k\left(1+\frac{m}{M}\right)x = -\frac{k(m+M)}{M} x$$両辺を \(m\) で割って
$$a = -\frac{k(m+M)}{mM} x$$④ 振動中心:\(a \propto -x\) の形なので中心は \(x=0\)。
$$\text{④} = \boxed{0}$$⑤ 角振動数:\(a = -\omega^2 x\) と比較して
$$\omega^2 = \frac{k(m+M)}{mM} \;\Longrightarrow\; \omega = \sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}\quad \text{→ ⑤} = \boxed{\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}}$$⑥ 壁衝突の最低初速 \(v_1\)(問 2 の記号):単振動の初期条件は \(x=0, \dot x = v_0\) なので、振幅 \(X = v_0/\omega\)。壁到達の条件 \(X \ge d\)、すなわち
$$v_0 \ge \omega d \;\Longrightarrow\; v_1 = \omega d = d\sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}\quad \text{→ ⑥} = \boxed{d\sqrt{\dfrac{k(m+M)}{mM}}}$$以降、この \(v_1\) を問 2 の \(v_2\) と同一視する(記号の都合上、問題文では \(v_2\) を使う):\(v_2 = d\sqrt{k(m+M)/(mM)}\)。
2 体系の相対運動は換算質量 \(\mu = \dfrac{mM}{m+M}\) を使って、相対座標 \(r = x_{\text{ball}} - x_{\text{cart}}\) について
$$\mu \ddot r = -k(r - r_0)$$と書ける(\(r_0\) は自然長)。これは単純な単振動で
$$\omega = \sqrt{\frac{k}{\mu}} = \sqrt{\frac{k(m+M)}{mM}}$$となる。非慣性系の慣性力を扱わずに済む上、物理的意味(「2 体系は換算質量を持った 1 体に等価」)も明快。
立式:台共系では小球は \(x=0\) を中心とした角振動数 \(\omega\) の単振動で、初期条件は \(x(0)=0, \dot x(0) = v_0\)。
$$x(t) = \frac{v_0}{\omega}\sin(\omega t), \qquad \dot x(t) = v_0 \cos(\omega t)$$振幅の値:\(v_0 = 2v_2 = 2\omega d\) を代入して
$$X = \frac{v_0}{\omega} = \frac{2\omega d}{\omega} = 2d$$単振動の全エネルギーは \(\frac{1}{2}\mu \omega^2 X^2\)(\(\mu\) は換算質量)。振幅 \(X\) が 2 倍ならエネルギーは 4 倍。実際、初期運動エネルギーは \(\frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}m(2v_2)^2 = 2 m v_2^2\)。地上系では台の運動エネルギーも加わるので注意。
等速円運動の正射影法:振幅 \(2d\)、角振動数 \(\omega\) の単振動は、半径 \(2d\) で角速度 \(\omega\) の等速円運動の影。\(x = 2d \sin(\omega t)\) と書く。壁の位置 \(x = d\) に達するのは
$$2d \sin(\omega t) = d \;\Longrightarrow\; \sin(\omega t) = \frac{1}{2} \;\Longrightarrow\; \omega t = \frac{\pi}{6}$$(\(+\)方向に進む最初の到達時点)。このとき小球の速度は
$$\dot x = 2d\,\omega \cos(\omega t) = 2d\,\omega \cos\frac{\pi}{6} = 2d\omega \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \sqrt{3}\,d\,\omega$$ここで \(d\omega = v_2\) なので、
$$\dot x_{\text{直前}} = \sqrt{3}\, v_2$$衝突直後:壁は台に固定されており、台共系では壁は静止している。反発係数の定義(壁静止)より、衝突直後の速さは \(e\) 倍、向きは逆転。
$$\dot x_{\text{直後}} = -\sqrt{3}\, e\, v_2$$台共系でのエネルギー保存(ばね位置の弾性エネルギー + 運動エネルギー)で:
$$\frac{1}{2}\mu v_0^2 = \frac{1}{2}\mu v_{\text{壁}}^2 + \frac{1}{2}k d^2$$ここで \(v_0 = 2v_2\) を代入、\(\mu\omega^2 = k\) を使って
$$v_{\text{壁}}^2 = 4 v_2^2 - \frac{k d^2}{\mu} = 4v_2^2 - \omega^2 d^2 = 4 v_2^2 - v_2^2 = 3 v_2^2$$ $$v_{\text{壁}} = \sqrt{3}\,v_2$$同じ結果が得られる。円運動の正射影法とエネルギー保存はどちらも覚えておく価値あり。
重心速度の計算:初期状態は小球 \(v_0 = 2v_2\)、台 \(0\)。系全体の運動量保存:
$$p_{\text{tot}} = m v_0 = 2 m v_2$$ $$V_G = \frac{p_{\text{tot}}}{m+M} = \frac{2 m v_2}{m+M}$$重心並進の運動エネルギー:
$$K_G = \frac{1}{2}(m+M) V_G^2 = \frac{1}{2}(m+M)\left(\frac{2m v_2}{m+M}\right)^2 = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M}$$相対運動の最終エネルギー:重心系で見ると、問 1 と同じ構造の「壁+ばね+小球(換算質量 \(\mu\))」の問題に帰着する。相対運動は衝突ごとに \(e^2\) 倍に減衰し、最終的に振幅が \(d\) に収束する単振動になる。最終エネルギーは振幅 \(d\) のばね弾性エネルギー:
$$E_{\text{rel, final}} = \frac{1}{2} k d^2$$全エネルギー \(E_2\):
$$E_2 = K_G + E_{\text{rel, final}} = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M} + \frac{1}{2} k d^2$$\(E_2 - E_1\):問 1 (4) より \(E_1 = \frac{1}{2}k d^2\) なので、相対運動部分は打ち消しあって
$$E_2 - E_1 = \frac{2 m^2 v_2^2}{m+M}$$重心系で見ると、台も小球も「重心」を中心に運動し、ばねは両者を結ぶ 1 次元ばねとして働く(換算質量 \(\mu\) の 1 体問題に等価)。壁は台に固定されているので、重心系でも台の右壁は(台とともに動いているが)相対座標で「壁の位置=\(d\)」。したがって問 1 と全く同じ構造で、衝突のたびに相対運動のエネルギーが \(e^2\) 倍になり、振幅が \(d\) に収束する。最終エネルギーは \(\frac{1}{2}kd^2\)。
台共系での衝突の扱い:台に固定された左右の壁は、台共系で見れば静止した剛壁。壁との反発係数は \(e\)。よって台共系では、1 回の壁衝突で小球の速さは \(e\) 倍、向きは反転する。衝突と衝突の間は外力ゼロ(ばねなし)なので、台共系でも小球は等速直線運動。
台共系での初期速度:初期は台が静止しているので、地上系と台共系で同じ \(v_0\)。
衝突のたびに:
$$|v^{(1)}| = e v_0,\quad |v^{(2)}| = e^2 v_0,\quad \ldots,\quad |v^{(n)}| = e^n v_0$$一般式:
$$\boxed{\,|v^{(n)}| = e^n v_0\,}$$地上系では壁(台に付属)が動いているので、反発係数の式は \((v_{\text{ball}}' - v_{\text{wall}}') = -e(v_{\text{ball}} - v_{\text{wall}})\) と少しややこしい。台共系なら壁は常に静止で、単純に \(v'_{\text{ball}} = -e\, v_{\text{ball}}\)。これを衝突ごとに \(n\) 回繰り返すだけ。
運動量と反発係数から地上系で解くこともできるが、\(v_{\text{ball}}' = \frac{(m-eM)v_{\text{ball}} + (1+e)M v_{\text{cart}}}{m+M}\) のような複雑な式になる。台共系を使うと手数が激減する。
最終速度:全運動量は保存。初期運動量 \(p = m v_0\)(台は静止)。最終状態では台と小球が同じ速度 \(V_f\) で動く。
$$m v_0 = (m + M) V_f \;\Longrightarrow\; V_f = \frac{m v_0}{m + M}$$最終エネルギー:ばねがないので弾性エネルギーはゼロ。運動エネルギーのみ。
$$E_3 = \frac{1}{2}(m + M) V_f^2 = \frac{1}{2}(m+M)\left(\frac{m v_0}{m+M}\right)^2 = \frac{m^2 v_0^2}{2(m+M)}$$別表現:\(E_3 = \dfrac{m}{m+M}\cdot \dfrac{1}{2} m v_0^2\)、すなわち初期運動エネルギーの \(\dfrac{m}{m+M}\) 倍が重心並進として残る。残り \(\dfrac{M}{m+M}\) 倍は衝突で熱として失われる。
\(e = 0\) なら 1 回目の衝突で小球と台が一体化し、即座に \(E_3\) に到達する。実際、\(e = 0\) を問 4 (1) に代入すると \(|v^{(1)}| = 0\)、すなわち台共系で小球が停止=地上系で台と同じ速度=重心速度。
\(0 < e < 1\) の場合は無限回衝突で漸近的に \(E_3\) に収束するが、最終的なエネルギーは \(e\) に依存せず同じ値になる(運動量保存のみで決まる)。これは意外と覚えておくと便利な結果。