この大問は、① クーロンの法則による静電場と電位の重ね合わせ(問1)、② 衝突(中心力)における運動量・エネルギー保存(問2)、③ 一様磁場・電場中の荷電粒子運動(問3) の 3 テーマから成る。九大頻出の典型的な「電磁気フルコース」である。
小球 P(電気量 \(q\)、原点 O)、小球 Q(電気量 \(4q\)、点 A\((a,0,0)\))がつくる電場を点 \((x,0,0)\)(\(0 合成電場が 0 になる条件は 大きさが等しい: 両辺から \(k_0 q\) を約分し、両辺の平方根をとる(\(0 よって: 一般に電気量 \(q_1,\ q_2\)(同符号)の間の電場ゼロ点は、距離比 \(r_1:r_2 = \sqrt{q_1}:\sqrt{q_2}\) で分ける。今回は \(q_1:q_2 = 1:4\) なので \(r_1:r_2 = 1:2\)、つまり P から \(a/3\)、Q から \(2a/3\)。「距離の 2 乗反比例」と「電気量の比」の関係を押さえておくと検算が早い。 数値例:\(a = 3.0\) m、\(q = 1.0 \times 10^{-6}\) C、\(k_0 = 9.0 \times 10^9\) N·m²/C² とすると、電場ゼロ点は \(x = a/3 = 1.0\) m の位置。この点での P からの電場の大きさは: Q からの電場: 確かに両者が等しい大きさで逆向き、すなわち合成電場 \(= 0\) V/m となっている。
補足:距離比 \(1:2\) の由来と数値例
点 \((x,0,0)\) と P の距離は \(x\)、Q の距離は \(a-x\)(\(0 まとめて書くと: 参考として、\(\dfrac{dV}{dx} = 0\) を解くと \(-\dfrac{1}{x^2} + \dfrac{4}{(a-x)^2} = 0\)、すなわち電場 \(E_x = -\dfrac{dV}{dx} = 0\) となる点は \(x = a/3\)(問1(1) と一致)。この点での電位の値は: \(E_x = -\dfrac{dV}{dx} = \dfrac{k_0 q}{x^2} - \dfrac{4 k_0 q}{(a-x)^2}\)。問1(1) の結論と符号も含めて一致する(\(x0\)、\(x>a/3\) で \(E_x<0\) となり、\(x=a/3\) で電位が極小=電場 0)。電位を微分すれば電場、電場を積分すれば電位、という対応は常に成り立つ。補足:電場と電位の関係の検算
各等電位線の形を定量的に見る。電位 \(V_0\) の等電位線は次式を満たす:
$$\frac{k_0 q}{r_P} + \frac{4 k_0 q}{r_Q} = V_0$$ここで \(r_P = \sqrt{x^2 + y^2},\ r_Q = \sqrt{(x-a)^2 + y^2}\)。
(i) 各電荷に非常に近いとき:P の近くでは \(k_0 q/r_P\) 項が支配的で ほぼ円(半径 \(r_P = k_0 q/V_0\) 小)。Q の近くでは \(4 k_0 q/r_Q\) 項が支配的でやはり円(半径 \(r_Q = 4 k_0 q/V_0\) だから同じ電位 \(V_0\) なら Q の円は P の 4 倍大きい)。
(ii) 遠方(\(x,y \to \infty\)):合計電荷 \(5q\) の点電荷のような円形等電位線。
(iii) 中間領域:P と Q の間に電位極小点 \(x = a/3\)(問1(1)(2) より)がある。電位が \(9 k_0 q/a\) より低い等電位線は P のまわりと Q のまわりに別々の閉曲線として現れる。\(9 k_0 q/a\) より高い(中間領域を含む電位)になると、両電荷を包む 1 本の曲線に連結する。
以上より、選択肢を比較:
等電位線は電気力線に直交。Q の 4q は P の q の 4 倍の電気力線を出すので、Q のまわりの電気力線密度が 4 倍 → Q のまわりの等電位線の「密度」も大きい → 同じ電位間隔 \(\Delta V\) での等電位線はより広く分布 → Q のまわりの閉曲線が大きい。この視点からも (エ) が正しい。
① 最近接瞬間の条件:P と Q の相対速度 = 0。つまり共通速度を \(V\) とおく。
② 運動量保存:外力(摩擦・重力無視)なしで成立。
$$m v_0 + M \cdot 0 = (m + M) V$$ $$V = \dfrac{m v_0}{m + M}$$③ エネルギー保存:初期は P が十分遠方なので PE ≈ 0、初期 KE = \(\tfrac{1}{2}m v_0^2\)。最近接では共通速度 \(V\)、距離 \(r_{\min}\)、位置エネルギーは \(\dfrac{k_0 \cdot q \cdot 4q}{r_{\min}}\)。
$$\frac{1}{2} m v_0^2 = \frac{1}{2}(m + M) V^2 + \frac{4 k_0 q^2}{r_{\min}}$$\(V = mv_0/(m+M)\) を代入:
$$\frac{1}{2} m v_0^2 - \frac{1}{2}(m + M) \cdot \frac{m^2 v_0^2}{(m + M)^2} = \frac{4 k_0 q^2}{r_{\min}}$$左辺を整理(共通因子 \(\tfrac{1}{2}v_0^2\) でくくる):
$$\frac{1}{2} v_0^2 \left(m - \frac{m^2}{m + M}\right) = \frac{1}{2} v_0^2 \cdot \frac{m(m + M) - m^2}{m + M} = \frac{1}{2} v_0^2 \cdot \frac{mM}{m + M} = \frac{4 k_0 q^2}{r_{\min}}$$\(r_{\min}\) について解く:
$$r_{\min} = \frac{4 k_0 q^2 \cdot 2 (m + M)}{m M v_0^2} = \frac{8 k_0 q^2 (m + M)}{m M v_0^2}$$2 体問題では、換算質量 \(\mu = \dfrac{mM}{m+M}\) と相対速度 \(v_{\text{rel}} = v_0\) を使うと、「相対運動のエネルギー」 \(\tfrac{1}{2}\mu v_0^2\) が PE に変換される瞬間が最近接:
$$\frac{1}{2} \mu v_0^2 = \frac{4 k_0 q^2}{r_{\min}}$$ $$r_{\min} = \frac{8 k_0 q^2}{\mu v_0^2} = \frac{8 k_0 q^2 (m + M)}{m M v_0^2}$$重心運動(運動量保存)分を差し引いた「相対運動」のみが PE 変換できる、という見方。計算が一気に短くなる。
① 運動量保存:
$$m v_0 = m v'_P + M v'_Q \quad \cdots \text{(i)}$$② エネルギー保存(初期と終状態で PE = 0):
$$\frac{1}{2} m v_0^2 = \frac{1}{2} m v'^2_P + \frac{1}{2} M v'^2_Q \quad \cdots \text{(ii)}$$(i) を変形:\(m(v_0 - v'_P) = M v'_Q\)
(ii) を変形:\(m(v_0^2 - v'^2_P) = M v'^2_Q\)、すなわち \(m(v_0 - v'_P)(v_0 + v'_P) = M v'^2_Q\)
両辺を (i) の変形で割ると(\(v_0 \ne v'_P\) より \(v_0 - v'_P \ne 0\)):
$$v_0 + v'_P = v'_Q \quad \cdots \text{(iii)}$$(i) と (iii) を連立((iii) を (i) に代入):
$$m v_0 = m v'_P + M(v_0 + v'_P) = (m + M) v'_P + M v_0$$ $$(m + M) v'_P = (m - M) v_0$$ $$\boxed{\;v'_P = \frac{m - M}{m + M}\, v_0\;}$$(iii) から:
$$v'_Q = v_0 + v'_P = v_0\left(1 + \frac{m - M}{m + M}\right) = \frac{2m}{m + M}\, v_0$$ $$\boxed{\;v'_Q = \frac{2m}{m + M}\, v_0\;}$$この結果は、質量 \(m\) の物体(速度 \(v_0\))と質量 \(M\) の静止物体との1 次元弾性衝突の速度公式と完全一致する。クーロン斥力は保存力なので、「遠方→接近→反発→遠方」の過程全体が弾性衝突と力学的に等価。
特に、\(m < M\) なら \(v'_P < 0\)(P は跳ね返る)、\(m = M\) なら \(v'_P = 0,\ v'_Q = v_0\)(完全入れ替わり)、\(m > M\) なら \(v'_P > 0\)(P は同方向に進み続ける)。
① 速度の分解:初速 \(\vec v_0\) は yz 面内で z 軸と角 \(\theta\) をなすので、
$$v_y(0) = v_0 \sin\theta,\quad v_z(0) = v_0 \cos\theta,\quad v_x(0) = 0$$磁場 \(\vec B = B \hat z\) に対し、z 成分は磁場平行 → 力を受けず等速、xy 成分は磁場垂直 → 円運動。
② 円運動の半径:xy 面内の速さ \(v_\perp = v_0 \sin\theta\)、向心力はローレンツ力 \(qv_\perp B\)。
$$\frac{m v_\perp^2}{r} = q v_\perp B$$ $$r = \frac{m v_\perp}{qB} = \frac{m v_0 \sin\theta}{qB}$$③ 周期:1 周 \(2\pi r\) の距離を速さ \(v_\perp\) で走る時間。
$$T = \frac{2\pi r}{v_\perp} = \frac{2\pi}{v_\perp} \cdot \frac{m v_\perp}{qB} = \frac{2\pi m}{qB}$$周期は速度 \(v_\perp\) や \(\theta\) によらず、\(m, q, B\) のみで決まる(サイクロトロン周期)。
初期位置 O、初速 +y 向き、磁場 +z 向き。ローレンツ力 \(\vec F = q\vec v \times \vec B = q(v_\perp \hat y)\times(B\hat z) = qv_\perp B\, \hat x\)(+x 向き)。よって円の中心は +x 側、すなわち \((r, 0, z)\)。+z 軸から見下ろすと時計回り(x→y→−x→−y→x の順)。
① 運動の成分ごとに式を書く。磁場 \(\vec B = B\hat z\) のみ(電場なし)では:
② yz 平面への射影(= x を無視):
$$y(t) = r \sin(\omega t),\quad z(t) = v_0 \cos\theta \cdot t$$z から時間を逆に解くと \(t = \dfrac{z}{v_0 \cos\theta}\)。これを \(y\) に代入:
$$y = r \sin\!\left(\omega \cdot \frac{z}{v_0 \cos\theta}\right) = \dfrac{m v_0 \sin\theta}{qB}\, \sin\!\left(\dfrac{qB\, z}{m v_0 \cos\theta}\right)$$整理すると:
$$\boxed{\;y = \dfrac{m v_0 \sin\theta}{qB}\, \sin\!\left(\dfrac{qB}{m v_0 \cos\theta}\, z\right)\;}$$概形:振幅 \(r = \dfrac{m v_0 \sin\theta}{qB}\)、z 方向の波長 \(\lambda = v_0\cos\theta \cdot T = \dfrac{2\pi m v_0 \cos\theta}{qB}\) の正弦曲線。原点 \((y,z)=(0,0)\) から +y 側に始まり、z が進むにつれて y が振動する。
xy 面内では円運動だが、y 成分のみを取り出すと \(y(t) = r\sin\omega t\) という調和振動。z は等速で進むので、「時間軸」を「z 軸」に付け替えると、そのまま \(y(z)\) は正弦関数になる。これはらせんを側面から見ると正弦曲線に見える、という図形的事実そのもの。
① xy 面内の条件:電場は −z 向きなので xy 面内の運動は変わらず円運動のまま。P が \((x,y) = (0,0)\) に戻るのは \(t = nT\)(\(n = 1, 2, 3, \ldots\)、自然数)。
② z 方向の運動:電荷 \(q\)(正)に −z 向きの電場 \(E\) が作用 → 力 \(F_z = q \cdot (-E) = -qE\)。加速度 \(a_z = -qE/m\)。初速 \(v_z(0) = v_0 \cos\theta > 0\)。
位置:
$$z(t) = v_0 \cos\theta \cdot t - \dfrac{1}{2} \cdot \dfrac{qE}{m} \, t^2$$z 座標が 0 に戻る時刻(\(t > 0\)):
$$0 = t\left(v_0 \cos\theta - \dfrac{qE}{2m} t\right) \quad\Longrightarrow\quad t = \dfrac{2 m v_0 \cos\theta}{qE}$$③ 2 条件の一致:この時刻と xy の周期条件 \(t = nT = \dfrac{2\pi n m}{qB}\) が等しい必要がある:
$$\dfrac{2 m v_0 \cos\theta}{qE} = \dfrac{2\pi n m}{qB}$$両辺の \(2m\) を約分し、\(E\) について解く:
$$\dfrac{v_0 \cos\theta}{E} = \dfrac{\pi n}{B} \quad\Longrightarrow\quad \boxed{\;E = \dfrac{B v_0 \cos\theta}{\pi n}\;}$$(\(n = 1, 2, 3, \ldots\) の自然数)
\(n=1\) は「xy 面を 1 周する間に z も 0 に戻る」(最小の運動)、\(n=2\) は「xy 面を 2 周する間に z も 0 に戻る」(z 方向の滞空時間が長い → 加速度が小さい → E が小さい)。一般に n が大きいほど E が小さい(\(E \propto 1/n\))。物理的には、xy 周期 \(T\) に対し z の滞空時間を \(nT\) にそろえるには、z の減速を緩く(E を小さく)すればよい、ということ。
z 方向は初速 \(v_z = v_0\cos\theta\)、加速度 \(g' = qE/m\) の鉛直投げ上げと等価で、全滞空時間 \(\tau = 2v_z/g' = 2m v_0 \cos\theta/(qE)\)。xy 面は \(T = 2\pi m/(qB)\) の周期運動。\(\tau\) が \(T\) の自然数倍(\(\tau = nT\))となる E を求めれば、原点に戻る。両者とも m が約分されるのが、この問題の美しいところ。