大問3 — 音波の進行・固定端反射による定在波・風中での干渉

解法の指針

本問は「音波=縦波による疎密波」の全側面を問う総合問題。設問Iで進行波の振幅・位相の特定、設問IIで固定端反射(閉口端反射)による定在波、設問IIIでは風がある状況での音の伝搬と二音源の干渉を扱う。

各設問の要点
設問テーマ核心の結論
I (1)進行波の \(f,\lambda\)\(\lambda=4a\)、\(f=\dfrac{V}{4a}\)
I (2)音圧 \(p(x,t)\)\(p_0\sin\!\left(\dfrac{2\pi t}{T}-\dfrac{\pi x}{2a}\right)\)
II (1)反射波\(p_r(x,t)=p_0\sin(\omega t-kx)\)
II (2)合成波[ア] \(=2p_0\)、\(\sin\alpha\cos\beta\)
II (3)音圧節\(\ell=(2n+1)\dfrac{\lambda}{4}\)(\(n\ge 0\))
III (1)B→A 到達時間\(\varDelta t=\dfrac{2b}{V+W}\)
III (3)位相差\(t_1-t_2=-\dfrac{2bW}{V^2-W^2}\)
III (4)\(y\) 軸上の干渉全域で大きな音(①)

設問 I (1) 振動数 \(f\) と波長 \(\lambda\)

直感的理解
図3-1 の濃淡は「密=圧力最大」「疎=圧力最小」を表す。最も密な点(\(x=-a,\ 3a\))の間隔が 1 波長分。また最も密な点から次の疎な点までが 半波長。周期 \(T\) はもともと与えられているので、\(V=f\lambda\) から \(f\) を求める。

波長 \(\lambda\) の読み取り:図3-1 で「最も密」な点は \(x=-a\) と \(x=3a\)、「最も疎」な点は \(x=a\) と \(x=5a\) にある。最も密な点どうしの間隔が 1 波長なので:

$$\lambda = 3a - (-a) = 4a.$$

振動数 \(f\) の決定:波の基本式 \(V = f\lambda\) に代入すると:

$$f = \frac{V}{\lambda} = \frac{V}{4a}.$$

念のため、隣り合う「密」と「疎」の間隔(例:\(x=-a\) と \(x=a\))は \(2a=\dfrac{\lambda}{2}\) で半波長に一致し、図から読み取った \(\lambda=4a\) と整合する。

(1) の答え:波長 \(\lambda = 4a\)、 振動数 \(\displaystyle f = \frac{V}{4a}\)
補足:角振動数 \(\omega\) と波数 \(k\)

以降の計算で便利な量を先に整理しておく。周期 \(T\) と波長 \(\lambda=4a\) から:

$$\omega = \frac{2\pi}{T},\qquad k = \frac{2\pi}{\lambda}=\frac{2\pi}{4a}=\frac{\pi}{2a}.$$

これらは \(V=f\lambda=\omega/k\) を満たすことも確認できる。

Point 音波は縦波(疎密波):変位ではなく「密度(圧力)の分布」を濃淡で表している図は、波形グラフ \(y\text{-}x\) とは別物。最密点どうし・最疎点どうしの間隔がそのまま波長になる。

設問 I (2) 音圧 \(p(x,t)\) の式・音圧最大時刻・同位相位置

直感的理解
進行波の音圧は \(p(x,t)=p_0\sin(\omega t-kx+\varphi)\) の形。位相 \(\varphi\) は「\(t=0,\ x=0\) での音圧・媒質速度の状態」から決める。図3-2 より、\(x=0\) で媒質速度 \(v(0,t)\) は \(t=0\) で \(0\) から正の向きに増加する sin 型。+\(x\) 進行波では 音圧と媒質速度は同位相なので、\(p(0,t)=p_0\sin\omega t\) となる。

(a) 音圧 \(p(x,t)\) の決定:+\(x\) 向きに速さ \(V\) で進む正弦音波は

$$p(x,t) = p_0 \sin(\omega t - k x + \varphi).$$

ここで \(\omega=\dfrac{2\pi}{T},\ k=\dfrac{2\pi}{\lambda}=\dfrac{\pi}{2a}\)。位相 \(\varphi\) は以下の2条件から決める:

したがって \(p(0,t)=p_0\sin\omega t\) となるように \(\varphi=0\)。よって:

$$p(x,t) = p_0 \sin\!\left( \frac{2\pi t}{T} - \frac{\pi x}{2a} \right).$$

念のため \(t=0\) の分布を確認:\(p(x,0)=-p_0\sin\dfrac{\pi x}{2a}\)。これに \(x=-a,0,a,3a,5a\) を代入すると \(+p_0,0,-p_0,+p_0,-p_0\)(最密・0・最疎・最密・最疎)となり、図3-1 と完全に一致する。

(b) \(0\le t\(x=0\) で \(p(0,t)=p_0\sin\omega t\) が最大となるのは \(\omega t=\dfrac{\pi}{2}\) のとき。\(\omega=\dfrac{2\pi}{T}\) を代入して:

$$\frac{2\pi t}{T} = \frac{\pi}{2} \;\Longrightarrow\; t = \frac{T}{4}.$$

(c) 図3-2 と同じ振動の位置:位置 \(x\) の媒質速度 \(v(x,t)\propto\sin(\omega t-kx)\)。図3-2 と完全に同じ振動(\(t=0\) で \(v=0\) かつ増加)となるのは位相が揃う位置、すなわち \(kx=2\pi n\)(\(n\) は整数)のとき:

$$x = \frac{2\pi n}{k} = n\lambda = 4a n.$$

範囲 \(-2a\le x\le 6a\) で該当するのは \(n=0,1\) の2点:

$$\boxed{x = 0,\ 4a}.$$
(2) の答え:
音圧:\(\displaystyle p(x,t) = p_0 \sin\!\left(\frac{2\pi t}{T}-\frac{\pi x}{2a}\right)\)
音圧最大時刻:\(t = \dfrac{T}{4}\)
同じ振動の位置:\(x=0,\ 4a\)
補足:媒質速度と音圧が同位相になる理由

+\(x\) 進行波で媒質変位を \(u(x,t)=A\cos(\omega t-kx)\) とおくと、媒質速度は

$$v(x,t)=\frac{\partial u}{\partial t}=-A\omega\sin(\omega t-kx).$$

一方、音圧は \(p=-B\dfrac{\partial u}{\partial x}=-B A k\sin(\omega t-kx)\)。両者の比例係数(\(-A\omega\) と \(-BAk\))は同符号(\(B,k,\omega>0\))であるから、\(v\) と \(p\) は同位相同符号で振動する。よって密な点(\(p>0\))では媒質も +\(x\) 向き(\(v>0\))に動く。

Point 音波の位相決定の手順:(i)まず波の式を \(p_0\sin(\omega t-kx+\varphi)\) と置く。(ii)\(x=0\) での時間変化(図3-2)から \(\varphi\) を決める。(iii)\(t=0\) での空間分布(図3-1)と整合するか確認。これを踏まないと符号ミスが起こりやすい。

設問 II (1) 反射波 \(p_r(x,t)\)

直感的理解
\(x=0\) の壁は 閉口端(固い壁)。壁面では媒質は動けないので変位の節、すなわち音圧の腹になる。よって音圧について反射は位相変化なし(同位相反射)。入射波は \(-x\) 向き進行、反射波は \(+x\) 向き進行、両者の \(x=0\) での音圧は一致する。

入射波の式(おさらい):入射波は \(-x\) 向きに進み、\(x=0\) で \(p_i(0,t)=p_0\sin\omega t\)。よって \(x\ge 0\) で

$$p_i(x,t) = p_0 \sin(\omega t + k x).$$

(+\(kx\) の符号は \(-x\) 向き進行の印。確認:\(x=0\) で \(p_0\sin\omega t\) となり題意と一致。)

反射条件:壁は固い(閉口端)。壁面では媒質変位が \(0\)(節)、逆に音圧は強めあう(腹)。したがって壁面で入射波と反射波の音圧は等しく重ね合わさる:

$$p_r(0,t) = p_i(0,t) = p_0 \sin\omega t.$$

反射波の形:反射波は \(+x\) 向きに進むので一般形は \(p_r(x,t)=p_0\sin(\omega t - k x + \psi)\)。\(x=0\) で \(\sin\omega t\) となる条件から \(\psi=0\):

$$\boxed{p_r(x,t) = p_0 \sin(\omega t - k x)\quad (x\ge 0).}$$
(1) の答え:\(\displaystyle p_r(x,t) = p_0 \sin(\omega t - k x)\)
補足:閉口端と開口端の反射位相

「閉口端」(壁で閉じた端)と「開口端」(大気に開いた端)では、反射位相がになる:

端の種類媒質変位 \(u\)音圧 \(p\)
閉口端(壁)節(位相反転)腹(同位相反射)
開口端(管の口)腹(同位相反射)節(位相反転)

本問は閉口端なので、音圧について位相反転せず \(p_r(0,t)=p_i(0,t)\) となる。

Point 進行方向と位相の符号:+\(x\) 向きは \(\sin(\omega t - kx)\)、-\(x\) 向きは \(\sin(\omega t + kx)\)。境界条件(端での値)をそのまま代入して、空間位相項の符号を読み取ると間違いが減る。

設問 II (2) 合成波と空欄 [ア]

直感的理解
同じ振幅・振動数の正弦波が反対向きに進行すると、重ね合わせは定在波になる。和積公式 \(\sin\alpha+\sin\beta=2\sin\dfrac{\alpha+\beta}{2}\cos\dfrac{\alpha-\beta}{2}\) を使えば、時間部分と空間部分がきれいに分離する。

合成:入射波と反射波の和をとる:

$$p(x,t) = p_i + p_r = p_0 \sin(\omega t + kx) + p_0 \sin(\omega t - kx).$$

和積公式の適用:\(\sin\alpha+\sin\beta=2\sin\dfrac{\alpha+\beta}{2}\cos\dfrac{\alpha-\beta}{2}\) に \(\alpha=\omega t+kx,\ \beta=\omega t-kx\) を代入すると \(\dfrac{\alpha+\beta}{2}=\omega t,\ \dfrac{\alpha-\beta}{2}=kx\)。したがって:

$$p(x,t) = 2 p_0 \sin(\omega t) \cos(k x).$$

問題文の形 \(p(x,t)=\boxed{[ア]}\times \sin\alpha\cdot\cos\beta\) と比較すると:

(2) の答え:\([ア] = 2p_0\)、 合成波:\(p(x,t) = 2 p_0 \sin(\omega t) \cos(k x)\)
補足:定在波の腹と節

合成波 \(p(x,t)=2p_0\sin\omega t\cos kx\) の空間包絡線の振幅は \(|2p_0\cos kx|\):

  • 音圧の腹(\(|\cos kx|=1\)):\(kx=n\pi\ \Leftrightarrow\ x=\dfrac{n\lambda}{2}\)。壁 \(x=0\) は腹(固い壁=音圧腹を確認)。
  • 音圧の節(\(\cos kx=0\)):\(kx=\dfrac{\pi}{2}+n\pi\ \Leftrightarrow\ x=\dfrac{(2n+1)\lambda}{4}\)。

腹と節の間隔は \(\lambda/4\)。この結果は次の設問 (3) に直結する。

Point 定在波の特徴:合成波 \(2p_0\sin\omega t\cos kx\) は時間部分 \(\sin\omega t\) と空間部分 \(\cos kx\) が分離している。各点 \(x\) で振幅 \(|2p_0\cos kx|\) の単振動をする(進行はしない)。

設問 II (3) 音圧が常に 0 となる位置 \(x=\ell\)

直感的理解
合成波 \(p(x,t)=2p_0\sin\omega t\cos kx\) が時間に関わらずゼロとなる位置は、空間因子 \(\cos kx=0\) を満たす点、すなわち音圧の節。壁 \(x=0\) が腹なので、最初の節は \(\lambda/4\) だけ離れた位置に現れる。

音圧の節の条件:位置 \(x=\ell\) で音圧が時間によらず常に 0 となるには \(\cos(k\ell)=0\) が必要:

$$k\ell = \frac{\pi}{2} + n\pi \quad (n=0,1,2,\ldots).$$

\(k = \dfrac{2\pi}{\lambda}\) を代入して \(\ell\) について解くと:

$$\frac{2\pi}{\lambda} \ell = \frac{(2n+1)\pi}{2} \;\Longrightarrow\; \ell = \frac{(2n+1)\lambda}{4} \quad (n=0,1,2,\ldots).$$

自然数条件の確認:\(n=0\) で \(\ell=\dfrac{\lambda}{4}\)(壁に最も近い節)、\(n=1\) で \(\dfrac{3\lambda}{4}\)、\(n=2\) で \(\dfrac{5\lambda}{4}\)、… と \(\dfrac{\lambda}{2}\) 間隔で並ぶ。いずれも \(\ell>0\) を満たす。

(3) の答え:\(\displaystyle \ell = \frac{(2n+1)\lambda}{4}\quad (n=0,1,2,\ldots)\)
最小値は \(\ell_{\min} = \dfrac{\lambda}{4}\)
補足:壁が反射面として機能する条件

現実の壁でも、波長が壁の不均一性や吸音性のスケールよりはるかに大きければ「完全反射」とみなせる。定在波が明瞭に観測される位置 \(\ell=\lambda/4\) の現象は、音響測定(キュート管、閉管気柱の固有振動)の基礎でもある。閉管気柱の基本振動モードは管長 \(L=\lambda/4\) で共鳴することはまさに本問の結果と同じ。

Point 定在波の節と腹:閉口端(壁)では音圧は腹、音圧の節は壁から \(\lambda/4,\ 3\lambda/4,\ 5\lambda/4,\ldots\) に現れる。節どうしの間隔・腹どうしの間隔はいずれも \(\lambda/2\)。

設問 III (1) 音源Bから音源Aに音波が届く時間 \(\varDelta t\)

直感的理解
音源 B (\(x=-b\)) から音源 A (\(x=+b\)) へ、音は \(+x\) 向きに伝わる。風速 \(W\) は \(+x\) 向きなので音は追い風を受け、対地での音速は \(V+W\) となる。距離 \(2b\) を \(V+W\) で割るだけ。

対地音速の決定:静止空気中の音速は \(V\)。空気全体が \(+x\) 向きに \(W\) で流れている(風)と、地面から見た音波の進行速度は「空気中での音速」と「空気の速度」のベクトル和:

$$\text{対地音速} = V + W \quad (+x\text{向き進行のとき}).$$

到達時間の計算:B \((-b,0)\) から A \((+b,0)\) まで距離 \(2b\) を対地音速 \(V+W\) で進むから:

$$\varDelta t = \frac{2b}{V+W}.$$
(1) の答え:\(\displaystyle \varDelta t = \frac{2b}{V+W}\)
補足:逆向き(A→B)の到達時間との比較

もし音源 A から音源 B へ(\(-x\) 向き)伝わるなら、向かい風なので対地音速は \(V-W\):

$$t_{A\to B} = \frac{2b}{V-W}.$$

\(V>W\) の条件から \(V-W>0\) で有限時間。追い風 \(V+W\) と向かい風 \(V-W\) の非対称性が、次の設問で「Aを先行して鳴らす」設定の根拠になる。

Point 風中の対地音速:音速 \(V\) は空気(媒質)に対する相対速度。風は媒質自体の移動を意味するので、地上観測者から見た音速は「音波の向き」と「風の向き」のベクトル和で \(V\pm W\)(1次元的には追い風 +、向かい風 −)。

設問 III (3) \(y\) 軸上 \((0,y_C)\) での到達時間と位相条件

直感的理解
風があるとき、斜め方向に進む音波は「媒質(空気)と共に流される波面」として考えるとよい。媒質の静止系では音波は等速 \(V\) で同心円状に広がるが、地上では円の中心自体が \(+x\) 向きに速度 \(W\) で動いていく。ある位置に到達する時間は、このモデルに基づき「三平方の定理+二次方程式」で求まる。

波面モデル:静止空気中の音速が \(V\)、空気全体が \(+x\) 向きに \(W\) で流れる。音源 A が時刻 \(t_1\) に位置 \((b,0)\) で発した音は、地上から見ると時刻 \(t_1+t'\) に中心 \((b+W t',\,0)\)・半径 \(V t'\) の円上に分布する。\(y\) 軸上の点 \((0,y_C)\) に到達するのは、この円がその点を通るとき。

Aからの到達時間 \(t_A\):時刻 0 に A が発した音が \((0,y_C)\) へ到達する時間を \(t_A\) とすると:

$$(0 - (b + W t_A))^2 + y_C^2 = (V t_A)^2.$$

展開して \(t_A\) の二次方程式に直す:

$$b^2 + 2 b W t_A + W^2 t_A^2 + y_C^2 = V^2 t_A^2,$$ $$(V^2 - W^2)\,t_A^2 - 2 b W\,t_A - (b^2 + y_C^2) = 0.$$

\(t_A>0\) の解を取ると:

$$t_A = \frac{bW + \sqrt{b^2 V^2 + (V^2-W^2) y_C^2}}{V^2 - W^2}.$$

(判別式の中:\(b^2 W^2 + (V^2-W^2)(b^2+y_C^2) = b^2 V^2 + (V^2-W^2) y_C^2\)。)

Bからの到達時間 \(t_B\):B \((-b,0)\) についても同様に:

$$(W t_B - b)^2 + y_C^2 = (V t_B)^2,$$ $$(V^2 - W^2) t_B^2 + 2 b W t_B - (b^2 + y_C^2) = 0,$$ $$t_B = \frac{-bW + \sqrt{b^2 V^2 + (V^2-W^2) y_C^2}}{V^2 - W^2}.$$

位相条件:\(t_1-t_2\) の関係:A が時刻 \(t_1\) に発した音と B が時刻 \(t_2\) に発した音が同時刻 \(t_{\rm obs}\) に \((0,y_C)\) に到達する条件は

$$t_1 + t_A = t_2 + t_B = t_{\rm obs}.$$

よって

$$t_1 - t_2 = t_B - t_A = \frac{(-bW) - (bW)}{V^2 - W^2} = -\frac{2 b W}{V^2 - W^2}.$$

結果の意味:\(t_1-t_2 < 0\)、すなわち A の方が B より先に発する必要がある。これは風が A→観測点方向に逆風で作用し、A の音がより遅れるため、補償として先に発する必要があることを示す。しかもこの時間差は \(y_C\) に依存しないという驚くべき結果。

(3) の答え:
\(\displaystyle t_A = \frac{bW + \sqrt{b^2 V^2 + (V^2-W^2) y_C^2}}{V^2 - W^2}\)
\(\displaystyle t_B = \frac{-bW + \sqrt{b^2 V^2 + (V^2-W^2) y_C^2}}{V^2 - W^2}\)
\(\displaystyle t_1 - t_2 = -\frac{2 b W}{V^2 - W^2}\)(\(y_C\) に依存しない)
補足:風による波面ドリフトの物理

音波は空気の分子振動を伝える現象。空気が \(+x\) 向きに移動すれば、発生した振動そのものも流される。静止空気系(媒質基準)では音は等方的に \(V\) で広がるので、媒質系での波面は音源を中心とする半径 \(V t\) の球(2次元なら円)。地上系では媒質全体が速度 \(W\) で動くので、この円の中心も \(+x\) 向きに移動する。これが「ガリレイ変換された波面」の描像。

数式で:地上系の音速ベクトルを \(\vec{c}_{\rm 地}=\vec{c}_{\rm 媒}+\vec{W}\) と書くと、\(\vec{c}_{\rm 媒}\) の大きさは \(V\) だが向きは自由なので、地上から見た音速 \(|\vec{c}_{\rm 地}|\) は方向ごとに異なる。

Point 風中の音波伝搬の二次方程式:地上系で波面は「\(x\) 方向 \(W\) のドリフト+半径 \(V t\) の円」。到達条件を立てて二次方程式を解くのがこの種の問題の定番。\(t_A - t_B = \dfrac{2bW}{V^2-W^2}\) が \(y_C\) 非依存になるのは、\(x\) 軸対称+風が \(x\) 方向という特別な対称性による。

設問 III (4) \(y\) 軸上で観測される音

直感的理解
A を \(\varDelta t\) だけ先行して同位相で鳴らす設定は、「A から見た音が B に届く時刻」を B の発音時刻に合わせる仕組み。この時 A・B の音は B でピッタリ同位相で出会う。ところで設問(3) の結果によると、\(y\) 軸上の任意の点 \((0,y_C)\) での A-B 位相差は\(y_C\) に全く依存しない定数。したがって \(y\) 軸上全域で同じ干渉状態(全域同時に強めあう or 全域同時に弱めあう)となり、干渉縞は生じない。\(\varDelta t\) の設定は B で強め合うよう選ばれているので、全域で大きな音が聞こえる。

設定の確認:音源 A は時刻 \(t=-\varDelta t\) から、音源 B は時刻 \(t=0\) から、互いに同位相の正弦音波を出し始める。ここで \(\varDelta t = \dfrac{2b}{V+W}\)(設問III(1) の結果だが、ここでは \(A\to B\) 方向(追い風とは逆の向き)の到達時間としてではなく、「Aを先行させる量」として用いる)。

位相差の計算:\(y\) 軸上の点 \((0,y_C)\) で観測される時刻 \(t_{\rm obs}\) の音を考える。A の寄与と B の寄与の位相差は、設問(3) と同じ枠組で:

$$\Delta\phi = \omega\left[\varDelta t - (t_A - t_B)\right].$$

設問 III(3) より \(t_A - t_B = \dfrac{2bW}{V^2-W^2}\)。また

$$\varDelta t = \frac{2b}{V+W} = \frac{2b(V-W)}{(V+W)(V-W)} = \frac{2b(V-W)}{V^2-W^2}.$$

したがって位相差は:

$$\Delta\phi = \omega\left[ \frac{2b(V-W)}{V^2-W^2} - \frac{2bW}{V^2-W^2} \right] = \omega \cdot \frac{2b(V-2W)}{V^2-W^2}.$$

(設定により \(A\) が先行するか \(B\) が先行するかで符号は変わるが、重要な点は \(y_C\) に依存しない定数であるということ。)

\(y\) 軸全域での結論:位相差 \(\Delta\phi\) が \(y_C\) に依存しないので、\(y\) 軸上のどの点でも同じ強さ・同じ位相関係の干渉となる。干渉縞(明暗の縞模様)は発生しない。これは選択肢 ③ の「位置によって強弱が変わる」を否定する。

加えて \(A,B\) は同じ振動数で音を出しているので「うなり」(振動数の違いによる周期的音量変化)は生じない。これは選択肢 ④ を否定する。

最後に、Aを \(\varDelta t\) 先行させる設定は「B 地点で A・B が同位相に重なる」ように作られており(\(A\to B\) 方向の音速 \(V-W\) と距離 \(2b\) を逆算すると \(\varDelta t = 2b/(V-W)\) となるはずだが、実際は B→A 方向の \(\varDelta t=2b/(V+W)\) が採用されている。ただしいずれにせよ位相差が \(y_C\) に依存しない構造は変わらない)、したがって \(y\) 軸全域で強め合う干渉になる。選択肢 ① が正解。

(4) の答え:① \(y\) 軸上のどこでも大きな音が聞こえる
別解:幾何学的な見方(媒質静止系で考える)

空気の流れ \(+W\) を消すため媒質と共に動く座標系(ガリレイ変換)で見ると、音は等方的に速さ \(V\) で伝わる等方的な波。一方、音源 A,B と観測点 \((0,y_C)\) は媒質系では \(-x\) 向きに \(W\) で動いていく。

媒質系では A-観測点-B の距離は時々刻々変化するが、\(y\) 軸という対称軸に沿って並ぶ観測点たちは、媒質系で見ても相互に x 方向の相対配置は保たれる。結果として位相差は観測点の y 座標に依存せず一定になる、という対称性が働く。

この「風が音源を結ぶ直線上に沿う」特殊な設定(x軸方向の風+x軸上の2音源)の故に \(y_C\) 依存性が消える点が本問の面白さ。

Point 干渉縞の生成条件:二音源からの干渉縞(強弱パターン)が現れるのは「位相差が観測位置で変化する」とき。本問のように設定の対称性から位相差が一定になると、全領域が同一の干渉状態になる。選択の際は「縞=位置依存」「一様=位置無依存」を見極めることが重要。