糸に吊るされた小球が振り子運動する問題。途中に釘があることで、有効な糸の長さが変わり、運動の半径が変化する。エネルギー保存則は全体を通じて成り立つが、円運動の条件式は半径ごとに書き直す必要がある。
振り子の釘問題では、エネルギー保存の基準点(最下点B)は常に同じ。円運動の半径だけが変わることに注意。
小球は点Aから自由落下の鉛直成分で高さ \(h = l(1 - \cos\alpha)\) を落ちる。糸がたるまない振り子運動なので、最下点Bでの速度はエネルギー保存から求まるが、時間は鉛直方向の自由落下で近似できる条件(\(\alpha\) が十分小さいか、直線近似が有効)を使う。
点Aでの高さは最下点Bを基準にして:
$$ h = l(1 - \cos\alpha) $$小球を点Aから静かに放すと、自由落下の要領で鉛直に高さ \(h\) だけ落下する時間を考える。ただし問題文では「はじめに点Bを通過する時間」とあるので、円弧に沿った運動の鉛直成分を考える。振り子の最下点到達は、鉛直自由落下と同等の時間で:
$$ h = \frac{1}{2}g T_1^2 $$ $$ l(1 - \cos\alpha) = \frac{1}{2}g T_1^2 $$ $$ T_1 = \sqrt{\frac{2l(1 - \cos\alpha)}{g}} $$\(\cos 60° = 0.50\) より、落下高さは
$$ h = 1.0 \times (1 - 0.50) = 0.50 \text{ m} $$通過時間は
$$ T_1 = \sqrt{\frac{2 \times 0.50}{9.8}} = \sqrt{\frac{1.0}{9.8}} = \sqrt{0.1020\cdots} \fallingdotseq 0.32 \text{ s} $$自由落下の公式 \(h = \frac{1}{2}gt^2\) に落下高さを代入すれば通過時間が求まる。
小球は振り子として振動する。半周期は点Aから反対側のAに到達する時間。しかし、途中に釘Pがあるため、往路と復路で周期が異なる。
振り子の周期は \(T = 2\pi\sqrt{\frac{l}{g}}\) である。点Aから最下点Bまで(左半分の振り)は長さ \(l\) の振り子の半周期:
$$ \frac{T}{2} = \pi\sqrt{\frac{l}{g}} $$最下点Bを通過した後は、糸が釘Pに引っかかるため、有効な糸の長さは:
$$ l' = l - \frac{5}{9}l = \frac{4}{9}l $$右半分の振り(B→C→B→A方向)は長さ \(\frac{4}{9}l\) の振り子の半周期:
$$ \frac{T'}{2} = \pi\sqrt{\frac{4l/9}{g}} = \pi\sqrt{\frac{4l}{9g}} = \frac{2\pi}{3}\sqrt{\frac{l}{g}} $$往復の全時間 \(T_2\) は:
$$ T_2 = \pi\sqrt{\frac{l}{g}} + \frac{2\pi}{3}\sqrt{\frac{l}{g}} = \frac{5\pi}{3}\sqrt{\frac{l}{g}} $$単振り子の周期は振幅によらない(等時性)。往路は糸の長さ \(l\) の振り子として半周期 \(\pi\sqrt{l/g}\) 、復路は糸の長さ \(\frac{4}{9}l\) の振り子として半周期 \(\frac{2\pi}{3}\sqrt{l/g}\) である。最下点でエネルギーは連続的に引き継がれるので、それぞれの半周期を単純に足し合わせてよい。
釘があっても最下点での速さは同じ。周期が変わるのは「有効な糸の長さ」が変わるから。半周期ずつ別々に計算して足す。
小球が点Bから斜面に沿って上がり、角度 \(\alpha\) で斜面と糸が成す角が \(\beta\) となるとき、三角関数の半角公式が登場する。\(\cos\alpha = 1 - 2\sin^2\frac{\alpha}{2}\) を使うことで、式を整理できる。
角度 \(\beta\) について、問題文の図1から、幾何学的関係を使う。最下点Bでの速度を \(v_B\) とすると、エネルギー保存則より:
$$ \frac{1}{2}mv_B^2 = mgl(1 - \cos\alpha) $$ $$ v_B^2 = 2gl(1 - \cos\alpha) $$半角の公式 \(1 - \cos\alpha = 2\sin^2\frac{\alpha}{2}\) を用いると:
$$ v_B^2 = 2gl \cdot 2\sin^2\frac{\alpha}{2} = 4gl\sin^2\frac{\alpha}{2} $$ $$ v_B = 2\sqrt{gl}\sin\frac{\alpha}{2} $$近似式 \(\sin\frac{\alpha}{2} \fallingdotseq \frac{\alpha}{2}\) が使える場合、\(v_B \fallingdotseq 2\sqrt{gl} \cdot \frac{\alpha}{2} = \alpha\sqrt{gl}\) となる。
\(\frac{\alpha}{2}\) の値を求め、半角公式を使って
$$ v_B = 2\sqrt{gl}\sin\frac{\alpha}{2} $$半角公式 \(1 - \cos\alpha = 2\sin^2\frac{\alpha}{2}\) は振り子の問題で頻出。エネルギー保存の式をすっきりした形に変換できる。
最下点では小球が円運動しており、向心加速度の向き(上向き)に合力が必要。糸の張力は重力に加えて向心力分だけ大きくなる。
最下点Bでの円運動の運動方程式(向心方向を正):
$$ T - mg = \frac{mv_B^2}{l} $$問3より \(v_B^2 = 2gl(1 - \cos\alpha)\) を代入:
$$ T = mg + \frac{m \cdot 2gl(1-\cos\alpha)}{l} = mg + 2mg(1-\cos\alpha) $$ $$ T = mg(1 + 2 - 2\cos\alpha) = mg(3 - 2\cos\alpha) $$\(\alpha = 90°\) のとき \(\cos\alpha = 0\) なので \(T = 3mg\) となる。\(\alpha\) が大きいほど、最下点での速度が大きくなり、張力も大きくなる。\(\alpha = 0\) では \(T = mg\) で静止時と同じ。
\(\cos 60° = 0.50\) を代入すると
$$ T = 0.50 \times 9.8 \times (3 - 2 \times 0.50) = 4.9 \times 2.0 = 9.8 \text{ N} $$これは重力 \(mg = 4.9\) N の2倍。最下点で張力は重力の \((3 - 2\cos\alpha)\) 倍になる。
円運動の最下点では \(T - mg = \frac{mv^2}{r}\)。エネルギー保存で \(v^2\) を代入して整理するパターンは超頻出。
図2の状況では、小球が釘Qの位置から有効半径 \(\frac{3}{7}l\) で振れる。最下点Bでのエネルギーが等しいことから、釘Q側での到達角度 \(\theta_0\) が決まる。
図2では、釘の位置がOから水平に \(\frac{3}{7}l\) の距離にあるQに変わる。小球が最下点Bを通過した後、釘Qを中心に半径 \(r = l - \frac{3}{7}l \cdot \frac{1}{\cos\theta_0}\) で振れるが、まずは鉛直方向の高さの関係からエネルギー保存を適用する。
Oを原点として、点Aの高さはBより \(l(1-\cos\alpha)\) 高い。釘Qから角度 \(\theta_0\) 振れた点C'の高さは、釘Qの真下からの高さで \(\frac{4}{7}l(1-\cos\theta_0)\) となる。
エネルギー保存則(AとC'の高さが等しい):
$$ l(1-\cos\alpha) = \frac{4}{7}l(1-\cos\theta_0) $$ $$ 1-\cos\theta_0 = \frac{7}{4}(1-\cos\alpha) $$ $$ \cos\theta_0 = 1 - \frac{7}{4}(1-\cos\alpha) $$すなわち \(\theta_0 = \arccos\left[1 - \frac{7}{4}(1-\cos\alpha)\right]\)
釘の位置が変わっても、エネルギー保存の基準点(最下点B)は変わらない。左右で到達する高さが等しいことから角度を求める。
小球が点C'で糸がたるむ(張力がゼロになる)条件を使う。円運動の条件から速度を求め、エネルギー保存で最下点の速度 \(v_0\) と結びつける。
糸がたるむ条件は張力 \(T = 0\)。糸が張っている間の円運動の方程式(向心方向・Qに向かう向きを正):
$$ T + mg\cos\theta_0 = \frac{mv_{C'}^2}{r} $$ここで \(r = \frac{4}{7}l\)(有効半径)。\(T = 0\) とすると:
$$ mg\cos\theta_0 = \frac{mv_{C'}^2}{\frac{4}{7}l} $$ $$ v_{C'}^2 = \frac{4}{7}gl\cos\theta_0 $$Bでの速度 \(v_0\) とC'での速度 \(v_{C'}\) の間でエネルギー保存:
$$ \frac{1}{2}mv_0^2 = \frac{1}{2}mv_{C'}^2 + mg \cdot \frac{4}{7}l(1 - \cos\theta_0) $$問5の結果 \(\cos\theta_0 = 1 - \frac{7}{4}(1-\cos\alpha)\) を代入し整理すると、\(v_0\) が \(g, l\) で表される。
\(\cos\theta_0\) に問5の結果を代入して最終結果を得る。
最下点Bを基準に、点Aの高さ \(h_A = l(1-\cos\alpha)\) まで到達できる速度 \(v_0\) を考える方法もある。しかし、釘Qが存在するため、C'での糸のたるみ条件を経由する必要がある。
糸がたるむ条件は「張力=0」。これと円運動の式、エネルギー保存を連立させるのが定石。
糸がたるんだ後、小球は放物運動(斜め投げ上げ)をする。最高到達点の高さを点Oの高さと比較する。
糸がたるんだ点C'での速度は \(v_{C'}^2 = \frac{4}{7}gl\cos\theta_0\)。C'から先は放物運動をする。
C'の高さはOより低い位置にある(Qが支点で \(\cos\theta_0 < 1\) のため)。放物運動の最高点では鉛直速度成分がゼロになるが、そのときの高さがOの高さに達するかを確認する。
エネルギー保存の観点から、C'での運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv_{C'}^2\) がすべて位置エネルギーに変換されたとしても、Oの高さには到達しない。これは、糸がたるむ前に円運動を維持するために使われたエネルギーの配分から示される。
理由:C'での速度ベクトルの鉛直成分のみが高さに寄与する。水平成分は最高点でも残るため、全運動エネルギーが高さに変換されない。したがって、最高到達点はOの高さに届かない。
もしOの高さまで到達できるなら、点AとOは同じ高さなので、Aから静かに放した場合にOの高さまで戻れることになる。しかし、釘によって半径が変わった後の円運動でたるみが発生するため、水平方向に運動エネルギーが配分される。その分だけ高さ方向のエネルギーが不足し、Oの高さには到達できない。
放物運動では速度に水平成分があるため、全エネルギーが高さに変換されない。これが「Oより低い」の本質的理由。