前期 大問1:鉛直棒上の物体とばね・接着の単振動

解法の指針

鉛直に立てたなめらかな棒に通した同質量 \(m\) の2つの物体 A, B がばね(ばね定数 \(k\))で接続され、接着剤で貼り合わされています。接着剤が剥がれる条件と、その前後での振動の違いを解析する問題です。

問題の構成

問題設定の確認
・鉛直な棒 OP(O 端を水平な床に固定)
・同じ質量 \(m\) の穴の開いた小物体 A, B を棒に通す
・物体 A にばね(ばね定数 \(k\))をつけ、ばねの他端は棒の O 端に固定
・ばねは OP 方向のみに伸縮(棒と物体 A, B の間に摩擦なし)
・物体 A のばねとは反対側に接着剤で物体 B を接着
・押し合うときは離れないが、引き合う力が接着力 \(p\) を超えると離れる
・重力加速度 \(g\)、物体は O 端に接触しない
📌 ポイント

物体 A と B の間の力 \(T\)(内力)が接着力 \(p\) を超えるかどうかが問題の核心です。\(T\) を位置 \(x\) の関数として求め、そのグラフを描くことで、離れる位置と条件を特定できます。

問1:ばねの縮み \(d_0\)

直感的理解
つり合い位置では、ばねの弾性力が物体 A+B の合計重力を支えています。ばねは縮んでおり(物体を上に押し上げている)、その縮み量はフックの法則から求まります。

つり合い位置では、ばねが縮んで物体 A+B の重力を支えます。ばねの縮みを \(d_0\) とすると:

$$ kd_0 = 2mg $$ $$ d_0 = \frac{2mg}{k} $$
答え:\(d_0 = \dfrac{2mg}{k}\)

問2:A+B 一体の単振動の周期

物体 B をつり合い位置から \(b\) だけ押し下げて手を離すと、A+B は一体のまま上下に単振動します。質量 \(2m\)、ばね定数 \(k\) の系なので:

$$ T = 2\pi\sqrt{\frac{2m}{k}} $$
答え:\(T = 2\pi\sqrt{\dfrac{2m}{k}}\)

問3:最大速さ

振幅 \(b\) の単振動の最大速さは、角振動数 \(\omega = \sqrt{\dfrac{k}{2m}}\) を使って:

$$ v_{\max} = b\omega = b\sqrt{\frac{k}{2m}} $$
答え:\(v_{\max} = b\sqrt{\dfrac{k}{2m}}\)

問4〜6:内力 \(T\) の解析

直感的理解
A と B が一体で運動しているとき、A が B を支える力(内力 \(T\))は位置によって変化します。つり合い位置より上では B の慣性力が下向きに加わるため引っ張り合いになり、下では押し合いになります。\(T\) が接着力を超えると剥がれます。

問4:物体 B にはたらく力

物体 B に注目します。位置 \(x\)(上向き正、つり合い位置を原点)にあるとき:

物体 B の運動方程式:

$$ ma_B = T - mg $$
答え:物体 B にはたらく力は重力 \(mg\)(下向き)と物体 A からの力 \(T\)

問5:A, B の運動方程式と \(T\) の表式

A+B 一体の運動方程式(合計質量 \(2m\)):

$$ 2m\ddot{x} = -kx $$

(つり合い位置 \(x = 0\) からの変位に対する復元力。つり合い位置ではばねの力 = 重力が相殺済み。)

加速度 \(a = \ddot{x} = -\dfrac{k}{2m}x\) です。

物体 B だけの運動方程式:

$$ ma = T - mg $$ $$ m \cdot \left(-\frac{k}{2m}x\right) = T - mg $$ $$ -\frac{kx}{2} = T - mg $$ $$ T = mg - \frac{kx}{2} $$

ここで \(d_0 = \dfrac{2mg}{k}\) を使うと:

$$ T = mg\left(1 - \frac{x}{d_0}\right) $$
答え:\(T = mg - \dfrac{kx}{2}\)

問6:\(T\) の \(x\) によるグラフ

\(T = mg - \dfrac{k}{2}x\) は \(x\) の1次関数(右下がりの直線)です。

グラフは \(T\) 軸との交点 \((0, mg)\)、\(x\) 軸との交点 \((d_0, 0)\) を通る直線です。

答え:グラフは右下がりの直線。\(T\) 軸交点 \(mg\)、\(x\) 軸交点 \(d_0 = \dfrac{2mg}{k}\)
📌 ポイント

\(x > d_0\) の領域で \(T < 0\) となり、物体 A と B は引き合いになります。この引っ張り力が接着力 \(p\) を超えると A と B は離れます。

問7・問8:接着が剥がれる条件

直感的理解
物体 B をつり合い位置から \(b\) だけ押し下げて離すと、振動の上端は \(x = b\) です。上端付近で \(T\) は負(引き合い)になり、\(|T|\) が最大になるのは \(x = b\) のときです。\(|T(b)| > p\) のとき、B は A から離れます。

問7:離れるための条件

物体が離れるのは \(T < -p\)(引っ張り力が接着力を超える)ときです。

振動中に \(|T|\) が最大になるのは \(x\) が最大のとき(上端 \(x = b\))です:

$$ T(b) = mg - \frac{kb}{2} $$

離れる条件は \(T(b) < -p\):

$$ mg - \frac{kb}{2} < -p $$ $$ \frac{kb}{2} > mg + p $$ $$ b > \frac{2(mg + p)}{k} $$
答え:\(b > \dfrac{2(mg + p)}{k}\)

問8:離れた瞬間の物体 B の速さ

問題文では「物体 B をつり合い位置から \(b\) だけ押し下げ、静かに手を離すと、物体 B は運動の途中で物体 A から離れた」とあります。離れる瞬間はばねの弾性エネルギーと運動エネルギーが変化しないとされています。

離れる位置 \(x_s\) は \(T(x_s) = -p\) の位置です:

$$ mg - \frac{kx_s}{2} = -p $$ $$ x_s = \frac{2(mg + p)}{k} $$

離れる瞬間の速さを求めるため、エネルギー保存則を使います。初期位置 \(x = -b\)(速さ0)から位置 \(x = x_s\) まで:

$$ \frac{1}{2}(2m)v^2 = \frac{1}{2}k\left[(d_0 + b)^2 - (d_0 - x_s)^2\right] - 2mg(b + x_s) $$

ばねの自然長からの縮みは、位置 \(x\) では \(d_0 - x\) です(つり合い位置で縮み \(d_0\)、上に行くと縮みが減る)。

エネルギー保存(初期位置 \(x = -b\) から位置 \(x_s\)):

$$ \frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}k(d_0 - x_s)^2 + 2mg \cdot x_s = \frac{1}{2}k(d_0 + b)^2 - 2mg \cdot b $$

整理のために、つり合い位置基準の位置エネルギーを使います。単振動のエネルギー保存:

$$ \frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}\frac{k}{1}x_s^2 \cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{2}\frac{k}{1}b^2 \cdot \frac{1}{2} $$

いや、もっとシンプルに。つり合い位置基準の単振動では、有効ポテンシャルは \(\dfrac{1}{2}k_{\text{eff}}x^2 = \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{k}{2}\cdot x^2 \cdot\) …

実は、運動方程式 \(2m\ddot{x} = -kx\) から有効ばね定数は \(k\) で質量 \(2m\) です。エネルギー保存は:

$$ \frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}kx^2 = \frac{1}{2}kb^2 $$

(ここで \(x\) はつり合い位置からの変位です。これは有効ポテンシャルではなく、正しくは重力+ばねのポテンシャルをつり合い位置基準で書いたものです。)

確認:つり合い位置基準で \(U_{\text{eff}} = \frac{1}{2}k(d_0-x)^2 - 2mgx\)(自然長からの伸びでばねエネルギー + 重力ポテ)を展開すると:

$$ U_{\text{eff}} = \frac{1}{2}kd_0^2 - kd_0 x + \frac{1}{2}kx^2 - 2mgx $$

\(kd_0 = 2mg\) を使うと定数項以外は \(\frac{1}{2}kx^2\) のみ。よって:

$$ \frac{1}{2}(2m)v^2 + \frac{1}{2}kx^2 = \frac{1}{2}kb^2 $$

位置 \(x_s = \dfrac{2(mg+p)}{k}\) での速さ:

$$ mv^2 = \frac{1}{2}k(b^2 - x_s^2) $$ $$ v = \sqrt{\frac{k(b^2 - x_s^2)}{2m}} $$

\(x_s = \dfrac{2(mg+p)}{k}\) を代入すると:

$$ v = \sqrt{\frac{k}{2m}\left(b^2 - \frac{4(mg+p)^2}{k^2}\right)} $$
答え:離れた瞬間の速さは \(v = \sqrt{\dfrac{k}{2m}\left(b^2 - \dfrac{4(mg+p)^2}{k^2}\right)}\)
💡 離れた後の運動

離れた後、物体 B は重力のみを受けるので鉛直投げ上げ運動をします(初速 \(v\)、上向き)。物体 A は ばね + 重力で新しい単振動を始めます(質量 \(m\)、ばね定数 \(k\)、つり合い位置は \(x = mg/k = d_0/2\))。

📌 ポイント

この問題の核心は、一体運動中の内力を位置の関数として求めることです。運動方程式を「全体」と「部分」の2通りで書き、内力を消去する手法は、接触判定・分離判定の典型パターンです。