2部構成の電磁気学の問題です。Part A ではxy平面上の点電荷 Q と荷電粒子 P(電荷 \(q\)、質量 \(m\))のクーロン力による運動を、Part B では一様な電場 E と磁場 B の中での荷電粒子の円運動を扱います。
クーロン力は逆二乗則に従う中心力です。エネルギー保存則と、\(q\) の符号(正 or 負)で軌道が大きく変わります。\(q > 0\) なら斥力、\(q < 0\) なら引力です。
点電荷 P は \((d, 0)\) にあり、原点の点電荷 Q からクーロン力を受けます:
$$ F = k\frac{qQ}{d^2} $$力の向きは、\(q > 0\) なら斥力(\(+x\) 方向)、\(q < 0\) なら引力(\(-x\) 方向)です。
たとえば \(q = 2.0 \times 10^{-6}\) C、\(Q = 5.0 \times 10^{-6}\) C、\(d = 0.10\) m、\(k = 9.0 \times 10^9\) N·m²/C² とすると:
$$ F = 9.0 \times 10^9 \times \frac{2.0 \times 10^{-6} \times 5.0 \times 10^{-6}}{(0.10)^2} = 9.0 \times 10^9 \times \frac{1.0 \times 10^{-11}}{1.0 \times 10^{-2}} = 9.0 \text{ N} $$時刻 \(t = 0\) での運動エネルギーと静電位置エネルギーの和は:
$$ E_{\text{total}} = \frac{1}{2}mv^2 + k\frac{qQ}{d} $$無限遠での位置エネルギーを 0 とする基準です。
P の速さが 0 になるのは、P が Q に正面衝突的に向かう場合(\(\theta = \pi\)、つまり \(-x\) 方向に打ち出す = Q に向かって打ち出す)です。
\(\theta = \pi\) の確認:問題で P は \((d, 0)\) から角度 \(\theta\) の方向に打ち出されます。\(\theta = \pi\) は \(-x\) 方向、つまり原点の Q に向かう方向です。
エネルギー保存則(最接近距離 \(r\) で速さ 0):
$$ 0 + k\frac{qQ}{r} = \frac{1}{2}mv^2 + k\frac{qQ}{d} $$ $$ k\frac{qQ}{r} - k\frac{qQ}{d} = \frac{1}{2}mv^2 $$ $$ kqQ\left(\frac{1}{r} - \frac{1}{d}\right) = \frac{1}{2}mv^2 $$ $$ \frac{1}{r} = \frac{1}{d} + \frac{mv^2}{2kqQ} $$ $$ r = \frac{1}{\dfrac{1}{d} + \dfrac{mv^2}{2kqQ}} = \frac{2kqQd}{2kqQ + mv^2d} $$\(q > 0\) で斥力の場合、P が Q から遠ざかる方向(\(\theta\) が小さい = \(+x\) 方向寄り)に打ち出せば、P は Q から離れ続けて位置エネルギーが減少し、速さは増加します。
P の速さが常に \(v\) 以上であるためには、P が Q に近づかない軌道、すなわち打ち出し直後から Q との距離が増加し続ける条件が必要です。
初速度の方向が Q から遠ざかる成分を持つ条件は、初速度の動径方向成分(Q から遠ざかる方向)が正であることです。\((d, 0)\) から見て Q は \(-x\) 方向にあるので、速度の \(+x\) 成分が正であれば Q から遠ざかります。
初速度の \(x\) 成分は \(v\cos\theta\) です。\(\cos\theta > 0\) すなわち \(0 \leq \theta < \dfrac{\pi}{2}\) のとき、P は常に Q から遠ざかり、速さは \(v\) 以上を保ちます。
ただし、\(\theta = \dfrac{\pi}{2}\) のとき(\(+y\) 方向に打ち出す)も、P は Q から遠ざかるので速さは増加します。
実際には、エネルギー保存から、P の速さが \(v\) より小さくならない条件は、P が Q に近づかない(つまり距離 \(d\) が最小距離である)ことです。
P の速さが常に \(v\) で一定であるためには、P が Q からの距離を \(d\) のまま保って円運動する必要があります。
円運動の条件:クーロン力が向心力を提供する。
$$ k\frac{|q|Q}{d^2} = \frac{mv^2}{d} $$この条件が成り立つとき、\(\theta\) は \(\dfrac{\pi}{2}\)(接線方向に打ち出す)でなければなりません。
速さが常に \(v\) となる条件から \(\theta\) と \(v\) の関係を求めます:
$$ v = \sqrt{\frac{k|q|Q}{md}} $$\(q = -3Q\) とした場合、時刻 \(t = 0\) における \(x\) 軸上の電位 \(V(x)\) のグラフを描きます。
原点に \(+Q\)、\((d, 0)\) に \(-3Q\) の点電荷がある場合の電位は:
$$ V(x) = k\frac{Q}{|x|} + k\frac{(-3Q)}{|x - d|} $$\(x > d\) の領域では:
$$ V(x) = k\frac{Q}{x} - k\frac{3Q}{x - d} $$\(V(x) = 0\) となる点を求めます(\(x > d\)):
$$ \frac{Q}{x} = \frac{3Q}{x - d} $$ $$ x - d = 3x $$ $$ -d = 2x $$これは \(x < 0\) なので \(x > d\) の範囲にはありません。
\(0 < x < d\) の範囲で:
$$ \frac{Q}{x} = \frac{3Q}{d - x} $$ $$ d - x = 3x $$ $$ x = \frac{d}{4} $$よって \(x = \dfrac{d}{4}\) で \(V = 0\) となります。
グラフの概形:\(x \to 0^+\) で \(V \to +\infty\)、\(x = d/4\) で \(V = 0\)、\(x \to d^-\) で \(V \to -\infty\)、\(x \to +\infty\) で \(V \to 0^-\)
極値の位置を求めるには \(V'(x) = 0\) を解きます:
$$ V'(x) = -k\frac{Q}{x^2} + k\frac{3Q}{(x-d)^2} = 0 $$ $$ \frac{3}{(x-d)^2} = \frac{1}{x^2} $$ $$ 3x^2 = (x-d)^2 $$ $$ 3x^2 = x^2 - 2dx + d^2 $$ $$ 2x^2 + 2dx - d^2 = 0 $$ $$ x = \frac{-2d \pm \sqrt{4d^2 + 8d^2}}{4} = \frac{-2d \pm 2d\sqrt{3}}{4} = \frac{d(-1 \pm \sqrt{3})}{2} $$\(0 < x < d\) の範囲では \(x = \dfrac{d(\sqrt{3}-1)}{2}\) が極大値の位置です。
図2(a)のように、\(y\) 軸正の方向に強さ \(E\) の一様な電場、\(z\) 軸正の方向に磁束密度 \(B\) の一様な磁場が加わっています。原点 O に正の電荷 \(q\)、質量 \(m\) の点電荷 P を、時刻 \(t = 0\) に \(x\) 軸正の方向に速さ \(v\) で打ち出します。
P が初速度のまま等速直線運動するためには、電場による力とローレンツ力がつり合う必要があります。
電場による力(\(+y\) 方向):\(qE\)
ローレンツ力:\(q\vec{v} \times \vec{B}\) で、\(\vec{v} = v\hat{x}\)、\(\vec{B} = B\hat{z}\) なので:
$$ q\vec{v} \times \vec{B} = qvB(\hat{x} \times \hat{z}) = -qvB\hat{y} $$力のつり合い(\(y\) 方向):
$$ qE = qvB $$ $$ v = \frac{E}{B} $$これが速度フィルター(Wien filter)の条件です。
図2(b)のように磁場が \(y\) 軸正方向の場合を考えます。P は等速円運動をします。
\(\vec{v} = v\hat{x}\)、\(\vec{B} = B\hat{y}\) のとき:
$$ q\vec{v} \times \vec{B} = qvB(\hat{x} \times \hat{y}) = qvB\hat{z} $$ローレンツ力は \(z\) 方向に働き、P は \(xz\) 平面内で円運動します。
時刻 \(t = T\) に初めて \(y\) 座標が \(d\) になったとき、これは P が \(xz\) 平面での等速円運動をしている間に \(y\) 方向に移動したことを意味します。
しかし、磁場が \(y\) 方向で電場も \(y\) 方向の場合、\(y\) 方向には電場の力 \(qE\) のみが作用するので、\(y\) 方向は等加速度運動になります。
P の加速度の各成分を \(a_x, a_y, a_z\)、速度を \(v_x, v_y, v_z\) とすると:
運動方程式:
$$ ma_x = qv_zB + 0 $$ $$ ma_y = qE $$ $$ ma_z = -qv_xB $$\(y\) 方向は電場のみで等加速度です。\(xz\) 平面では磁場によるローレンツ力で円運動します。
\(xz\) 平面での等速円運動の角速度を \(\omega\) とすると:
$$ \omega = \frac{qB}{m} $$半径は:
$$ R = \frac{mv}{qB} $$位置の \(x, z\) 成分は:
$$ x = R\sin\omega t $$ $$ z = R(1 - \cos\omega t) $$\(|\omega T| \ll 1\) のとき、近似式 \(\sin\theta \fallingdotseq \theta\)、\(\cos\theta \fallingdotseq 1 - \dfrac{\theta^2}{2}\) を使います:
$$ x \fallingdotseq R \cdot \omega T = \frac{mv}{qB} \cdot \frac{qB}{m} \cdot T = vT $$ $$ z \fallingdotseq R \cdot \frac{(\omega T)^2}{2} = \frac{mv}{qB} \cdot \frac{q^2B^2T^2}{2m^2} = \frac{qBvT^2}{2m} $$時刻 \(T\) における P の座標 \((X, Y, Z)\):
$$ X = vT $$ $$ Y = \frac{qE}{2m}T^2 $$ $$ Z = \frac{qBvT^2}{2m} $$比電荷 \(\dfrac{q}{m}\) を求めるには、\(X, Y, Z\) と \(d, v, E, B\) を使います:
$$ Y = d, \quad T = \frac{X}{v} $$ $$ d = \frac{qE}{2m} \cdot \frac{X^2}{v^2} $$ $$ \frac{q}{m} = \frac{2dv^2}{EX^2} $$ただし、\(x\) が含まれないように注意。
電場 E と磁場 B が直交する場合、荷電粒子の運動はドリフト速度 \(v_D = E/B\) のサイクロイド運動になります。初速度が \(v_D\) に等しいとき等速直線運動(速度フィルター)、そうでないときはトロコイド曲線を描きます。
Part B ではローレンツ力の向きを正確に計算することが鍵です。\(\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}\) の外積を成分ごとに計算し、各軸方向の運動方程式を立てましょう。磁場の方向が変わると、円運動の面が変わります。