前期 大問5:ドップラー効果と反射板

解法の指針

音源・観測者・反射板が一直線上に並んだドップラー効果の問題です。音源が観測者に近づく基本的なケースから、反射板による反射音、さらに音源が観測者を通過して反射板の先に進む場合まで、段階的に複雑になります。

問題の構成

問題設定の確認
・空気中の音速 \(V\)(風なし)
・音源:振動数 \(f\) の音を出しながら音速より十分小さい一定の速さ \(u\) で移動
・静止している観測者に近づいている
・問1〜8 は風なし、問9 で風あり
・音源、観測者、反射板は一直線上
📌 ポイント

ドップラー効果の公式を機械的に当てはめるだけでなく、波長の変化反射板は新しい音源として振る舞うことを理解しましょう。反射板で反射した音の振動数は、反射板が「受け取る」振動数と同じです。

問1〜3:基本ドップラー効果

直感的理解
音源が観測者に近づくと、音源が出した波が圧縮されて波長が短くなり、観測者は高い振動数の音を聞きます。これがドップラー効果の本質です。

問1:観測者が聞く音の振動数

音源が速さ \(u\) で観測者に近づくとき、音源前方の波長は:

$$ \lambda' = \frac{V - u}{f} $$

観測者が聞く振動数は:

$$ f' = \frac{V}{\lambda'} = \frac{Vf}{V - u} = \frac{V}{V - u}f $$
🧮 数値例

音速 \(V = 340\) m/s、音源の速さ \(u = 20\) m/s、振動数 \(f = 440\) Hz のとき:

$$ f' = \frac{340}{340 - 20} \times 440 = \frac{340}{320} \times 440 = 1.0625 \times 440 = 467.5 \text{ Hz} $$

音源が近づくと約28 Hz 高い音に聞こえます。

答え:\(f' = \dfrac{V}{V - u}f\)

問2:観測者が観測する音の波長

観測者が測定する波長は、音速を観測振動数で割ったものです:

$$ \lambda_{\text{obs}} = \frac{V}{f'} = \frac{V - u}{f} $$

これは音源前方の波長そのものです。

答え:\(\lambda_{\text{obs}} = \dfrac{V - u}{f}\)

問3:音が聞こえる時間

音源が時間 \(\Delta t\) の間だけ音を出す場合を考えます。音の出し始めの時刻を \(t_1\)、出し終わりの時刻を \(t_1 + \Delta t\) とします。

最初の音が観測者に届く時刻と、最後の音が届く時刻の差が、観測者に音が聞こえる時間です。

音を出し始めたとき、音源と観測者の距離を \(d_0\) とします。最初の音が届くまでの時間は \(\dfrac{d_0}{V}\) です。

\(\Delta t\) 後、音源は \(u\Delta t\) だけ近づいているので、距離は \(d_0 - u\Delta t\) です。最後の音が届くまでの追加時間は \(\dfrac{d_0 - u\Delta t}{V}\) です。

観測者に音が聞こえる時間 \(\Delta t'\):

$$ \Delta t' = (\Delta t + \frac{d_0 - u\Delta t}{V}) - \frac{d_0}{V} = \Delta t - \frac{u\Delta t}{V} = \Delta t\left(1 - \frac{u}{V}\right) = \frac{V - u}{V}\Delta t $$
答え:音が聞こえる時間は \(\dfrac{V - u}{V}\Delta t\)
📌 ポイント

観測者に聞こえる時間が短くなる(\(\dfrac{V-u}{V} < 1\))のは、音源が近づいているため波が「圧縮」されているからです。これは振動数が高くなることと表裏一体の関係です。

問4・5:反射板からの反射音

直感的理解
反射板に音が当たると、反射板は「受け取った振動数の音を出す新しい音源」として振る舞います。反射板は静止しているので、反射音の波長は反射板に入射する音の波長と同じです。

問4:反射板で反射した音の振動数

音源から出た音は、音源前方で波長 \(\lambda' = \dfrac{V - u}{f}\) です。この波が反射板(静止)に到達するときの振動数は:

$$ f_{\text{reflect}} = \frac{V}{\lambda'} = \frac{Vf}{V - u} $$

反射板は静止した音源として、この振動数の音を反射(再放出)します。反射板も観測者も静止しているので、観測者が聞く反射音の振動数は:

$$ f_{\text{obs,reflect}} = \frac{Vf}{V - u} $$
答え:反射音の振動数は \(\dfrac{Vf}{V - u}\)(直接音と同じ振動数)

問5:うなりの周期

観測者は、直接音(振動数 \(f' = \dfrac{Vf}{V - u}\))と反射音(同じ振動数 \(\dfrac{Vf}{V - u}\))の両方を聞きます。

しかし問題を再考すると、音源が観測者に近づいている図1の状況で、観測者は直接音を前方から、反射音を後方から聞きます。直接音の振動数は \(\dfrac{Vf}{V - u}\)(音源が近づく場合)ですが、反射音について考え直す必要があります。

反射板は観測者の向こう側(音源→観測者→反射板の並び)にあります。音源から反射板方向に出た音の波長は \(\dfrac{V - u}{f}\)(音源前方 = 反射板方向)です。この波が反射板で反射されて、観測者に戻ってきます。

反射板に入射する音の振動数:\(\dfrac{Vf}{V - u}\)

反射板→観測者(両方静止)の振動数:\(\dfrac{Vf}{V - u}\)

一方、直接音(音源→観測者)の振動数も \(\dfrac{Vf}{V - u}\) です。

よって、うなりは発生しません(同じ振動数)。

しかし、問題でうなりについて聞いているので、実際には音源が出す音を両方向から聞いているわけではなく、音源から出て直接観測者に届く音と、反射板で反射して戻ってくる音の到達タイミングの差に起因する干渉(うなり)が問われているはずです。

問題を再確認すると「音源が観測者を通り過ぎると」の場面が問5で出てきます。音源が通り過ぎた後は:

うなりの振動数:

$$ f_{\text{beat}} = \frac{Vf}{V - u} - \frac{Vf}{V + u} = Vf \cdot \frac{(V+u) - (V-u)}{(V-u)(V+u)} = \frac{2Vuf}{V^2 - u^2} $$

うなりの周期:

$$ T_{\text{beat}} = \frac{1}{f_{\text{beat}}} = \frac{V^2 - u^2}{2Vuf} $$
答え:うなりの周期は \(T_{\text{beat}} = \dfrac{V^2 - u^2}{2Vuf}\)
💡 なぜ通り過ぎた後にうなりが聞こえるのか

音源が通り過ぎる前は、直接音も反射音も同じ振動数 \(\dfrac{Vf}{V-u}\) なのでうなりは聞こえません。通り過ぎた後は、直接音は低くなり(\(\dfrac{Vf}{V+u}\))、反射音は依然として高いまま(\(\dfrac{Vf}{V-u}\))なので、この振動数の差がうなりを生じます。

問6〜8:音源が通過後の反射音

直感的理解
音源が観測者を通過して反射板方向に進む場合(図3)、音源は反射板に近づきながら音を出します。反射板が受ける音の振動数はさらに高くなり、反射音と直接音の振動数差が大きくなります。

問6:反射板に音の観測装置を取り付けた場合

図3のように、音源が音速より十分小さい速さ \(u\) で反射板に近づいています(音源が観測者を通り過ぎた後)。

反射板に取り付けた観測装置が検出する振動数は:

$$ f_{\text{反射板}} = \frac{Vf}{V - u} $$

(音源が反射板に近づいているので、反射板が受ける振動数は高くなる)

答え:反射板が検出する振動数は \(\dfrac{Vf}{V - u}\)

問7:観測者が聞く反射音の振動数

反射板は静止した音源として振動数 \(\dfrac{Vf}{V - u}\) の音を再放出します。観測者も静止しているので:

$$ f_{\text{反射}} = \frac{Vf}{V - u} $$
答え:反射音の振動数は \(\dfrac{Vf}{V - u}\)

問8:うなりの周期

音源が通過後、観測者は:

うなりの振動数:

$$ f_{\text{beat}} = f_{\text{反射}} - f_{\text{直接}} = \frac{Vf}{V - u} - \frac{Vf}{V + u} $$ $$ = Vf \cdot \frac{(V + u) - (V - u)}{(V - u)(V + u)} = \frac{2Vuf}{V^2 - u^2} $$

うなりの周期:

$$ T_{\text{beat}} = \frac{1}{f_{\text{beat}}} = \frac{V^2 - u^2}{2Vuf} $$
答え:うなりの周期は \(T_{\text{beat}} = \dfrac{V^2 - u^2}{2Vuf}\)

問9:風がある場合

直感的理解
風が吹くと、音は空気とともに運ばれるので、風の方向に音速が増加し、逆方向では減少します。音源と観測者の速さは風に対する地面基準の速さで考え、音速に風速を加減算します。

観測者から反射板に向かう方向に、音速より十分小さい一定の速さ \(w\) で風が吹いている場合を考えます。音源は速さ \(u\) で反射板方向に移動しています。

ドップラー効果の風がある場合の公式:

風速 \(w\) を考慮すると、媒質(空気)の速度を基準として音速が \(V\) です。観測者から見た音速は:

反射板が受ける振動数:

音源(速さ \(u\) で反射板方向に移動)から反射板(静止)への音について、風下方向なので音の地面に対する速さは \(V + w\):

$$ f_{\text{反射板}} = \frac{V + w}{V + w - u}f $$

反射板から観測者への音:

反射板(静止)から観測者(静止)へ、風上方向に進むので音の地面に対する速さは \(V - w\):

$$ f_{\text{反射}} = f_{\text{反射板}} = \frac{V + w}{V + w - u}f $$

(音源・観測者とも静止に対する相対速度が0なので、振動数は変わらない)

ただし、風は反射板の影響を受けないとされています。

直接音(音源→観測者、風上方向):

音源が遠ざかる(速さ \(u\))、風上方向に音が進む(速さ \(V - w\)):

$$ f_{\text{直接}} = \frac{V - w}{V - w + u}f $$

うなりの振動数:

$$ f_{\text{beat}} = \frac{V + w}{V + w - u}f - \frac{V - w}{V - w + u}f $$
答え:反射音の振動数は \(\dfrac{V + w}{V + w - u}f\)
🔬 発展:風ありのうなり周期の整理

うなりの振動数を整理すると:

$$ f_{\text{beat}} = f\left[\frac{V + w}{V + w - u} - \frac{V - w}{V - w + u}\right] $$ $$ = f \cdot \frac{(V+w)(V-w+u) - (V-w)(V+w-u)}{(V+w-u)(V-w+u)} $$

分子を展開:

$$ (V+w)(V-w+u) = V^2 - Vw + Vu + Vw - w^2 + wu = V^2 + Vu - w^2 + wu $$ $$ (V-w)(V+w-u) = V^2 + Vw - Vu - Vw - w^2 + wu = V^2 - Vu - w^2 + wu $$

差:

$$ 2Vu $$

よって:

$$ f_{\text{beat}} = \frac{2Vuf}{(V+w-u)(V-w+u)} = \frac{2Vuf}{(V+w-u)(V-w+u)} $$

風速 \(w = 0\) のとき \(\dfrac{2Vuf}{(V-u)(V+u)} = \dfrac{2Vuf}{V^2 - u^2}\) と一致します。

📌 ポイント

風がある場合のドップラー効果は、「音速 \(V\) に風速 \(w\) を加減算した実効音速」で計算します。音源・観測者の速度は地面に対する速度をそのまま使います。風は音の伝わる速さを変えますが、音源や観測者の動きには直接影響しません。