音源・観測者・反射板が一直線上に並んだドップラー効果の問題です。音源が観測者に近づく基本的なケースから、反射板による反射音、さらに音源が観測者を通過して反射板の先に進む場合まで、段階的に複雑になります。
ドップラー効果の公式を機械的に当てはめるだけでなく、波長の変化と反射板は新しい音源として振る舞うことを理解しましょう。反射板で反射した音の振動数は、反射板が「受け取る」振動数と同じです。
音源が速さ \(u\) で観測者に近づくとき、音源前方の波長は:
$$ \lambda' = \frac{V - u}{f} $$観測者が聞く振動数は:
$$ f' = \frac{V}{\lambda'} = \frac{Vf}{V - u} = \frac{V}{V - u}f $$音速 \(V = 340\) m/s、音源の速さ \(u = 20\) m/s、振動数 \(f = 440\) Hz のとき:
$$ f' = \frac{340}{340 - 20} \times 440 = \frac{340}{320} \times 440 = 1.0625 \times 440 = 467.5 \text{ Hz} $$音源が近づくと約28 Hz 高い音に聞こえます。
観測者が測定する波長は、音速を観測振動数で割ったものです:
$$ \lambda_{\text{obs}} = \frac{V}{f'} = \frac{V - u}{f} $$これは音源前方の波長そのものです。
音源が時間 \(\Delta t\) の間だけ音を出す場合を考えます。音の出し始めの時刻を \(t_1\)、出し終わりの時刻を \(t_1 + \Delta t\) とします。
最初の音が観測者に届く時刻と、最後の音が届く時刻の差が、観測者に音が聞こえる時間です。
音を出し始めたとき、音源と観測者の距離を \(d_0\) とします。最初の音が届くまでの時間は \(\dfrac{d_0}{V}\) です。
\(\Delta t\) 後、音源は \(u\Delta t\) だけ近づいているので、距離は \(d_0 - u\Delta t\) です。最後の音が届くまでの追加時間は \(\dfrac{d_0 - u\Delta t}{V}\) です。
観測者に音が聞こえる時間 \(\Delta t'\):
$$ \Delta t' = (\Delta t + \frac{d_0 - u\Delta t}{V}) - \frac{d_0}{V} = \Delta t - \frac{u\Delta t}{V} = \Delta t\left(1 - \frac{u}{V}\right) = \frac{V - u}{V}\Delta t $$観測者に聞こえる時間が短くなる(\(\dfrac{V-u}{V} < 1\))のは、音源が近づいているため波が「圧縮」されているからです。これは振動数が高くなることと表裏一体の関係です。
音源から出た音は、音源前方で波長 \(\lambda' = \dfrac{V - u}{f}\) です。この波が反射板(静止)に到達するときの振動数は:
$$ f_{\text{reflect}} = \frac{V}{\lambda'} = \frac{Vf}{V - u} $$反射板は静止した音源として、この振動数の音を反射(再放出)します。反射板も観測者も静止しているので、観測者が聞く反射音の振動数は:
$$ f_{\text{obs,reflect}} = \frac{Vf}{V - u} $$観測者は、直接音(振動数 \(f' = \dfrac{Vf}{V - u}\))と反射音(同じ振動数 \(\dfrac{Vf}{V - u}\))の両方を聞きます。
しかし問題を再考すると、音源が観測者に近づいている図1の状況で、観測者は直接音を前方から、反射音を後方から聞きます。直接音の振動数は \(\dfrac{Vf}{V - u}\)(音源が近づく場合)ですが、反射音について考え直す必要があります。
反射板は観測者の向こう側(音源→観測者→反射板の並び)にあります。音源から反射板方向に出た音の波長は \(\dfrac{V - u}{f}\)(音源前方 = 反射板方向)です。この波が反射板で反射されて、観測者に戻ってきます。
反射板に入射する音の振動数:\(\dfrac{Vf}{V - u}\)
反射板→観測者(両方静止)の振動数:\(\dfrac{Vf}{V - u}\)
一方、直接音(音源→観測者)の振動数も \(\dfrac{Vf}{V - u}\) です。
よって、うなりは発生しません(同じ振動数)。
しかし、問題でうなりについて聞いているので、実際には音源が出す音を両方向から聞いているわけではなく、音源から出て直接観測者に届く音と、反射板で反射して戻ってくる音の到達タイミングの差に起因する干渉(うなり)が問われているはずです。
問題を再確認すると「音源が観測者を通り過ぎると」の場面が問5で出てきます。音源が通り過ぎた後は:
うなりの振動数:
$$ f_{\text{beat}} = \frac{Vf}{V - u} - \frac{Vf}{V + u} = Vf \cdot \frac{(V+u) - (V-u)}{(V-u)(V+u)} = \frac{2Vuf}{V^2 - u^2} $$うなりの周期:
$$ T_{\text{beat}} = \frac{1}{f_{\text{beat}}} = \frac{V^2 - u^2}{2Vuf} $$音源が通り過ぎる前は、直接音も反射音も同じ振動数 \(\dfrac{Vf}{V-u}\) なのでうなりは聞こえません。通り過ぎた後は、直接音は低くなり(\(\dfrac{Vf}{V+u}\))、反射音は依然として高いまま(\(\dfrac{Vf}{V-u}\))なので、この振動数の差がうなりを生じます。
図3のように、音源が音速より十分小さい速さ \(u\) で反射板に近づいています(音源が観測者を通り過ぎた後)。
反射板に取り付けた観測装置が検出する振動数は:
$$ f_{\text{反射板}} = \frac{Vf}{V - u} $$(音源が反射板に近づいているので、反射板が受ける振動数は高くなる)
反射板は静止した音源として振動数 \(\dfrac{Vf}{V - u}\) の音を再放出します。観測者も静止しているので:
$$ f_{\text{反射}} = \frac{Vf}{V - u} $$音源が通過後、観測者は:
うなりの振動数:
$$ f_{\text{beat}} = f_{\text{反射}} - f_{\text{直接}} = \frac{Vf}{V - u} - \frac{Vf}{V + u} $$ $$ = Vf \cdot \frac{(V + u) - (V - u)}{(V - u)(V + u)} = \frac{2Vuf}{V^2 - u^2} $$うなりの周期:
$$ T_{\text{beat}} = \frac{1}{f_{\text{beat}}} = \frac{V^2 - u^2}{2Vuf} $$観測者から反射板に向かう方向に、音速より十分小さい一定の速さ \(w\) で風が吹いている場合を考えます。音源は速さ \(u\) で反射板方向に移動しています。
ドップラー効果の風がある場合の公式:
風速 \(w\) を考慮すると、媒質(空気)の速度を基準として音速が \(V\) です。観測者から見た音速は:
反射板が受ける振動数:
音源(速さ \(u\) で反射板方向に移動)から反射板(静止)への音について、風下方向なので音の地面に対する速さは \(V + w\):
$$ f_{\text{反射板}} = \frac{V + w}{V + w - u}f $$反射板から観測者への音:
反射板(静止)から観測者(静止)へ、風上方向に進むので音の地面に対する速さは \(V - w\):
$$ f_{\text{反射}} = f_{\text{反射板}} = \frac{V + w}{V + w - u}f $$(音源・観測者とも静止に対する相対速度が0なので、振動数は変わらない)
ただし、風は反射板の影響を受けないとされています。
直接音(音源→観測者、風上方向):
音源が遠ざかる(速さ \(u\))、風上方向に音が進む(速さ \(V - w\)):
$$ f_{\text{直接}} = \frac{V - w}{V - w + u}f $$うなりの振動数:
$$ f_{\text{beat}} = \frac{V + w}{V + w - u}f - \frac{V - w}{V - w + u}f $$うなりの振動数を整理すると:
$$ f_{\text{beat}} = f\left[\frac{V + w}{V + w - u} - \frac{V - w}{V - w + u}\right] $$ $$ = f \cdot \frac{(V+w)(V-w+u) - (V-w)(V+w-u)}{(V+w-u)(V-w+u)} $$分子を展開:
$$ (V+w)(V-w+u) = V^2 - Vw + Vu + Vw - w^2 + wu = V^2 + Vu - w^2 + wu $$ $$ (V-w)(V+w-u) = V^2 + Vw - Vu - Vw - w^2 + wu = V^2 - Vu - w^2 + wu $$差:
$$ 2Vu $$よって:
$$ f_{\text{beat}} = \frac{2Vuf}{(V+w-u)(V-w+u)} = \frac{2Vuf}{(V+w-u)(V-w+u)} $$風速 \(w = 0\) のとき \(\dfrac{2Vuf}{(V-u)(V+u)} = \dfrac{2Vuf}{V^2 - u^2}\) と一致します。
風がある場合のドップラー効果は、「音速 \(V\) に風速 \(w\) を加減算した実効音速」で計算します。音源・観測者の速度は地面に対する速度をそのまま使います。風は音の伝わる速さを変えますが、音源や観測者の動きには直接影響しません。