鉛直上向きで一様な磁束密度 \(B\) の磁場中に、水平面から角度 \(\theta\) だけ傾いた2本の平行な導体レールが距離 \(l\) だけ離れて固定されています。上端に一様な抵抗線 P'Q'(長さ \(l\))が接続され、質量 \(M\)、長さ \(l\) の導体棒 PQ がレールに垂直に置かれています。
磁場が鉛直上向きで、レールが角度 \(\theta\) で傾いている点に注意。導体棒が斜面下方に速さ \(v\) で動くとき、棒を横切る磁束の変化を正しく計算するために、磁場の斜面に垂直な成分 \(B\cos\theta\) を使うか、あるいは回路面積の水平面への射影を考えます。
導体棒がレールに沿って下向きに速さ \(v\) で運動すると、単位時間あたりの回路面積の変化は \(lv\)(斜面上)です。しかし磁場は鉛直方向なので、回路面を貫く磁束の変化には回路面と水平面のなす角 \(\theta\) が関係します。
斜面上で導体棒が距離 \(v\,dt\) だけ移動すると、回路面積の増加は \(l \cdot v\,dt\) です。この面積を水平面に射影すると \(l \cdot v\,dt \cdot \cos\theta\) になります。したがって磁束の変化は:
$$ d\Phi = B \cdot l \cdot v \cdot \cos\theta \cdot dt $$ファラデーの法則より、誘導起電力は:
$$ \mathcal{E} = \frac{d\Phi}{dt} = Blv\cos\theta $$たとえば \(B = 0.50\) T、\(l = 0.20\) m、\(v = 3.0\) m/s、\(\theta = 30°\) のとき:
$$ \mathcal{E} = 0.50 \times 0.20 \times 3.0 \times \cos 30° = 0.30 \times 0.866 = 0.26 \text{ V} $$誘導起電力が回路に起電力 \(\mathcal{E} = Blv\cos\theta\) を生じ、この起電力が抵抗線 P'Q'(長さ \(l\))の両端にかかります(導体棒やレールの抵抗は0なので)。
抵抗線内部に一様な電場 \(E\) が生じるとすると:
$$ El = Blv\cos\theta $$ $$ E = Bv\cos\theta $$電子(質量 \(m\)、電荷 \(-e\))が抵抗線に沿って加速度 \(a\) で運動しているとします。電子は:
電子の運動方程式は:
$$ ma = eE - kc $$ここで \(E = Bv\cos\theta\) を代入すると:
$$ ma = eBv\cos\theta - kc $$十分時間が経つと \(a = 0\) になり、電子は一定速度 \(c_0\) で移動します。
$$ 0 = eBv\cos\theta - kc_0 $$ $$ c_0 = \frac{eBv\cos\theta}{k} $$この \(c_0\) は電子のドリフト速度に相当します。電場による加速と散乱(抵抗力)のバランスで決まる定常速度です。
抵抗線中の単位長さあたりの電子数を \(n\) とし、電子の速度(ドリフト速度)を \(c_0\) とします。単位時間に抵抗線の断面を通過する電子の数は \(nc_0\) 個であり、1個あたり電荷 \(e\) を運ぶので:
$$ I = enc_0 $$\(c_0\) を代入すると:
$$ I = en \cdot \frac{eBv\cos\theta}{k} = \frac{ne^2Bv\cos\theta}{k} $$オームの法則 \(\mathcal{E} = IR\) より:
$$ R = \frac{\mathcal{E}}{I} = \frac{Blv\cos\theta}{enc_0} $$\(c_0 = \dfrac{eBv\cos\theta}{k}\) を代入すると:
$$ R = \frac{Blv\cos\theta}{en \cdot \dfrac{eBv\cos\theta}{k}} = \frac{Blv\cos\theta \cdot k}{e^2nBv\cos\theta} = \frac{kl}{ne^2} $$ここで抵抗線の長さ \(l\) が含まれることに注意します。
一般に、抵抗値 \(R = \rho \dfrac{l}{S}\)(\(\rho\): 抵抗率、\(S\): 断面積)です。今回の結果から、抵抗率は \(\rho = \dfrac{k}{ne^2} \cdot S\) に相当し、これはドルーデモデルの結果と一致します。\(k\) は電子の散乱頻度(衝突率 × 質量)に関係しています。
抵抗力が単位時間あたりに電子1個に対してする仕事 \(W_1\):
抵抗力 \(-kc_0\) が電子の速度 \(c_0\) に対してする仕事率(負の仕事)は:
$$ W_1 = (-kc_0) \cdot c_0 = -kc_0^2 $$この仕事の絶対値が熱に変換されます。電場のする仕事率は:
$$ W_E = eE \cdot c_0 = eBv\cos\theta \cdot c_0 $$定常状態 \(a = 0\) では \(eBv\cos\theta = kc_0\) なので:
$$ W_E = kc_0 \cdot c_0 = kc_0^2 $$電場のした仕事がすべてジュール熱になることが確認できます。
単位時間・単位長さあたりに発生する熱量 \(J\):
単位長さあたり \(n\) 個の電子があるので、全体の発熱率は:
$$ J = n \cdot kc_0^2 $$\(c_0 = \dfrac{eBv\cos\theta}{k}\) を代入すると:
$$ J = n \cdot k \cdot \frac{e^2B^2v^2\cos^2\theta}{k^2} = \frac{ne^2B^2v^2\cos^2\theta}{k} $$これを \(I^2R\) で検算すると:
$$ I^2R = \left(\frac{ne^2Bv\cos\theta}{k}\right)^2 \cdot \frac{kl}{ne^2} = \frac{n^2e^4B^2v^2\cos^2\theta}{k^2} \cdot \frac{kl}{ne^2} = \frac{ne^2B^2v^2\cos^2\theta \cdot l}{k} $$これは抵抗線全体(長さ \(l\))の発熱なので、単位長さあたりの発熱は \(J = \dfrac{ne^2B^2v^2\cos^2\theta}{k}\) と一致します。
導体棒にはたらく力は:
電磁力の斜面成分について:導体棒に流れる電流 \(I\) が磁場 \(B\) から受ける力は \(BIl\) ですが、この力は水平方向に作用します(磁場が鉛直、電流が水平なので)。斜面方向の成分は \(BIl\cos\theta\) です。
終端速度 \(v_0\) では加速度が 0 なので:
$$ Mg\sin\theta = BIl\cos\theta $$ここで \(I = \dfrac{\mathcal{E}}{R} = \dfrac{Blv_0\cos\theta}{R}\) を代入すると:
$$ Mg\sin\theta = B \cdot \frac{Blv_0\cos\theta}{R} \cdot l\cos\theta = \frac{B^2l^2v_0\cos^2\theta}{R} $$ $$ v_0 = \frac{MgR\sin\theta}{B^2l^2\cos^2\theta} $$終端速度で運動しているとき、導体棒の力学的エネルギーの変化と発熱を考えます。
単位時間あたり、導体棒は距離 \(v_0\) だけ斜面を下降するので、重力のする仕事(=位置エネルギーの減少)は:
$$ P_{\text{重力}} = Mgv_0\sin\theta $$運動エネルギーは一定(終端速度で一定速度)なので、重力のした仕事はすべてジュール熱に変換されます。
$$ P_{\text{ジュール}} = I^2R = \frac{B^2l^2v_0^2\cos^2\theta}{R} $$検算:\(v_0 = \dfrac{MgR\sin\theta}{B^2l^2\cos^2\theta}\) を代入すると:
$$ P_{\text{ジュール}} = \frac{B^2l^2\cos^2\theta}{R} \cdot \frac{M^2g^2R^2\sin^2\theta}{B^4l^4\cos^4\theta} = \frac{M^2g^2R\sin^2\theta}{B^2l^2\cos^2\theta} $$一方:
$$ Mgv_0\sin\theta = Mg \cdot \frac{MgR\sin\theta}{B^2l^2\cos^2\theta} \cdot \sin\theta = \frac{M^2g^2R\sin^2\theta}{B^2l^2\cos^2\theta} $$一致することが確認できました。
導体棒の運動方程式は:
$$ M\frac{dv}{dt} = Mg\sin\theta - \frac{B^2l^2\cos^2\theta}{R}v $$これは1次の微分方程式で、解は:
$$ v(t) = v_0\left(1 - e^{-t/\tau}\right) $$ここで時定数 \(\tau = \dfrac{MR}{B^2l^2\cos^2\theta}\) です。
すなわち、導体棒は指数関数的に終端速度に近づきます。
磁場が鉛直方向であるため、誘導起電力と電磁力の両方に \(\cos\theta\) がかかります。「斜面に垂直な磁場成分」\(B\cos\theta\) を使って計算すると見通しが良くなります。水平なレールの場合(\(\theta = 0\))の結果と比較して、\(\cos\theta\) の因子が追加されていることを確認しましょう。