紙面に垂直に裏から表の向き(\(+z\) 方向)に磁束密度 \(B\) の一様な磁場が、\(x\) 座標が0から \(3L\) の領域にだけ加えられています。五角形の1回巻きコイル abcde を \(xy\) 平面と平行に、\(x\) 軸正の向きに一定の速さ \(v\) で移動させます。
五角形コイルは正方形と直角二等辺三角形を合わせた形です。\(y\) 軸に平行で長さ \(2L\) の辺 ab が \(y\) 軸を通過する瞬間を時刻 \(t = 0\) とします。コイルの抵抗は \(R\)、導線の太さとコイルの自己インダクタンスは無視できます。
この問題の核心は、五角形コイルの幾何学的形状によって磁場に入る面積の変化率が区間ごとに異なることです。正方形部分では面積変化率一定、三角形部分では面積変化率が変わります。
時刻 \(0 < t \leq \frac{2L}{v}\) の間、コイルの辺 ab(左辺、長さ \(2L\))から磁場領域に入っていきます。この区間では正方形部分のみが磁場に入るため、磁場内の面積は長方形です。
時刻 \(t\) でコイルの辺 ab が磁場内に進んだ距離は \(vt\) です。コイルの磁場内部分は幅 \(vt\)、高さ \(2L\) の長方形なので:
$$ \Phi = B \cdot 2L \cdot vt = 2BLvt $$数値例:\(B = 0.50\) T、\(L = 0.10\) m、\(v = 2.0\) m/s、\(t = 0.030\) s のとき:
$$ \Phi = 2 \times 0.50 \times 0.10 \times 2.0 \times 0.030 = 6.0 \times 10^{-3} \text{ Wb} $$この区間では辺 ab のみが磁場境界を横切るため、磁束の変化率は一定(\(\frac{d\Phi}{dt} = 2BLv\))となり、一定の誘導起電力が生じます。
ファラデーの電磁誘導の法則:
$$ \mathcal{E} = -\frac{d\Phi}{dt} = -2BLv $$起電力の大きさは \(|\mathcal{E}| = 2BLv\) です。
abcde の向きを正とすると、レンツの法則より磁束の増加(\(+z\) 方向)を打ち消す向きに電流が流れるので、電流は edcba の向き(abcde の負の向き)に流れます。
$$ I = \frac{|\mathcal{E}|}{R} = \frac{2BLv}{R} $$abcde の向きを正とすると:
$$ I = -\frac{2BLv}{R} $$辺 ab が磁場中を \(+x\) 方向に速さ \(v\) で動くとき、自由電子に作用するローレンツ力 \(\vec{F} = q\vec{v} \times \vec{B}\) を考えます。
\(\vec{v} = v\hat{x}\)、\(\vec{B} = B\hat{z}\) なので、正電荷に対する力は \(qvB(-\hat{y})\) つまり \(-y\) 方向(b→aの方向)。
したがって辺 ab 内の起電力は b→a の向き(edcba の向き)で、電流は edcba 向きに流れます。
コイルを一定速度 \(v\) で動かすので、加速度は0。したがって外力は電磁制動力と大きさが等しく逆向きです。
磁場中にある導線 ab(長さ \(2L\))に電流 \(I\) が流れているとき、受ける力は:
$$ F_{\text{brake}} = BIL_{\text{eff}} = B \cdot \frac{2BLv}{R} \cdot 2L = \frac{4B^2L^2v}{R} $$この力は速度と逆向き(\(-x\) 方向)なので、一定速度を保つための外力は \(+x\) 方向に:
$$ F_x = \frac{4B^2L^2v}{R} $$外力がする仕事率と、回路で消費されるジュール熱の出力が等しいことを確認します:
$$ P_{\text{ext}} = F_x v = \frac{4B^2L^2v^2}{R} $$ $$ P_{\text{Joule}} = I^2 R = \left(\frac{2BLv}{R}\right)^2 R = \frac{4B^2L^2v^2}{R} $$一致するので正しいことが確認できます。
一定速度条件では、外力の仕事率 = ジュール熱の出力 が成り立ちます。これはエネルギー保存の別表現です。
第1区間では電流が一定値 \(I = \frac{2BLv}{R}\) なので、ジュール熱は:
$$ Q = I^2 R \cdot \Delta t = \left(\frac{2BLv}{R}\right)^2 R \cdot \frac{2L}{v} $$ $$ = \frac{4B^2L^2v^2}{R} \cdot \frac{2L}{v} = \frac{8B^2L^3v}{R} $$外力の仕事 \(W = F_x \cdot 2L = \frac{4B^2L^2v}{R} \cdot 2L = \frac{8B^2L^3v}{R}\) とも一致します。速度一定なので外力の仕事 = ジュール熱です。
第2区間 \(\frac{2L}{v} < t < \frac{3L}{v}\) では、コイルの辺 ab は \(x = 0\) を超えて磁場内にあり、三角形部分の頂点 e が \(x = 3L\)(磁場の右端)を超えて出ていきます。
時刻 \(t\) で辺 ab の位置は \(x = vt\) です。頂点 e の位置は \(x = vt + 3L\) です(コイルの全幅が \(3L\))。
ただし \(t > \frac{2L}{v}\) のとき、辺 ab の位置は \(x = vt > 2L\) なので、頂点 e の位置は \(x = vt + L > 3L\) (三角形の頂点は辺 cd から \(L\) 右にある)。
三角形部分が磁場の右端 \(x = 3L\) から出ていく過程では、磁場外に出た三角形の面積を引く必要があります。
辺 cd の位置は \(x = vt\)(第2区間の始まりで \(x = 2L\))。三角形の頂点 e は辺 cd から距離 \(L\) 右にあり、位置 \(x = vt + L\) です。
\(s = vt - 2L\)(辺 cd が \(x = 2L\) を超えた距離)とすると、\(0 < s < L\) で:
磁場外に出た三角形部分(\(x > 3L\))は、頂点 e から測って底辺 \(s\) の二等辺直角三角形です。磁場境界 \(x = 3L\) と辺 ce、de の交点を考えると、出た部分は相似な三角形で面積は \(s^2\) です。
コイル全体の面積は \(4L^2 + L^2 = 5L^2\) で、磁場外の面積は \(s^2\) なので:
$$ \Phi = B(5L^2 - s^2) = B\left(5L^2 - (vt - 2L)^2\right) $$三角形の頂点側が出ていくとき、出た部分の面積は \(s^2\) に比例する(二等辺直角三角形の相似)ことがポイントです。これにより磁束変化率が \(t\) に依存し、起電力が時間とともに変化します。
\(s = vt - 2L\) として \(\Phi = B(5L^2 - s^2)\) なので:
$$ \frac{d\Phi}{dt} = -2Bs \cdot \frac{ds}{dt} = -2B(vt - 2L) \cdot v $$時刻 \(t\) から \(t + dt\) の間の磁束変化量は:
$$ d\Phi = \frac{d\Phi}{dt} \cdot dt = -2Bv(vt - 2L)\,dt $$ファラデーの法則:
$$ \mathcal{E} = -\frac{d\Phi}{dt} = 2Bv(vt - 2L) $$abcde の向きを正とすると、\(vt > 2L\) なので \(\mathcal{E} > 0\)、つまり abcde の向きに起電力が生じます。
第1区間では起電力が一定(\(2BLv\))でしたが、第2区間では \(t\) に比例して増加します。これは三角形部分の幾何学的形状(面積が \(s^2\) に比例)に起因します。
電流は:
$$ I = \frac{\mathcal{E}}{R} = \frac{2Bv(vt - 2L)}{R} $$外力の仕事率 = ジュール熱の出力 から:
$$ F_x \cdot v = I^2 R = \frac{4B^2v^2(vt-2L)^2}{R} $$ $$ F_x = \frac{4B^2v(vt-2L)^2}{R} $$第2区間では磁場境界 \(x = 3L\) を横切る辺が三角形の2辺(ce と de)です。これらの辺の \(y\) 方向成分に電流が流れることで \(x\) 方向の力が生じます。
辺 ce と de が磁場境界と交わる長さは \(2s = 2(vt - 2L)\) なので、この辺に流れる電流が受ける \(x\) 方向の力は:
$$ F = BI \cdot 2(vt - 2L) = B \cdot \frac{2Bv(vt-2L)}{R} \cdot 2(vt-2L) = \frac{4B^2v(vt-2L)^2}{R} $$同じ結果が得られます。
コイルが磁場に入る第1区間(\(0 < t \leq \frac{2L}{v}\))では、一定の電流 \(I_1 = \frac{2BLv}{R}\) が流れます。
第2区間(\(\frac{2L}{v} < t < \frac{3L}{v}\))では、三角形の頂点が出ていくため起電力が \(\mathcal{E} = 2Bv(vt-2L)\) となり、\(t = \frac{3L}{v}\) のとき最大で \(\mathcal{E}_{\max} = 2BLv\) です。
したがって電流の最大値は:
$$ I_{\max} = \frac{2BLv}{R} $$各区間での \(F_x\) をまとめます:
グラフは \(t = \frac{2L}{v}\) で不連続(一定値から放物線へ)、その後0に至り、再び対称的に増加するパターンです。
第1区間の終わり(\(t = \frac{2L}{v}\))での \(F_x = \frac{4B^2L^2v}{R}\)
第2区間の始まり(\(t = \frac{2L}{v}^+\))での \(F_x = \frac{4B^2v \cdot 0^2}{R} = 0\)
したがって \(F_x\) は \(t = \frac{2L}{v}\) で不連続に0に落ちます。これは第1区間では辺 ab のみが磁場境界を横切っていたのに対し、第2区間では辺 ab は完全に磁場内に入り、代わりに三角形の頂点 e が右端を出始めるためです。
コイルの形状が複雑な場合、各区間での磁場境界を横切る辺の長さと方向を整理することが重要です。\(F_x\) のグラフの概形は、各区間の磁束変化率の2乗に比例します。