4 本の長い直流電流によって生じる磁場と、その中に置かれた閉回路の電磁誘導、回路の運動による起電力を扱う電磁気学の総合問題です。
各電流の距離と磁場の大きさ:中心 E から各頂点までの距離は、正方形の対角線の半分。
$$r = \dfrac{L}{\sqrt{2}}$$長い直線電流が距離 $r$ の点に作る磁束密度は、
$$B_0 = \dfrac{\mu_0 I_0}{2\pi r} = \dfrac{\mu_0 I_0}{2\pi (L/\sqrt{2})} = \dfrac{\mu_0 I_0 \sqrt{2}}{2\pi L} = \dfrac{\mu_0 I_0}{\sqrt{2}\pi L}$$方向の決定(右ねじの法則):
対称性の利用:A と B は両方とも「裏向き電流」、配置は上辺 2 つ。それぞれ E に作る磁場の水平成分は対称的に打ち消し合い、鉛直成分が同じ向き(下向き)に足し合わされる。C と D は「表向き電流」、配置は下辺 2 つで、同様に下向きの磁場を作る。4 本すべての下向き成分が足される。
各電流の磁場の鉛直成分は大きさ $B_0 \cdot \cos 45° = B_0 / \sqrt{2}$。4 本分の合計は、
$$B_{\text{E}} = 4 \cdot \dfrac{B_0}{\sqrt{2}} = \dfrac{4 \mu_0 I_0}{\sqrt{2} \cdot \sqrt{2} \pi L} = \dfrac{4\mu_0 I_0}{2\pi L} = \dfrac{2 \mu_0 I_0}{\pi L}$$向き:下向き(問題の図1 で⑤に対応)
A の電流(裏向き ⊗)の右ねじ方向で E 位置(A の右下)での磁場を調べる:
B(右上)の電流の同様の計算で、E 位置での磁場は「右下」方向 ⇒ 水平は右向き(A と打ち消す)、鉛直は下向き(A と合成)。C, D も対称的に下向き成分に寄与。
対称性を使って計算する。正方形の対角線上の電流は、中心で水平成分打ち消し・鉛直成分合成。4 本とも下向きに寄与し、大きさ $2\mu_0 I_0 / (\pi L)$。
点 A での磁場分析:残り 3 本の電流は B, C, D。
合成した結果は、頂点ごとに特定の方向を向く。問題の選択肢で「A は ⑥(左下)」、B は ⑧、C は ②、D は ④ などとなる。これは 4 回対称の配置から、各頂点の磁場の向きも回転対称的に並ぶ。
具体的な計算(A の場合):
これらを合成すると、左下方向に合計が残る(C からの右上寄与は B, D より弱い)→ 選択肢 ⑥(左下)。
各頂点で、電流対角線方向(頂点から中心への方向)と垂直な方向に磁場が向く。
配置は $D_4$ 対称(90°回転 + 鏡映対称)。A→B→C→D と 90° 回転すれば、磁場の向きも 90° 回転する。したがって A の磁場向きを決めれば他も決まる。計算を 1 つだけ丁寧にやればよい。
直線電流の磁場は右ねじの法則。複数電流は「ベクトル和」で合成。対称性を使うと計算量が大幅に減る。
力の公式:単位長さあたり、$\vec{f} = I_0 \hat{\ell} \times \vec{B_A}$。ここで $\hat{\ell}$ は電流方向($-\hat{z}$、裏向き)。
向き:問2 で A 地点の磁場 $\vec{B_A}$ は左下(⑥ 方向)。$(-\hat{z}) \times \text{(左下)}$ を計算すると、右下(④ 方向)。
大きさ:$B_A$ の計算を詳細に行う。A 位置での B 成分は、B, C, D からの寄与のベクトル和:
合計:$x$ 方向:$-\dfrac{\mu_0 I_0}{2\pi L} + \dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L} = -\dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L}$(左向き)、$y$ 方向:$+\dfrac{\mu_0 I_0}{2\pi L} - \dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L} = +\dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L}$(下向き)。大きさ:
$$B_A = \sqrt{\left(\dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L}\right)^2 \times 2} = \dfrac{\mu_0 I_0}{4\pi L}\sqrt{2} = \dfrac{\mu_0 I_0}{2\sqrt{2}\pi L}$$したがって単位長さあたりの力の大きさは、
$$|f| = I_0 B_A = \dfrac{\mu_0 I_0^2}{2\sqrt{2}\pi L} = \dfrac{\sqrt{2}\mu_0 I_0^2}{4\pi L}$$向きは右下(選択肢 ④)。
4 本の電流の並び:上 2 本が裏、下 2 本が表。これは「渦状」電流分布(中心から見ると、上辺→下辺に電流が循環する)。中心のところで下向き磁場(問1 の結果)が生じる。
A の電流(裏向き)は、この「中心の渦」から外向き(対角線に沿って外側)に押し出される力を受ける。したがって A は左上→右下(中心から離れる)方向ではなく、中心へ向かう方向?実は対称性で、各頂点は中心から外向きの力を受ける(反発)、または中心向き(引力)のどちらか。問題の選択肢によれば ④(右下 = 中心方向)。
平行電流同士は「同方向なら引力・逆方向なら斥力」。本問の配置では、対角線方向の電流(A と C)は逆向きなので斥力、辺方向(A と B)は同じ向きなので引力。ベクトル和で力の方向が決まる。
閉回路の配置:閉回路 ABCD は正方形、辺長 $L$。辺 AD は導線 1 からの距離 $a$(近い側)、辺 BC は距離 $a + L$(遠い側)、辺 AB と辺 DC は導線 1 に垂直。
辺 AD の力:電流 $I_0$(問題文:A→B→C→D の向き、なので AD の辺では D→A の向きで流れる=導線 1 と平行で同方向とする)。
$$F_{AD} = I_0 \cdot L \cdot B(a) = I_0 \cdot L \cdot \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi a}$$向き:平行電流同方向なら引力 → 導線 1 の方向(左向き)
辺 BC の力:BC 辺では電流の向きが AD と逆(B→C なので下向き)、導線 1 と逆方向 → 反発力(右向き)
$$F_{BC} = I_0 \cdot L \cdot B(a + L) = I_0 \cdot L \cdot \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi (a + L)}$$辺 AB と辺 DC の力:これらは導線 1 に垂直な辺で、磁場は導線 1 に垂直($\vec{B}$ は紙面垂直)。力は $F = IL \times B$ でつり合う:AB と DC は互いに反対向きの力で打ち消し合う。
合計の力:$F_{AD} - F_{BC}$ が残る。$a < a + L$ より $F_{AD} > F_{BC}$、合力は導線 1 に向かう(左向き):
$$F_{\text{net}} = I_0 L \cdot \dfrac{\mu_0 I_1}{2\pi}\left(\dfrac{1}{a} - \dfrac{1}{a+L}\right) = \dfrac{\mu_0 I_0 I_1 L}{2\pi}\cdot \dfrac{L}{a(a+L)} = \dfrac{\mu_0 I_0 I_1 L^2}{2\pi a (a + L)}$$向き:導線 1 への方向(左向き、$-x$ 方向、選択肢 ⑦ に相当)
辺 AB では電流は +x 方向(右)、辺 DC では -x 方向(左)。これらの辺で導線 1 からの磁場は紙面垂直(+z または -z)方向。
AB 上の位置 $x$(導線 1 からの距離)での磁場は $B(x)$。位置 $x$ の小区間 $dx$ にはたらく力は $I_0 B(x) dx$($y$ 方向)。DC 上の同じ $x$ では電流が逆なので力も逆向きとなり、積分で 0 になる。
磁場中の閉回路が受ける力は、「磁場が一様なら合力 0」(トルクのみ)、「磁場に勾配があれば合力が残る」。本問では導線 1 からの磁場が距離に反比例するので、閉回路に引力($1/a - 1/(a+L)$ に比例)。
導線 1 の電流 $i(t) = I_1 \cdot t / (3\tau)$ は時間とともに線形に増加。磁場は $B(x) = \mu_0 i(t) / (2\pi x)$(導線 1 から距離 $x$)。閉回路 ABCD を貫く磁束は(仮定として正方形が導線 1 の右側、距離 $a$ から $a+L$ の範囲にあるとして)、
$$\Phi(t) = \int_a^{a+L} \dfrac{\mu_0 i(t)}{2\pi x} L \, dx = \dfrac{\mu_0 L i(t)}{2\pi} \ln\dfrac{a+L}{a}$$磁束は紙面裏向き(導線 1 の右側では磁場は紙面裏向き)。電流が増加 → 磁束が増加。レンツの法則より、誘導電流は磁束増加を打ち消す向き(すなわち紙面手前向きの磁場を作る向き)、これは閉回路内を反時計回り($A \to D \to C \to B \to A$ = 選択肢 (イ))。
回路全体の抵抗を $R$ として電流 $i_R = V / R = \dfrac{\mu_0 L I_1}{6\pi \tau R}\ln\dfrac{a+L}{a}$。時間 $\Delta t = 2\tau$ で発生するジュール熱:
$$Q = i_R^2 R \Delta t = V^2 \cdot \dfrac{2\tau}{R} = \dfrac{2\tau}{R}\left(\dfrac{\mu_0 L I_1}{6\pi\tau}\ln\dfrac{a+L}{a}\right)^2$$ $$Q = \dfrac{\mu_0^2 L^2 I_1^2}{18\pi^2 \tau R}\left(\ln\dfrac{a+L}{a}\right)^2$$誘導電流は「磁束変化を妨げる」向き。本問では磁束(裏向き)が増加するので、誘導電流は「表向き磁束」を作る向き(紙面を基準に反時計回り)。これは環境の変化に抵抗する自然の一般原理(慣性・エネルギー保存)から導ける。
一方、「誘導起電力の符号」は $V = -d\Phi/dt$ で、磁束増加時 $V < 0$、磁束減少時 $V > 0$。符号の定義は回路の向きに依存する。
誘導起電力 $V = -d\Phi/dt$。磁束は「磁場 × 面積」で、磁場に空間分布があるなら積分を使う。対数関数 $\ln(r_2/r_1)$ は、平行直線電流系で磁束を計算するとき特徴的に現れる。
磁場の近似:導線 1 から距離 $x$(辺 AD の位置 $x = b$)での磁場:
$$B(x) = B_0 - k x \quad (B_0 > 0, k > 0, L \ll b)$$辺の起電力:辺 AD(長さ $L$、位置 $x = b$)、辺 BC(長さ $L$、位置 $x = b + L$)。閉回路が $+x$ 方向に速さ $v$ で動くとき、各辺に生じる誘導起電力は $V_{\text{edge}} = B \ell v$(ローレンツ力による)。
辺 AD:$V_{AD} = B(b) L v = (B_0 - k b) L v$
辺 BC:$V_{BC} = B(b+L) L v = (B_0 - k(b+L)) L v$
閉回路の起電力:辺 AD と辺 BC は反対向きに起電力を生み、符号を考慮して合計:
$$V = V_{AD} - V_{BC} = L v \{(B_0 - k b) - (B_0 - k(b + L))\} = L v \cdot k L = k L^2 v$$大きさは、
$$|V| = k L^2 v$$向き:磁場は $x$ が大きい(遠い)ほど小さい。閉回路が右に動くと、AD 辺の磁場が減少、BC 辺の磁場も減少するが、AD の方が磁場が大きい → 磁束全体は減少。レンツの法則で、磁束減少を補う向きに誘導電流 → 閉回路内で時計回り($A \to B \to C \to D$ の向き)。
閉回路の磁束:
$$\Phi = \int_b^{b+L} B(x) L \, dx = L \int_b^{b+L} (B_0 - k x) \, dx = L[B_0 x - \dfrac{kx^2}{2}]_b^{b+L}$$ $$= L \{B_0 L - \dfrac{k}{2}[(b+L)^2 - b^2]\} = L \{B_0 L - \dfrac{k}{2}(2bL + L^2)\} = L^2 B_0 - k L^2 b - \dfrac{k L^3}{2}$$閉回路が $v$ で動くと $b \to b + v t$、時間微分:
$$\dfrac{d\Phi}{dt} = -k L^2 v$$したがって $|V| = |d\Phi/dt| = k L^2 v$。$L \ll b$ の近似なしでも成立する(問題の近似は不要)。
閉回路の運動による誘導起電力は「両辺の磁場差 × 辺長 × 速さ」または「磁束の時間微分」のどちらでも求まる。後者の方が一般的で、磁場分布が複雑でも適用できる。