前期 大問2:電磁気(コンデンサー)

解法の指針

平行板コンデンサーの基本公式から出発し、4枚極板の多層構造、さらに極板の回転操作という発展的な設定まで扱う電磁気の総合問題です。

問題の構成

全体を貫くポイント

問1:[1] 電位差、[2] 静電エネルギー

直感的理解

平行板コンデンサーは「電荷を蓄える平行な2枚の導体板」。板の面積が大きいほど多くの電荷を蓄えられ、間隔が狭いほど電場が強くなる。電位差は「電場 × 板の間隔」で決まる。

面積 \(S\,[\text{m}^2]\) の半円形極板を2枚用い、間隔 \(d\,[\text{m}]\) で平行に固定した平行板コンデンサーAを考えます。真空の誘電率を \(\varepsilon_0\) とします。

電場の大きさ:ガウスの法則より、極板間の一様な電場は

$$E = \frac{Q}{\varepsilon_0 S}$$

[1] 極板間の電位差:一様電場中で極板間隔 \(d\) なので

$$V = Ed = \frac{Qd}{\varepsilon_0 S} \quad \text{[V]}$$

[2] 静電エネルギー:\(U = \frac{1}{2}QV\) より

$$U = \frac{1}{2}QV = \frac{1}{2}Q \cdot \frac{Qd}{\varepsilon_0 S} = \frac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S} \quad \text{[J]}$$

具体的な数値例:面積 0.010 m²、間隔 2.0 mm、電荷 50 nC のとき(\(\varepsilon_0 = 8.85 \times 10^{-12}\) F/m)

$$V = \frac{5.0 \times 10^{-8} \times 2.0 \times 10^{-3}}{8.85 \times 10^{-12} \times 1.0 \times 10^{-2}} = \frac{1.0 \times 10^{-10}}{8.85 \times 10^{-14}} \fallingdotseq 1.1 \times 10^{3}\,\text{V}$$ $$U = \frac{(5.0 \times 10^{-8})^2 \times 2.0 \times 10^{-3}}{2 \times 8.85 \times 10^{-12} \times 1.0 \times 10^{-2}} = \frac{5.0 \times 10^{-18}}{1.77 \times 10^{-13}} \fallingdotseq 2.8 \times 10^{-5}\,\text{J}$$
答え:
[1] \(V = \dfrac{Qd}{\varepsilon_0 S}\) [V]
[2] \(U = \dfrac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S}\) [J]
補足:電気容量を使った表現との関係

平行板コンデンサーの電気容量は \(C = \varepsilon_0 S / d\) なので、

$$V = \frac{Q}{C} = \frac{Qd}{\varepsilon_0 S}, \quad U = \frac{Q^2}{2C} = \frac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S}$$

電荷一定のまま間隔を変えるので、\(Q/C\) 形式より \(Q, d, S, \varepsilon_0\) で直接表す方が見通しが良い。

Point

電荷 \(Q\) が一定(極板を外して孤立させた)のとき、\(V \propto d\)、\(U \propto d\) となる。電池につないだまま(\(V\) 一定)の場合とは挙動が異なるので注意。

問1:[3] 電位差の変化、[4] エネルギーの変化、[5] 引力

直感的理解

極板の固定を外し、外力で間隔を \(\Delta d\) だけ広げる。電荷は逃げ場がないので一定のまま。間隔が広がると電位差もエネルギーも増加する。この増加分は外力がした仕事に等しい。

極板の固定を外し、電気量を保ったまま(孤立状態)、外力で間隔を \(\Delta d\) だけ広げます。

[3] 電位差の変化:電荷 \(Q\) は一定なので、間隔が \(d \to d + \Delta d\) になると

$$V' = \frac{Q(d + \Delta d)}{\varepsilon_0 S}$$

元の電位差 \(V = Qd/(\varepsilon_0 S)\) との比をとると

$$\frac{V'}{V} = \frac{d + \Delta d}{d}$$

よって電位差は \(\boxed{\dfrac{d + \Delta d}{d}}\) 倍。

[4] エネルギーの変化:\(U = Q^2 d/(2\varepsilon_0 S)\) より

$$U' = \frac{Q^2(d + \Delta d)}{2\varepsilon_0 S}$$ $$\frac{U'}{U} = \frac{d + \Delta d}{d}$$

エネルギーも \(\boxed{\dfrac{d + \Delta d}{d}}\) 倍。

[5] 引力の大きさ:エネルギーの変化量は外力がした仕事に等しい。極板間の引力を \(F\) とすると、\(\Delta d\) だけ広げるのに外力は \(F \cdot \Delta d\) の仕事をする:

$$F \cdot \Delta d = U' - U = \frac{Q^2(d + \Delta d)}{2\varepsilon_0 S} - \frac{Q^2 d}{2\varepsilon_0 S} = \frac{Q^2 \Delta d}{2\varepsilon_0 S}$$

両辺を \(\Delta d\) で割ると

$$F = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S} \quad \text{[N]}$$
答え:
[3] 電位差は \(\dfrac{d + \Delta d}{d}\) 倍
[4] エネルギーは \(\dfrac{d + \Delta d}{d}\) 倍
[5] \(F = \dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}\) [N]
別解:電場から引力を求める

一方の極板が作る電場は \(E_1 = Q/(2\varepsilon_0 S)\)(片方の極板による電場は全体の半分)。もう一方の極板上の電荷 \(-Q\) に働く力は

$$F = QE_1 = Q \cdot \frac{Q}{2\varepsilon_0 S} = \frac{Q^2}{2\varepsilon_0 S}$$

仕事の方法と同じ結果が得られる。引力は間隔 \(d\) に依存しない点に注意。

Point

電荷一定で間隔を変えると \(V\) と \(U\) はともに \(d\) に比例して変化する。引力 \(F = Q^2/(2\varepsilon_0 S)\) は間隔によらず一定。これは「一方の極板が作る電場中にもう一方の極板がある」と考えると理解しやすい。

問2:[6a] 電気力線、[6] 電気量、[6v] 等価回路、[7] 電気容量

直感的理解

4枚の極板を交互に正極板・負極板として並べると、隣り合う正負の組が3つできる。これはコンデンサーAを3つ並列に接続したのと同じ。電気容量は3倍になり、蓄えられる電気量も増える。

4枚の極板を等間隔 \(d\) で平行に配置し、奇数番目(1, 3番目)を正極板、偶数番目(2, 4番目)を負極板として電池とスイッチに接続します。

[6a] 電気力線の模式図:充電後、4枚の極板間に生じる電気力線は、隣接する正・負極板の間に等間隔に描かれる。3つの隙間すべてに同じ本数の力線が生じ、1番目の極板からは上面のみ、4番目の極板には下面のみ力線が入る。中間の2番目・3番目の極板には上下両面に力線が出入りする。

選択肢から、(ウ)が正しい(1番目の極板の下面から力線が出て2番目に入り、3番目の下面から出て4番目に入る図)。

[6] 1番目の極板の電気量:1番目の極板(正極板)は2番目(負極板)とのみ対向している。この1組で蓄えられる電気量は \(Q = CV\)(\(C = \varepsilon_0 S / d\))。一方、3番目の極板は2番目と4番目の両方と対向するため、上面・下面それぞれに \(Q\) ずつの電荷を持つ。

3番目の極板全体で \(2Q\) の電荷を持つことから、全体(1番目+3番目の正極板)の電気量は \(Q + 2Q = 3Q\)。よって1番目の極板に蓄えられた電気量はコンデンサーAの \(\boxed{3}\) 倍

[6v] 等価回路:4枚の交互極板は、3つの平行板コンデンサー(1-2間、2-3間、3-4間)が並列に接続された回路と等価。選択肢は(エ)

[7] 電気容量の倍率:3つの \(C = \varepsilon_0 S / d\) が並列なので

$$C_B = 3C = \frac{3\varepsilon_0 S}{d}$$

コンデンサーAの電気容量の \(\boxed{3}\) 倍

答え:
[6a] 選択肢(ウ)
[6] 3 倍
[6v] 選択肢(エ):3つの並列
[7] 3 倍
補足:なぜ並列になるのか

4枚の極板を上から1, 2, 3, 4とする。奇数番目(1, 3)は全て電池の正極に、偶数番目(2, 4)は全て負極に接続されている。

各隙間のコンデンサーは両端が同じ電位(正極同士、負極同士)につながっているので、並列接続になる。

一般に \(n\) 枚の交互極板では \(n-1\) 個のコンデンサーの並列になり、容量は \((n-1)C\) 倍。

Point

多層コンデンサーの構造では、奇数番目と偶数番目の極板がそれぞれ同電位で接続されるため、隣接する極板の各ペアが並列になる。\(n\) 枚の極板で \((n-1)\) 倍の容量が得られる。

問2:[8] 回転後の電気容量、[9] 回転後のエネルギー

直感的理解

充電後に電池を外し、2番目と4番目の極板を角度 \(\theta\) だけ回転させる。半円形の極板なので、回転すると正極板と負極板の対向面積が減少する。面積が \(\pi - \theta\) に比例して小さくなり、電気容量が変化する。電荷は保存されるのでエネルギーも変化する。

コンデンサーBを充電した後、スイッチと電池を取り外す(電荷は保存される)。次に、2番目と4番目の極板(負極板)の固定を外し、円の中心を結ぶ直線を回転軸として角度 \(\pi - \theta\)(\(\pi/2 < \theta < \pi\))だけ回転させる。

半円形の極板を角度 \(\pi - \theta\) 回転させると、正極板と負極板が重なる中心角(対向部分)は \(\theta\) になる。問題文に沿うと、回転角が \(\pi - \theta\) のとき対向面積の中心角は \(\theta\) である。

ただし、問題の設定を再確認する。図3の記述では「\(\pi - \theta\)(\(\pi/2 < \theta < \pi\))だけ回転」とある。回転前は正極板(上半円)と負極板(上半円)が完全に重なっている(対向角 \(\pi\))。角度 \(\pi - \theta\) だけ回転すると、重なり部分の中心角は \(\pi - (\pi - \theta) = \theta\) になる。

[8] 回転後の電気容量:対向面積は元の \(\theta / \pi\) 倍になる。各隙間のコンデンサーの容量は

$$C' = \frac{\varepsilon_0 \cdot S \cdot \frac{\theta}{\pi}}{d} = \frac{\theta}{\pi} \cdot C$$

3組の並列なので

$$C'_B = 3C' = \frac{3\theta}{\pi} \cdot C = \frac{\theta}{\pi} \cdot C_B$$

よって回転後の電気容量は回転前の \(\boxed{\dfrac{\theta}{\pi}}\) 倍。

[9] 回転後のエネルギー:電荷 \(Q_{\text{total}}\) は保存されるので

$$U' = \frac{Q_{\text{total}}^2}{2C'_B}, \quad U = \frac{Q_{\text{total}}^2}{2C_B}$$ $$\frac{U'}{U} = \frac{C_B}{C'_B} = \frac{1}{\theta / \pi} = \frac{\pi}{\theta}$$

回転後の静電エネルギーは回転前の \(\boxed{\dfrac{\pi}{\theta}}\) 倍。

答え:
[8] 回転後の電気容量は回転前の \(\dfrac{\theta}{\pi}\) 倍
[9] 回転後の静電エネルギーは回転前の \(\dfrac{\pi}{\theta}\) 倍
補足:エネルギーが増加する理由

\(\pi/2 < \theta < \pi\) より \(\theta / \pi < 1\)、すなわち電気容量は減少する。電荷一定で容量が減少すると \(U = Q^2/(2C)\) よりエネルギーは増加する。

これは極板を引き離すのと同じ原理で、回転させるために外力が仕事をした分がエネルギーに蓄えられる。電荷一定・容量減少 → エネルギー増加 は、問1の [4] と同じ物理。

別解:面積比から直接エネルギー比を計算

回転前の対向面積を \(S_0\)、回転後の対向面積を \(S' = S_0 \cdot \theta / \pi\) とすると、

$$C'_B = 3 \cdot \frac{\varepsilon_0 S'}{d} = \frac{\theta}{\pi} \cdot C_B$$

電荷保存 \(Q' = Q\) と合わせて

$$U' = \frac{Q^2}{2C'_B} = \frac{Q^2}{2 \cdot (\theta/\pi) \cdot C_B} = \frac{\pi}{\theta} \cdot \frac{Q^2}{2C_B} = \frac{\pi}{\theta} \cdot U$$
Point

電荷一定(孤立系)では、電気容量の変化とエネルギーの変化が逆比例する:\(U'/U = C/C'\)。容量が減ればエネルギーは増える。この増加分は回転に要した外力の仕事に等しい。