この大問は2つのパートに分かれています。
問1(ドップラー効果):スピーカーが反射板に向かって一定速度 \(V\) で近づきながら音を出す。反射板で反射した音と直接音がうなりを生じる。ドップラー効果の公式でうなりの振動数を求め、具体的な数値で音速を測定します。
問2(薄膜干渉):くさび形のガラス板による等厚干渉。赤色光と紫色光の強め合いの位置から角度 \(\theta\) やガラス板の間隔を求めます。
数値例:気温10℃での音速 \(v = 340\) m/s、振動数 \(f = 55\) kHz の超音波で実験を行います。
スピーカーが反射板に向かって一定の速さ \(V\) [m/s] で近づいている。反射板は原点Oから \(x\) 軸上の正の向きに距離 \(L\) [m] だけ離れた位置に固定されている。スピーカーが出す音の振動数を \(f_0\) [Hz]、無風状態での音速を \(v\) [m/s] とする(\(v > V\) が成立)。
スピーカーが速さ \(V\) で反射板に近づきながら振動数 \(f_0\) の音を出すとき、ドップラー効果により反射板の位置で観測される波長は:
音源が近づく場合、波長は短くなります:
$$ \lambda' = \frac{v - V}{f_0} $$反射板は静止した反射面で、入射波の波長 \(\lambda'\) をそのまま反射します。反射音の振動数は反射板が観測する振動数に等しく:
$$ f_{\text{反射板}} = \frac{v}{\lambda'} = \frac{v f_0}{v - V} $$この反射音をスピーカーの位置で(スピーカーが反射板に近づきながら)観測すると、観測者が音源に近づくドップラー効果が加わります:
$$ f_{\text{反射}} = \frac{v + V}{v} \cdot f_{\text{反射板}} = \frac{v + V}{v} \cdot \frac{v f_0}{v - V} = \frac{(v + V)f_0}{v - V} $$反射音が反射板の音と干渉し、周期 \(T\) [s] のうなりを生じます。
うなりの振動数は直接音と反射音の振動数差です。スピーカーの位置で聞こえる直接音の振動数は \(f_0\)(スピーカー自身が出した音)です。
$$ f_{\text{うなり}} = f_{\text{反射}} - f_0 = \frac{(v+V)f_0}{v-V} - f_0 = f_0 \cdot \frac{(v+V) - (v-V)}{v-V} = \frac{2Vf_0}{v-V} $$うなりの周期 \(T\) を用いると:
$$ \frac{1}{T} = \frac{2Vf_0}{v - V} $$スピーカーの速さ \(V\) は:
$$ V = \frac{v}{2f_0 T + 1} $$問題文では \(V = \dfrac{1}{T} \cdot \dfrac{v-V}{2f_0}\) の関係式から、うなりの周期を用いて \(V\) を表せとのことです。
一定の速さ \(w\) [m/s] の風が \(x\) 軸の正の向きに吹いている場合:
風が吹くと、音速が風速分だけ変化します。スピーカーから反射板に向かう音の速度は \(v + w\)(追い風)、反射板からスピーカーに戻る音の速度は \(v - w\)(向かい風)です。
反射板での波長:音源が近づく効果は媒質(空気)基準で考えるので:
$$ \lambda_1 = \frac{(v + w) - V}{f_0} $$反射板での観測振動数:
$$ f_1 = \frac{v + w}{\lambda_1} = \frac{(v + w)f_0}{(v + w) - V} $$反射音がスピーカーに戻るとき(スピーカーは反射板に近づいている):
$$ f_{\text{反射}} = \frac{(v - w) + V}{v - w} \cdot f_1 = \frac{(v - w + V)(v + w)f_0}{(v - w)((v + w) - V)} $$ここで \((v + w)(v - w + V) = (v + w)(v - w) + (v + w)V = v^2 - w^2 + (v + w)V\) と、\((v - w)(v + w - V) = v^2 - w^2 - (v - w)V\) です。
うなりの振動数:
$$ f_{\text{うなり}} = f_{\text{反射}} - f_0 $$実は、風の影響はスピーカーと反射板の間で相殺され、うなりの振動数は風の有無によらず同じになることが知られています(ドップラー効果における風の対称性)。
確認:
$$ f_{\text{反射}} = \frac{(v - w + V)(v + w)}{(v - w)(v + w - V)} f_0 $$分子:\((v+w)(v-w+V) = (v+w)(v-w) + V(v+w) = v^2 - w^2 + V(v+w)\)
分母:\((v-w)(v+w-V) = (v-w)(v+w) - V(v-w) = v^2 - w^2 - V(v-w)\)
$$ f_{\text{うなり}} = f_0 \left(\frac{v^2 - w^2 + V(v+w)}{v^2 - w^2 - V(v-w)} - 1\right) $$ $$ = f_0 \cdot \frac{V(v+w) + V(v-w)}{v^2 - w^2 - V(v-w)} = \frac{2Vvf_0}{v^2 - w^2 - V(v-w)} $$これは風がない場合(\(w = 0\))の \(\dfrac{2Vf_0}{v - V}\) とは一般には異なります。したがって風がある場合の \(V\) の式は変わります。
風がある場合のドップラー効果では、音速を媒質の運動を含めた実効速度 \(v \pm w\) に置き換えます。行きと帰りで音速が異なるため、計算が複雑になります。
気温10℃の無風状態で、スピーカーが点Oを通過する際に55 kHzの超音波を出し始める。0.20秒後にスピーカーの位置にいる観測者に反射音が到達し、振動数2.5 kHzのうなりが観測され始める。
これより、スピーカーがOを通過してから反射板と衝突するまでの時間(音がOから反射板まで往復する時間)が0.20秒であることが分かります。
音の往復距離 \(2L\) と往復時間 0.20 s から音速 \(v\) を推定します:
$$ 2L = v \times 0.20 $$一方、うなりの振動数 \(f_{\text{beat}} = 2500\) Hz を用いて:
$$ f_{\text{beat}} = \frac{2Vf_0}{v - V} = 2500 $$ここで \(f_0 = 55000\) Hz です。
$$ 2500 = \frac{2V \times 55000}{v - V} $$ $$ 2500(v - V) = 110000V $$ $$ 2500v = 110000V + 2500V = 112500V $$ $$ V = \frac{2500v}{112500} = \frac{v}{45} $$問題文によると「10℃での音速を340 m/sとして、有効数字2桁で」と指定されています。
$$ v = 340 \text{ m/s},\quad V = \frac{340}{45} \fallingdotseq 7.6 \text{ m/s} $$0.20秒間にスピーカーが移動した距離:\(V \times 0.20 = 7.6 \times 0.20 = 1.5\) m
音がOから出て反射板まで行き、戻ってくる間にスピーカーも移動しています。音が反射板に到達する時間を \(t_1\)、反射してスピーカーに戻る時間を \(t_2\) とすると:
$$ v \cdot t_1 = L \quad (\text{音がOから反射板まで}) $$ $$ v \cdot t_2 = L - V(t_1 + t_2) \quad (\text{反射音がスピーカーまで}) $$合計時間 \(t_1 + t_2 = 0.20\) s
$$ t_1 = \frac{L}{v},\quad vt_2 = L - V \cdot 0.20 $$ $$ t_2 = \frac{L - 0.20V}{v} $$ $$ t_1 + t_2 = \frac{2L - 0.20V}{v} = 0.20 $$ $$ 2L = 0.20v + 0.20V = 0.20(v + V) $$ $$ L = 0.10(v + V) = 0.10(340 + 7.6) = 34.76 \text{ m} $$有効数字2桁で:
$$ \boxed{V \fallingdotseq 7.6 \text{ m/s}} $$選択肢:(ア) より長くなる、(イ) と変わらない、(ウ) より短くなる
気温が高くなると音速 \(v\) が大きくなります。うなりの振動数は:
$$ f_{\text{beat}} = \frac{2Vf_0}{v - V} $$\(V\) が同じでも \(v\) が大きくなると \(f_{\text{beat}}\) は小さくなります(分母が大きくなる)。うなりの振動数が小さくなると周期は長くなります。しかし、反射音が到達するまでの時間も短くなるので、衝突までにかかる時間が短くなります。
問題文は「衝突までにかかる時間は、19℃のとき」と聞いています。音速が大きくなると反射音は早く戻るが、うなりの周期は長くなります。2.5 kHz のうなりが観測される条件が変わります。
音速は気温 \(t\) [℃] に対して近似的に:
$$ v \fallingdotseq 331.5 + 0.6t \text{ [m/s]} $$10℃: \(v = 337.5 \fallingdotseq 340\) m/s(問題の設定値に近い)
19℃: \(v = 342.9 \fallingdotseq 343\) m/s
温度が上がると音速が上がり、音の往復が早くなるため、衝突(反射音到達)までの時間は短くなります。
2枚の平坦なガラス板AとBが、角度 \(\theta\) [rad] だけ傾いて重ねられている。AとBが接する点を原点Oとし、ガラス板Aの上面に沿って \(x\) 軸をとる。上方から波長420 nmから700 nmの白色光を \(x\) 軸に垂直に入射すると、等厚干渉縞が観測される。
原点Oから距離 \(d\) [m] 離れた点 \(\text{R}_1\) で、初めて波長700 nm の赤色光が強め合う。
くさび形空気層の厚さは、原点Oからの距離 \(x\) に対して \(t = x\tan\theta \fallingdotseq x\theta\)(\(\theta\) が微小のため)です。
薄膜干渉(空気層)で強め合う条件:光はガラス板Aの上面(密→疎:位相変化なし)と、ガラス板Bの下面(疎→密:位相が \(\pi\) ずれる)で反射します。
したがって、反射光の干渉条件(強め合い)は:
$$ 2t = \left(m + \frac{1}{2}\right)\lambda \quad (m = 0, 1, 2, \ldots) $$「初めて」強め合うのは \(m = 0\) のとき:
$$ 2d\theta = \frac{1}{2} \times 700 \times 10^{-9} $$ $$ d\theta = \frac{700 \times 10^{-9}}{4} = 175 \times 10^{-9} \text{ m} $$ $$ \tan\theta = \frac{700 \times 10^{-9}}{4d} $$波長420 nm の紫色光が初めて強め合う点 \(\text{V}_1\) の位置を \(d\) を用いて表します。
$$ 2 \cdot x_{V_1} \cdot \theta = \frac{1}{2} \times 420 \times 10^{-9} $$ $$ x_{V_1} \cdot \theta = \frac{420 \times 10^{-9}}{4} $$先ほどの □6 から \(d \cdot \theta = \dfrac{700 \times 10^{-9}}{4}\) なので:
$$ \frac{x_{V_1}}{d} = \frac{420}{700} = \frac{3}{5} $$ $$ \boxed{x_{V_1} = \frac{3}{5}d} $$紫色光と赤色光がそれぞれ2回目に強め合う位置 \(\text{V}_2\), \(\text{R}_2\) の関係を考えます。
\(m = 1\) のとき(2回目の強め合い):
赤色光:\(2x_{R_2}\theta = \dfrac{3}{2} \times 700 \times 10^{-9}\) → \(x_{R_2} = 3d\)
紫色光:\(2x_{V_2}\theta = \dfrac{3}{2} \times 420 \times 10^{-9}\) → \(x_{V_2} = \dfrac{9}{5}d\)
\(\text{V}_1\text{R}_1\) 間(\(0.6d\) から \(d\) の範囲)で、他の色の縞が何本見えるかは、各波長の強め合い条件から決まります。
しかし問題文では「\(\text{V}_1\text{R}_1\) 間の縞の数」とあり、これは白色光の等厚干渉縞で特定の色が強め合う位置の数を意味します。
赤色光が4回目に強め合う位置は \(x = \dfrac{7}{2} \times d / \dfrac{1}{2} = 7d\) です(□8の値は問題の解釈に依存)。
赤色光が4回目に強め合う点 \(\text{R}_4\) で、強め合いの条件を満たす赤色光以外の光の波長を求めます。
\(\text{R}_4\) の位置:\(m = 3\) のとき
$$ 2x_{R_4}\theta = \frac{7}{2} \times 700 \times 10^{-9} $$ $$ x_{R_4} = \frac{7}{2} \times d = 3.5d $$この位置での空気層の厚さ:
$$ t_{R_4} = x_{R_4} \theta = 3.5 \times d\theta = 3.5 \times \frac{700 \times 10^{-9}}{4} = \frac{2450 \times 10^{-9}}{4} $$他の波長 \(\lambda'\) が同じ位置で強め合う条件:
$$ 2t_{R_4} = \left(m' + \frac{1}{2}\right)\lambda' $$ $$ \lambda' = \frac{2t_{R_4}}{m' + 1/2} = \frac{2 \times 3.5 \times d\theta}{m' + 1/2} = \frac{7 \times 700 \times 10^{-9} / 4}{m' + 1/2} = \frac{1225 \times 10^{-9}}{m' + 1/2} $$可視光(420 nm ~ 700 nm)の範囲で赤色以外(\(\lambda' \neq 700\) nm, つまり \(m' \neq 3\)):
有効数字3桁で:
$$ \boxed{\lambda' = 490 \text{ nm}} $$原点から遠く離れた位置では、ガラス板の間隔 \(t\) が大きくなり、強め合いの条件を満たす波長の間隔が狭くなります。つまり、可視光のほぼ全ての波長が等しい強度で反射されるようになり、白色光が観測されます。
くさび形干渉では、空気層の厚さに比例して干渉の次数 \(m\) が大きくなります。\(m\) が大きい領域では、隣接する強め合いの波長の差が小さくなり、白色光の全成分がほぼ均等に反射されるため、色がつかなくなります(白色に見える)。
くさび形空気層で反射光が干渉する際の位相差は:
いいえ、光は上から入射するので:
光路差 \(2t\) に位相 \(\pi\)(= \(\lambda/2\) の光路差)が加わるので:
$$ \text{強め合い:} 2t + \frac{\lambda}{2} = m\lambda \quad \Rightarrow \quad 2t = \left(m - \frac{1}{2}\right)\lambda $$これは \(2t = (m + 1/2)\lambda\) と同値(\(m\) の取り方を変えるだけ)。